2011-03-21

アメリカの軍事介入について雑感

 昨日リビアの内戦に多国籍軍(米英仏)が軍事的な介入を始め、実質戦争が始まりました。話の展開は非常に速かったです。オバマ氏の開戦の声明をNHKニュースで聞きながら、戦争を始める時は理路整然としたことを言うものだなと、気持ち悪くなった。正義を振りかざして公然と人殺しを始めるという宣言など聞きたくもなかった。世界から暗黙の了解を得るだけでしょ。そんな声明は、聞いていて気持ちが悪くなった。ノーベル平和賞受賞者であるオバマ氏だけに、戦争は平和のための必要悪だと、そう言わざるを得ないだろうな。作戦名は「オデッセイの夜明け(Odyssey Dawn)」と命名されたらしい。なるべくしてなったとはいえ、多国籍軍は、反政府側を後押ししながらカッダーフィー軍を制覇するまでこの戦争は続くのだろうと思うと、イラク戦争となんら変わりない戦争をおっぱじめただけの話しです。ただし、イラク戦争のように表に出ている感じではなく、むしろ西側諸国としてのフランスが先頭を切っているようでもあります。メディアの報じ方もフランス勢を強調しているようではあります

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イスラムの怒り
内藤正典

イラク戦争は継続中ですが、この戦争が続く理由は、ムスリムの怒りを静めることができないからで、アメリカが弱いものいじめをやめないからに尽きると思います。イスラム教徒が命を張っても守ろうとするのは、弱者だからです。オバマ氏は、この戦争を終わらせると公約していますが、アメリカが手を引けば戦争が終わるということにはならないと思います。
 この戦争について書きたかったわけではないのですが、この戦争と並べて考えざるを得ないのがペルシャ湾に浮かぶ淡路島くらいの小島バーレーン(人口79万人)に起こっている争乱です。そして、並べる理由にアメリカの気持ち悪い介入を考えざるをえないからです。
 この争乱の背景は「バーレーン情勢-争乱の背景について」(参照)で既に触れましたが、今、何が気になるかと言えば、反政府側がイスラム教シーア派で、同じシーア派が政権を握っているイランを刺激することが、バーレーンと同様の王制であるサウジアラビアとの対立関係に結びつく可能性です。この可能性は高いと思っていて、その理由は、チュニジアの反政府運動の影響がバーレーンに波及した直後、サウジアラビアはリファラ王家を支持する考えを表明しました。この素早い反応は、自国の反政府運動へのけん制も意味していたのかもしれませんが、王制を敷いているサウジアラビアが圧政を自覚しているため、ビビッタのだろうかと憶測したほどです。
 サウジのことはちょっと置いといて、バーレーンとリビアを並べて、両国の争乱の中身は違うとしても、名目上、平和を言いながら軍事的に介入する関係国が怪しいのです。これについては、私には整理できていません。昨日始まったリビアの戦争において、米英仏は、反政府側についています。バーレーンでは逆に、サウジアラビアを中心に湾岸諸国が政権側支持の立場で軍事介入しています。この介入は、実質戦争になったと言えるのか、その辺は良く分かりませんが、朝日では次のように報じています(朝日2011.03.18)。

 王政の強硬姿勢を支えるのは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦の兵らだ。計約1500人が戦車や装甲車に乗り、主要道路の交通を制限している。湾岸諸国はスンニ派君主が支配しており、バーレーン情勢の飛び火を恐れて軍事介入に至ったのだ。
 デモ隊の民主化要求は、少数派のスンニ派王政の廃止を導きかねない。ハマド国王は一時はデモを静観したが、15日に緊急事態令を宣言。武力で抑え込む方針に転じた。

 そして嫌なことに、バーレーンを応援するサウジアラビア政府に対して講義デモが始まったことです(3月17日 毎日

 デモはサウジ東部カティフなどで行われ、数百人が参加。サウジ軍を中心とする湾岸協力会議(GCC)合同軍のバーレーン派遣に反対するとともに、同国シーア派住民への連帯や、サウジでの政治犯の釈放などを訴えた。大規模な治安部隊が出動して解散を迫ったが、衝突には至らなかったという。
 スンニ派主導のサウジは、バーレーンのシーア派反体制デモが自国に及ぶことを懸念。同じスンニ派のバーレーン国王の要請を受けて派兵した。

