2010-12-24

「新START」を誇るアメリカと「DREAM法」を認めないアメリカ

 昨日のテレビで、久しぶりにアメリカ・オバマ大統領の声を耳にしました。「新START」を批准にこぎつけ、直後の記者会見のもようでした。「弾んだ声で力強く」とも思いませでしたが、着任後、外交や内政で上手くいっていないことが多い中で、やれやれだったかもしれません。反対する共和党から賛成票を確保したとは言え、この合意の内容が何にとって良いのか、私にはよく分りません。
 24日朝日新聞では、今後の課題に触れています(参照)。

 「核超大国」である米ロ両国は、核不拡散条約(NPT)で義務づけられた核軍縮義務を、新条約で一応果たす形だ。だが、履行されても、米ロ合わせて3千発以上の核弾頭が配備される。弾頭数の計算に保管分を含まず、爆撃機1機を一つの核弾頭と数えるなど、「核ゼロ」にはほど遠い。最低限の宿題をこなした段階に過ぎない。

 このため、オバマ政権は、次の一歩として、非核保有国の多くから期待される包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准や、米ロの戦略核をさらに減らし、戦術核や未配備の核の削減交渉にも入る意向を示している。

 議会構成がねじれる来年度以降の批准に見送れば、オバマ大統領提唱の「核なき世界」や、ロシアとの関係回復が危ぶまれるとろでした。「START1」の提唱から10年を要したのに比べ、自らの主導で1年8ヶ月で合意にこぎつけたというのは評価されているようですが、私は、少し複雑な気持ちを持ちました。
 超大国の米ロがこの合意に達したことで、世界の保有する核兵器がやや減ったとしても、増やしているインド、イラン、パキスタン、北朝鮮、中国などの国もあるのです。しかも、これらの一部の国と、ロシアもアメリカも国益のために共同開発を契約しています(参照)。この矛盾で世界が成り立っている今、国防の弱体化だと批判する共和党議員もいるそうですが、それだけではなく、「核廃絶」を唱えるオバマ大統領の平和願望が理解できません。
 また、これらの台頭国が、ロシアやアメリカが辿ってきたような道を辿らないと、核軍縮には至らないのでしょうか。加えて、富裕国がそれに払った代償は少なくはなかったはずですし、ここまでの道のりは長かったと思います。この無駄をさらに繰り返す世界の動きが、理不尽に思えてなりません。
 一方、「新START」の陰で目立たなかった「DREAM法」の改定案が懸案として残ってしまったのは、アメリカという国が変わってきたことを強調しているように感じました。
 この法案は、「優良な不法移民」に永住権を与えようとするもので、二年前の大統領選で支持を得たヒスパニック系を繋ぎとめるため、二年後の大統領選までに成果を上げる必要に迫られている懸案と言われています(朝日)。2010年12月12日

 正式名称の頭文字を取って「DREAM(夢)法」と呼ばれる。対象は16歳までに米国に入り、高卒か同等の学歴を持つ不法移民で、幼少時に親に連れられて入国したなど本人に不法滞在の責任を問えない場合だ。最低2年間、大学に通うか米軍に入隊し、かつ罪を犯さないなど「素行善良」であれば永住権を申請することができる。

一方、反対派の主な理由について、12月29日日本語版Newsweekが伝えています。

 不法移民に「恩赦」を与える行為はさらに多くの不法移民を呼び寄せる結果を招きかねない。大学か軍隊かという事実上の二者択一を突き付けることで、貧困層の若者に軍への入隊を強いることにもなる。
さらに、兵役を全うしても永住権を認められないケースが多そうなことも問題とされた。共和党の反対を抑え込むため提出された修正法案で、永住権取得の要件が厳しくなったためだ。

 これで思い出されるのは、2008年、日本に不法入国したフィリピン人夫婦の国外退去とその実子で、日本生まれの娘の滞在許可を巡る一連の問題です。日本は移民を認めていない国であるし、そもそも不法入国で日本人に帰化することも国籍をとることもできず、合法的に処理されました。
 この日本と比較するわけではありませんが、もともとは移民の国であるアメリカで、何とか合法的に解決できる道をつけて欲しいと個人的には願っていました。
 無国籍のまま生きて行くことがどれ程苛酷な生き方になるか、少しでも海外生活をしてみると分ることですが、一切の保障が無く、命は自分で守るしかないのです。最近の日本も個人情報に喧しくなってきている通り、何かにつけて身分を証明するものの提示が必要ですが、それが一切ないとなると、社会生活が困難極まりないことになります。不法入国した親の責任ではありますが、その責任を負う自覚すら親の念頭に無かったとしたら、果たして先進国の考え方で罪を問えるのか?という疑問もあります。
 アメリカ人として市民権を持ち、長く住みつくために永住権を持つ外国人にとって、アメリカは、少なからず門戸を開いている国であることは事実だと思いますが、この問題とアメリカがもともと移民の国であるということを一緒に考える原理性は無いかもしれませんが、何かが胸につかえます。
 オバマ大統領が、「米国では安全保障分野では与野党が協力する、という力強いシグナルを世界に送った」と、「新START」を誇るのであれば、「DREAM法」を人の生きる権利として認めるアメリカにはなれないのでしょうか。

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