2011-02-14

「4月6日運動」からみたエジプトのクーデター

 エジプトの市民によるデモもようやく終息に向かい始めたようです。これを喜ぶ各国の声明など、メディアが伝えていることは殆どおめでとうメッセージです。ところが、昨日、ウィキーリークスが「4月6日運動」について暴露した2008年12月30日の公電の全文を読むとよいと聞いて訳してみるに、私の知らない情報が教えるエジプト問題の奥の深さを痛感しました。感じたことなどをまとめておくことにします。
 TwitterからクリップしたBBCの「Egypt military pledges transition to civilian rule(エジプト軍、民政移管を誓約)」(参照)の記事で、極東ブログ「エジプトの争乱、後半戦」(参照)が考察した通り、軍の展開の手際のよさに感服といった感想を持ちました。

 軍のもくろみは3つあった。(1)ムバラク元大統領の息子ガマル氏に行政権力を継承させないこと、(2)82歳にもなったムバラクを引退させること、(3)軍がムバラク政権と心中せず国民からの正統性を受けて存続すること。見事、3点、クリアした。

 そして、オバマ氏は、エジプトの民衆に対して賞賛するコメントを出していて、私は、これを些か奇異に感じたのでした。エジプトのアメリカ支持は10%を切っていた記憶があり、このところ極端に人気がないことを承知した上で、エジプト市民を絶賛するものであるとしたら、この場に及んであまりにも調子が良すぎるというか、取ってつけたような言い方に聞こえたのです。ここでウィキーリークスの全文を読むよう助言をもらい、極東ブログの先のリンク記事から暴露された公電を訳してみたのです。
 訳文にについての詳細はここでは省きますが、この公電を読むにあたって「4月6日運動」が何であるかが重要で、これを改めて調べなおしたのですが、言及する文献は乏しかったです。ウィキーリークスの表現「APRIL 6 ACTIVIST」では見つからず、英字新聞などでの表現「April 6 Movement」では、Wikipedia「April 6 Youth Movement - Wikipedia, the free encyclopedia」の英語版によるとこうあります(参照)。

The April 6 Youth Movement is an Egyptian Facebook group started by Ahmad Maher in Spring 2008 to support the workers in El-Mahalla El-Kubra, an industrial town, who were planning to strike on April 6. Activists called on participants to wear black and stay home the day of the strike. Bloggers and citizen journalists used Facebook, Twitter, Flickr, blogs and other new media tool to report on the strike, alert their networks about police activity, organize legal protection and draw attention to their efforts.

 2008年の春、工業都市El-Mahalla El-Kubraで、4月6日に計画された労働者ストを支援するためにフェイスブック(Facebook)上で始まった運動とあります。
 フェイスブックと言うのは、アメリカ発祥のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で、Twitterユーザーよりもはるかに多くのユーザーがいると言われている大所帯のネットワークサービスです。早速、ここの「6th of April Youth Movement 」(参照)を見ると、それらしいページに移ります。アラビア文字をGoogle Trancelateで日本語変換してもさっぱり意味が分かりません。こう言ってはなんですが、単語の羅列にしか見えません。が、沢山の「イイネ」と多くのコメントから、大勢が「4月6日運動」に関心を寄せていることだけでは感じ取ることができました。
 以上のことで「4月6日運動」が理解できたとも言えませんが、ウィキーリークスの内容に話しを戻すと、これによると、この運動を具体化するために活動中だったメンバーのエジプトでの拘束の話しや、シンクタンクでもある米国連邦議会の役員らの開催する議会で、彼らの民主化変革の要望についてのプレゼンテーションの話しなどの武勇伝が暴露されています。また、昨日、極東ブログでその全文訳のエントリーが挙げられました(参照)。
 今までのエジプト情報で、労働者層の民主主義への願望がどれほどあったか、その動きを伝えるメディアは乏しい限りではなかったかと思います。それは、見てみない振りだったのか、蓋をされたのか、それさえ分かりませんが、今回の争乱が軍による軍のためのクーデターで終わったと言うことは、多くの労働者層の民主化願望はそのまま置き去りにされることを意味していると思います。「全文を読むといいのだけど」の助言の意味がここで滲み出してきたのです。オバマ氏の演説をここで引用しておきます。

US President Barack Obama said he "welcomed the historic change that has been made by the Egyptian people".

He also "welcomed the Supreme Council of the Armed Forces' announcement today that it is committed to a democratic civilian transition, and will stand by Egypt's international obligations," a statement released by the White House said.

 「4月6日運動」の背景を知ると、オバマ大統領の祝福の声を心から喜べない市民も多くいるはずです。
 最後に、エジプトの運動が教えてくれたことは沢山ありますが、日本には軍隊がないからか、クーデターとはどういうことなのか、革命とは何が違うのかなど、意味を掴むむずかしさが多々ありましたが、メディアが報じていない背後の事実などを知り、掴みきれないもどかしさが残ります。反対に、学者やブロガーの発する私見や分析は、人の知る権利が守られた社会でのみ機能するということも分かりました。エジプトの民主化はこれからどれほど進むのだろうか、目を凝らしても鮮明には見えてきません。

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