2010-12-21

ベラルーシの人々が選んだこれからの5年-キルギス新政権との違い

 先日、民放でタレントが、キルギスに住むただ一人の日本人女性を訪ねるという番組に目が止まり、しばらく見入ってしまいました。その女性は現地の男性と結婚し、男性の弟とその両親、一人娘と共に同居している家族でした。その光景は、私が育った子どもの頃の昭和の一家団欒のように写って、懐かしい空気を感じました。キルギスと言えば旧ソ連ですが、中国に隣接しているためか東洋系の面立ちが親近感を呼びます。このキルギスの現在の人の暮らしぶりとは裏腹に、政府に関してはいろいろと問題のある国でもあります。
 キルギス系とウズベク系の民族対立の表面化により、400人以上の死者を出す民族衝突が起こり、隣国ウズベキスタンに越境したウズベク系難民は10万人以上に達しました。また、キルギス国内の避難民も約30万人に達し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、キルギスに「人道危機」が迫っていると警告を発する混乱状態にもなりました(極東ブログ:「キルギス南部民族衝突の背景」)。この混乱を収束すべく、6月に、国民投票によってオトンバエワ暫定大統領が信任され、新憲法案が承認されました。これによって、バキエフ大統領による独裁的な国から議会制民主主義がスタートしたことは喜ばしい結果だったといえます。同時に気になっていたのは、同じく旧ソ連であるベラルーシ共和国の大統領選挙でした。

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 ベラルーシが気になる理由は、ルカシェンコ大統領が4期目(任期5年)に決まれば、この国はさらに次の5年間が独裁国であり続けることの是非がかかっていたことです。言わずと知れた「欧州最後の独裁国」の選挙です。国際的には、この強権政治に対する批判は強く、欧米諸国との関係は冷え切ってしまった状態であったため、関係修復の意味でも選挙が民主的に行われることに期待はありました。が、ルカシェンコ氏の再選という結果を昨日知って、今後の国際交流の中でこの国はどう発展するのか、気がかりな点もあります。憶測や妄想めいた話ばかりになってもどうかと思うので、選挙の経過(毎日jp)から記録しておくことにします。

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 旧ソ連のベラルーシで19日投票された大統領選挙(任期5年)は即日開票の結果、現職のルカシェンコ氏(56)が4選を決めた。一方、治安当局は同日夜、抗議運動をしていた野党候補者を含む100人以上を逮捕、事態は混乱しており、国際社会からの非難の声が上がり始めた。選挙管理委員会によると、開票率99%で、ルカシェンコ氏が79.67%を獲得。野党候補のサニコフ元外務次官(56)が2.56%で、残りの8人は2%以下にとどまった。有権者数は744万人、投票率は90.66%だった。

 投票率が90%以上で80%の得票率で当選した大統領選出などと聞けば、アフリカ・ルワンダのカガメ氏の選挙を思い出しますが、それはさて置き、この選挙が民主的に行われなくてはならなかった理由は、外国の選挙監視団を受け入れた事と、民主的な選挙を行うことを条件に欧州連合(EU)から最大30億ユーロ(約3300億円)の支援が約束されていたためです。実際、この選挙のどこが民主的だったのか、調べてみてもそれについてはあまり鮮明ではなく、強いて言えば、候補者の擁立が今までになく多人数であったことと、野党候補者の集会を認めたことくらいでしょうか。へっ、そんなことは選挙では当たり前だ、というレベルですが、実際はこのようなレベルでも独裁国では画期的だと言えるようです。が、どうも選挙後の集会では、これまでのルカシェンコ独裁政治批判が始まり、選挙のやり直し請求が出てきたと言うのです(時事ドットコム)。

  【モスクワ時事】ベラルーシ大統領選で4選を決めたルカシェンコ大統領は20日、「ベラルーシでは役立たずの民主主義はいらない」と述べ、民主化を拒否する考えを表明した。同大統領は大規模な抗議集会を開いた野党勢力を「ならず者」と非難した。
 「欧州最後の独裁者」と呼ばれる同大統領は選挙戦中、欧米の民主化要求に一定の譲歩を示していたが、西側との関係修復は困難になったとみられる。
 19日夜、ミンスク中心部の広場で開かれた集会には数万人が参加し、大統領陣営による選挙不正に抗議した。治安部隊は実力行使で集会を解散させ、約600人の身柄を拘束。インタファクス通信は大統領選の野党候補9人のうち7人が拘束されたと伝えた。
 選挙監視に当たった欧州安保協力機構(OSCE)は20日、「ベラルーシは民主的な選挙の実施には遠い」と批判。特に票集計に問題があると指摘した。米国やポーランド、ドイツ、リトアニアはルカシェンコ政権の強権発動を非難する声明を出した。(2010/12/21-01:27)

 欧米諸国の指摘のとおり、民主的に選挙は行われなかったのかもしれませんし、ベラルーシの人々にとって、独裁的な政治にどこまで不満があったのかも定かではありません。しかしながら、圧倒多数の得票数でこの独裁者が再選されたのです。これと言うのは、欧米諸国が民主的な選挙を望み、EUからの3300億円を望んで受け入れたにもかかわらず、この国自体が民主化を希求したこととは一致していなかったのではないだろうか。例えば、民主的な国による民主化の指導がアフリカなどの国で上手くいったという例が多くない、ということとも連想します。国が変わるためには、長い年月その国の人々がそれを願って繰り返し求めて行くようなプロセスがあってしかるべきで、それは、バキエフ政権に変革を望んだキルギスの結実からもうかがえます。
 今回の選挙では、得票が、例え不正からとしても、ルカシェンコ氏をそれなりに支持したベラルーシの人々が出した結果であり、民主化を心底願ってはいなかったという現れかもしれないと感じました。ただ、国際社会の仲間入りを思うと、欧米諸国とは難しい関係が少なくとも5年は続くのだろうと思います。また、そういった点で国が貧しくなり弱体化すると、それを拾う神もいるのです。だからと言って、ベラルーシが不幸な国だとも言い切れません。日本が民主的な政治を行っているのか?と思えば、うーん、難しいところです。

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