2011-01-21

パレスチナ和平交渉とアメリカの関わり-イスラエル非難の高まり

 昨日、ユダヤ人による入植活動について、アラブ諸国など計123カ国が19日までに「国際法に違反し、和平の大きな障壁だ」と避難する国連安保理決議案を提出したことを知り、これは、またオバマさんの外交手腕が問われる問題の浮上かと、この背景を考えていました。

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 このパレスチナ和平交渉は、アメリカオバマ政権の後押しによって、イスラエルとパレスチナが直接的に交渉する段階で、イスラエル占領地への入植問題で失敗後、ほとんど進展していないのではないかと思います。問題の焦点は、イスラエルとアメリカに対して多くの国がパレスチナを応援すような動きがあり、この構図から、アメリカの態度によってはアメリカ非難を醸成し、和平に向けての解決を遅らせてしまうことに懸念を持ちます。
 イスラエルのガザ軍侵攻から二年になりますが、崩壊した住宅の再建が進まない理由にイスラエル軍によるガザ地区への民間の建設資材搬入を禁じる政策がまかり通っていることです。この封鎖の解除が問題解決になると指摘する声も多いようです。実際の被害を調べると、ほとんど復興されていないようで、深刻な問題だと思います(毎日2010年12月25日)。

 住宅の再建が進まない主な理由は、イスラエル政府が07年6月からガザを封鎖し、セメントや鉄筋など建設資材の搬入を認めていないためだ。「(地区を実効支配するイスラム原理主義組織)ハマスが戦闘能力を高める」とイスラエル側は主張する。しかし、ガザ支援船の襲撃事件への批判を受け、イスラエルは国連など国際機関が実施する事業向け資材に関しては、今年6月に封鎖を「緩和」した。

 侵攻によってガザ全体で完全に破壊された住宅5000戸以上のうち再建されたのは、「100戸に満たない」(ガザ再建調整委員会のラドワン委員長)。08年以前からの紛争による破壊と人口増加を考えると、不足住宅は10万戸になる。

 そのため、最近3年でアパートの家賃は2~3倍に高騰。しかも、空き部屋があっても、失業率が45%に上る同地では大半が負担できない。多くが再利用のがれきまたは粘土ブロックで築いた仮設住宅や、倉庫、車庫に住んでいるのが現状だ。

 また、このガザ地区からイスラエルに対する攻撃は、2009年に発射されたロケット弾や迫撃弾数は858発だったのに対し、2010年では365発であったとイスラエルの国内治安機関シャバクが3日発表した2010年の「テロのデータと傾向」(12月25日現在)で発表されています(共同)。つまり、これ以上イスラエルを刺激することは、ガザの住民への直接的な被害を増大させてしまうため、この和平交渉が急がれていると思います。
 一方、イスラエルには暫定和平合意の意思を昨年末示していますが、中核的な問題を棚上げするという条件をパレスチナが受け入れず、合意には至っていないとしています。この中核的な問題とは、「エルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還権など」と上がっているだけでこれ以上の詳しい内容はわかりません。このように、両方に相容れない理由があり、交渉が難航しているようです。
 そして、ロシアのメドベージェフ大統領のこのところの外交が目立っている中、18日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を初めて公式訪問し、東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家建設を支持すると表明しています。つまり、アメリカとロシアが対立的な意見を表明しているわけです(毎日2011年1月20日)。

 ソ連時代(88年)に表明した同種の立場の継承を確認した。ロシアは米国、欧州連合(EU)、国連を加えた中東和平4者協議で仲介役の一端を担っており、発言はイスラエルや米国に対し、交渉再開に向けた一定の圧力となる。

 大統領は西岸エリコでアッバス議長と会談した。大統領は会見で、独立国家建設について「イスラエルを含めた全当事者のためになる」として、ソ連時代から続く「支持」姿勢を明確にした。

 これは88年、パレスチナ解放機構(PLO)のアラファト議長(当時)が独立宣言した際、ソ連を含む約100カ国が支持した経緯を指す。しかし米ソ冷戦の枠組みでソ連が“自動的”にアラブ寄りの姿勢をとっていた時代で、実質的な影響はなかった。

 イスラエルと米国は、パレスチナの一方的な独立やそれに先立つ「承認」に強く反発している。

 さて、入植活動が凍結されなかったことが交渉に失敗した原因であると主張したいパレスチナ自治政府は、交渉を有利に進めるためにアラブ諸国など123カ国と大国ロシアが見方についた形となったため、ますますイスラエルとその同盟国やアメリカにとっては圧力となったようです。
 アメリカはイスラエルの唯一の友好国で、この決議案が採決の段階になれば、アメリカは賛成はできかねるでしょうし、拒否権の行使をとる以外に良策はないと見られています(共同2011/01/20 )。

 クリントン国務長官は「入植活動の合法性を認めない」(クリントン国務長官)との立場だが、イスラエルを刺激したくないため「決議案が採決にかけられれば米国以外の14カ国は賛成するが、米国は拒否権を行使する」(安保理外交筋)見通しで、採択は困難な状況。

 アメリカは、第二次世界大戦時、戦費をユダヤ人協会から得て建国を約束しているため、未来永劫イスラエルの主張に同調してきました。また、アメリカ経済はユダヤ系で成り立っているといっても過言ではないです。
 これに対してロシアがアラブ諸国に応援するのは、米ソ冷戦時代からアラブよりで、油田権利の確保のためであったことも背景にあると思います。
 パレスチナが各国を味方につけ、イスラエルとアメリカに圧力的になると、どうしてもアメリカとソ連の代理戦争の時のような背景が浮かびますが、話し合いによる和平交渉はできないものかと思います。
 となると、パレスチナにとっては1993年のパレスチナ暫定自治宣言(オスロ合意)で「エルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還権など」が後回しにされたことが大きな論点であると思います。この点に絞って話し合うというのでは解決できないのでしょうか。
 アメリカとイスラエルの絆は、そうは簡単に決裂しないのだし。

 ガザ地区にある無数のトンネルがどのような役割を持つか、また、これらのトンネルがイスラエルによって封鎖された2009年の状況について、極東ブログ「ガザのトンネル」(参照)が詳しいです。

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