2011-03-31

シリアの争乱を考えてみる

 一昨日のNHKニュースで、イスラエルの医療チームが東日本大震災の被災地に入って医療活動を始めた事を知り、中東が不安定な中よく来てくれたのもだと嬉しく思っていました。そのイスラエルが再び戦争に巻き込まれるような嫌な気配を感じたのは、反米意識の多い中東諸国をうまく取りまとめてバランスを保っていたエジプトのムバラク前大統領が反政府運動によって失脚した時からでした。そして、中東諸国で唯一アメリカの同盟であるイスラエルが、シリアの反政府運動の流れから影響を受けるかもしれないという印象を持ったので抑えておきたいと思います。
 この視点は、シリアの反政府運動の強まりからで、この国が不安定になると周辺の中東諸国にかなりの影響を及ぼすのではないかということです。残念ながら、シリアに関する日本での情報は少なく、これから書くことも昨日の極東ブログ「シリアの複雑な現状」(参照)に挙がっている情報を参考にしています。
 シリアに関して触れたここでのエントリーといえば、「アメリカの軍事介入について雑感」(参照)のバーレーン政府がスンニ派化を目論み、スンニ派国といわれるシリアから多くの労働者を呼び込んで市民権を与えるなど、都合よく利用されてきたことなどです。このときにも思っていましたが、中東和平問題を考える時、混乱して問題が難しくなってしまうのは、スンニ派かシーア派かのどちらが政権をもっているかにかかってくるからです。また、国際社会の介入が及び腰になるのも、原油消費国である利権の問題もあり、下手に介入すると、関係国とのバランスが取れなくなる点があるからだと思います。

 まず、シリアの反政府運動が始まったことを知ったのは今月の中旬でしたが、Twitterのクリップ記事でBBCが伝える「Middle East unrest: Silence broken in Syria」(参照)でした。
 記事ではチュニジアの反政府運動の流れを汲んで始まったとあるので、反政府運動と見なさしてよいと思いました。この記事で驚いたのは、馴染みのないシリアであることと、チュニジアのような反政府運動とは違って、政府がいきなり市民に発砲して死者を出している点でした。シリアといえば、強権圧政政治であるということぐらいしか知らない私の想像できたことは、逆らう者は殺せとなるのだという点でした。反対に、このような国の市民がよく立ち上がったものだと思ったものでした。そして、シリアに民主化があり得るのかという疑問でした。こういってはなんですが、北アフリカのチュニジアや中東のエジプトがかなり民主的に近づいたといっても、ほんの少しです。チュニジアは頭を変えては政権が頑張り続けていますし、エジプトは軍の下でしかあり得ない政府です。中東諸国でもっとも強権圧政政権であると言われるシリアに民主化は一番あり得ないシナリオではないかというのが妥当ではないかと思ってしまいます。
 という個人的な思いからの結果論ですが、だったら長引かない方が影響が少なくて済むと思います。そこで、最初に挙げた中東問題の観点でこの争乱を見てみると、反対派が抑え込まれてアサド政権が潰れた時、その先はどうなるのかということを読むのは難しいです。
 極東ブログで引用している外国紙は、右派的左派的な代表例だと思って読んだのですが、イランと関わりを持つことはイスラエルとの関係を刺激するということなのか、アメリカはかなり慎重に構えているという理由かもしれません。えこひいき目では、イスラエルがめちゃめちゃになるのは避けたいです。
 話を戻して、反対派が抑え込まれてアサド政権が潰れた後の可能性を挙げてみることにします。
 これまで牛耳られてきたスンニ派のバース党がアサドに代わって権力を握るというシナリオです。これは、派閥的には政権を握るほどの力があるのかという疑問があり、考えにくいし今のところ情報も出てきていません。
 次に、影響力を持っていたムスリム同胞団が復活するかという点ですが、これは、今まで相当弾圧されてきているし、老化も進んでいるため、現時点で脅威とするほどの力はないと思います。
 残る可能性としては、宗派や地域ごとに何らかの形で結束し、周辺国がそれに賛同して中東全体が混乱した状態にまで発展するかというシナリオです。この場合にのみ、イスラエルがともすると軍事反応を起こさざるを得ない状況が起こりうると思います。理由は、中東諸国が不安定になるとそれを利用してパレスチナ等の武装勢力が動き始めるかもしれないからです。
 悪いシナリオばかりが浮かんでどうもイケないです。よいシナリオはないものかと考えると、一番あり得そうもないのですが、最初に挙げたバース党と反政府(民主化を望む勢力)が組んで納得のいくそれなりの民主政権を樹立することでしょうか。このように立ち上がる政権は、往々にして民主的な政権の誕生とは言えないのですが、それでも多数意見を吸い上げて自分らが望むようなそれなりの国づくりはできると思います。
 アメリカが何らかの介入をするのであれば、最後の一番あり得ない平和的な解決を目指せるように仲介することでしょうか。リビアに関しては、ぐずぐずしながらも内戦に対して軍事的な介入に踏み切ったという失敗は取り消せません(参照)。シリアに対してはもちろん、アメリカが飛び込むという意味ではないです。一番気になるところは、一歩踏み外すと一大事にもなりかねない要素が多分にあるということです。

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