水道水からヨウ素131が検出されたことや今後について
福島原発の事故後、雨日が諏訪では二日続きました。大した雨量ではなく、途中晴れ間を見ることもある程度の曇り空に小糠雨という程度でした。同時に気になっていたのは、放射能の影響でした。福島や宮城県では事故後、雪がチラつく日もあり、原発関係者は雨による被爆の影響を念頭に、神経を注がれていたのではないかと思っていました。
昨日、東京都の飲用水にこの影響があったと最初に報じられ、各家庭は、この問題にどう対処したらよいのかという点で、ニュースのニュアンスが微妙に変化し、違和感がありました。その印象や、今後の参考のためにここでまとめておくことにしました。
雨の影響で飲料水について初めてアナウンスを聞いたのは、昨日14:30頃のNHKニュースでした(参照)。
東京都は、葛飾区にある都の浄水場の水から1リットル当たり210ベクレルの放射性ヨウ素131が検出されたと発表しました。東京都は、乳児が摂取してよい基準の上限となる1リットル当たり100ベクレルを超えているとして、この浄水場の水道水を利用する東京23区と武蔵野市、町田市、多摩市、稲城市、三鷹市で、乳児に限って水道水の摂取を控えるよう呼びかけています。厚生労働省は、「乳児が飲んでも直ちに健康に影響を及ぼす値ではない」としたうえで、念のため、乳児の飲み水や粉ミルクを溶かす水として利用しないよう呼びかけています。
これは、水道局の報告を受けた都の発表でしたが、東京では雨は21日から降り始め、22日午後の枝野官房長官の記者会見では、厚生労働省が実際に影響する濃度を知らせるという話でした(産経)。
枝野幸男官房長官は22日午後の記者会見で都水道局の水道水について「数日摂取したとしても、将来にわたり健康への影響が出る可能性はない」と断言。にもかかわらず、実際に影響が出る濃度に関しては「厚生労働省が報告する」と厚労省に説明を委ねた。
厚生労働省からその後、特に数値に言及する報告はなく、16:40のNHKニュースでは子どもの年齢に言及して次のように報じました(参照)。
東京都葛飾区にある都の浄水場の水道水から、1歳未満の乳児の摂取制限の指標を上回る量の放射性物質が検出されました。 東京都はこの浄水場の水道水を利用する東京23区と多摩地区の5つの市で乳児に限って水道水の摂取を控えるよう呼びかけていますが、長期的に摂取しなければ健康に影響はないとしています。
そして、21:39、都の判断で、緊急用の水が配布されることになりました(日経)。
江戸川は利根川から分かれた河川。都水道局浄水課は「久しぶりに雨が降り大気中などの放射性物質が河川に流れ込み、一時的に数値が上昇した可能性がある」と指摘。「雨水が海に流れ出るに伴い、数日の間に数値はいったん落ち着くのではないか」とみている。
都は23日夜、防災用に備蓄している飲料水550ミリリットル入りのペットボトル24万本を、乳児1人当たり3本、都内の乳児約8万人の家庭に提供すると発表した。ペットボトルは、乳児の水道摂取を避けるよう呼びかけている対象市区の役所へ24日朝から搬送する。
この間、厚生労働省は飲んではいけない放射線量の公表をすることは無く、19日に「基準値を超える水道水でも、代替となる飲用水がない場合には飲用しても差し支えない」との見解を発表しただけにとどまっているため、都の判断でミネラルウォーターを配布する決定をしたことは、迅速で、市民の不安は一気に解消したのではないかと感じました。内部で何があったのかは計り知れませんが、結果的には都の判断が速かったことが混乱を回避した事になると思います。残る気がかりは、厚労省の曖昧な対応です。
都は、一歳未満への摂取制限しながら、農水省は、「基準値を超える水道水でも、代替となる飲用水がない場合には飲用しても差し支えない」という矛盾した情報が存在したままになっています。これは、飲料水が配布されれば済む問題ではなく、危機管理の問題としての政府の問題です。枝野さんが、農水省に振って終わりにできない問題です。
