2011-03-18

後藤政志氏(福島原子炉格納容器同型設計者)の13日会見と17日東洋経済紙のコメント

 福島原発事故後の冷却作業の効果が上がっていない模様で、昨日も、ヘリコプターで散水するシーンをテレビの映像で見ました。素人目には、あれでどれ程の効果があるのかと、ちょっと疑問に思っていました。民放でこの作業を放送している間、元東芝社員で福島原発原子炉格納容器と同型の設計責任者である後藤政志氏が、画像を見ながら強度に関する解説をしていました。私は、運よくこの番組を見たものだと、食い入るように見入りました。印象として、設計者という立場を超えて現在の冷却作業が適切であるか、また、その効果はどの程度かといった分析は、専門外のためコメントできないと言われたのを聞いて、信頼の置ける方であると思いました。
 連日、冷却作業が続行されている間にも、使用済み燃料のプールの強度や、炉心が溶融して原子炉の底に溶融物が落ちればさらに冷却ができなくなり、原子炉圧力容器の底が抜けるなどの事態が起こると懸念されています。これらの点について、素人ながら聞きかじっては何を意味しているのか、ネットで調べたり、ニュース情報をつなぎ合わせたりしていますが、イマイチ一貫した筋が見えてきません。そこで見つけたのが、昼間のテレビの後藤氏が事故後に行った13日の会見です。
 二時間にわたる会見で、テレビ放送はしなかったようです。見つけたサイトでは、録音テープから氏の発言部分だけを起こしたもので、さらに私は、設計者という観点から、炉の構造や耐震強度などを分かりやすく説明されている部分だけを引用させてもらいます(参照)。
 また、この会見は、事故後の13日ですが、昨夜、フォローしている人のTweetにも東洋経済オンライン新聞「福島原発事故、ヘリ、放水車は冷却に無力、最悪な事態に備えた対応を」(参照)がピックアップされていて、後藤氏のコメントが記事に引用されているのを知りました。この記事は、福島原発の17日の状況に基づいた解説だと思われます。
 事故後の13日の会見では、柏崎刈羽原発の話から始まって、原子炉の構造についての話から始まっていますが、ここでは、事故後の原発に何が起き、どのような対応が急がれているのかと言う話しをピックアップしました。その後、変化する状況に対して私たちは今、何を見据えたらよいのか、それを手探りするのに、17日の東洋経済の記事で扱っている後藤氏のコメントにはいろいろなヒントがあると感じ、一部を引用します。

後藤政志氏  福島原子炉格納容器同型設計者会見内容
演題: Ban(伴英幸氏), Kamisawa & Goto(後藤政志), The Earthquake and Nuclear Disaster In Tohoku 「地震と東北に於ける核災害について」
日時:2011年3月13日 19:30 - 21:30
場所:外国特派員協会(東京)
主催者:原子力資料情報室(CNIC)-Citizen’s Nuclear Information Center
主とした発言者: 後藤政志(元東芝エンジニア。専門は原子炉格納容器の強度、解析の研究。今回問題を起こしている福島原子力発電所の原子炉格納容器と同型の設計の責任者。)

