2011-03-08

ルペン氏支持率上昇の中、フランスに政権交代は起こりそうもない予感

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 3月6日、Twitterで拾ったBBCの「Marine Le Pen poll rating shock for French politics」(参照)(世論調査によるマリーヌ・ルペン氏の支持率がフランス政治にショック)が報じているフランスの政局の動向が目にとまりました。ルペン氏は(42歳)、フランスの極右政党である「国民戦線」の現党首で、今年1月に引退したジャンマリ・ペルン氏(82歳)の三女です。この政党がどのような特徴を持っているかなどは、1月19日の「フランスに見る政局の変化-移民に反対する国民戦線新党首誕生」(参照)でも取り上げました。もろに世襲です。着目すべきは、党首だった父親の引退直後に行われた世論調査で、彼女の支持率は18%で、社会党候補と目されるストロスカーン元財務相の30%、再選を目指すサルコジ大統領の25%に次ぐ3位に入ったという結果が意味することにあります。極右政党とはいえ、父親の超保守的な姿勢とは少し違って、当時からソフトなイメージが受けている、とフランス紙パリジャンからも評価され、人気が高いのが定評のようです。
 このルペン氏人気がさらに盛り上がりを見せ、先の記事によると、トップに上がり出たというのです。

It gives her 23% of the vote, 2% ahead of both President Nicolas Sarkozy and Socialist leader Martine Aubry.
現職のサルコジ大統領と最大野党である社会党のマルティン・オブリの(21%)を2%上回る結果となった。

 この結果は、政界やメディアにショックを与えていると報じているものです。勿論、念頭にあるのは、来年予定されている大統領選挙に大きく影響してくるという見方です。いや、この調子で行くと、もしかしたら大統領だってありうると大騒ぎしています。
 日本でも経験した政権交代がフランスに来年起こるのか?というのが焦点になるのですが、前回も触れたように、父親の築いた国民戦線は極右政党で、特に移民などに強く反対的です。しかし、昨年のスウエーデンの総選挙では、移民に反対している政党が与党に議席をもたらしたため、移民に反対的な意見も徐々に反映されるのではないかと感じました。いったい移民のなにが問題なのか、ここで改めて問うことは時期尚早かもしれませんが、今後の欧州の流れに必ず問題になることであるため、書きとめることにします。

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イスラムの怒り
内藤正典

移民は、ヨーロッパ主要国の植民地時代を経て、アルジェリア、モロッコ、チュニジアといった北アフリカ出身の独身男性達を移民として受け入れたことに始まっています。19世紀以降、フランスの植民地でしたが、戦後、相次いで独立したにも関わらず、国内に目立った産業もないため、旧宗主国であるフランスを頼ったのです。この流れはフランスにとっても好都合なことで、同時に、戦後の高度成長を支える労働力不足問題がありました。これを解決するための政策として、政府はほぼ無制限に滞在と労働の許可を与え、経済効率が優先であったため、不法入国者の取り締まりも積極的に行わなかったのです。フランスのサッカーチームにジダンという元選手は、フランスチームのヒーロー的存在でしたが、引退試合で起こした暴力問題で、彼は、世界にムスリムの怒りを知らせました。
 やがて、貧困のアフリカ人にとっては良き働き場所であり、フランスにとっては労働力拡大の好都合であった時代は変わり、景気が回復してフランスに余裕が出てくると、貧富の差や労働に差別などが生じ、結局、移民が不満が暴動などの背景だと思います。父親のジャンマリ・ルペン氏が若い頃は、この時代を見てきているため、移民に強く反対する理由が何かと想像するのですが、ここでは調べきれず、機会があったらゆっくり探してみたいものです。
 一方、3月2日号のNewsweekで「(ナチスの)強制収容所は野蛮の極致」「過激派と極右はお断り」マリーヌ・ルペン氏を次のように書いています。

過激派と極右はお断り
マリーヌは党のイメージチェンジも図り、「(ナチスの)強制収容所は野蛮の極致」という発言でマスコミをにぎわせた。ホロコーストに批判的な主張を打ち出すことで支持を集めようというのだ。
「悪魔呼ばわりを甘受することも、逆にそれをあおるのも間違っている」と、彼女はリールの議事堂のカフェテリアで、ゆでアスパラガスを食べながら本誌に語った。
スキンヘッドにミリタリージャケットを着て党本部の周りをうろつくような手合いは歓迎しない、と彼女は続ける。「反ユダヤ主義者と過激派と極右」はお断りだ。「そういう人は必要ないと私は言ってきたし、国民戦線の支持者の68%も必要ないと言っている。つまり、少なくともこの問題は解決済みだ」
反イスラム感情を利用
しかし極右の本当の問題は、アラブ系や北アフリカ系移民に対するお決まりの痛烈な攻撃ではなく、「女性や同性愛者の権利、宗教の自由といった自由主義の価値観を守るという名目で、イスラムという宗教を標的にした外国人嫌悪の感情的な議論」だと、仏ナンテール大学の社会学者シルペイン・クレポンは言う。「選挙の票集めとして、かなり効果的だ」
これは、国民戦線を穏健派にも受け入れやすくする戦略でもある。「マリーヌが宗教を攻撃しているので、人種差別に強く反対する左派でさえ共感できる」と、世論調査会社BVAオピニオンのガエル・スリマンは言う。「フランスという国は歴史的に、宗教に対抗して形作られた」
「いろいろ問題はあるが、彼女が父親より急進的でないことは確かだ」と、クレポンは言う。「(ただし)父親よりほんの少し危険ではないおかげで、極めて不寛容な意見も多くの人に支持されている」
政治を右傾化させるルペン効果は、既に始まっている。幅広い有権者を引き付けるマリーヌを黙らせてサルコジが再選を果たすには、さらに右へと踏み込む必要がありそうだ。

 もろに選挙を意識して取り上げている記事なのでそれはちょっと置いといて、政治が右傾化するのはフランス国民の選択であるし、それが民主的な選挙で決まるなら尊重するとしても、「宗教的な攻撃」はイスラムを敵に回す事になるには違いない話しです。例えば、フランスのサッカーチーム内でイスラムを攻撃すればどういうことになるのか、フランスチームは崩壊します。たとえ人種差別でなくとも、差別を浮き彫りにし、反目を作ることになると思います。
 こうした極右政党の台頭、反イスラム・反移民感情の高まりは、アフリカ系フランス人や、フランス国籍を持たない移民も同時に揺さぶることになり、黙ってはいないでしょう。また、仮に政権を獲得しても、それは日本の民主党同様で絵に描いた餅となり、あっさりと退陣になるのが関の山だと思います。
 このところのアフリカの反政府運動から見て、今後の欧州各国で予定されている選挙の動向を掴むのは難しくなる気がします。

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