メドベージェフ大統領の外交と、武器輸出三原則の見直しを見送った日本の課題
3日から10日までの予定で実施されている「日米共同統合演習」の空域にロシアの哨戒機2機が侵入し、訓練が一時中止となった事を知りました。仙谷官房長官は、「訓練の詳細については事柄の性質上、答えを差し控えたい」としたことで普通に聞き流せない思いがあって、ネットのニュースを少し調べたところ、8日午後にも電子偵察機が進入したそうです。訓練中に二度もこのような行動を取るというのは意図的な事だとしか思えませんが、その理由は定かではないようです。また、訓練の中心部を横切ったというのは異例で、ロシアのこのような動きについて、各紙とも捉え方に違いはあるのですが産経ニュースは、「妨害」として報じています(参照)。
3日から10日までの予定で実施されている「日米共同統合演習」の空域に、ロシア軍の哨戒機2機が進入し、訓練を妨害していたことが7日、分かった。ロシア機は日本海・能登半島沖に設定されていた訓練空域の中心部を横切り、米軍と自衛隊はイージス艦を使った訓練の一部を中止した。政府内では、前原誠司外相が4日に北方領土を上空から視察したことへのロシアの対抗措置との見方が強い。
確かに訓練側にとっては、一時中止となった要因では「妨害」という見方もあるとは思います。この一連の事はどれほど異例の事かということではNHKは次のように報じています(参照)。
同じ空域にはロシア軍の哨戒機2機が6日にも進入し、このときは、機密性の高い情報を収集されるおそれがあるとして、訓練が一時、中断されています。防衛省によりますと、演習の際、他国の軍用機が訓練空域に連続して進入してくるのは極めて異例だということで、今回の演習にロシアが強い関心を寄せていることがうかがえます。
2012年のロシア大統領選挙を意識したメドベージェフ大統領による強い指導者の演出効果としては、日本を対象に選んでいるかに思われます。横浜APECの直前に国後島へ「国内旅行」として、ロシア首脳陣が降り立ったのは初めてだとする視察をしたのも、今回の挑発的な行動もその一環なのか気になります。
また、メドベージェフ大統領の外交手腕とも言うべきか、NATOに対してロシアが協調姿勢を見せたことは、ロシアが国際的にも評価されつつあるということであり、同時に日本との外交にメリットがなくなってくるということか。既に日本は相手にされていないのかもしれませんが、こうなると、日本の外交カードは何なのかということが問題になってきます。そして、もっと気がかりなのは、今後の日本の防衛力です。
日米の抑止力の行使でもある統合訓練の真ん中を横切らせるロシアの神経は、大胆すぎます。前原外相が4日北方領土を上空から視察したことへの対抗措置か、また、沖縄基地移設問題が解決しない日米同盟が機能状態にあるかを瀬踏みしているのかと、思惑は色々あるようです。このような事態に対応するための日本の軍備が気になるところですが、皮肉にも6日菅総理は、社民党と協力体制を組むことを決めたのです(NHK)。
菅総理大臣は、社民党の福島党首と会談し、来年の通常国会で、社民党が求めている労働者派遣法の改正案の成立を目指すことや、来年度の予算編成に向けて両党が協議していくことで一致する一方、福島党首は武器輸出三原則の緩和を行わないようけん制しました。
菅首相が武器輸出三原則の見直しを先送りしてしまったことで、主力戦闘機の国際共同開発に参加できなくなるということです。言っても始まりませんが、社民党に傾倒してしまったことは、国民の安全を守れなくなった第一の原因だと、後で後悔しても始まりません。余談ですが、社民党はTPP参加にも反対で、沖縄辺野古移設にも反対しています。この社民党と手を組む菅さんは、かつて鳩山さんが沖縄基地問題で火傷をしたことが学習できていません。誤解なきよう付け加えますが、私は、武器輸出三原則がなくなり、いずれ日本は核保有国になるようなことを本意として願っているわけではありません。ですが、周辺国の軍備体制を見れば、戦後の平和ボケな感覚ではいられないと感じています。
極東ブログでこの件について書かれたとき(参照)、戦後、戦争をしない国になった筈の日本が軍備を積極的にする国になろうとは信じがたいことでした。拒絶するような気持ちの反面、隣国の核保有や中国の武器輸出先などを見渡すと、素手ではいられなくなるということを思います。菅さんと福島さんのこの満面の笑みの内側に、ロシアとの課題は置かれているのでしょうか。
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