今の諏訪から、今後について雑感
「東日本大震災」と呼ぶことになったあの地震から二週間が過ぎました。長野県でも北部で震度6強という地震の影響で栄村など、一部では避難生活をおくっていると聞きます。大きな揺れを何度か経験した私でも、あの日の揺れは怖かった。しばらくその揺れに酔ったような状態が続き、時々訪れる余震と錯覚するような揺れを体に感じる時は気持ちの悪いものでした。
これから先どうなるかと、予測できない生活の変化に戸惑う時期もありましたが、ここ諏訪は、落ち着いてきたかに感じます。一時は、特定のスーパーにだけ客が押し寄せるといった現象が見られ、地震の恐怖から買占めが発生し、混乱した時期もありました。私は、災害用のグッズがあるわけではないのですが、普段から食料品や日用雑貨に至ってはストックしているので、直ぐに困ることはありませんでした。たまたま地震の翌日に買い物に出て、前の前で買い占めの光景を目にした時は驚きました。こういってはなんですが、こういう時にどやどやとやってきてマナーもへったくれもなくなる年代は決まってます。必要なものだけ買って早々に帰宅しましたが、その後一週間は買い物に行きませんでした。ストックしている缶詰や有り合わせで一週間くらいはなんとなるものだと、かえって自信がつきました。
先週でしたか、トヨタや日産が生産中止を宣言し、アメリカ工場ではリストラを始めたと報じました。大雑把な話になってしまいますが、震災を受けた東北地方に発注先が集中しているらしく、機能が停止状態になってしまい、国内やアメリカの工場へ充分に部品が行き渡らなくなってしまったそうです。これは自動車業界の話で、他に直接的な影響はないと思っていたのですが、現実は違っていました。
日本の輸出産業の要である事を実感したのは、自動車製造に直接関係のない会社が意外なところで影響を受けていることを知ったからです。日中、国道の車の通りが少なくなり、仕事が動いていないのはよくわかります。諏訪の部品工場なども、元々長引く不況で小さな会社の廃業が続出していましたが、震災後いきなり生産中止となり、頭の痛い日が続いているようです。企業にとって何が一番の恐怖かというと、仕事が回らなくなることかと思います。今一番誰もが求めているのは、安定的に仕事が毎日あることです。儲けるなど、そんな贅沢はいいのです。
仕事が途切れ途切れになると一番困るのは、月ごとの収支がアンバランスになり、支出を何で穴埋めるかという問題が出てくるからです。年で見たときに当然、赤字決算になるのですが、その赤字を少なくするために真っ先に白羽の矢が立つのは人件費です。小さな会社は何を考えるかといえば、人件費を削る分、安い外注に発注するのです。これは、孫受けの下の階層です。もっと安く請け負っているのは家庭内職者で、1個何銭の世界です。どこまで行っても仕事にはその対価として賃金の支払いは当然ですが、大手企業が立ち並ぶ諏訪では、賃金格差はもろにあります。
ブランドメーカーの賃金形態がスタンダードとしてデンと構えていて、そこから中小様々な企業へ仕事が流れてきます。下流へ行けば行くほど単価が安くなるので、当然給料も安くなるのです。だから、皆大企業への就職を望むのでしょうけど、メーカーの生き残りも厳しくなり、今回の震災の影響も相俟って、就職内定者の春の就職が先延ばしになる会社が多いと聞きます。踏んだり蹴ったりな話しばかりで些か暗くなりました。
結局、東北地方に大手メーカーの部品工場が多い理由は、農業以外に他に仕事がないことが弱みとしあり、仕事を選べないからだと思います。メーカーにとっては、高くて近い外注よりも、遠くても安価な方がまだ生産コストを低く保てるということなのだと思います。今まで不思議とも思いませんでしたが、そういう体質がメーカーと下請けにあるのだと思います。
閑散とした駅前商店街を歩くと、いつかの活気はどこへ行ってしまったのか、ここを行きかっていた人々はどこにいるのか、人の気配のない静かな町並みは寂れて行く一方です。
大手企業に左右されることなく何か始めようと、ベンチャー企業の話などひところは耳にしましたが、私が他を知らないだけかもしれませんが、最近はあまり聞かなくなりました。このブームのように押し寄せる景気は、小さな波のどこの部分なのか、小さいなりにも長く続けられるような企業であれば良いと思うのですが、この波のお陰でやめて行く会社も多いようです。人が求めている部分を満たすようなニーズに合わせて行く企業は、先細りが目に見えています。ニーズの高まりが期待できない理由の一つに、品を取替えひっかえ、買い替えを余儀なくされてきた事にうんざり感が漂っていると思います。パソコンでいうなら、ブラウザのバーションアップと同時に、搭載しているアプリケーションがどんどんバージョンを上げてメモリーがパンク状態となり、メモリー増設やパソコンの買い替えに疲れてしまっているのと同じ状態です。この倦怠感をふっ飛ばしてくれたのがクラウドでした。IT業界がひっくり返るほどの激震が走ったのではなかったでしょう。お陰で、快適な環境になりました。
書きながらはっとしたのですが、産業界にもこのクラウドのようなものが出現したら凄いだろうなとか、想像するだけでもわくわくしてきます。先の大手メーカー企業と下請け子会社との関係を崩すというよりも、新たに仕組みを作るというような動きです。加えて、長いスパでンで人に喜ばれる物を提供し続けるような何か、何だろう。少し真剣に考えてみようかと思います。
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