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2010年12月

2010-12-31

ユーロ圏の経済危機に直面するドイツ-頑張れ!ドイツ

 日本の景気回復と財政再建が深刻であるのと同時に、欧米諸国も同様、興進国以外のこれらの国の抱える問題は同じです。ただし、ドイツだけは例外で、積極的にEU以外の国との外交を進め、欧州最大の経済大国と言われています。このドイツの肩にのしかかる問題としてと言えばよいのか、ユーロ圏全体の問題の取り組みとして捉えるべきなのか良く分らない問題が持ち上がっているのでクリップしておくことにします。
 エストニアの、欧州単一通貨ユーロ導入を決めたことに端を発しているようです(時事ドットコム)。

 【フランクフルト時事】バルト三国の一角、エストニアが2011年1月1日、旧ソ連圏として初めてユーロを導入する。これにより、ユーロ圏は17カ国に拡大する。ギリシャなど小国の危機がユーロ圏全体を揺るがしたことで通貨統合に尻込みする中・東欧諸国が相次いでおり、エストニアの成否は今後のユーロ圏拡大の行方を占うことになりそうだ。
 エストニアは1991年の独立後、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)への加盟を果たし、ユーロ導入により欧州回帰の「ゴール」に達したといえる。
 同国の人口は約134万人と岩手県とほぼ同じ。国内総生産(GDP)はユーロ圏全体の0.2%弱にすぎず、通貨統合で「ユーロ圏への大きな影響はない」(独エコノミスト)との見方が大半だ。緊縮策断行の結果、財政状態も良好。また、通貨クローンとユーロの為替相場を連動させており、ユーロ移行の影響は限定的とみられる。(2010/12/30-15:14)

 今年5月にギリシャ、11月にアイルランドの破綻がユーロ圏の各国を大いに揺さぶったのは事実で、日本の菅さんまでもがギリシャの破綻を間違った解釈で引用し、国民に増税の必要性を説いたのは記憶に新しいことです。国の破綻に敏感なのは何処も同じで、ユーロ導入に尻込みしたりユーロ圏の国が破綻を迎えるのもユーロ参加国にとっては負担を抱えることになります。
 このような状況下で何故エストニアがユーロに参加することになったのか?産経ニュースは、次のように報じています(産経2010.12.29 21:17

 2000年以降、国内総生産(GDP)比で7・1~11・4%の経済成長を続け、“バルトの虎”と呼ばれたエストニアだが、金融危機に直撃され、昨年の経済成長率はマイナス14・1%。しかし、この落ち込みが逆にユーロ導入の障害だった年10・9%のインフレ率を急激にさまし、今年6月、EU首脳会議でユーロ参加が正式決定された。
 人口134万の小国エストニアにとり為替変動リスクを回避できる“大きな通貨”ユーロを導入するメリットは大きく、ユーロの信認を問われているEUにとって新規加盟を認めることは改めて通貨同盟の結束と大きな通貨の魅力を演出する格好の機会だった。

 インフレからデフレに急激に落ち込む状況は日本も経験していることなので良く分りますが、レートの大幅な違いにより輸出で利益が出なくなり、国内総生産がどんどん落ち込んで景気が悪化します。これを食い止めてくれるのが変動差の小さい「大きな通貨」としてのユーロだとういことは納得できます。
 一方でユーロ参加に積極的ではないポーランドやチェコは、破綻したギリシャよりも経済規模が大きいことから、導入に踏み切るのに慎重にならざるを得ないようです。ユーロ導入のメリットは必ずしもあるとは言えないようです。そこで、ユーロ主要国ではユーロ加入の利点を拡大するための措置が考えられているようですが、ドイツとフランスの反対にあって議論が進んでいないというのが意外です。

 年明けにはポルトガルの救済は不可避との見方が強まる中、EUは12月の首脳会議で、ユーロ圏の財政危機国救済策として欧州版IMFを13年に導入する構想を承認したが、融資枠の拡大や信用力の低い国の資金調達が容易になるようEU各国による共同債を発行する案はドイツやフランスの反対で議論されなかった。
 スペインがEUに支援要請した場合、現行制度では支えきれない恐れがあるため、ユーロ圏は抜本的な対策を迫られている。 

