2011-02-21

リビア情勢-ガダフィ大佐の独裁に為す術はないのか

 北アフリカ・リビアで起きている争乱は16日、ガダフィ大佐の独裁政権に反発する市民のデモから始まったが、その当日既に治安部隊による発泡で大勢の市民が亡くなり、19日までに200人とも言われる死者を出しています。と書いて、死者を出しているのではなく、独裁者による虐殺であると思います。これまで取り上げてきた中東や北アフリカの争乱とは違い、あってはならない政府の姿ではないかと思います。41年以上も続いたカダフィー大佐による独裁政権は、最も手の施しようのない悪い状態としか思えません。
 リビアは産油国でもあり、その関係を書くのも然りだとは思いますが、ここではリビアという独裁政権国家について的を絞って書きます。まず、この国のリーダーであるガダフィー大佐というのは一体どんな人物なのかと思い、ネットで調べたのですが、ろくな話はないのです。独裁国家の主と言う他ないです。ただ、一瞬、冗談か失言集かと思うようなとんでもない発言が目に留まり、このサイトを見て、日本のお隣りの金さんとは違う、一風変わった人物だと思いました(参照)。が、今回の争乱によってただの独裁者ではなく、虐殺者となったわけです。これを報じる各紙に目を通していて感じるのは、女・子どもが悲鳴を上げている点です。デモに参加したわけでもないこれらの市民が何故?この辺りの問題は後で書くことにします。
 まず、リビアという国の正式名称は、「大リビア社会主義人民ジャマヒリヤ国(The Great Socialist People's Libyan Arab Jamahiriya)」で、「ジャマヒリヤ」とは、アラビア語で「大衆」と「共和国」を意味する言葉を合成した造語で、カダフィー大佐が作ったと言われています。これは、代議員によらない国民全員参加の「直接民主制」を実践するというカダフィ氏の革命理論を表現していると言われています。この「大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国」の理論に従うため、リビアには憲法も国家元首も存在しないのが一点。
 カダフィ氏は地位や肩書を持っていないため、「大佐」はあくまでも呼称なのだとか。その理由も、私淑するエジプトのナセル元大統領の軍人としての最高位が大佐だったからだそうです。聞こえはいいのですが、実態は軍などを通じ独裁体制を構築しているようです。その証拠に、今回のような虐殺がまかり通る国なのだと思います。最近では自らを「アフリカの王の中の王」と呼んでいるそうですが、「独裁者の中の独裁者」ではないかと思います。
 注目するのは、このデモの行く末です。昨日も多くの情報を目にしましたが、市民の訴えが何らかの形で政府に取り上げられるような希望がこの国にはあるのだろうか。独裁者に対してそんな要求は無理と言うものです。
 CBC「Libyan forces fire on mourners again」は、葬儀の参列者にまで発砲したと報じています(参照)。

Libyan leader Moammar Gadhafi's forces have opened fire on mourners at the funeral for anti-government protesters in the city of Benghazi, where a doctor says at least 200 people have already been slain in days of demonstrations.
リビアのリーダー、ムアマル ガダフィ(Moammar Gadhafi)の軍は、ある医師によると、数日間のデモで既に少なくとも200人が殺害されたベンガジ市の反政府デモ参加者の葬儀で、参列者に発砲した。

A man shot in the leg Sunday said marchers were bearing coffins to a cemetery when they passed a Gadhafi compound in Libya's second-largest city.The man said security forces fired in the air and then opened up on the crowd.
日曜日に脚を撃たれた男性によると、人々が墓地に棺を運ぶ列がリビアで2番目に大きな都市であるガダフィ領を通り過ぎる時に起きた、と証言している。この男性は、保安部隊は空気中で発火して、次に群衆に見せたと話した。

 このような光景は私には想像できませんが、目撃した医師や市民の話を記事としてそのまま報じているのはCBCが例外ではなく、リビア情勢を伝えるメディアはほとんど同じスタイルです。
 理由は、リビア国内での外国人による取材活動が禁じられているため、電話やインターネット、メールなどを通して市民からの直接的な情報を得ているということです。また、先週土曜日の朝からインターネットも全て切断されたと報じています。
 このような状態は中国とも似ていると思っていたところ、なんと、中国へも改革運動が波及したようです(読売)。

➠中国、拘束や外出制限1000人…予告デモ

【北京=関泰晴、上海=加藤隆則】中東と北アフリカで広がる民衆抗議行動の影響は中国にも波及し、20日にはインターネット上で、共産党の一党独裁に反対する集会やデモを全国13都市で開催するよう促す呼びかけが行われた。公安当局は、各都市で厳重な警戒態勢を敷いた。
結局、大規模な集会などは起きなかったが、香港の人権団体・中国人権民主化運動ニュースセンターは、19日から20日にかけ、活動家ら1000人以上が中国各地で当局に連行されたり外出制限を受けたりした、と伝えた。

 中国も国に不都合が起こると、情報をシャットダウンする点ではリビアと同じですし、軍による市民の殺害行為は、天安門事件が物語っています。リビアは完全な独裁政権であるため、市民にとっては中国よりもさらに厳しく、苦しい立場にあるのではないかと想像します。
 国がこのような状態になれば、難民の流出は避けられないと思いますが、海を隔てたイタリアとはこの件で友好協定を結んでいるため、リビアの難民を受け入れる可能性はないと思います。リビアは広い海岸線があることや、地理的にもイタリアに近い(歴史的にも昔はイタリアの植民地だった)こともあり、アフリカ難民のイタリア向け出港地として絶好の中継地でした。これに対してイタリアを中心とする欧州側が、リビアがこれら難民を取り締まることを要請し、リビア政府の強力な取り締まりの結果、難民の流出は劇的に減少したそうです。
 西ヨーロッパやイタリアとリビアのこういった関係から、女・子どもの逃げ場がないと言う現状が、先に触れた死亡者の中に多く含まれているという状況を作っているのではないかと思います。あのスーダンの投票前、何万人もの国外避難者が投票に向けて帰省する映像を思い出し、リビアの人々は、スーダンよりも危険な状態にさらされているのだと解釈しました。
 リビアの人々の願う先に、なんの可能性もないということなのでしょうか、先の見えない日が続きそうです。

PS1:感情を入れずに、出来るだけ客観的に伝えるのが趣旨の政治経済問題ですが、若干感傷的になりました。悪しからず。

PS2:アルジャジーラの記事は、モロッコでも「2月20日運動」と言う名前で青年を中心とした抗議運動が立ち上がり、20日に全国各地で抗議デモを計画していると報じています(参照参照 )。
 これは、首都のラバトと経済首都のカサブランカが中心で、警官隊が昨夜から動員され、これらの町に通じる道路の封鎖を始めているとのことです。
 この「2月20日運動」の目的は、民主憲法の制定や現内閣及び議会の解散と暫定内閣の設置、司法の独立、腐敗の根絶と失業問題の解決を要求するものだそうです。
 時差を加味すると今日中に様子が分かるかもしれません。
 速報のようになってしまって悪しからず。

 

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