2011-03-28

ウオール・ストリート・ジャーナル ジョン・バッシー氏曰く、「日本が直面する本当の試練とは」

 最近、ニュースに「復興」という言葉を多く聞くようになりました。震災から受けた痛みをいつまで引きずってはいられないという意識が働き始めているのだろうと感じています。一方でこれを応援する気持ちと、また一方では度重なる政府や関係者のミスを知ることも多く、がっくり落胆してしまう気持ちが共存しています。実際、被災されている方にとってはどうだろうかと気にもなります。
 こんな書き出しになるのをお許しいただくとして、今朝Twitterで拾った47ニュースの「炉心溶融を震災当日予測 応急措置まで半日も」(参照)を読み、今朝ほど、諏訪のこれからの産業について書いたこと(参照)と関連して感じることがあり、記事をここで紹介できるだけでもいいか、そういう気持ちで走り書きしました。
 先の記事には、地震発生後の数々の決定事項に遅れをきたした政府の原因を挙げています。大きくは、初動ミスが今の状況を作っているのではないかと読めるのですが、実際、同感する部分もあります。私もこれまでにも、この地震が原発に与えたダメージに対応する政府の方針が見えないことや、作業が捗らない理由は何かと、いろいろ考えてきました。最近の外国紙でも、日本政府は構造上、物事の決定に時間のかかるガバメントだという指摘があります。
 例えば、原発事故の経験を持つロシアはこのように話しています(参照)。

日本の複雑で硬直的な官僚的運営モデルによって、事故への対応が遅れてしまったのです。問題を検討する場所が、現場から離れれば離れるほど、政策決定は遅くなり、運営状況が悪化します。ロシア人にとっては5分で済んでしまうようなことでも、日本ではまず委員会を立ち上げ、会合を重ねることが必要で、しかも肝心な責任者は1人だけで、常に連絡を取れるとは限りません。副大臣より下の人と話しても、何も決定できないようになっているのです。

 日本の企業に勤めればこれは当たり前ですが、外国からしたら、誰に決定権があるのか混乱しています。確かに構造的にはそうだと思います。が、精神面でも決定する能力に欠けているのかもしれません。別の言い方をすると、公益性を考慮するあまり、決定が遅れるというか、皆さんの意見を充分に聞いた上で判断するというのが近いかもしれません。
 また、フランスの原子力機関からは「原子炉の圧縮容器が密閉状態ではない」(参照)という指摘が早くからあったようですが、東電が1~3号炉の破損を認めたのは28日でした(参照

 また東電は28日未明の会見で、1~3号機の圧力容器の破損の可能性について初めて言及した。注水を続けても圧力容器が満水になっていないとみられる上、放射性物質を含んだ水がタービン建屋の地下まで流れていることが理由という。ただ炉内の状態は不明な部分が多く、東電は中央制御室の機能を復旧させ、炉内の正確な水位や圧力などの把握を急ぐ。

 一生懸命作業を進めているに違いないとは信じつつも、次から次にミスや事故が発覚して事は大きくなり、一体何が原因なのかと考える時、「人災」という言葉も聞くようになりました。それでも、これまでいくつもの大きな災害を乗り越えてきた私たちなので、結束力と助け合う気持ちさえあれば大丈夫という部分もあります。が、今朝、私も産業界のことで触れたように、ピラミッド型の社会構造の下部層では恩恵も少なく、情報伝達も遅れます。ましてやそこには、役職という肩書きが付きまとうので、別の意味でハードルがあります。産業界の企業体も日本社会の構造をサイズダウンしたに過ぎないと考えるようになったのです。
 では、そこに何があったら日本は良くなるのだろうか、そう思っていた矢先に今朝、Twitterから飛び込んできたのが25日付けのウオールストリートジャーナル、オピニオンにジョン・バッシーが投稿した記事「日本が直面する本当の試練とは(参照」)でした。岡目八目という言葉を最近よく目にしますが、こんな指摘があります。

単一性と社会的結束は、国家にエネルギーと方向性を与えてくれるものの、その一方で、欠点もある。そして、日本は、それを驚くほど安穏として看過している。これが、日本の長期的な見通しが不確かな部分だ。
この「安隠として看護している」理由が以下にあります。
ここで問題なのは、日本の巨大な官僚制度だ。数十年にわたる一党独裁が政治の発展を妨げ、官僚が国を動かすこととなってしまった。
日本の規制当局と監督対象産業の間の「回転ドア」は、よくオイルが差されており、よく使われている。多くの場合、官僚トップは、退職後に民間セクターで有利なポストを期待できる。

 つまり「天下り」がその実態で、福島原発が2006年に事故を起こした時の隠蔽工作(改ざんによる)は東電と監督機関が結託して行ったという例を挙げています。皮肉なことに、福島原発ですが、かつてそういうことを繰り返したのも事実です。
 欧米諸国が日本と一緒に仕事をするのを嫌がる理由は、組織の構造上の問題に重ねて幕府のような上下関係が煩わしいこともあると思います。読み方によっては、この期に及んで言いたいことが噴出してきたとも言えますが、百歩譲って、ここはありがたく拝聴するということかなと思った次第です。

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