メルケル・サルコジ案は無理無理-でも気にいった
ユーロの財政難については昨年末に少し触れましたが(参照)、危機に陥った国内銀行の救済のため財政赤字が深刻になり、ユーロの支援を要請したアイルランドの政権が解散・総選挙に追い込まれているようです。政権交代が実現すると、二大野党の統一アイルランド党と労働党の主張している、アイルランドに対する金融支援の返済条件の見直し問題がクローズアップされ、ギリシャに続いて新たな問題を抱えるのではないかと思います。(SankeiBiz)。
全体的な動きを把握するために、クリップしておくことにします。
まず、ユーロの財政はどうなっているのか?危機的だと聞いてもその実態はどうかと調べると、4日にすでにユーロ首脳会議で、ユーロ防衛基金の強化・拡充を3月に行うめどが立っているようです(毎日)。
総額4400億ユーロ(約49兆円)の欧州金融安定化基金(EFSF)のうち融資に充てられる額の増額や、財政危機に陥っているユーロ圏諸国の国債をEFSFの資金を使い、市場から買い戻す案などが軸となる。3月中旬に臨時のユーロ圏首脳会議を開き、詰めの協議を行う。
一方、独仏両国は首脳会議で、「EUの競争力強化のため」(サルコジ仏大統領)の財政規律強化策を共同提案した。主な内容は、(1)一部の国で年金受給開始年齢や法人税率を引き上げ、EUで統一化(2)物価上昇率に連動した賃上げ制度の見直し(3)財政赤字の順守目標を憲法や法律などに明記--などで、ドイツが採用している財政規律策をEU全体に拡大するよう求めた。
これに反発が出るのは必須で、内容には唖然とするものがあるのですが、既に融資をうけているギリシャを例えに当てはめると、財政悪化していますから国債価格は大幅に低下してるため、発行時の価格よりも「安く」買い戻せます。これが、結果的に財政赤字の削減に役立つという理屈を言っているのだと思います。何だか手品みたいな話なのですが、素人目にはそういうもの(可能なこと)なのか、としか言い様がありません。
また、1,2,3,の要望は、国会主権に触れる内容でかなり強行とも言えますが、会談に応じたドツはこれでも軟化していると報じています(参照)。
ドイツ政府は欧州金融安定ファシリティー(EFSF)の拡大やギリシャの債務負担軽減策に反対する姿勢を続けてきたが、欧州各国がドイツ型の厳しい経済改革を進める兆しを見せ始めたことから、強硬なスタンスを和らげる兆しが現れている。
公には、ドイツは依然としてEFSFの規模拡大は不要だとの姿勢を崩しておらず、ギリシャによる債務再編を受け入れようとはしていない。
だが、水面下では、ギリシャの債務返済条件変更や欧州における賃金や年金制度の改革などを盛り込んだ包括的な合意を3月までにまとめるべく、交渉の場についたもようだ。
ドイツはユーロ圏で鍵を握っていると思っていただけに、この軟化姿勢は今後の交渉がスムーズに行くのではないかと期待したいのですが、国内では支援反対論が強く、昨年5月のギリシャ救済や他国の救済メカニズム創設に対する有権者の反発もあり、メルケル政権の支持率が落ち込んでいるため、欧州各国に財政規律強化策を条件にしているようです。
- 「小刻みな」アプローチには断固反対すると強調している。なぜなら、ドイツでは年内に7州で選挙が行われ、追加支援策が浮上するたびに議会の了承を求めることは不可能なためだ。
- トリシェ欧州中央銀行(ECB)総裁の後任人事をめぐる思惑も絡み合う。ウェーバー独連銀総裁のECB総裁就任を支持することをドイツが交換条件にしていると公に認める向きはいないが、ウェーバー総裁がギリシャに対して救済融資の返済期間を30年に延長する案を提示したのは、偶然の一致ではなさそうだ。ウェーバー総裁はそれを通じ、ユーロ危機解決の立役者になろうとしているとの見方がある。
独仏の共同提案は国家主権に踏み込んだ内容とも言える上、融資を受けた国の足元を見るような内容ではないのかと関係の無い私が言うことでもないと黙ったのですが、ギリシャからは物言いがついているようで、これが議論されることに期待します(ロイター)。
ギリシャのパンガロス副首相は7日、日刊紙タネアとのインタビューで、債務の上限を国内法で制定するというフランスとドイツの共同提案を一蹴した。
仏独両国は4日に開催された欧州連合(EU)首脳会議で、競争力強化と債務危機解決に向けてユーロ圏やEUの加盟国が採用すべき一連の措置を共同提案した。
共同提案には年金支給開始年齢の引き上げや賃金のインフレへの連動撤廃なども盛り込まれているが、他のEU加盟国の反応は芳しくない。
パンガロス副首相は「すべての国家の憲法に介入するEUの決定という考え方を断固として拒否する。それがドイツの救済案に加わる前提条件になるという構想は魅力的ではない」と述べた。
ここで調べてわかったのですが、例えば、アイルランドの法人税は12.5%と他国に比べて極端に低く、ベルギーはインフレに応じて公務員の給与が上がる仕組みをとっています。世界的な経済危機の渦の中で特別に凹んだ国を救済する時、加入してまもないエストニア(2011・01・01加入)などは、即行で支援側に回らなくてはならなくなります。
それぞれの立場を持つ国々を統合していくのは至難の業だとは思いますが、今回の独仏共同提案はあくまでも「提案」としても、この案に接点が見いだせるのかが疑問です。ただし、この疑問視は日本人の私の感じるところであって、欧米は無理難題とも思われるような事を割と平気で提案するというのはお国柄でもあると思います。
日本人は、交渉の際に打って出るとうような強行な姿勢は見せず、相手の承諾圏内を見極めて妥協点を最初から見つけるような、相手にすればこちらの手の内を見破られやすい隙だらけのような交渉の仕方が多いと思います。例えばロシアとの北方領土問題でも、ロシアが経済支援を必要としている時に、まずはニ島返還に応じ、経済支援を切り札に残るニ島の返還を要求して下駄を預けておくなど・・・ああ、私のでしゃばることじゃないですね。けど、メルケル・サルコジ案は、誰も認めそうもない案ですよ。それなのに、がーんと前に出すその姿勢が気に入りました。日本政府は、爪の垢でも煎じて飲んではどうでしょうか。
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