 情報が前後してしまうのですが、それは、サウジ政府が先手を打っているためか、デモの理由が後ではっきりすると言う印象です。そして、リビア情勢沈静化に立ち上がったアメリカではありますが、バーレーンには、中東一帯の海域を管轄する米海軍第5艦隊司令部があり、アメリカの中東戦略においては要になっています。つまり、バーレーン争乱にサウジアラビアが首を突っ込めば突っ込むほど自国の反政府運動を刺激し、その影響は中東情勢・原油供給に及び、全世界に波及するのは避けられないのではないかと思えてくるのです。すると、アメリカが黙っていられなくなるという構図が浮かびます。私の目にはアメリカは、リビアでは反政府側につき、バーレーンでは圧政に加担すると映るのです。相手国は違うし、バーレーンは宗教、リビアは名目上平和への軍事介入ではあります。が、これは、アメリカのダブルスタンダードじゃないのか?そうか、どうか、ここが私にはすっきりと見えない部分です。ここがダブスタだとはっきり見えても、それだけの話で、アメリカの行いが変わることにはつながらないでしょうし、変な正義感なのかもしれません。でも、この妄想上のアメリカを肯定的に見ることができないのです。
 さて、バーレーンの王制についてですが、実際は、2001年に国民投票によって首長独裁体制から立憲君主制に移行しています。この立憲君主制が正常に機能していれば痛くも痒くもない筈ですが、この数年、バーレーン政府は「スンニ派化」政策を進めていると言われています。サウジアラビアやヨルダン、シリア、パキスタンなどのスンニ派諸国から多くの労働者を呼び込み、市民権を与えてスンニ派の人口比を高めようとしているというのです。これができるのも信仰心の強さで、日本では想像もつかないことです。これによってシーア派住民を抑圧してきたため、支配層は、逆にシーア派への警戒感を強める結果となり、軍や警察はスンニ派が占めているようです。また、外国から来たスンニ派には市民権を与え、軍や警察などの公務員としての職や、家などの特典を与えているため、シーア派の反感を買う原因になっているようです。このような背景から、バーレーンの王制には既に無理があり、限界ではないかという気がします。
 広義に王制は、王家に対して国民の敬愛なくしては成り立たないと思います。それが失われつつあることを承知だからこそ、スンニ派新市民獲得に不公平を生み、シーア派の反発にあっているのが現実だと思います。逆に言えば、徹底的な強権支配しか残る道はないかと思います。これに同調するサウジのスンニ派と、反政府に同調するイランのシーア派が絡んでくれば宗教戦争となり、アメリカが何らかの介入をせざるを得なくなります。では、どちらにアメリカ軍は加勢するのか、当然石油利権を思えばスンニ派である政府でしょう。すると、サウジアラビアとの外交上にも矛盾を生じることはありません。
 つまり、民主的で平和な社会を目指すアメリカが、王制の強権圧政政府を応援するつことになります(現実にはそうしてきている)。この展開になると、結果、オバマ氏の平和外交はまた失敗じゃん。すると、外交で成功するのは、日本や韓国のような同盟国とだけかもしれません。アメリカの世界平和構想と利権が合致しない国との外交で見え隠れするのは、アメリカの偽善と、背景の営利主義ということなのか。

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コメント

初めてコメントさせて頂きます。

(数日前の天罰記事にも関連するのですが)
被為政者がどうしても抱えてしまう心象を、
黙示からデモクラシーへと変換する作業がずっと
続いてるという感じではないでしょうか。

投稿: すず | 2011-03-21 10:26

少し追加致します。

サウード家などは、デモクラシーを極めて理解したうえで軍需コングロマリットを構成しているということではないでしょうか。
更にアメリカ大統領というのは、黙示におけるメシアを現前させようとしたものだということも考えなければならないところです。

投稿: すず | 2011-03-21 13:29

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