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 つまり、ドイツが鍵を握っているということです。ここで、気になる記事があります。ドイツのユーロ圏への融資について、声明が二転しています。まず、23日のロイター16:53によると

 [ベルリン 23日 ロイター] 23日付の南ドイツ新聞によると、ドイツ政府は、財政が悪化したユーロ圏加盟国を支援するため、新たに「欧州安定成長投資基金」を創設することを提案する。

  同紙によると、ドイツ政府は方針説明書で、ユーロを維持することは「国益だ」と再確認したうえで、「ユーロ圏最大の経済国であり、安定の要であるドイツに対する譲歩」として、ユーロは「ドイツの安定の利益に方向を合わせる」必要があると主張する予定。
 基金は、基本的には欧州中央銀行(ECB)に次ぐ独立性を持つ機関とし、金準備や国営企業の株式を担保に融資を行う。

 ところが、これを訂正する記事として同日の21:29によると

[ドイツ 23日 ロイター] ドイツ財務省は23日、同国政府がユーロ圏の安定に向け新基金の創設を提案するとの一部報道について、財務省の下級レベルで作業部会が原案を作成したが、政府の見解を反映したものではないと表明した。

 財務省報道官は声明で「提案書は財務省幹部クラスに提出されておらず、承認もされていない。提案書に盛り込まれた構想は、財務省や連邦政府の立場を反映したものではない」と表明した。

 そして、30日、ブルームバーグが報じていることによると、ドイツはユーロ圏の統合には賛成的な立場を表明しています(ブルームバーグ)。

12月30日(ブルームバーグ):ドイツのショイブレ財務相は、ユーロ圏の統合について「大いなる強化」を求める立場を表明した。ドイツ紙、ターゲスシュピーゲルが同相の特別寄稿文を引用して伝えた。
ショイブレ財務相は、財政と予算、経済、社会政策の面で欧州の統合が一段と強化されれば、欧州中央銀行(ECB)は金融面での安定に注力することが可能となり、その独立性が一層向上することになると指摘した。
結果として、ユーロは長期的に安定した通貨としての地位を世界の金融界に認めさせることになるだろうと書いているという。

 これはどういうことなのか?
 調べてみると、前者についてはまんざら誤報というわけでもなく、メルケル首相の発言にユーロ圏救済メカニズムの規模拡大は検討対象にないという意向を示す声明があります(ロイター)。

 首相はサルコジ仏大統領との会談後「救済メカニズムの拡大は今回、議題に上っていない。アイルランドに投じられた融資分は同メカニズムの10%未満に過ぎず、(規模拡大は)検討対象ではない」と述べた。

 ただ、ユーロには「単なる通貨以上の意義がある」ことを理由に、ユーロを破たんさせることは許されないと付け加えた。「ユーロの破たんは欧州の破たんであり、これは非常に深刻だ」と語った。

 将来の危機に備えたユーロ圏の恒久的な危機対応メカニズムの設立は、ユーロ防衛を示す最善策との考えを示した。

 首相は「(来週開催の)欧州連合(EU)首脳会合では、われわれがユーロを防衛しているとのサインを示すべきだ。恒久的な危機対応メカニズムと(EU)条約改正における判断を下すことが重要なのはこのためだ」と述べた。

 この記事から、ドイツは、ヨーロッパ最大の経済大国然としての威厳が現れているというか堂々とした発言に、かつての静かなドイツという私のイメージが変わりました。ドイツの政治も戦後60年もすると変わったということでしょうか。
 第二次世界大戦のナチスの歴史を引きずりながら、欧州諸国に統合して行くことだけがドイツの生き延びる道のようにして、ひたすら低姿勢で復帰の道を歩んできたという認識です。既に世界は民主的になり、戦争の傷跡を持つ世代は政界から消え去りつつあるため、特にドイツが低姿勢である必要などないしナチスの歴史を背負うこともないのです。ごく普通の当然の権利として、自国の主張なり意見を国際社会に向けて発信すべきです。先の財務相の発言が訂正されるなどの行き違いも、メルケル首相のこの発言から見ると、当初はユーロ圏への融資が国益にならない損なことだと判断したのかもしれません。失言として訂正するでもなく、事務レベルの落ち度ということにしたのかもしれません。
 ドイツ銀行のこれまでのユーロ圏への貸し出しを考慮すると、ユーロ圏の経済崩壊はドイツの経済に危機を齎します。つまり、ドイツは関係国と共に、この経済危機から脱出する大きな鍵を握っているのだと思います。こうした中、ドイツ国民の声はメルケル首相にエールを贈るのだろうか。
 頑張れ!ドイツ。

