2011-01-04

4月の大統領選挙を目前に相次ぐテロとナイジェリアの抱えている問題

 スーダン、コートジボワールと、アフリカでの内戦をこのところ取り上げていますが(「アフリカの大統領選挙と国際社会との関係の変化」)、アフリカに関して日本で報じる記事が少なく、それが関心のない由縁だとしたら西側先進国としてはいただけません。アフリカのテロ過激派による殺害行為やジェノサイド(集団殺戮=さつりく)は、先進国では考えられないような理不尽な理由で横行されているのも逃せないことです。また、その原因を辿ると、貧富の差や民族の違い、宗教的な対立などの様々な要因があるため、アフリカという大陸に存在する無数の国々ではきっと大同小異の多くの衝突が起きているはずです。
 昨日はナイジェリアで起きたテロに関する記事を目にし、スーダンやコートジボワールとはまた違った背景があるのでクリップしておくことにします。
 昨日、Twitterでも目に止まった記事ですが、アフリカ随一の産油国であるナイジェリアで相次ぐ爆弾テロや武装勢力による攻撃により、2日までに少なくとも97人が死亡したと報じていました(朝日2011年1月3日)。

 中部の都市ジョスでは12月24日、爆弾が爆発、80人が死亡。同日と29日には別の中部の都市でも、キリスト教会が放火されるなどして、計13人が犠牲になった。さらに、31日夜、首都アブジャの市場で爆発があり、4人が死亡、26人が負傷した。ジョスの事件では、イスラム武装勢力ボコ・ハラムが犯行を認めた。

 ナイジェリアはアフリカ随一の産油国だが、恩恵が国民に行き渡らないことへの不満が強く、イスラム過激派暗躍の背景になっているとされる。
同国では大統領は南北出身者が2期ごとに交代するしきたり。ところが、北部系の前大統領ヤラドゥア氏が昨年、1期目途中で病死し、南部系のジョナサン氏が後を継いだ。このため北部ではジョナサン氏続投への警戒感が高まっている。

 12月24日という日を特定してキリスト教会などが襲撃を受けたことから、宗教的な抗争かと思われるのですが、ナイジェリアは、キリスト教とイスラム教の割合は、二分されていると聞きます。この24日に関して何が背景になったのか調べてみると、毎日が27日に報じています(毎日2010年12月27日)。

 騒乱のきっかけになった連続爆弾テロは24日夜、同州の州都ジョスと周辺で発生した。キリスト教系住民が集まる市場など7カ所で次々と爆発が起き、32人が死亡、74人が負傷した。犯行声明は出ておらず、警察当局が捜査を続けている。

 さらに同日、ジョスの北東約520キロのボルノ州の州都マイドゥグリで、二つのキリスト教会が武装集団に襲撃され、牧師ら6人が殺害された。警察当局はマイドゥグリに拠点を置く「ボコ・ハラム」と称するイスラム過激派組織の犯行とみて捜査している。

 爆弾テロと教会襲撃の発生地は遠く離れ、両事件の関係は不明。だが、両事件ともクリスマスイブに多数のキリスト教系住民が犠牲になったため、プラトー州の一部のキリスト教系住民の間に「爆弾テロはイスラム教徒の犯行」との風評が広まり、イスラム教系住民との衝突に至った。AFP通信によると、ジョスの市街地で26日、建物が炎上し、死傷者が出ているという。

 プラトー州のデービッド・ジャン知事はAFP通信に「(テロの)狙いはキリスト教徒の反イスラム教徒感情をあおり、新たな暴力を生み出すこと」と述べ、住民に平静を呼びかけている。

 同州では、この地に先に定住したキリスト教系住民が教育や就職などで優遇される実態があり、不満を抱くイスラム教系住民との衝突、報復の連鎖で今年だけで約1500人が死亡している。

