2011-01-14

世界的な物価高の連鎖とフランス発動のG20のこれから-チュニジアやアルジェリアの暴動が示していること

 アフリカのスーダンやコートジボワールの独立や分離にまつわる騒乱の話と似たようなことかなと、記事の見出しではその程度にしか思わなかったチュニジア(地図上の緑色の国)の暴動は、ちょっと違うみたいです。最初に目にしたのは時事ドットコムの「夜間外出禁止、異常事態に=暴動で死者多数-チュニジア」(時事ドットコム2011/01/14-00:57)で、路上で物売りをしていた男性が警察の取り締まりに抗議するため焼身自殺を図ったのが発端だと言うのです。その背景にあるのは、若者の高失業率や物価上昇、汚職への不満が各地で抗議行動へと増えていると報じています。

 各地で治安部隊の発砲により死者が続出。政府が死者23人と主張しているのに対し、人権団体はAFP通信に、チュニス周辺部で8人が死亡するなど、死者は少なくとも66人に上ったと述べるとともに、「虐殺が起きている」と批判。チュニスでも13日、夜間外出禁止令が解除された後にデモ行進が再開され、目撃者によると、市中心部で男性1人が警察に射殺されたという。
 背景には、若者の高い失業率があり、物価上昇や汚職への不満も加わって、抗議活動への参加者は増えている。

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 素人なので原理的なことは分らないまでも、だからこそ不思議なのは、油田を持ち原油の輸出国であるアフリカの各国は、何故市民の生活水準がまともに維持できないのかということです。政治が悪いからと言ったらそれまでなのでしょうけど、それにしても、貧富の差の激しさや治安の悪さが目に付くアフリカです。石油の価格が上がったり下がったりするのは、日本では課金問題はあるとしても、高いからと言って暖房しないで凍死したという話もあまり聞きませんが、電気を熱源にしたエアーコンディションに切り替えようかと思ったりはします。昔は石油の価格が安かったので電気代と比らべるようなことはしませんでしたが、2008年の石油高騰時にはドッキリしました。だからと言って、アフリカやイランなどの原産国が潤っているわけでもないらしい。石油の価格は、物価の高騰を示唆するバロメーターのようになっているのでかなりの関心事です。石油高騰の理屈が分らないことはさて置き、今回の暴動の背景にある物価高のことに関連して少し調べてみました。
 北アフリカのアルジェリアはチュニジアのお隣(西隣)ですが、ここでも食料品の高騰が原因した暴徒と警官隊の衝突が頻発していると報じています。が、チュニジアとは異なり、インフォーマルセクター(非公式部門)を規制するために導入された政策が元で、卸売業者や流通業者はこの新政策にともなうコスト増加分を消費者に添加したため食用油や砂糖などが20%も値上がりしたのだという事です(ウオール・ストリート・ジャーナル2011年 1月 10日

 抗議の動きは、数が多く失業率も高い同国の若者たちの間に、広まったようだ。国際通貨基金(IMF)の統計によれば、同国の人口の70%近くは25歳未満の層が占めているが、その失業率は推定30%に達する。
 カブリア内相が国営メディアに語ったところでは、先週半ばに始まった暴動で少なくとも3人の暴徒が死亡し、このほか約100人の暴徒と少なくとも300人の警官が負傷した。
 同国は世界有数のエネルギー生産国だが、1999年以降圧政を敷いているブーテフリカ大統領は北アフリカや中東のほとんどの国が抱える若年層の高失業率問題の対策に完全に成功しているとはいえない。若年層は何年も前から住宅難を訴えており、一方で市民社会の創設を目指すグループは政治的自由を求めている。
 アルジェリア政府は8日の閣議で、砂糖と食用油の輸入関税、付加価値税、それに関連する法人税の「一時的、例外的免除」を決めた。政府は声明で、この新たな措置はこれらの価格を40%以上下げることを目的としたものだと強調した。9日には新たな抗議活動の報告はなかった。

 かなり極端ですが、40%も値下げすると抗議活動が沈静化したと言う話なので原因は明らかですが、それにしてもこれだけの値下げができる政府の財政は一体どういう仕組みなのかと呆れます。
 また、アルジェリアは穀物などの食料の大手輸入国であると記事でも触れていることから推測するのですが、昨年の異常気象で干ばつに見舞われたロシアは、小麦の輸出禁止措置をとったことで市場が高騰し注目を集めました。この影響でアフリカ南部モザンビークで、パンなどの値上げに抗議する市民デモが暴徒化して警官隊と衝突したことがありました。パンを片手握って抗議する画像に覚えがあります。この値上がりは、2008年を上回っていると報じていますが、2008年と言うと私が石油価格の高騰に閉口した年ですが、これを上回る高騰だというのは想像以上でした。
 イギリスのフィナンシャルタイムズ紙は、国際エネルギー機関(IEA)の主任エコノミスト、Fatih Birol氏の説を引用して次のように報じています(ロイター2011年 01月 5日)。