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2010-12-30

インドが抱える国際関係と内政の問題

 インドの経済成長は目覚しいものがあり、今や中国と並んで世界をリードしていると言われています。欧米諸国は、インドと経済や政治関係を密接にするために競うように「インド詣で」が始まっていることは前にも書いています(「フィナンシャル・タイムズ「新たな均衡に向かう世界 」って例えばこんなこと?」)。このような関係で注目するのは、中国との関わり方です。
 インドを中心に、中国との関係には1965年中印戦争後の国境線画定問題があり、その中国は、インドと係争中のパキスタンの核開発を支援しています。この三国を巡る問題がかなりシビヤーに起こる中、中国とインドは今月16日、オバマ大統領との商談額(100億ドル)をはるかに上回る160億ドル(約1兆3500億円)の商談に合意しました。中国の商には恐ろしい秘密が潜んでいるかに思われますが、インドは、貧困層の底上げと共に経済成長のために安価な中国製品輸入などに頼る部分もあり、中国とのパートナーシップは欠かせないのは言うまでもない事です。順風満帆に進んでいる外交の一方で、やはり内政が気になります。国民の反発が燻ってる、と感じた記事があったので引用します(朝日010年12月29日13時43分)。

➠政府批判に扇動罪、インドで相次ぐ 言論弾圧と批判も

 医師で人権活動家のビナヤク・セン氏が先週末、扇動罪で終身刑の判決を受けた。インド中部チャティスガル州の奥地で少数部族民の保健医療に長年携わり、国際的に表彰されたことがある人物だ。その一方で、同州などを基盤とする反政府勢力「インド共産党毛沢東主義派(毛派)」への治安部隊による掃討作戦に対しては、批判していた。

 一方、首都ニューデリーの警察当局は11月、英ブッカー賞を受賞した女性作家アルンダティ・ロイ氏に対し、扇動容疑で捜査を始めた。

 ロイ氏はパキスタンとの係争地カシミールをたびたび訪れ、治安部隊の弾圧に抵抗し、分離独立を求める地元民に共鳴。10月に行われた集会で「歴史的にみて、カシミールはインドの一部ではなかった」と発言し、問題視されていた。

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 インドは、民主主義国として世界最大であると誇っても、言論の自由を認めないのは片手落ちというものです。内政を揺らす毛派の勢いを抑圧するため、「終身刑」を言い渡すというのはかなり強権な政府であるという印象を受けます。また、パキスタンとは1965年の印パ戦争後、中国の継続的なパキスタン支援に対して、インドは国防と牽制の意味で核軍備しています。
 また、インドとパキスタンが国境付近の領有権問題で係争中であることで、中国はパキスタンに配慮した政策を取る事にインドの反発を強めているという背景もあります。加えて、この国境問題が解決していないことで浮き彫りになっているのは、中国がインド人に発行する「査証」の問題です。これに触れて、産経ニュースが報じています(産経2010.12.27 08:03)。

インド北部ジャム・カシミール州は、パキスタンと中国も一部の領有権を主張している。中国当局は今年7月、同州を担当したインド軍幹部への訪中ビザ発給を拒否したが、これは、同州のインド領有権を中国が認めていないに等しい。訪中する同州住民に対しても旅券とは別の紙にビザを発行している。
 前例を覆したインドの“反撃”について、インド英字紙、ヒンドゥスタン・タイムズ(18日付)は「『一つの中国』への言及からインドが手を引いたのは、(中国を支持するという)“切り札”が役に立たないと認識したからだ」と指摘する。

「インドにとってのカシミール問題は、中国にとっての台湾、チベット問題と同様に繊細な問題だ」と配慮を求めている。

 これらの状態から、中国の関わり方がインドの内政問題にも発展し、インドの対中外交に強い姿勢を見せざるを得ない状況を作っているとも言えると思います。
 また、汚職の横行するインドでは珍しくシン首相個人に関してあまり問題を聞きませんが、21日AFPが伝えていることによると、2008年、当時の通信相のアンディムス・.ラジャ(Andimuthu Raja)氏が、携帯電話の周波数帯の新規割り当てを不当な低価格で行っていた疑惑を、シン首相は知りながら黙認したことが野党から追求されているようです。

