中東情勢悪化に伴う原油価格高騰の「最悪のシナリオ」について雑感
諏訪の景気?悪いなんてもんじゃないです。これは、私の駄洒落と並んで寒過ぎてもう凍り付いています。長引くデフレで持ちこたえられない中小企業はすでにふるい落とされてしまい、残ってるわずかな企業は零細もいいところです。低価格競争の挙句、身を削る思いで働いて凌いでいるだけです。どたばたと働いて忙しそうにしているだけでも羨ましがられますが、実は、働くほど赤字が嵩むという状況です。
昨日、久しぶりに友人宅で過ごし、ご主人のお昼の帰宅と重なってしばし雑談をする中、話題は景気問題でした。いずこも大変な思いを引きずりながら凌いでいることを知り、共感を覚えてほっとしている場合じゃない。帰宅後、高騰し続けるガソリン価格はこの先どうなるのか?食品の物価よりも際立っているのがこのガソリン代。これが上がると全てが値上がりするのは過去に何度も学習していることです、今回の値上がりの原因を考えてみました。
一般論としてガソリン値上がりの原因は、①中国やインドなどの人口の多い興新国の需要拡大や②産油国の不安定な国内情勢による減産、③先物市場としての石油に投機マネー現象が起こるなどが上げられています。この一般論に現状を当てはめれば回答が得られるはず、と凡人の私は単純に当てはめてみました。
まず、①の新興国の需要の高まりがこの急激な高騰の原因になっているかですが、実際の数字を求めるのは困難でした。不確かではありますが、少しずつ上昇してきているとはいえ、これほど急激な値上がりに結びつくとは考えにくいです。
②は、大いに関係します。昨年のチュニジアから端を発して、北アフリカや中東では反政府運動が波及し、マヒ状態に陥っています。原産国であるリビアの内戦は最悪の状態に向かっているようです。昨夕Twitterで流れたクリップ情報です(ロイター)。
[ベンガジ(リビア) 2日 ロイター] 中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、反体制派が制圧していたリビア東部のブレガで、体制派と反体制派が衝突し、体制派が奪還した。
アルアラビーヤによると、ブレガの空港周辺は、体制派の軍の管理下にある。
アルジャジーラはまた、反体制派が軍の基地を管理下に置いている東部の街が戦闘機による空爆を受けていると伝えた。
この状況で現在のところの原油生産量は日量160万バレルの半分以上が停止していると伝えています(SankeiBiz)。ところが、同記事ではリビアが停止状態ならサウジが頑張るよ、ってなわけでリビアの減産分を増産して相殺するという事になったそうです。
アルファリCEOはサウジ東部の都市コバールで28日、記者団から供給不足に対応して増産する方針かどうかを問われたのに対し、「顧客からの需要の増加分を供給する用意がある」と答えた。ただ、追加供給の具体的な量については言及せず、「顧客の需要は日ごとに変化するため、当社の増産規模を言うのは難しい」と説明した。
これもサウジにいつ何が起こるか先の保証はないので、現況で押さえておくことにします。
最後に③については言うまでもなく、中東、と北アフリカ各国に相次いで起こっている反政府運動や内戦の影響を懸念する消費国は、買い急ぐあまり投機的になっています(時事)。
2日午前のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、不安定な中東・北アフリカ情勢に加え、米国内の石油在庫減少を上げ要因に続伸した。米国産標準油種WTIの4月物は午前9時40分現在、前日終値比0.76ドル高の1バレル=100.39ドル。一時は101ドル台を付けた。
またまた一般論になってしまうのですが、原油の適正価格といわれているのは1バレル80ドルくらいまでと言われていますから2008年の120ドル位までは覚悟の範囲に入ってくるのかもしれません。
ここでの結論は、③の要因がガソリンの値上がりに一番貢献していると言えそうです。つまり、サウジアラビアがリビアに変わって頑張ると②の原因を解消し、結果、先物として投機マネーが起こるのが価格の高騰を引き起こすのです。実際の需要供給バランスの不安定ではなく、原油に群がるマネーゲームが起きているということです。
この理屈が転じて、ガソリンの消費を控えれば下落するということもいえますが、需要が減ると産油国も生産調整するので、全く先が見えません。
と思いきや、英フィナンシャルタイムズに寄稿された クリス・ジャイル氏(Chris Giles)によると、確実に需要は減少すると報じています(参照)。
This would not matter if oil producers, who are the beneficiaries of the sudden windfall, were to spend their gains on other goods and services.However, because oil-producing countries tend to spend less of their incomes than oil-consuming nations, the price rise is almost certain to lead to a drop in global demand.
