ある冬の日のこと
雪(「作詞者、作曲者ともに不詳)
雪やこんこ霰やこんこ
降っては降ってはずんずん積もる
山も野原も綿帽子かぶり
枯れ木残らず花が咲く雪やこんこ霰やこんこ
降っても降ってもまだ降りやまぬ
犬は喜び庭かけまわり
猫は炬燵で丸くなる
この歌、雪が降る度に記憶の中の小学生の私が口ずさんでいます。歩きながら、その光景がそっくりもどってきて、当時のいくつかのシーンを回想しているうちに目的の場所へたどり着いてしまうのです。そして、小学生の私もそこですっと消えて現実に戻るのです。雪というのは思いがけない追憶の世界へ連れて行ってくれるものです。
飼い始めた犬は、生まれて始めての冬を迎えています。小型なので、室内でお気に入りの玩具と戯れていれば運動不足になるとも思えませんが、犬種にもよるのか、とても運動好きです。毎日の散歩は、きつい登りの片道3.5キロの山道がそのコースとなっています。往復7キロも走ったり歩いたりしているこの犬が、雪の日には外に出られないとなると、それは、ストレスだよねえ。と、ぼんやり思っていました。
問題は、この雪道をどうするかにありました。雪やこんこ霰やこんこ♪と、歌いながら歩くのもよいなあ、行きたいなあと思った途端、犬が濡れちゃうじゃんか。そんなことよりも、食料の買い置きが気になり、続いて現役の長靴がないことが外出の足を止めてしまうことになると思い出したのです。畑用に回した長靴は、どうも履く気になれないし。
ここで、長野県の冬は雪に閉ざされると誤解されている向きもありそうなので、この土地のことを説明するとこうです。気圧配置が西高東低になると日本海側に雨や雪を降らせ、太平洋側は晴れる、というのは誰もが知っている日本の典型的な冬の天候です。県のほぼ中央にはアルプス連山があり、これが、日本の脊梁山脈(せきりょう)と言われているように、文字通り背骨が長野県を二分しているのです。ですから、天候も県内では東西南北で全く違います(参照)。
この気圧配置にあるときは、北アルプスを境に南部の地域は東京や静岡などと同様の晴れになりますが、南アルプスを境に県西部は雪や雨になることが多いです。つまり、諏訪は県内有数の、年間通して穏やかな気候に恵まれた土地柄なのです。そうは言っても、逆に気温は一二を争う極寒でもあります。まあ、軽井沢の次くらいかな。話が長くなっていけませんね、つまり、諏訪が雪に閉ざされる心配はほとんどないのです。地図のほぼ中央の丸い白いところが諏訪湖です。
ところが、天気予報では二三日降り続くと言うので、食材のストックや長靴の心配に至る羽目になったのです。雪やこんこと歌っている場合じゃないのです。しかも、この極寒の地に雪が降ると、日中溶けた部分が翌朝バリバリに凍ってしまうのです。こうなると、でかい鉄製のハンマーでもってかち割るしかなくなります。そうならないために、こまめな雪かきが必須となるのです。昨日は、これで何度か雪かきをしましたから、普段使わない筋肉が悲鳴を上げるというわけです。今年の積雪量は日本海側ではかなり多いようで、連日雪被害を報じているのを耳にすると、諏訪などは比較になりませんが、これだけでも大変だと痛感します。
この雪を始めて経験するわんこですが、彼の日課の散歩の事がますます気になり、私と一緒に家に缶詰になるのも可哀想に思えてきたのです。かと言って、雪中散歩は寒かろうなどと考えていてはっとしたのが、雪やこんこの二番の下り「犬は喜び庭かけまわり、猫は炬燵で丸くなる」んだった。まあ、雪の中にあまり出ないので、雪中で散歩している人も見かけたことはない私です。この歌の通りで良いのだろうか?変な母性本能というか、過保護な私。実子にもこんな気遣いはしたことがない。にもかかわらず、あの柔らかい肉球が霜焼けになるんジャマイカ?などと、いくつかの思惑が脳内を駆け巡る。こういう時はTwitterにかぎる。と、Tweetしてみたが、無反応。冷たいな、皆。
一大決心をして出かけて、犬の洋服売り場でレインコートなるものを見つけてきた。黒と赤のトーンがカッコイイミッキーマウスのフード付きだ。地味なのを見つけるのに苦労した。犬の洋服は、私に似合わずカラフルでミーハー的なんだな、これが。なんせ、連れて歩くのは私なんで、私が阿保に見られるんジャマイカと、そっちが気になる。途中、友人のミニチュアダックスフンドの冬のコートはファー付きのフードであったことを思い出し、ためらいもなくそっちに気が行く私。いかん、いかん。ついでに、犬の長靴もあるんジャマイカと探しながら周囲をきょろきょろ。この光景を知り合いの誰にも見られなかったかが気になりつつ、楽しいショッピングであったな。
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