 同問題を最も強く追及しているのが、ヒンズー教系の野党インド人民党(Bharatiya Janata Party、BJP)だ。BJPは、シン首相が、これほど長期間にわたって沈黙を続けてきた理由を明らかにするには会計委員会では不十分だと主張。調査委員会が設置されなければ、2月の議会でも審議に協力しない姿勢を示している。

 国民会議派は、2009年の選挙後、小規模政党と連立与党を組み政権の座についた。だが、10月に主催した英連邦競技会(Commonwealth Games)では、費用が予算を超過したうえ、競技会に関する調査で疑わしい契約や手抜き工事などが見つかるなど相次ぐ不祥事に見舞われており、インド政界は混迷を深めている。(c)(AFP/Penny MacRae)

 日本の民主党でも「カネと政治」の問題が尾を引いているので、このインド問題は耳の痛い話です。
 中国のような一党独裁政権では、国民の民主化運動が進んで国民のご機嫌取りのようなパフォーマンスが外交手腕に求められ、日本のような弱い国がイジメの対象になります。一方、民主主義国では国民のことはそっちのけで、政府与野党の揉め事が起こるのは常です。
 昭和の経済成長期を経験している私は、いつかもっと良い日が訪れるのだとばかり思っていましたが、政治構造の対照的な中国とインドで、しかも戦火を交えた両国の政治的なつながりをこうして見ていると、歴史は繰り返すのだとしみじみ思います。

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2010-12-29

ロシアの元石油王ホドルコフスキー被告の裁判から見るロシアの政治と社会体質

  この裁判の背景には、ロシア・プーチン首相の政敵として2003年に脱税などの疑いで逮捕され、2005年に有罪判決を受け、現在8年の懲役刑に服役中投獄されているかつての大富豪ミハイル・ホドルコフスキー被告の再度の裁判の判決が有罪と出たことについて、メドベージェフ大統領の司法改革姿勢が問われていることが注目すべき点だと思います。
 ボドルコフスキー被告は、逮捕前はロシア最大手の石油会社ユコスの社長であった当時、政権に取り入ったオリガルヒ(新興財閥)の代表でもあり、プーチン首相と対立して投獄されて以来、リベラル派を代表する殉教者へ変身したといわれている人物です。マネーロンダリングなどの罪で追起訴され、27日有罪が認定されたため刑期が延長されることになったことが背景です。
 2012年の大統領選にプーチン氏が返り咲きを狙うかに関心が集まっているロシアでは、メドベージェフ大統領の推進する法の統治の進展に疑念がもたれる結果となったようです。
 この裁判は、欧米からも関心が寄せられ、各国からの批判の声が強いようです。

クリントン米国務長官が「政治的意思が影を落とす法執行に深刻な疑問を抱く」との声明を出した(産経ニュース2010・12・28

ギブズ米大統領報道官は27日、有罪認定を受け「法の乱用があるようだ」とロシア側を非難する声明を発表していた(日経2010・12・28)。

ドイツのウェスターウェレ外相も「(ロシアの)近代化の後退を示している」と声明で述べる(産経ニュース2010・12・28

また欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障上級代表(EU外相)は声明で、EUは裁判の行方を注視していたとし、「ロシアが人権、および法の統治に関する国際的な確約を順守することを期待している」との考えを示した(朝日2010・12・27

 これに対してロシアの検察側は、

 ホドルコフスキー元社長が270億ドル相当の石油をユコス子会社から横領し、資金を洗浄したと主張。新たに6年の懲役刑が課された場合、2012年の大統領選で選出される次期大統領の任期終了真近の2017年末まで服役することになる(ロイター 2010・12・27 )。