テーマ:原子炉格納容器の構造とその耐性、及び非常事態における炉心融解の危機について

(前略)
私が研究して来た結果、を申し上げます。
格納容器の強度は大体設計の2倍くらいまでは、たぶん保つであろう。
ただし厳密には2倍、から上手くいくと5倍くらい保つかもしれません。
それは(圧力に耐えられる数値にばらつきがあるのは)何故かといいますと、プラントの形質、とか一部弱い所があったりしますので、プラント一号機か二号機か、それぞれ違いますから、同じ値とは限らない訳ですね、2倍から5倍の間くらいかと思います。
実はこの事故の状態では、ですね、もう格納容器は設計の状態を超えているんです。
冷却機能も、完全ではないわけです。
従いまして、格納容器がこのままいって爆発する、ことを恐れていました。
それで、先ほど申し上げたように、格納容器からヴェントしたわけです。
これは格納容器、という目的ですね、放射能を閉じ込めるという目的に反しております。
しかしながらやむを得ずヴェントした(それ以外選択肢がなかった)、とそういうことであります。
そういう不安定な状態の中で、冷却を維持するために、冷やしているんですが、水が足りない訳です。
通常プラントの中は、非常にきれいな純粋、真水で動かしています。しかしながら水がないので、事故の対策としてやむを得ず、海水をそのまま原子炉、に入れることを決断しました。
海水を入れるということは、プラントとしてはもう使えないということを覚悟してやったことだと考えます。
同時に、それだけではまだ、確実ではない。何故かと言いますと、まだ、冷却がずーっと上手く行くかどうか、現在、余震も続いていますから。
従いまして、この格納容器の機能を、維持する事が絶対、必要です。
しかしながら、格納容器の、万一ですね、さらに炉心溶融が進んだ場合、格納容器はほぼ、間違いなく壊れるだろうと思います。
なぜならば、先ほど申し上げましたように圧力が、1.5倍とか2倍になって、温度も上がっている状態、もちろんその後少し下がっているんですけれども、また炉心が溶けて来ると、そういう状態になります。
そのために、格納容器の中も、海水で満たす、ことを現在始めています。
(通訳の方の確認を受けて)一つは原子炉圧力容器の中、二つ目は原子炉格納容器の中を海水で満たすことをしています。サプレッションプールだけではなくて、全部この水を上まで(原子炉格納容器全体に)入れちゃうんです。
非常事態としてそういう対策をやりつつある、とそういうことです。
今、満水しているのは、原子炉の中は一号機は既に、海水を入れて、格納容器の中も今入れている途中です。
実は他のプラントも次々とそのようになる可能性があります。
従いまして、現在ですね、非常に危機的ですぐ、そのまま格納容器が壊れるという状態ではありませんが、非常に、もし、炉心、のここで冷却に失敗する、今冷やしているところが止まってしまうとか、ありますと、最悪のシナリオにいく可能性があります。
一つ、追加しますと、ここには絵がありませんけど、格納容器の外側に、原子炉建屋という、リアクタービルディングがあります。
昨日、このリアクタービルディングの上部で水素爆発が起こりました。
その爆発によりまして、建物の上部は吹き飛んでおります。
非常に心配されました格納容器、原子炉、は何とか、その爆発、に耐えられたようです。
原子炉において、心配なことは、冷却、出来なくなることですね、それが一つですね。
それと、爆発です。水素が出ますので、燃料が溶けると水素が出ます。その水素が爆発する。
格納容器の中は、窒素を封入しています。
窒素を封入してありますから、格納容器の中で水素ガスが出ても、簡単には火はつきません。
しかしながら、今回は、格納容器をヴェントしています(格納容器の中のガスが、今回の非常措置により、外に排出されている状態になっている)。
従いまして、窒素ガスのいくらか、かなりの部分かもしれません、外に出ている可能性があります。
実際の、発表によりますと、格納容器の中には窒素があるから大丈夫だという説明になっています。
が、それは、間違いです。今出ちゃっているから、危ないんです(窒素がないから、窒素で封入されていないから、水素が出ますよね。水素ガスが出て、中の窒素が外に出されちゃうとですね、窒素封入になってませんから、それに酸素が加わると、燃えるんですね)。
ですから、通常の状態ではない、ということです。
ただこのまま、冷却に上手く行く、同時に格納容器が壊れない、そういう状態になれば、事故は収束できると思います。
ただ繰り返しますが、決して安定した状態ではない。
ですから、プラントの周辺の人が退避しているわけです。
以上、概要を申し上げましたけれども、現在まだ進行形であります。
私は、原子力に携わったエンジニアとしての立場から、非常に、今回、事故に関わられて、けがをされた方、あるいは被害を受けられた方に対して非常に、哀悼の意を表したいと思います。
私自身、設計に携わった立場といたしまして、こういう不幸になったことは、非常に無念であります。
ただ特にですね、現在、いろいろ報道で見てますと、本当の実態、ですね、何が起こっているか、の説明が足りない、と私は思います。
正確にその状態を、みんなに知らせて、それによって対策と同時に被害を最小限にする手だてを講ずるべきだろう、と考えます。
現在の状態を維持するためにも、たぶんプラントの運転に関わる人、メンテナンスの人、あらゆる方が努力されているという風に、その方々に非常に、の想い、苦労を思いますと、非常に胸が、苦しい思いであります。
以上、どうもありがとうございます。

