フィナンシャル・タイムズ「新たな均衡に向かう世界 」って例えばこんなこと?
12月17日英フィナンシャル・タイムズ紙の訳文「新たな均衡に向かう世界 」(参照)の冒頭の部分が頭にこびりついたように残っていて、このところ気になっている成長の速い国と遅い国の外交に関心がある中、ロシアとインドの外交に関する記事があったので触れておくことにします。
日経記事「インド、ロシアと戦闘機を共同開発 首脳会談で基本合意」で、メドベージェフ大統領の外交の発展的な動きについて伝えています(参照)。記事では、ここ数年大型輸送機の契約をアメリカに奪われ、劣勢に立っていたとあり、商売敵のアメリカに対して優位につけているという日経らしい記事なのですが、私は、政治的には世界がどのような動きをして、その中で日本はどうなるのかという点を見て行きたいと考えています。このままでは立ち遅れるばかりの日本にどのようなチャンスがあるのか、そのことに関心があります。
インドが軍備を強化する背景は、中印国境紛争(1959年)がベースにあり、この紛争後、中国の侵攻に加わったパキスタンの武装集団とインド軍による第二次印パ戦争(1965年)を起こしています。その後、中国は、パキスタン支援を継続的に行っているため、インドは、国防と牽制(けんせい)の意味で、中国とパキスタンに照準を合わせて軍備してきているという経過があります。
日経記事で伝えている第5戦闘機は、敵のレーダーにとらえられにくいステルス性能に優れているそうですが、中国も独自に開発しているとして、インドとロシアの共同開発は2017年に実戦配備を予定しているそうです。つまり、中国に支援されているパキスタンも同等の軍備を備えるということです。
また、インドはロシアのみならず、米中英仏にとっても貿易拡大や兵器の輸出先国としては大型商談がまとまるよい相手国であるとして、経済の流れを作る中心になっていると思われます。
日本とは、10月のAPECで、経済連携協定(EPA)の締結を合意しています。ただ、日本とインドの利害関係は、先に挙げた国々とは違うと思われます。日本は、中国の意地悪でレアアースが入手できない苦渋をのまされたこともり、割と速い対応でインドからレアアースを買い付けられるように交渉を行いましたが、これはインドとの交易上は良好に向かっているとは言え、日本にとっては、支出する話です。ロシアは、最新鋭の技術をインドに売り、アメリカの商戦も同様に売り手です。
ここで日本は何ができるのか?
日本の新防衛大綱では、武器輸出三原則の見直しを見送ったので、例えば、ロシアやアメリカの武器や戦闘機開発にはほとんど今まで通りの関わりを維持するしかないとすると、隙間産業化できるのでしょうか。経済的にも日本はこれから何をして食って行くの?と、起業を考えるにしても、若い世代の頭脳の使い道すら閉ざされはしないかと懸念します。
日本の外交カードについて、仙谷sorryの記者会見発言を伝えている産経ニュースの「甘い対中ODAへの認識 政府の戦略見えず」によると、政府開発援助(ODA)の意義を強調した発言があったようです(参照)。
仙谷氏は、資金協力から、新幹線や石炭火力発電の共同開発などの技術協力に重心を移す考えを示したが、経済産業省幹部は「経済大国になった中国に技術を提供する必要があるのか」と疑問視する。
ODAは発展途上国を支援し、友好国を増やす有力な外交手段だ。21年版ODA白書は「日中関係全体や中国情勢を踏まえ、国益に合致する形で総合的・戦略的な観点から実施していく」との方針を示した。
しかし、沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などで中国は日本の利益に反する行動をとった。外務省筋は「たとえ1兆円渡しても中国はびくとも動かないだろう」と述べ、もはや対中ODAが外交カードとして機能しないと指摘する。
政府のこの指摘は、国内総生産(GDP)では日本を追い越して世界第二位になろうかとしている中国の現状から見ても納得できます。相手の欲しいものをこちらが持っていることで外交カードの効果があるというものですから、今の中国にはお金ではないと思います。このことを承知の上で、このようなちぐはぐを言われているのだとすると、これまでの仙谷sorryから学習したことから推測すると、裏に何かあるのかとも思います。が、頭の切り替えができていないだけだとすると困ったことです。
中国やインドは台頭する国と言われ、先進国の仲間入りまでには至っていないようですが、急成長している国です。日本や欧米諸国は、先進国と言われていますが、負債を背負ってひーひーついて行くばかりとはこのことでしょうか。
ここ数年、下火な話が年の瀬に皺寄せのようにやってきますね。わざわざ書くこともないかとは思いましたが、「新たな均衡」までの途中なのだと思うと少し気が紛れますが、日本の政府にその画策があるのかな。
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