突然の棚から牡丹餅的な収益を手にする産油国が、その利益を消費に還元するのであれば、その効果は所得の再配分として全く問題はない。しかし、石油消費国に比べ、産油国は往々にして所得を消費に回す割合が少ないため、原油価格は上昇し、世界需要の低下につながるのはほぼ確実である。
簡単に言うと、儲かった国からからお金が流れないので消費国は節約に走る、ということです。
記事ではこれに続いて、現在の原油高騰は、2008年の需要拡大による高騰とは異質で、その背景は、産油国の国情が不安定であることと、世界中の主な消費国が赤字を抱えている点を指摘しています。
赤字国に石油高騰がもたらすのは、物価上昇によるインフレです。これは、日本にとっては好都合でもありますが、急場凌ぎに銀行から借り入れを起こすには至らないという予想が立つとすれば、各国の中央銀行も、インフレと戦う姿勢になるのではないか。そうなると、石油原油価格の高騰は、最悪のタイミングに起きたと言える、そうKing氏は話しているようです。
この説明を元に、日本の2008年ガソリン高騰のことを振り返ってみました。
4月1日、当時野党であった民主党がガソリン税25円の値下げを要求し、暫定的に値下げしたものの、4月30日、与党(麻生政権)は、ガソリン税の暫定税率を復活させる法案を衆議院で再可決し成立させ、従来と同じ税率に戻ったことがありました。あの時は、国全体がこの件でごった返し、麻生政府にも愛想をつかしたものでした。余談ですが、この時、値下げを打ち立てた民主党は、国民から支持を得て政権交代に勢いをつけた時期でした。国民受けする提案をするのは良いとしても、その財源確保などを問うても、もう誰もが民主党支持に移ってしまいました。これを後から後悔しても始まりませんが、はっきり言って、あの頃は今よりはましだったかな。
さて、原油価格が国民生活を脅かすとなれば、2008年に民主党が提案したように政府が暫定的に税金分を肩代わりするくらいはお願いしたいものです。が、これは、政府の資金に余力があればの話しであって、現政府にそんな予算はありません。逆立ちしても鼻血も出ません。これがFT記事で指摘されていることで、日本に限ったことではありません。もやは、世界の消費国は殆ど赤字国です(かろうじてドイツが良いかも)。財政破綻の危機は、ギリシャ、アイルランドだけにとどまるとは思えません。
先の記事にもあるとおり、サウジアラビアがリビアに代わって原油を産出し続ければこの高騰は長く続かないのではないか、というのが目下のところの望みの綱のようです。中東の国に静けさが戻るまでサウジの産出が続けられるか、同時に、消費国の経済状態が辛抱出来るかが鍵だと思います。こうなると、体力消耗しないよう温存させるしかないと思います。
最後に私が気になる点について。
産油国が、棚ぼたで転がり込んだ利益を兵器購入に当てるのではないかという点です。兵器が充実すれば、戦争が長引くことになるのです。また、その購入先が、赤字を抱える先進国や中国の可能性も無きにしも非ずだと思うのです。一部の外国報道に、それを伝えているものもありますが、信憑性は分かりません。火事場泥棒とはよく言ったもので、どたばたと混乱状況にある国を出し抜いて、狡い商売に走るような体たらくにはなって欲しくないです。
⇒参考までに:極東ブログ「原油高騰の雑談、2008年前半版」(参照)では、2008年の原油高騰がどのように起きたかなど詳しく解説されています。
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