 Fatih Birol氏は、原油価格は世界の景気回復を脅かす「危険ゾーン」まで上昇していると警告した。
同氏は「原油価格は世界経済にとって危険な領域に入りつつある。原油の輸入価格は景気回復に対する脅威となっている。これは、原油消費国と産油国への警鐘だ」と述べた。
FT紙はIEAの分析を引用し、経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国の原油輸入コストが過去1年間に2億─7億9000万ドル増加したと伝えた。
IEAによると、これはOECD域内総生産(GDP)の約0.5%に相当する金額となる。

 景気と言われて調べると、ロシアの干ばつがかなり影響しているようです。

 国連食糧農業機関(FAO)が5日発表した昨年12月の世界の食料価格指数は214.7となり、統計を開始した1990年1月以来の最高を更新した。干ばつに見舞われたロシアで小麦生産が落ち込んだことなどが響き、新興国の需要増大でこれまで最高だった2008年6月(213.5)を上回った。
昨年12月は前月比で8.7ポイント上昇。6カ月連続の上昇となり、食料の国際価格がじわじわ値上がりしていることを示している。1月6日 時事

 これにいち早くフランスのサルコジ大統領が米国との首脳会談で、世界的な食料価格と為替の安定についてオバマ大統領の支持を求めるという方針を打ち出しています(ロイター1月10日)。

 食料価格の上昇とアルジェリアなどでの暴動を受け、サルコジ大統領には、為替相場と同様に商品価格の極端な動きへの対処について、G20参加国間の調整を求める声が強まっている。

 サルコジ大統領は、議長国としての任期中に為替システムの改革をはかりたい考え。

 サルコジ大統領のあるアドバイザーは、匿名を条件に記者団に「より多国間での協調が世界の不安定性増加傾向への最良の答えだ。われわれは、この考えを米国に持ちかけ、そのようなアプローチに参加する意思があるか尋ねたい。そうすればより詳細な提案が可能となる」と述べた。

 「為替相場や商品価格の極端な動きへの対処」は、G20の調整でできるものとは思いも寄りませんでした。だったら血生臭い暴動に早々に手を打ってほしいと願うばかりです。
 良く言われていることに、原油や食料の価格が高騰する原因に大量の投機マネーがあります。今回の値上がりがそうかどうか、専門的なことは分りません。アメリカは昨年二度に渡って量的緩和政策を講じましたが、現在の新興国に起こっている食料品の物価高が、ロシアの穀物輸出禁止によって生じた影響とこのアメリカの量的緩和政策との関わりであるとすれば、この痛みは致し方ないことだと思います。そして、アメリカの量的緩和策の影響がジワジワ寄せてきたことが原因しているとすると、オバマ大統領にとっては外交と内政の板ばさみに会い、厳しい対応に追われるのかもしれません。元々は、中国元の安さに太刀打ちできないアメリカ国内の産業を活発化するためにも行われた量的緩和政策で、中国が悲鳴を上げて元をもっと世界水準に引き上げてくれることが望まれるのですが、思いがけない場所から悲鳴が上がったものだと思いました。
 日本はデフレで物価は安いと言われていますが、石油だけはなんだか今年も高いなあと感じます。2008年並みになるかと恐れ戦いたのはつい最近のことですが、素人の漠然とした不安はまんざら外れでもなさそうです。こうして刺激を受けながらデフレから脱却する時、一部の物価は上がるが給料は下がるみたいな現象をやり過ごさないとならないのは必須です。が、この影響って、まさかに日本が底から抜け出し始めているってこと?だったら嬉しいのですが、そんなことはありえませんね。
 石油価格を気にして暖房しない、と言うわけにも行かない信州の冬には厳しい高騰です。

追記: 大概の世界情勢は極東ブログでしっかり押さえているということもあって、またしても後付で恐縮ですが、2008年07.03の「原油高騰の雑談、2008年前半版」(参照)で、まるで今の状態を予言するかのような当時の石油高騰の話が展開されています。

 次に。FRBがインフレコントロールしづらくなる、と。へぇ。食品とエネルギーを除いたコア・インフレの場合は、ある種の自動調整的な動きになるらしいのだが、原油価格と食品価格が上昇し続けると、そうもいかないらしい。そういうもんか。そしてこの傾向は当分続くとのこと。
 日本はどうだろ。食品とエネルギーは上がるが他はデフレのままだろう。そのあたり、よさげなバランスになる? いやこれは冗談にしても悪過ぎるな。

サミュエルソンはあまり大胆に言ってないというか、蛮勇無きか、けっこう韜晦して言っているけど、でも、短期的には原油が暴落するリスクをヘッジしつつ、産油国の政治から米国は独立できるように政治をしたらあ、ということかな。  たぶん、日本もな(オイルマネーとかなんとかマネーで日本売却完了前に)。 

 原油高騰がどのようなものを齎すか、単純に物価上昇へという流れとは違う方向性を秘めていることに感慨もあります。しかし、日本売却前にだって。ここで内閣改造し、消費税増税に向けて躍進するべく与謝野氏を起用しています。大丈夫なのかな?という不安は今更始まったことではないのですが、想像以上の我慢が必須になりそうです。

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