 イスラム過激派による襲撃と聞くとアルカイダの影響は受けているとは思いますが、ナイジェリアの場合は、イラクや、昨日取り上げたエジプトでのアルカイダ主導テロ(参照)と異なり、南北対立に起きたビアフラ戦争が背景にあると思います。ナイジェリアの南北対立の背景を物語るのに欠かせないのがイギリス植民地であったことの影響で、それが、教育レベルの違いを生み出す原因になっているのは皮肉な話です。
  キリスト教徒の多くはイボ族で、東部に油田が見つかり、工業化が進む中、北部のハウサ族とヨルバ族の一部が連邦を支配しようとしたことを端にビアフラ戦争 (1967-1970)が始まりました。この戦争の傷跡として世界に報じられたのは、お腹だけが膨らんだ大きな瞳の幼い子ども達の飢餓で、世界の多くの国 が支援をしてきたこともあり「ビアフラ」の知名度は高いです。
 これらの歴史的な背景からも、イボ族に何かと反感を持つ北部がキリスト教徒を狙い撃ちする理由は、ビアフラ戦争の素地から由来するものであることははっきりしています。
 また、3日朝日が報じている通りだとすると、就任中であった北部の前大統領が死亡したというアクシデントによって、大統領任期に関するルールを一時的に不規則にしたことが原因しているということになります。それが引き金で襲撃事件にまで発展し多くの犠牲者を生んでいるという事実は、受け止める以前にあまりにも日本の環境と違い過ぎます。
 また、現在のナイジェリアが抱える問題は多く、特に、子どもの栄養失調の問題が改善されていない原因となっているのは貧困問題だけでもなさそうです。少し昔の記事ですが、極東ブログの「アフリカの貧困というパラドックス」(参照)では、貧困揉んだではない事を解説しています。また、調べているいるうちに分ったのは、アフリカに言い伝えられている迷信が母親が新生児に母乳を与えない理由だと分り、記事では母親教育の必要性が伝えられています(AFP10年11月5日)

栄養失調児が700万人のナイジェリア、最大の要因は「迷信」

 ナイジェリア国内では北部で特に深刻だ。北東部には、5歳未満児の42%が栄養失調という地域もある。
 要因には、サハラ砂漠に近いため暑く乾燥した気候のほかに、さまざまな文化的要素があるという。北部の4州で栄養失調に関するユニセフの調査に携わっている専門家によると、最大の要因は継続的に母乳が与えられていないことだという。
 通常、生まれたばかりの赤ちゃんには(母乳ではなく)悪霊をはらうための「聖水」が与えられる。新生児にとって極めて重要とされる初乳は「有毒」とされ、誕生後丸々3日間母乳を与えないケースもあるという。また、発熱や黄だんが見られる赤ちゃんには、薬草を調合したものを服用させるという。
 さらに、農村部では母親が出産後すぐに仕事に復帰する傾向があり、授乳する時間がほとんどない。子どもが口にする水も不衛生なことが多い。
 保健衛生の担当者らは、母親教育が必要であり、政府も何らかの対策を打つべきだと話している。

 これらの現状を改善するためにも公正な政治が求められるため、選挙が公正に民主的に行われることが大前提で、4月の選挙の争点もそういった点で争われるべきです。血を流して権力争いすることから、血を流さない選挙が求められていると思います。
 これまでの経緯から、大統領選挙の動向が北部の感情を逆撫でするような状況を作れば、この国は直ぐにでも戦争を始めるかもしれない危機にあると言えます。これを黙って見過ごす気になれず、何か得策はないものかと思いつつも、何もできないジレンマに陥るだけです。
 それにしても、選挙とは、民主政治の象徴であり基本でなくてはならないはずですが、それが正常に行われないということから、アフリカの民主化への道が遠いことを思い知ることになるのは残念です。選挙の度に多くの人が亡くなり、乱闘が起きるこの国を哀れむのは、それこそ先進国のおごりでしょうか。

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