2011-03-06

オバマ外交の失敗-リビアの「内戦」

 当初、リビアの反政府運動は、カダフィー大佐の独裁政権への不満から、チュニジアの反政府運動の流れを受けた形で始まったと報じていました。この反政府運動を受け、反旗を翻したカダフィー政府は、アフリカ人傭兵や空軍、治安部隊あらゆる手段を使って反政府運動の弾圧を試みています。当初は、反政府運動は市民のデモであり、カダフィーの弾圧は虐殺行為だったと言えますが、カダフィーに反目した兵士が反政府側に乗り換えた時から武装による戦いへと変化し、これを現在「内戦」と呼ぶようになったのだと思います。「内戦」だとソーシャルメディアが言い出せば、それは「内戦」だと言う単純なことではなく、国際社会がリビアに軍事的な介入をどうするかという時に、「内戦」であれば介入はできなくなるということです。痴話喧嘩なんで、ほっといてよと、カダフィーが公然と殺害作戦を展開できるのです。それでも、他国の揉め事に首を突っ込むべきじゃないということです。そうなると、少し気になることもあり、その辺を書くことにします。
 いまさら蒸し返したところでどうにかなることでもないのですが、当初、私は、アメリカの鈍い動きに苛立っていたのです。理由は、政府が国民を虐殺するのはやめれ、という人権保護の考え方からです。カダフィー軍が、反政府運動を始めた市民に発砲した時点で、何らかの形で国際社会がこれに介入すべきだったと言いたくなる理由です。エジプト争乱でのオバマ氏の判断の鈍さを加えれば、何故、リビアを黙って見過ごしたのだろう。そういう疑問がどうしても出てくるのです。メディアが「内戦」と流して世界がそうだと思えば、後にこれは、アメリカの不介入の正当性だったという部分だけが伝説として残ります。ここで私見を言わせてもらうと、これは、オバマ外交の失敗です。そして、アメリカの歴代大統領の序列にも加えなくてはなりません。
 アメリカの中東への関与は1953年、イランのクーデターから始まり、広義に中東和平問題として取り組んできたといえますが、象徴的なのは、ブッシュ政権のイラクとアフガニスタンの両戦争です。オバマ氏は、これをそのまま引継いでいます。が、これまでの関わりから見て、軍事的な外交は殆ど失敗に終わっているのではないかと思います。動きにキレがないというか。私がイラついても仕方ない事ですが、レーガン元大統領が、カダフィーを「中東の狂犬」と呼んでガツンとこらしめたからこそ彼は今日まで静かだったように思います。ところが、中東の反政府デモに勢いがつき、このエネルギーはリビアに波及し、リビア国民は、カダフィーを怒らせたのです。カダフィーは何をするか分からないというトラウマでもあるのか、オバマ大統領は、この「狂犬」に対して静かです。
 そのアメリカに向けて3日、カダフィーはけん制するかのような声明を出しています(FNN)。

 激しい内戦が続くリビアで、最高指導者のカダフィ大佐は、アメリカが介入すれば、「血みどろの戦いになる」と警告し、欧米の軍事介入を強くけん制した。
 カダフィ大佐は2日、首都トリポリで支持者を前に演説し、「わたしは死ぬ用意ができている」と述べ、あらためて退陣を拒否し、反体制派との徹底抗戦を主張した。
 そのうえで、「アメリカがリビアに足を踏み入れれば、血みどろの戦いに突入し、多くのリビア人が死ぬ」と述べ、アメリカなどによる軍事介入を強くけん制した。

 これは私の個人的な印象ですが、オバマ氏以前のアメリカ大統領は、このような情勢を黙って見てはいませんでした。外交的には、発信源となって関係国との国際会議を行ったり、具体的な方針を立てるための調査団を派遣したりと、精力的に関わる国を巻き込みながら国際的な問題へと拡大させてきたと思います。日本は島国で、ともすると国際社会から置いてきぼりにされてしまう嫌いもありますが、経済大国日本にはそれなりの声もかかり、そのお陰で、何かと貢献できたという過去もあります。これがアメリカのやり方で、同盟国を巻き込みながらアメリカの導きたい方向へと自ずと進んできたと思うのです。
 既に国連安保理の機能も帯に短し襷に流しといったところで(参照)、拒否権が邪魔してにっちもさっちも行かない状態です。加えて、ロシアや中国は、国際社会の意見には耳を貸しません。その上、リビアが「内戦」となると、他国の揉め事なので首を突っ込めません。やっと世界の関心が寄った飛行禁止区域については、反政府側に対するカダフィーの殺害行為を食い止める手段として検討され始めたようですが、大きな軍事作戦を要する、とこれを名目に、及び腰姿勢の嫌いもあります。
「内戦」だからとこのまま放置すれば、リビアはいったいどうなるのか?昨夜の日経(参照2011/3/5 20:23))では、カダフィー政府軍の武力は優勢で、奪還しつつあるようです。

【カイロ=押野真也】反体制派と政府側との衝突が続くリビアで4日夜から5日にかけ、政府側が首都トリポリ西郊の要衝、ザウィヤに激しい攻撃を加えた。戦闘機やヘリコプター、戦車などを投入した最大規模の攻撃で、死傷者は民間人を含めて150人以上に達したもよう。ザウィヤは反体制派が掌握していたが、武力で優勢な政府側が奪還しつつある。
政府側は空爆に加え、数百人の兵士、20台以上の武装車両でザウィヤの居住地域を無差別で攻撃した。中東の衛星テレビ、アルジャズィーラは、血だらけの負傷者の映像を繰り返し放送し、死傷者数を150~200人と伝えた。なかには子供や女性が多数含まれており、カダフィ政権は国際社会からさらなる非難を浴びそうだ。

 こう見ると、軍事力からすれば、最終的にはカダフィー軍が勝つ可能性が高いと思います。そして、それは、「狂犬」の刃が反政府側に向くことを意味すると思います。無駄に人が殺害されるのです。

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