2011-01-19

フランスに見る政局の変化-移民に反対する国民戦線新党首誕生

 チュニジアの大統領がフランスに助けを求めて脱出し、最終的にはサウジアラビアに亡命したそうです。フランスのサルコジ大統領は、G20の議長国でもあるため、チュニジアの暴動の沈静化のためにアメリカに働きかけるというのが意外な展開でした(「世界的な物価高の連鎖とフランス発動のG20のこれから-チュニジアやアルジェリアの暴動が示していること」)この暴動の成り行きを見ているうちに、特にフランスの極右政党といわれる国民戦線新党首にルペン氏三女に決まったことの方が気になりました。
 この暴動とは直接的な関係はないのですが、フランスと言えば昨年9~10月に、サルコジ政権の年金改革に対して激しい抗議ストが繰り返し行われました。また、移民に反対する国民戦線への牽制のような形でロマ移民追放を行うなど、国民の不満が溢れるような状況が続きました。いういった中で、何とかサルコジ政権を維持してきたのではないかと感じていました。
 また、昨年は、欧州全体に移民に反対的な政党が政権政党に加わるなどして右派の台頭が目立ちました。特に意外だったのは、社会民主主義を誇るスウェーデンの総選挙で、反移民を唱える右翼政党が始めて国政で20議席も獲得するなどの結果を出しました。移民に反対的になりつつある欧州各国に、アフリカやイスラムから移り住むのが難しくなってきているのが現状のようです。チュニジアの問題で浮上したフランスではありますが、その政局に変化が出てきているようです。

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 【パリ福原直樹】フランスの極右政党「国民戦線」(FN)は16日、党大会を開き、党首を退いたジャンマリ・ルペン氏(82)の後任として同氏の三女、マリーヌ・ルペン副党首(42)を党首に選出した。72年設立の同党は移民排斥などを訴え、勢力を伸長。世論調査でマリーヌ氏は17%の支持率を獲得しており、同氏が打ち出す「ソフトな極右戦略」が、さらに支持を広げる可能性がでている。

 同氏は父のジャンマリ氏に比べ過激な表現を避ける傾向にあり、「女性なりのソフトさが支持者増大につながる」(仏紙)との指摘がある。だがこの一方で、最近では仏国内でイスラム教徒が行う野外の礼拝を大戦中のナチスの侵略に例え、批判された。同氏は今後の政治目標を来年の次期大統領選としている(毎日新聞 2011年1月17日)。

 父であるジャンマリ氏は、過去に5回、大統領選に立候補した経緯があり、2002年には社会党候補を抑えて決選投票に進み、欧州政界に衝撃を与えた事もあったようです。フランスも移民に反対するムードが強くなるのかと思われますが、世論調査の結果を見ると、サルコジさんがヤバい。

 14日発売のマリアンヌ誌に掲載された世論調査では、18%が大統領選の第1回投票でマリーヌ氏に投票すると回答。社会党候補と目されるストロスカーン元財務相の30%、再選を目指すサルコジ大統領の25%に次ぐ3位に入った。(時事ドットコム1月16日)

 この「極右政党・国民戦線」って、一体どんな政党なのか知っておく必要があるなぁ。ので、調べてみました。Wikipediaに記されている内容から、なんとなく日本の民主党の野党時代を思わせます(参照)。政権を担当するようになった現在の民主党の菅さんは、「ポピュリスト」と呼ばれていますが、似たような人気なのではないかと感じます。

 1972年10月にアルジェリア独立反対派などの極右勢力が集まって、ルペンが創設した。結成当初は、弱小政党だったが、80年代に入りフランス経済が悪化し失業者が急増すると支持を広げていき選挙ごとに票が増えていった。

 国民戦線は、フランス人至上主義を掲げ黒人やイスラム系の移民排斥(ただし、フランスの文化を尊重する移民は拒まない)を唱えているが、他国からの移民によってフランス人としての権利が奪われているという感情から一部のフランスの海外県や海外領土の黒人からも支持を得ている。また、ルペンの側近の一人ブルーノ・ゴルニッシュは京都大学に留学した経験を持ち妻は日本人である。ルペン自身、日本の(そしてスイスの)国籍法を支持している。

 うーむ。「極右」ってこのような政党をにつくの?という感じがします。日本は移民を受け入れないので「極右」は元からですが、アメリカからは批判を受けています。でも、国民戦線が人気を伸ばして、ある日、フランスが移民を受け入れない国ににでもなり、欧州の各国もそれに続くようなことにでもなれば、移民は望めなくなります。本当は、そういうことを望まなくても安心して暮らせる国になることが先決問題だと思うのですが、目下のところそのようなことを望める政府ではないのがもっと問題です。

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 移民に反対する野党の20議席獲得となったスウェーデンの総選挙を中心に、フランスを含めるヨーロッパ諸国の昨年の政局に関して、極東ブログ「スウェーデン総選挙に見る社会民主主義政党の凋落」(参照)に詳しくまとめられています。

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