 この裁判について世界の主要国の見方はほとんど批判的で、この背景には、旧ソ連体制から引き継ぐ政治や社会体質が根強く残っているのだと思います。現在のロシア連邦になったのは1991年旧ソ連のゴルバチョフ政権後で、崩壊前は、ソビエト連邦共産党の一党独裁国家でした。1991年8月20日の新連邦条約締結に向けて準備が進む中、これに反対するソ連超共産党中央委員会メンバーによって前日にクーデターが起こったのですが、ゴルバチョフ氏を軟禁してこれに抵抗した改革派に押され、失敗に終わったという経緯があります。この時、アメリカ、日本、フランス、イギリスなどの主要国がこのクーデターを支持しなかったことにより、共産党の一党独裁政治が崩壊し、改革派による建国が始まりました。
 今回の裁判は、プーチン首相の旧ソ連政府を思わせる強権的な手法にメドベージェフ大統領の司法改革がどこまで反映されるのか、ロシア司法制度の真価を問う裁判であり、各国が注目するのはこの点だと思います。
 また、ロシア国内では、

 野党勢力のカシヤノフ元首相やネムツォフ元第1副首相らは同日、「裁判所は現政権の命令を実行した。わが国の政治・経済の将来に禍根を残す」との声明を発表。人権活動家らも「落胆した」と地元メディアに語り、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのロシア支部は「最高裁の取り消しを期待する」と述べた(朝日2010・12・28

 日本のメディアでは報じていな情報として、裁判の公正性が気になります。また、この裁判を世界がどう見ているのか、今後、各国がどのように報じるのか注意を向けておきたいと思います。

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2010-12-28

フィナンシャルタイムズが取り上げた中国の風刺メール-不平等な中国社会

 気になる中東情勢に的を当てて見ていった結果、中国の関わりが気になるところです。調べているうちに、中国の物価高が相当の勢いであることに政府はてんやわんやしているといった状態であることが分り、今後の中国外交を見る点でも中国国内の経済が深く関係してくると思われるため、その状況を押さえておくことにします。
 中国独自の政治・経済による急成長に世界が注目しているのはもちろん、日本もその成長を上手くコントロール下に置いて欲しいと願っているはずです。この急成長による物価上昇は、アメリカの緩和については、極東ブログ「米国金融緩和がもたらすヌルい戦争」(参照)で詳しく解説していますが、アメリカが選択した血を流さない外交として二度にわたる量的緩和政策(QE=Quantitative Easing)を行ったことで、中国へのドル流入の影響が原因だとされているようです。しかし、異常な黒字の状態で元を売りドルを買う市場介入という政策の結果だと思うので、中国政策が今後どのような対応をするか世界の注目を集めていると思います。
 中国の今の状態について毎日では危機感を持って報じています(参照)。

 中国は、輸出振興で巨額の経常黒字を計上する一方で、輸出減少に直結しかねない人民元相場の上昇を防ぐため元売り・ドル買いの市場介入を加速。このため、元が市場にあふれ購買力が増し物価が上昇、金融引き締め強化による過剰流動性の解消が急務となっていた。半面、引き締めが行き過ぎれば企業活動などに悪影響が出て、景気が失速する恐れもある。失業率上昇などが社会不安に発展すれば一党独裁の中国共産党に対する不満が爆発しかねず、経済成長を大きく減速させるわけにはいかない。
 中国経済は景気過熱を防ぎながら、成長も持続させなければならないという重大な局面に立つ。同国政府は今後、経済動向を見極めながら、さらなる利上げや預金準備率引き上げを慎重に進めることになりそうだ。

 中国国民の不満のほどはどうかと思い調べて見ると、フィナンシャルタイムズの「風刺メールが浮き彫りにする中国の不平等社会」で取り上げている市民の風刺メールの例が目に止まりました(参照)。

 異様に高い住宅価格に対して北京市民が抱く怒りをうまく捉え、農民や泥棒、売春婦が家を買うのにどれほど時間がかかるか計算した皮肉たっぷりの電子メールが中国のサイバースペースで蔓延している。

 売春婦は合計1万人の顧客をもてなす必要があるという。18歳から46歳まで1日たりとも休まず、毎晩1人顧客を取るマラソン帳場をこなさないといけない計算だ。泥棒が家を買うお金を見つけるためには、2500件の盗みを働く必要があるという。

「帝王切開手術には5万元かかるから、生まれてくる余裕がない。学校に通うには3万元以上かかるから、勉強するだけの余裕もない。住まいは1平方メートル当たり2万元以上するから、どこにも暮らせない。医薬品収益は少なくとも10倍に上るから、病気になる余裕もない。火葬費は3万元以上するから、死ぬこともままならない」という内容だ。

 つまり、今働き盛りの成人が一生働いて家を一軒手に入れる頃は寿命も尽きていると言いたいのでしょう。日本でもこの手の試算はよく使われます。
 日本の急成長と比較すると、例えば、バブル崩壊前に高い家を購入し、その返済に25年ローンを組み、いつになったら楽な生活がやってくるのかと不安をたっぷり抱えながらカウントダウンしている家庭もあるでしょう。また、バブル崩壊後、家の値段が安価になってから買った人はもっと悲惨で、買った途端に日本経済はデフレ不況となり、毎月のローン返済から始まってボーナス払いも困難になり、家を手放した人が増大しました。目下、家はない、仕事もない、収入の道が閉ざされても政府や市町村の支援は届かず、NPO法人の活躍がニュースで流れると少しほっとする年の瀬を迎えています。不況と好景気でいつも取り上げられて来た「家」は、私達にとって安住を意味するからなのか、ある意味バロメーターとなってきました。
 26日毎日新聞が伝えている中国の温家宝首相の声明は、早い対応と言えますが、やはり経済立て直しの照準は住宅価格に絞られているようです(参照)。

「私の任期中に住宅価格を必ず合理的な水準にする」とし、13年の任期終了までに住宅価格の高騰を抑制する決意を表明した。

 また、最近の物価高騰で「中低所得者の生活はいっそう困難になっている」と指摘。今回の追加利上げや預金準備率(中央銀行が金融機関から強制的に預かる準備金の割合)引き上げなどで「物価を合理的な水準にすることができる」と強調した。

 住宅価格をめぐっては、中国人民銀行の最近の市民調査で75.5%が「高すぎる」と回答するなど不満が高まっている。(北京・共同)

 昨日もテレビで中国の貧富の差を報じていましたが、物価高の折、子どもを中学より上の学校へやれない家庭の貧困生活をみて、新聞の文字からの想像よりはるかに貧しさを浮き彫りにしていました。
 中国が日本を追い越すのに30年掛かると言われた当時の日本はインフレで、経済成長を遂げている勢いの良い時期でした。当時に推測されていた30年を上回り、とうとう中国に追い越されてしまった日本から見える中国のこれから先は、もっと速いスピードで日本の今のような状況に陥るかもしれません。これは、中国で水準の低い生活をしている人々は、良い経済状況も見ずに悪い方へと向かう事を示しています。風刺メールは大げさでもなく、本当に痛いところなのです。
 日本の今年の漢字は「暑」でしたが、中国では「漲」だったそうです。訓読みでは「みなぎる」ですが、水が張り詰めると意味を持つ漢字です。丁度、水滴が丸く張り詰めて今にも弾けそうな、そんな中国経済を言い表している漢字です。

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2010-12-27

イランのガソリン高騰の政治的な背景や燻る問題

 クリスマスで起きたアフリカとパキスタンの戦闘(「クリスマスに起きたアフリカ・スーダンとパキスタンの戦闘」)は中国絡みの視点で見てみました。私が注視しているイランにも中国が進出している国として気がかりでしたが、日をさかのぼってみると燻っているものがあるようです。気がかりな点をニュースのクリップと共に書き留めておくことにします。
 まず、イランと日本の関係です。これは、アメリカのイラン核武装に対する制裁の要請に同調して今年9月30日に共同声明を出している通り、日本はアザデガン油田から撤退しています。(産経ニュース)。日本が相当の出資率でアザデガン油田の採掘権を保有し、「石油公団」が存在していた頃は、日本の官僚にとっては天下り先であり、それなりの経済関係はありました。アメリカの制裁要請に日本が応じた理由は、当時とすれば、油田よりも日本を守るのを優先させたのだと思います。尖閣諸島沖問題の解決の突破口は、アメリカの抑止が中国に与える牽制として重要だったからであると思います。イランと日本の石油事業に関しては、極東ブログに詳しく書かれています(参照)。気になるのは、これらの制裁がその効力をどう発揮しているのか、またはしていないのかという点です。
 アメリカのイラン制裁措置である「ガソリン禁輸」は、当時はあまり効果がないのではないかという見方など、諸説がありますが、12月22日朝日(参照)によると、イランのガソリン価格が4倍に値上がりしているとあります。制裁効果がないという懸念に、イランでも独自にガソリンを製油できるという点もあり、この報道は不思議でしたが、製油所の老朽化が深刻な状態のようです。

【テヘラン=北川学】イランで、ガソリンを格安に保ってきた補助金を削減する法律が施行された。1カ月の経過措置を経て、小売価格は従来の4倍となる1リットルあたり4千リアル(約32円)になる。核開発に対する国際社会の経済制裁が強まるなか、国民の不満がさらに高まる可能性がある。

 2010年度の国家予算はドル換算で約3680億ドル。うち約1千億ドルが補助金に投入され、ガソリンや電気代などを安く抑えていたが、この補助金を段階的に削減し、最終的には廃止する。補助金削減で浮いた金を製油所の施設更新や新規エネルギー開発などに振り向ける狙いがある。

 イランは世界有数の産油国ながら、製油所の老朽化でガソリンの国内消費量の約3割を輸入に頼っている。

 また、これに引き続きアハマディネジャド大統領は、水道、ガス、電気などの公共料金は小麦粉や砂糖なども値上げされるそうです。これらに政府の補助金が付加されていたことは知りませんでしたが、日本でいうところのバラマキが削減されるような話です。
 こうなることが分っていたのだとすると、オバマ大統領の制裁措置は平和維持に貢献していると言えますが、イランもこのままでは国民の不満を高めてしまいます。
 このような弱い立場の国にすきいるのが中国の無差別外交なので、とんでもないコンビになると思うのです。
 まず、イランと中国関係のアウトラインとして、中国にとってのイランは、中国のエネルギー需要の急増に伴い、石油や天然ガス資源に恵まれている魅力的な国に違いありません。また、制裁を受けて弱体化しているイランが中国を重要な国という位置づけにする根底に、中国は、経済制裁に批判的な立場をとっているからだと思います。中国のノーベル平和賞授賞式不参加要請の呼びかけに答えるあたりは、その関係性が重要だからだと思います。
 イランは、アメリカの制裁措置によって無くしたものもありますが、得る物も大きかったと思います。中国の目覚しい経済成長をお手本にだけはして欲しくないと思いますが、今後の動きに注視していたいと思います。
 さて、その核開発を進めるイランは、今後どのように政治利用するのか気になります。12月14日産経ニュース(参照)の伝えていることによると、アフマディネジャド大統領はモッタキ外相を解任後、サレヒ原子力庁長官に暫定的に外相を兼務するよう命じたとあるのですが、このような人事は日本でも良くあることですが、原子力庁の長官人事となると政府の動きがきになります。
 この動きについて毎日は、次のように報じています(参照)。

【テヘラン鵜塚健】イランのアフマディネジャド大統領と、ラリジャニ国会議長ら反大統領勢力との対立が激化し、政権保守派内が揺れている。失政批判の強まりに対し、大統領は外相解任など側近固めを進めて対抗。大統領は強硬イメージの陰で核問題打開の機会を探っているとみられるが、反大統領勢力がこの路線を妨害し核問題の進展も、より遠のく恐れがある。

 「核問題が遠のく恐れ」というのは、つまり、アメリカの制裁措置に困窮するアフマディネジャド大統領のアメリカとの和解の道が遠くなることを意味していると思います。
 他国の権力争いを国益に生かす商戦に長けている中国などは、現在のこのイラン情勢をどう見ているのだろうかと気になります。

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2010-12-26

クリスマスに起きたアフリカ・スーダンとパキスタンの戦闘

 日本では静かなクリスマスを迎えることができましたが、アフリカや中東の地では爆撃の音が止むことはなかったようです。
 24日、スーダン・ダルフールで起きた「正義と平等運動」(JEM)、「スーダン解放運動」(SLM)の反政府2組織と政府軍の戦闘で、40人が政府軍に殺害されたことを知り残念でなりませんでした(産経ニュース)。南部独立のための支援金は、こうした戦闘の武器へと消えてしまうのかと思うと、国の独立のためとは言え、支援すること自体が更なる戦闘力の強化になり、多くの人の命を奪うことに加担してしまうのは非常に残念で、払われる犠牲や代償は大きなものだと思います。以前にも触れましたが、スーダンで、中国製の弾薬などが見つかっていることから、中国は、思慮や配慮のない無差別的な手段で国を肥やしていると言えます(BBC)。また、中国が核開発の支援をしているパキスタンでは昨夜、世界食糧計画(WFP)の食料配給所を狙った自爆テロが起きたようです。
 このことを産経ニュース(参照)が次のように伝えています。