***

「福島原発事故、ヘリ、放水車は冷却に無力、最悪な事態に備えた対応を」(参照

最悪の事態を想定した対処は行われているのか
元東芝社員で原子炉格納容器設計者である後藤政志氏は、「断言はできないが、格納容器は破損していると思う」という。設計段階ではあらゆる危険性を考えたうえで設計するが、「(地震に津波が重なったために)多重故障が発生したため、安全システムがすべて作動しないという最も恐れていることが起きた」と説明する。
では、十分に原子炉を冷却できないと、どのような事態が待っているか。最悪は、放射性物質の大量放出を止められないということだ。
後藤氏は、今後予想される危機を以下のように説明する。まず、原子炉の冷却ができないと炉心が溶融して原子炉の底に溶融物が落ちる。さらに冷却ができないと、原子炉圧力容器の底が抜ける。底まで落ちた溶融物はコンクリートと反応し、大量の水素ガスなどを出す。そして、この段階で格納容器が破損するので、外部に大量の放射性物質が放出される。
溶融物が発生した段階で冷却のために水を投入することも難しい。というのも、溶融物に水を注ぐと一気に水蒸気爆発が起きるためだ。水蒸気爆発は、火山から流れ出たマグマが海面などと触れあうとすさまじい蒸気を発生させることを思い浮かべるといい。原子炉の場合、燃料被覆管に使われているジルカロイ合金が摂氏1400度で溶融を始め、その溶融体が冷却水に落ちると水蒸気爆発が起こりうる。

後藤氏はさらに先の危機シナリオを提示する参照)。

冷却がうまくいかないと、事故の内容が進むにつれて水素爆発や水蒸気爆発、あるいは再臨界が起こりうると、後藤氏は警告する。再臨界とは、落ちた溶融物のなかには核分裂を進めうる燃料が残っており、それが勝手に臨界を始めるというもの。原子炉へのホウ酸の撒布が検討されているのも、この再臨界を防ぐためだ。
水素、水蒸気爆発など大規模な爆発現象が発生すれば、放射性物質が大量に飛び出し、チェルノブイリ原発事故と同じような事態を招く可能性がある。爆発を起こさなくても、徐々に放射性物質が外部に出続ける可能性があると、後藤氏は言う。いずれにしろ、深刻な事態が継続することは間違いない。
いたずらに危険を煽るのではなく、現状を把握して最悪の事態を想定したうえで対処すべきなのだが、それが行われているかはとても心許ない。それが余計に不安を煽る。(福田恵介 =東洋経済オンライン)

 政府の行っている現在の作業が効果的であるのかどうか、先のヘリコプターによる水の散布なども、その効果のほどはどうなのかと気がかりは沢山あります。ありとあらゆる可能性をやられているのだと、ここは政府を信じるしかないと思います。欧米からは批判的なコメントも出されていて、それを取り上げて日本のメディアが報じてるのを目にすると、政府が気の毒にも思えてきます。「いたずらに危険を煽っている」とは思いませんが、今回の事故は、人類が未経験の事故で、施す対応策が全て効果的に働くという期待も持てないのだということは、少しわかってきました。
 この先、分からないままでいるよりは、原子炉に対して少しでも理解を深め、今何が行われているのか、その効果はどうなのか、最終的には私たちの生活はどうなるのかまでを見据えて見守りたいです。

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