「暫定基準値」から始まった疑問と混乱
福島原発事故以来、食品から「食品衛生法上の暫定基準値を超える放射線量が検出された」と知ったのは19日の枝野官房長官の会見でした(朝日)。一瞬ドキッとしたのですが、続けて、人体に影響するほどではないと説明されました。包み隠さず情報を提示すると菅総理が声明を出したとおり、報告を受けたとおりに説明されているのだとは思いました。が、私の今の政府に対する信頼度が低いためか、この会見の内容がかなり気になっていました。
何が気になっていたか、二つあって、その一つは内部被爆と外部被爆が混同されてはいないのかという疑問でした。これについては、昨日の極東ブログの解説も参考にしながら考えたのですが(参照)、私が混乱した原因は、ベクレルとシーベルトの違いが理解できていなかったからではないかということです。
実際に福島第1原発の事故後の影響で、茨城県高萩市のほうれん草から検出されたヨウ素は、1キロ当たり1万5020ベクレルで、この数値を被曝(ひばく)量に換算すると0・33ミリシーベルトだと報じられました。一般に人体に影響する線量は一度に100ミリシーベルトを受けたときとされてるため、今回の数値は全く問題ないレベルだという説明から、ここで重要なのは「ベクレル」と「シーベルト(Sv)」という単位の理解です(参照)。
ベクレルは、放射性物質(放射能)の強さを表す単位で、1秒間に1回崩壊する放射性物質の強さが1ベクレル。ウランの放射性物質を発見した仏物理学者の名前にちなむ。また、放射線を人体が浴びた際の影響を表す単位のシーベルトに換算できる。
放射能の内部被爆にどうして過敏になるか、ここで連想したのは、チェルノブイリ原発事故後の牛乳を飲み続けた子ども達の甲状腺に異常が出た事です。核分裂によって発生する元素のうち、蒸発しやすいヨウ素131とセシウム137が代表格だと言われていますが、空気中で冷却されると微粒子として風に乗ってあっちこっちへ飛散されるという厄介なものです。しかも、ヨウ素は甲状腺に集まるのです。チェルノブイリから学んだ事が大げさな騒ぎになるのも害ですが、内部被爆を念頭におかずにはいられませんでした。この件に関して、極東ブログで結論付けられているわけではありませんが、さらに情報を得て精度の高い考察を目指されているということがうかがえることから、今後の情報源としてマークした次第です。
一昨日、3号機の格納容器の圧力上昇したため蒸気を抜くと一旦は報じられ(NHK)、その後、取りやめたと聞き(NHK)、度胆を抜かれる思いでした。そんなことをしたら高濃度のプルトニウムが飛散し、どれだけの物にどれ程の被爆が起きるとも限らないとひやひや物でした。
Twitterでも、詳しい筋の話だと信じたい情報も流れてきますが、その発言を裏付けるソースが無いと、せっかくの言葉もどこまで受け止めてよいやら困惑気味です。こういった状況の中、上記のほうれん草と牛乳から検出された放射性物質の安全性についてCNNは、ヒューストンのアンダーソン癌センターの博士ジェームスコックス腫瘍教授の話を「Effect of radiation on humans still harbors mysteries」で、次のように報じています。
Dr. James Cox, an oncology professor at the MD Anderson Cancer Center in Houston, said he believes the radiation levels measured in these products pose a "nonexistent" immediate risk to humans, and "very low" long-term risk.
Still, he concedes that "radiation doses ingested through food is really very poorly understood."
彼は、これらの製品の中に測定された放射能濃度は、人体への即座の危険性は「実在しない」、また、長期には「非常に低い」危険を引き起こすとかんがえています。それでも、「食品から摂取した放射能に関しては、解明されていない」ことを認めています。It collects in the human thyroid gland because the thyroid readily absorbs iodine and assumes the iodine-131 strain is like any other form, said Cox, an expert on the effects of radiation on the survivors of Nagasaki and Hiroshima.
甲状腺は容易にヨウ素を吸収するので、ヨウ素-131が違ったの構造を持つ元素であれヨウ素-131同位体も似ていると仮定され、これについてコックス氏は、長崎と広島の被爆者への放射能の影響に関係していると述べた。
日本で報じている安全性もグローバルな基準に則しているとは思いますが、「安全」とは言いきれない、未知の部分が残されているのも事実です。ここは、是非とも抑えておくべき部分です。
私のもう一つの疑問は、「暫定基準」についてです。
今回話題のほうれん草や牛乳は、即座に人体に影響するものではないことと、これをかなり長く飲食したとしても、それも安心圏内だということは理解できました。が、であれば、「暫定基準」とはいったい何?これは、冒頭の「一瞬ドキッとした」時の疑問で、危機感を抱いた元です。
調べると、以下のように設置されたそうです(参照)。
暫定基準値
福島第1原発の事故を受け、放射性物質を含む食品が見つかった場合に備え、厚生労働省が設定、17日に都道府県などに通知した。基準値を超えた食品を長年、食べ続けると、健康被害が出る可能性がある。食品衛生法に基づき、基準値を超える食品は販売できなくなる。国内産の食品を対象とする放射能濃度の基準値を設定したのは初めて。(共同通信)
また、厚生労働省が17日、設置したという公式文書もありました(参照)。これは、急遽作成されたようですが、だから「暫定」としても、その「基準」はどうなんでしょう。基準値を超える食品を「食品安全委員会」の網に引っ掛け、検査機関にまわすという手順なのか、検査機関が同一の組織内なのか分かりませんが、これは、報道を聞いた時点で混乱が起きた原因でもあります。
「暫定基準値を上回った」と報じた時点でびっくりこりゃマズイと感じたのは私だけだとしても、これは、何の基準値でしょうか。人体に対する安全の基準値では無いことは分かります。理由は、この後「直ぐに人体に影響は無い」として、データーが公表されているからです。検査機関が二段構えであることは後から納得した次第で、最初は、後者の「人体に直ぐには影響は無い」という結論を丸飲みできませんでした。基準値に引っ掛かったものは安全ではない、と最初に了解してしまっているからです。
このことが大元の理由で「安全」という言葉を疑い、政府を疑い、調べるに至ったとも言えます。結果的にはおっけですが、このような困惑に陥ってみて、もう少し情報を整備してもらいたいと切望します。
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