2011-02-05

「イスラムの怒り」内藤正則を読んでみて

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イスラムの怒り
内藤正典

 昨日届いた、「イスラムの怒り(内藤正典)」が面白かった。読んだ後、何とも穏やかな優しい気持ちに満たされているのが不思議なのです。また、ムスリムが世界から正しく理解されていないために、長く虐げられてきたことと自分のことが重なって、読んでいる中で泣けた部分もありました。心地良さの余韻のままに書いておくことにします。
 この本を読むきっかけとなったのは、「相撲は、ムスリムは嫌うと思う」という一言でした。相撲は、私は興味がないのでどうでも良いのですが、このところ、中東のことを取り上げて書いていることもあって、特に騒乱には心を痛めている私です。ところが、いざ書くとなると、大変な作業も伴います。やや開き直りのようでもありますが、無知であることを恥じて書かないよりは、その恥を晒しながらでも、少しでも人を理解して行きたいと願うようになってきたのです。そして、「ムスリム」を理解するのはとても難しいと思っていました。
 本書では、「ムスリムとは、イスラムを信仰し、その教えを実践する人、つまり、イスラム教徒のことである。」と説明されていますが、ムスリムに対する偏見や、欧米のムスリムの不理解によって出来上がった「原理主義」などという言葉や、これに俗悪化された含みが蔓延り、何からムスリムを学ぶべきかがわからなかったのです。そんな状態の私には、「相撲を嫌うムスリム」という一風変わった切り口ながらも、ここから何かがつかめるかもしれない、そう思って飛びついたのです。
 ネット上の友人であり、ある意味では私の先生かもしれないのですが、この同級生から時々、自分の考えを持つようにと叱られます。その言葉は、彼の考えであるし、私がはいそうですかと従っているわけでもないのですが、私にとっては良い助言です。人の話を鵜呑みにすることは決して間違えだとは思いませんが、そうやって生きて行く先に、きっと必ず自分は何者か?と、自問自答しなくてはならなくなる日が訪れるのは目に見えています。今まで生きてきて、それをやり過ごしたツケを払ってきたこともありますから、この言葉を向けられるとはっとするのです。
 一つには勉強不足。これに対して、コンプレックスはありませんが、物事の動向を読もうとする時に、これ以上は先に進めないという思考停止のような状態に悩むのがそれです。浅墓な知識で物事を断定したり決定づけたりするのは、そのものの原理性や生態の誤った方向性となりますし、ましてや、その不確かな事を書いてネットで晒すことも避けたいことです。だからといって、そのために学んで知識を身につければ完璧になるとも悩まないとも思っていません。学びには終りはないので、どこまで行っても延長上でしかないと思っています。
 また、学びによって知識を広げることは物事を解釈する助けにはなると思いますが、問題は、自分自身の心にあるのではないかと思うのです。あまり上手く言えないのですが、自分と違うものを理解する心が欲しいというか、何かが物足りない寂しさからそう思うのです。疑問が湧いたら解決に奔走するというよりは、その問題を一緒に考えたいというような自分でありたい、それが在り方ではなく、そう願っているのだとうことがはっきりしてきたのです。
 いつだったか、オバマ戦争の終りについて「あの戦争の「終わる」はない」と、先の友人から聞いたとき、内心ひどく憤慨した私ですが、本書を読んだ今、あの戦争が始まったことに既に答えがあることが分かりました。確かに、このままでは終わる道理がないと私も思います。本書の帯に「ムスリムにとって、命にかえても守る「一線」とは何か?」とありますが、これが不理解なために、なんと無駄な戦争を長年続けてきたのかと愚かさを感じました。そして、彼らが守りたいことを侵害さえしなければ平和的に解決出来るのだとも思いました。これほど拗れたかに思われる戦争ですが、終らすことはできる筈です。そうそう、例の「相撲を嫌う」についても同意できます。
 第三章の「西欧はなぜイスラムを嫌うのか」を読むと、逆にイスラムは何を愛しているのか、と読み取れてきます。ここで、イスラムに対しての偏見が多少でもあればしめた物です。読み進めるごとに、自分の偏見という鱗が剥がれてゆくような爽快感が走ります。そして、あっという間に読み終えてしまい、なんだかもっと知りたいという欲望の解消先を探す始末です。
 そして、読みながら何度もこみ上げたのは、これまで私がここに書いてきた中東問題をもう一度振り返ってみたいという思いです。心が何かに突き動かされているような、それに従いたいと思えてならないのです。

 「イスラムの怒り」は極東ブログで、2009年6月21日のエントリーで既に紹介されています☞こちら が、私は何故か、この本はスルーしていました。風邪で欠席していたのかも。

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