では、何故、一歳未満の乳児に限られているのかという問題ですが、先日のエントリーで引用したとおり、チェルノブイリ原発事故後、牛乳を飲み続けた子どもたちの甲状腺異常が見つかり、ヨウ素131の影響だったことが分かっています(参照)。また、毎日は、次のように報じています(参照)。
原子力安全委員会は、放射性ヨウ素が300ベクレルを超える飲料水は飲用を控えるよう定めている。一方、食品衛生法に基づく暫定規制値は、100ベクレルを超える牛乳などを乳児用の粉ミルクや飲用に使用しないとしている。これを基に国はこれまで、100ベクレル超の水道水を摂取しないよう呼びかけていた。ヨウ素は甲状腺に集まりやすいが、小さい子どもは成長が盛んで甲状腺の発達も進むため、放射性ヨウ素も多く取り込み、影響が大きいと考えられている。
数値が違うのは何故なんだろうかという疑問もありますが、基準値の低いほうの値(より低いほうが安心なので)を採用している国の見解を採用して私なりに考えてみました。
金町で検出された210ベクレルは国の基準値100ベクレルの約二倍です。この数字が人体に直接直ぐに影響する値ではないとする根拠は、1ベクレルの放射性ヨウ素を経口摂取した場合の人体への影響は、0・022マイクロシーベルトと言われているので、単純計算すると、210ベクレルは4.62マイクロシーベルトとなります。一般人の1年間の被ばく限度は、自然放射線を除いて1000マイクロシーベルトなので、1000÷4.62=216.5となります。つまり、210ベクレルの216倍までは被爆限度内だという計算になます。
政府が「代替となる飲用水がなければ引用しても差し支えない」というのは、ちょっと横柄な返答で、私たちは不安に刈られるとコンビニへ走るのです。風評被害を出しているのは私たちですが、この混乱を鎮圧したり、恐れるあまり政府が隠蔽を企てるくらいであれば、ほうれん草や牛乳、これに続く飲料水や他の疑わしい食品全てを廃棄し、安全な食品を国内外から調達して急場を凌ぐ配慮もありではないかと思います。つまり、被災者の衣食住を優先的に安定させるために、税金の使い道の優先順位が変わることを私たちは承服することだと思います。
昨日、3月30日号Newsweek日本語版(参照)が読みであっていいよと人から聞いて早速、出たついでに買って読んだのですが、今回の被災をものすごく現実的な問題として突きつけられたように感じました。
神戸淡路の震災と違うのは、今後も津波の恐れのある地域であることと、原発の近隣には住めなくなることです。もちろん、原発で働いていた方たちは失業ですし、近くの農家も、農業の再開は難しい条件になります。埼玉に役所を移し、一部の住民も一時移民したということも現実に起きていますが、帰る場所はあるのか?という事を仮定していませんでした。無いといっても言い過ぎではないと記事で読んだとき、これが最悪のシナリオの後に起こることなのだとはっきり思いました。この場合の最悪のシナリオとは、原発に人が近づけなくなることです。事故後、毎日危険を冒して必死の作業に当たっていられる方々には頭の下がる思いですが、こうして手を打っているのは何をためか、私たちは何を待っているかといえば、被爆被害を一生起こさないためです。それは、この場所に戻れるようにするためではないのです。東電も、廃炉はやむを得ないと考えているようです(朝日)。だったら、これから暮らす場所を早く見つけることではないかと思えてきたのです。こんなこと、被災地の方には気の毒な思いが伴い、言い難いことです。ほんとうに。
因みに、長野県は新潟と静岡の地震の影響があり、フォッサマグナの地盤の上でもあることから強くお勧めはできないけれども、でも、東北の気候と似ているので馴染みやすいかもしれませんよ。温泉地も多く、農地や農家の空き家も沢山あります。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント