2010-12-18

ロシアが抱えている問題

 ロシアでは毎年恒例で行われているそうですが、プーチン首相が国民との対話をするテレビ番組があるというのがちょっと面白いと思いました。この対話は4時間半にも渡って一般国民からの質問に答えるというので、どんな質問があったのかと興味津々でしたが、報じているのは「毎年恒例の国民対話、プーチン首相が答えなかった質問は?」(AFP)でした。事前に寄せられた国民からの質問に答えて行くという番組展開で、答えなかった質問から、ロシアの国民感情と政府の間の空気ようなものを感じました。

「医者がわいろや謝礼金を受け取るのをやめるのはいつですか」
「ロシアの封建制度が終わるのはいつですか」
「いつになったら表現の自由と自由選挙が認められますか」
「いつになったら役人や金持ちに法律が適用されますか」
「真の民主化はまだですか」
「いつか豊かに暮らせるようになりますか」
「一体いつ政界を退く予定ですか?」
「ロシア国政の混乱はいつか終わるんですか」
「あなたの気に障る質問は、あなたの耳には届かないんですか?」

 抜粋記事なのですが、国民に約束しているいくつかの公約が履行されていないことへの質問なのか、単純な質問なのかわかりませんが、国民の不満は、抑圧によるのか、ロシアの国民感情に触れるのは珍しいことです。いずれにしても、ロシア国民の声は、自由平等を求める叫びのように感じます。また、このことが気になるのは、大統領選挙を二年後に控えているメドベージェフ大統領の国民に対するアピールが、どう展開して行くのかという点です。
 調べているうちに気になったのは、「ロシアで民族対立が激化、若者グループ1000人以上を拘束 」(AFP)で報じているように、ロシアは移民を受け入れている国です。日本はこの点に関しては国を閉ざしているので、難民・移民で問題が起こるようなことはありませんし、その危機感をかんじることもないため、なんとなく他人ごとになりがちな問題です。

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 事の発端は、どうやらサッカーファンの対立からのようです。

 ロシアでは4日、モスクワのサッカーチーム、スパルタク・モスクワ(Spartak Moscow)のファンの男性が、北カフカス出身のイスラム系の若者グループに射殺される事件が発生。これをきっかけに、ロシア系の民族主義者とカフカス出身者など少数民族の若者との間で民族対立の緊張が高まっていた。

モスクワのほか、第2の都市サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)や南部サマラ(Samara)などでも、武装して集まった若者グループらが身柄を拘束されている。

 モスクワでは近年、市場や建設現場で働くロシア南部や中央アジアからの出稼ぎ労働者が増加していることから、市当局に対し、移民の数を制限しロシア系住民に職を与えるよう求める声が高まっているいる。

 この暴動の発端は、今月2日にスイス・チューリッヒで行われたワールドカップ開催地抽選会で、ロシアが2018年のホスト国に選ばれたことから急激に高まり出したというのですが、サッカーファン同士の揉め事ではなく、ロシア系民族主義とカフカス出身者などの少数民族の抗争と捕らえているようです。これに対して、メドベージェフ大統領は次のように声明を出したようです(毎日)。

 メドベージェフ大統領は暴動を「ポグロム(集団的な迫害)であり、罪を犯したものは罰せられる」と非難。ロシアでの18年W杯開催が決まった直後にクレムリンのすぐ隣で起きた「不祥事」だけに政権は衝撃を受けている模様だ。大統領は簡易ブログのツイッターで「国内とモスクワは全てコントロール下にある」と強調したほどだ。

 また、先のプーチン首相の「答えた質問」に対して、政治的な批判もあるようです。

プーチン首相は、国内で激化する民族対立をめぐって「あらゆる過激思想」は「ウイルスだ」と非難。また、脱税などの罪で服役中の元石油王ミハイル・ホドルコフスキー(Mikhail Khodorkovsky)受刑者について、「泥棒は刑務所にとどまるべき」と発言した。反プーチン派のホドルコフスキー受刑者は禁錮8年の実刑判決を受け服役中だが、別の罪で近く判決が言い渡される予定。リベラル派は、政敵に対して重すぎる制裁だと批判している。

 ロシア外交が充実して来ているとは裏腹に、国内の問題としては、他のヨーロッパ諸国が抱える移民問題と同様、深刻化しているようです。
 メドベージェフ大統領の背景に、このような政治課題があったのを知って感じたのは、大統領選ではその指導力が問われるという点です。民族抗争に対する政府弾圧が激しくなれば、自由や平等を願う市民感情は、反政府となるのは必須ですし、不満や要望を国に希求する感情も高まるのではないかと思います。
 ロシアのこの状態は、中国政府が国民の民主化傾倒を弾圧する姿とも重なり、六四天安門事件(1989年6月4日)のことが浮かびました。中国は政府よりも軍の力の方が勝っているため、この国が変わるためにはどれ程の時間がかかるかわかりませんが、ロシアが中国と違う点は、NATOなどを始め、最近ではポーランドやアメリカとも友好的な関係を持つようになり、世界が受け入れ始めている点です(参照)。内政を変えざるを得ない状況が、外交を通して固まって行く可能性もあると思います。また、北方領土問題ではロシアに二島返還の意向があるとする中、日本が四島返還を頑なに守り通すだけでは折り合いを見る事はできません(極東ブログ)。それがロシアの日本に対する外交カードとなるのか、どのような手を日本に伸ばしてくるのか気になります。今後も注視して行きたいと感じました。

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