2010-12-17

いつまで待てばよいのか税制改革-法人税減税5%にも所得税率引き上げにも今は賛成できません

 僅かながらでも法人税を納めているので、今回の法人税減税にはそれなりの関心があります。菅政権の法人税減税5%についてですが、率直に言って、たったの5%減税でどうやって雇用促進までやれるというのか、何を考えているんでしょうか、と、驚いて呆れました。菅さんが目論む経済成長や雇用促進の改善の内の、雇用促進は、経営現場感覚では無理です。また、減税事態は嬉しいことのようにも思いますが、それがそうでもないらしいのです。骨髄反射した私の頭を冷やしてくれたのは、高橋洋一さんの解説でした「法人税5%引き下げでわかった 税理論も実行戦略も欠如した民主党のお粗末」(ダイヤモンドオンライン)。
 ここで指摘されている通りだと思える部分は、実際に会社の経営側に立てば分ることですが、高橋さんの挙げている「成長か、所得配分か税制改革の目的すら不明確」(参照)の説明です。

 資金を人に投資するか設備投資に回すか、または内部留保にして後で使うかは経営者が決めることで、たとえば減税と引き換えに雇用を要求するのは、経営判断の否定になってしまう。雇用というのは、経済の派生としてでてくるものだ。経済のパイを大きくして景気が良くなったら人を雇う、というのが正しい順番で、企業に人を雇わせて景気を良くするというのは本末転倒である。

 菅さんは、何故このようなマズイことを言うのだろうか?スイッチが違うところに入っているとしか考えられません。そして、この決定前に、菅さんは経団連会長の米倉弘昌氏と会談したとの情報を得たのですが、残念ながらソースがないのでここでは言えませんが、その米倉氏のインタビューでは、菅さんの取り違えを批判しています(Yahooニュース)。

➠経団連会長「何を考えているのか」法人税減税で政府批判
 また法人税引き下げの条件として企業側が雇用確保などを約束すべきという意見が出ていることについては「私が約束したとしても経済界がやってくれるかどうか。経団連は予測値を提出済みだ。資本主義でないようなことをやってもらっては困る」と語った。

 経団連は実質減税で5%という要望を崩しておらず、課税ベースの拡大については政治判断に委ねている。

 お昼のワイドショーのような話になってしまうのでこの辺でやめておきますが、つまり、菅さんのお説は、経営現場からも識者からも受け入れがたいめちゃくちゃなことなのです。企業が雇用を促進するかしないかを強要できる立場の人も団体もいないのにもかかわらず、そんなことが本当にできるとしたら、それは、お隣の国くらいだと思います。これは菅さんの放言なのか失言なのか、兎に角、周囲を困惑させます。
 そして、悩ましいのは、この減税措置が見切り発車であり、よい結果を生まない政策なのだと早くも見破られてしまっていることです。高橋さんの解説の前段にあるマクロ経済の観点が非常に分りやすいです。数字が並ぶとちんぷんかんぷんになる人は、単位を変えて数字を小さくすると直ぐに分ります。
 そして、高橋さんの最後の部分で指摘されていることは、戦後の目覚しい経済成長の中で思わしくない方向へ成長してしまった税制を改革すべきではないかと感じる元になりました。

日本の法人税率が高いのは、納税者番号的な仕組みが先進国の中では珍しく徹底していないので、個人の資産・所得把握が不十分な結果ともいえる。この観点から見ると、納税者番号の導入が先決で、それで得られた所得税増収分を法人税減税にあてれば、5%どころか10%以上も引き下げることができる。

 これを知って困惑したと言うか、菅さんには悩まされます。
 と言うのも、一昨日のエントリー「アメリカのようになりたくない-日本の医療制度改革」(参照)で「高額所得者から高い税率で税金を徴収することにためらう方がおかしい」とまで言い切り、どれ程この政府に協力しようと考えても現時点では無駄になるのかもしれないと思うからです。がっくし、でした。
  納税者番号制度とは、佐藤内閣で検討はされたようですが、制度化されないままボツった案です。国民一人一人に番号を宛がって納税以外にも共通に整理番号として用いるという内容です。このような制度が必要かどうかは別として、現行では税金の徴収が正しく行われていないということです。ですから、高額所得者者に限定して増税することは、公平性を欠くと言えます。
 誤魔化しと言っては語弊がありますが、収支の科目の解釈はいろいろで、経費と見るか個人消費と見るかでは課税対象が変わります。また、正確に計算されない部分があったり、正しく申告していない業者など様々だというのは言わずもがなです。また、個人商店の消費税納税などは行なわれていない方が多いと思います。これは売り上げの限度額が消費税課税対象額に満たない場合です。それでも売り上げには消費税が上乗せされていますし、仕入れにも同様に課税されています。一番誤魔化しの効かないのは(というのも語弊はあるのですが)会社員だ、という話は昔から誰もが思うとおりだと思います。と、不満を言いたいのではなく、昔から市民はニコニコ納税ではなく、如何に家にお金を残すかに努力しているのです。ですが、納税方法が整備され、セコイ野心など露呈もしなくなり、納税が当たり前のことになれば脱税もなくなります。監査の目を光らす作業に費やす時間や人件費は無駄な経費として、税金の使い道から浮いてきます。
 今回の増税と減税の無意味がそれなりにわかってくるのはいつのことになるのかと思いますが、菅さんが結果論として後で失敗策だと気づいた時に今の椅子に座っているようでしたら、是非とも税制改革を真っ先にやってください。

|

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: いつまで待てばよいのか税制改革-法人税減税5%にも所得税率引き上げにも今は賛成できません: