「トレンチ」に溜まった高濃度放射性物質の漏出経路について
昨日の昼過ぎのNHKニュースのあとだったか時間は定かではありませんが、原子力保安院から略式図による説明がありました。これは、放射性物質を含む水たまりが「トレンチ」内にあるという27日の発見から、汚染水がどのような経路を辿ったかの説明でした。朝のNHKニュースの後にも山崎記者の話にもあり、詳細についての情報を待っていたところでした。
その図はフリーハンドによるもので、この時点では汚染水がどこから漏れ出しているかということに言及する報告ではありませんでした。
そして、夕方近く、Twitterで2号機内部の略式配管図と、汚染水が漏れ出している場所を特定する図と解説をしているサイトの情報を得ました(参照)。先の原子力保安院の略図を思い出し、この図が左右が逆になっただけだと直ぐには気づかなかったのですが、反応炉内の燃料棒を収めている詳細部分でした。
指摘によると、反応炉内の水漏れの原因は、燃料棒を入れる口を塞ぐための黒鉛製の栓が破損したことによって漏れ出しているという説明で、英語で書いてある通り理解しました。実は、この時点で自分の英訳を何度も疑い、何度も読み返したのです。単語も念には念を入れてと、調べなおしたのですが、後で知った極東ブログの訳とほぼ同じような解釈で、間違っている望みは消えました。
そして夕方、極東ブログの「どこから高濃度放射性物質が漏れたか、ワシントンポストを読む」(参照)のエントリーで、この情報の入手先が、「フェアウインド・アソシエイツ顧問で沸騰水型軽水炉を監督して40年の経験を持つアーニー・ガンダーソン氏」によるものだと分かりました。よって、かなり信憑性の高い情報であると思いました。また、非常に詳しく解説されているため、是非とも参照されたいです。
ここまでが反応炉からの水漏れ場所についての流れです。
話はだんだん専門的になってきます。個人的には、識者の科学的な説明や原子炉の構造や破損から、漏れている場所の特定に結びつけて行くことなどに関心があります。地震による原発事故が思いがけない状況に陥ったことも相俟って、普段は、誰もが知る必要のない情報かもしれませんが、私は、できるだけ提供される情報を理解して行きたいと思い、いろいろ調べながら私なりのペースで追って行くつもりです。
さて、汚染水の漏れている場所の特定はこれで充分かというかとそうではなく、先ほど毎日から出た情報によると、放射性物質の漏出で気を置いているプルトニウムの検出結果を次のように報じています(2011年3月29日 1時18分毎日)。
トレンチはタービン建屋と海との間にある凹字形トンネルで、非常用電源を冷やすための海水が通る配管や海水をくみ上げるポンプのケーブルなどを納めている。普段は水がないが、1~3号機とも地表付近まで水で満たされているのを27日午後3時半ごろ発見、直後に線量を測定した。
プルトニウムの調査は21、22日に実施した。1、2号機から500メートル~1キロ離れた5地点で土壌を数百グラム採取し、日本原子力研究開発機構が分析。その結果、全地点の土から原子炉内で発生するプルトニウム239、240が検出され、うち2地点からプルトニウム238も検出された。
大気圏核実験では主にプルトニウム239、240が大気中に放出され、238はほとんどないことから、東電はこの2カ所については今回の事故によるものとみている。
「トレンチ」と呼ばれるトンネルのことを始めて知った次第ですが、図の一番右の部分に水が溜まっていることが27日に分かってから、その水がどこから来たものであるかの経路については触れていません。なかなか核心部分に触れないものですが、可能性のある場所について、次のように報じています。
プルトニウムは▽被災時運転中だった1~3号機の炉心▽1~6号機の使用済み核燃料プール内の核燃料▽3号機で使用していたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料のいずれにも含まれる。今回検出されたプルトニウムの由来について東電は「特定はできない」と話した。
原子炉の冷却作業は、水を増やすほどタービン建屋に汚染水がたまる恐れがあることから難航している。
「今回検出されたプルトニウム」は、1、2号機から500m~1km離れたニ地点で検出されたものであると思いますが、記事にあるとおり、検出されたプルトニウムが含まれている可能性を三つ挙げています。一箇所ではないということが今後の作業にどのように影響するのか、今後ニュースでも報じて行くと考えられます。また、汚染水がトレンチに溜まっているとありますが、76mのかなり長いトンネルですから、相当の水の量ではないかと思います。結果論的ですが、外から水を放水して冷却する必要性があったという理由は歪めませんが、それが仇となってしまったかに思います。それだけ汚染水を生み出したのは事実です。
今まで放射性物質の検出値や場所、空気中の放射性物質についていろいろ聞く中で、水漏れが反応炉からであると知った時、一番聞きたくない、知りたくない情報でした。不安を言っても始まらないし、口は災いの元にもなるので慎みますが、先の言葉を失いました。
追記:他紙を当たったところ、プルトニウムは燃料棒に含まれているという現有があり、その意味で、炉心(反応炉)か使用済み燃料保管プールの中の燃料棒から出て、水に融け出したと報じています(時事ドットコム)。
東京電力は28日、福島第1原発の敷地内5カ所で21、22両日に採取した土壌から、微量のプルトニウム238と同239、240を検出したと発表した。このうち1号機から西北西へ約500メートル離れたグラウンド付近と北へ約500メートル離れた固体廃棄物貯蔵庫前の2カ所で検出されたプルトニウムは、今回の事故で損傷した核燃料棒から出てきたと考えられる。
原子炉と使用済み核燃料プールのどちらから放出されたかは不明。3号機の原子炉は一部に通常のウラン燃料と異なるウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)を使っていたが、どの燃料棒から出たかも特定できないという。武藤副社長は「全体として放射性物質が出てくる量を少なくしたい」と述べた。
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