2011-02-19

CNN独占インタビュー ワエル・ゴニム氏の話しからエジプト争乱について思うこと

 昨日、エジプトの争乱後は民主化へ向かっている、という日本のニュース知って些か奇異に感じていました。軍のシナリオでその通りに進んできたクーデターであることが間違いでもなければ、そんなに早く民主化が進むはずはないということと、議会すらまだ立ち上がっていないからです。
 エジプト情勢に関しては情報が錯綜して、何が本当なのか事態が収拾してやっと少し見えてくるといった状況の私です。「4月6日運動」に関するWikileaksの暴露により、背後で、反政府運動がどのように進んでいたのかを垣間見ることも出来ましたが(参照)、FacebookというSNSを使った民主化運動の広がりを主導したGoogleの幹部ワエル・ゴニム(Wael Ghonim)氏がエルバラダイ氏とつながりがあったという情報を知った時は意外でした(参照)。若い反政府運動家が、反政府運動として活動しながらも、それは、軍のシナリオの中でわずかな動きであっただけでしょうか。私には見えないことだらけですが、ゴニム氏の失踪後、突然開放され、あっという間に時の人となってしまったことも軍のシナリオ通りであったとは、エジプト軍は知的で天晴れです。でも、これが本当かどうか、私はまだ疑わしく思っていました。ゴニム氏の脇の甘さが結果的には軍のシナリオにはまる原因だったのか、それを判定するためではないのですが、CNNのインタビューは興味深いものがあります。この話しの中で、ゴニム氏は政府の態度が急に変わったと話しています(参照)。以下は、ゴニム氏が開放された後、2月9日に行われたCNNIvan Watson(イヴァン・ワトソン記者)氏の独占インタビュービデオの起こしです。

「あなた方がこの革命を計画していたのですか?」

「はい、そうです。」

「どのような計画だったのですか?」

「この計画は、みんなを街に出させようというもので、人々の日常生活に関わる全般に関してを要求するものですから、特に一番最初に貧困層が多く住むエリアなどから始めようというものでした。」

「ムスリム同胞団が1月25日からこの運動に係わっていたというような憶測を聞きましたが、ご自身やお仲間の関わりはどのようだったのですか?」

「ムスリム同胞団は、この(私達の)組織との関わりは全くありませんでした。ムスリム同胞団の声明は、公式には関与しないと言うことでした。ただし、仮に同胞団の若者が個人的に我々の活動に加わりたいと言のであれば、それを阻止することはないと言っていました。自由な社会に行きたければ、インターネットにアクセスすればよいのです。その理由は、若者達がそこで、禁止されることのないメディアを通して他の国々と自分の国を見てみれば、本当の姿が見えてきます。そして、外ではコミュニケーションを図ったり協力している様子が分かります。」

「これはインターネット革命ですか?」

「ええ、全くその通りです。これはインターネット革命です。私自身はこれを“革命2.0”と呼ぶつもりです。」

「エジプト政府はいま変化すると言っています。委員会を開き、憲法を改正し、前回の大統領選の調査を行い、若者の要求を尊重し、検挙をやめ、報道の自由を守ると。このような政府のメッセージについて、あなたはどう思いますか?」

「残念ながら、もう交渉をしている余地はありません。実は、私達は25日(1月のデモ)、通りに出ました。その時、エジプト政府と交渉をしたかったのです。そのために私達は訪問したのですが、政府はこの交渉を夜にすると決めたのです。その夜何が起きたかはご存知の通り、政府は我々にゴム弾、警棒、放水、催涙弾を向けてきたのです。そして、500人もの仲間が拘束されました。「ありがとう、メッセージを受け取ったよ。」と思ったのです。そして、私達の運動が大きくなった途端に、政府は私達の要求を聞こうと態度を変えたのです。」

「あなたは捕まりましたが、それは偶然ですか?それとも標的となっていたのですか?どうお考えですか?」

「私は狙われていました。それは知っていました。」

「捕まった時は、どうでしたか?」

「非常に怖かったです。」

「目隠しは?」

「ええ、勿論されました。」

「ずっと?」

「拘束中はずっとでした。」

「今日、弁護士に私の銀行口座など全ての財産を委ねました。死ぬと思っているからです。あの広場の人々は皆同じように思っています。」

「それは、死ぬことを覚悟しているからですか?」

「ええ、勿論です。政府は私達に甘い言葉を投げかけますが、数日前、スレイマン副大統領は、エジプト国民はまだ“民主化“の準備が出来ていないと言っていました。それが、今の政府の真実を表していると思います。有利な立場の数名が全ての決定を行い、メディアを洗脳の道具とし、野球のバットで反対派を殴っているのです。」

「あなたは、何か責任を感じていますか?」

「いいえ、いいえ。亡くなった人々のことを思うと悲しいことです。」

「これまでに死んでいった仲間達のことが脳裏に焼きついています。ともすると、それは私の兄弟であったかも知れないのです。例えばこれが戦争であって、皆な武器を持って戦った結果だとしたら納得できますが、私達は誰も武器を持っていませんでした。誰もです。死んでいった人達は、武器によって誰かを攻撃した訳ではないのです。ただ、無差別に発砲されて死んだのです。それは橋の上から、下にいる人々を撃ったのです。これは犯罪です。だからムバラクは大統領は辞任すべきです。これは犯罪なのですから。私がぜひお話したいのは、"私は死ぬ覚悟は出来ています“私には失うものがたくさんあります。今は休職ですが、私は、世界最高の会社で働いています、私には最高の妻と、子供達も愛しています。しかし、この夢が実現するためなら全てのものを失っても構わないと思っています。誰も私達の“願い(望み)“を止めることはできません。誰もです。そしてこのことを、スレイマン副大統領にも伝えたい。また、このインタビューを見て欲しい。スレイマン、あなたは私達を止めることはできない。私を誘拐するがいい。仲間を全員を拉致したって構わないよ。牢屋に入れてもいいし、殺すがいい。あなたが何をしようとも、必ずエジプトに戻ってきてみせます。30年間もこの国を支配してきたでしょう。充分です。充分です。充分なんですよ。」

 翌日ムバラク前大統領は辞任したわけですが、ゴニム氏らが何か企んで陰謀めいた動きをしていた様子もなく、普通の市民が反政府運動を始め、それが思いのほか大きくなったために政府にマークされて拉致されたというだけのようです。そして、彼以外の拘束者を置いて彼だけが開放された理由は、彼が中心的な人物なので他への影響を避けるためだと思います。つまり極東ブログの読みの通りではないかと思ったのです。

 ゴニム氏はありがちな扇動者というところだ。記事には言及がないが、私の推測ではこの脇の甘さが、実際には、別運動団体の事実上の便乗と軍部の察知から謀略を招いた。
 そう推測するのは、当局の動きからだ。翌々日、すでに尾行を探知していたゴニム氏だが連絡が途絶え、翌朝失踪したのである。当局による拉致であるが、極秘に行われた。当局側が25日の運動でゴニム氏を危険視したというのが穏当な考え方だが、私は、当局はウィキリークス公電暴露からもわかるように、当局は彼らの活動を知っていて、それ以前から注目し、泳がすだけ泳がした。都合の良い時期にこの暴動を乗っ取るシナリオが動き出したと見てよいように思う。

 そして昨日、「勝利の行進」というデモが再び予定されていると知り、これもまた変な報じ方をしたものだと気になりました。エジプト市民は勝利など勝ち取っていないので、あり得ない報道だと思ったのです。
 このデモが変だと思わない人の方が圧倒的多数かもしれませんが、エジプト争乱は、一貫して軍による軍のためのクーデターであり、まだ民主化へは何も動き出していません。民衆が勝利宣言できるはずもないのでは?おかしなことが起きるものだと奇異に感じていたところへ、極東ブログからこれを解説する「エジプト争乱と軍部への疑念」(参照)が上がりました。ここで「議会の前段となるものが可視なるとき、エジプトの民主化も現れ始める。」と言われているように、軍主導ではない動きから議会が成立されなければ民主化の現れでもないといえると思います。
 ゴニム氏の表情を見ながら肉声を聞いて振り返ってみたとき、軍によって反政府運動に蓋をされた今、彼らの心に残ったのは、命を投げ打ってでも彼らの夢を実現するという確信です。これが、大きな数の広がりになり、民主化運動として再燃する時は必ず訪れると思います。その時は、軍という大きな壁を乗り越えなければ実現出来ないことも彼は学んだのではないかと感じました。

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