【ニューデリー=田北真樹子】パキスタン北西部部族地域バジョール地区にある世界食糧計画(WFP=国連の多国間食糧援助機関)の食料配給所の近くで25日、自爆テロがあり、AP通信によると、食料の配給を待っていた避難民ら少なくとも43人が死亡、100人以上が負傷した。隣接するモーマンド地区でも同日、パキスタン軍の攻撃でイスラム武装勢力40人が死亡するなど、テロ被害の拡大とともに軍の掃討作戦も激しさを増してきた。
  24日付のパキスタン英字紙ニューズによると、今年、国内で起きた自爆テロによる死者数が23日時点で、1224人(昨年1217人)にのぼり、過去最悪を更新した。ただ、自爆テロの件数は52件で、昨年の80件より減少しており、1回の自爆テロによる被害規模が拡大傾向にあることを示している。

 この難民が狙われる背景について毎日が伝えていることによると、タリバンの勢力が復活していることが起因しているそうです。

 パキスタン当局は米国の要請を受け、国境地帯で武装勢力掃討作戦を展開しているが、アフガン南部ではタリバンが勢力を復活させており、パキスタン側でも治安の悪化を招いている模様だ。

 バジョール管区は、反政府武装集団「パキスタン・タリバン運動(TTP)」ナンバー2のファキル・モハンマド司令官の出身地で、アフガンのタリバンなど武装勢力が潜伏しているといわれている。25日の自爆攻撃の標的となったサラルザイと呼ばれる部族は、他の部族に先んじて反タリバンの民兵集団を結成したが、最近のパキスタン北西部での治安部隊と武装勢力間の戦闘激化から避難民となった。

 アフガン戦争を主導しているアメリカが行っている無人機による越境空爆の目的は、武装勢力を殺害するためですが、同時に、多数の民間人も巻き込んできています。また、パキスタンの軍備や核施設を支援しているのは中国ですから、このような構図から、アメリカと中国の争いのようにも見えます。が、先のアフリカのことを加味すると、中国は、武器弾薬、核施設を必要とする国と無差別的に外交をしているだけではないでしょうか。これによって国際社会から浮きだすのはまたしても中国で、世界が支援する動きとは裏腹に、台頭する国々の中の一国として「国際ルールを破って対抗や競争に走るようになる」(FT)とはこのことだと思います。すでに、中国の外交に節操はないと言えますが、パキスタンで、無差別テロを生み出しているのはアメリカの無差別空爆でもあります。このスパイラルをどこかで断ち切る勇気を持つのはいったい誰なのか、誰かに答えを出してもらいたいです。
 ローマ法王ベネディクト16世はクリスマスイブの24日、バチカンのサンピエトロ大聖堂で行った恒例の深夜ミサの祈り(参照)も届かず、24日と25日の両日に起きた戦闘では多くの犠牲者を出してしまったのです。

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2010-12-25

極東ブログ「finalvent's Christmas Story 5」からもらったクリスマスプレゼント

 23日の夕刻、ぼんやりと老いて行く自分の今を思いながら、昔よく聴いた曲をToutubeで聴いていた時のことでした。
 今となっては、このクリスマスを祝う料理も飾り付けも、クリマスリースを玄関に飾る気さえ起こらなくなった空虚な気持ちをしんみり味わいました。これは、母親であることの虚しさというのかなあ、誰かの役に立てることが生き甲斐であることを強く思いました。心の中は空虚極まりないのに、そこに落ち込む自分ではなく、静かにその時間を味わいながら過ごせたような気がしました。焦りのような強い感情ではなかったのは、そろそろ自分自身の今を受け入れる覚悟ができたのかな、と、そう思いました。
 いとも簡単にこのような穏やかな気持ちになれたのは、何故だろう。
 ひたすら書きまくったからか。人は私の書くことを「激白」と言うけれど、それとは裏腹に、私自身は本当に書きたいことはあまり書いていない気がしていました。とは言え、その中でも本心に触れて書いてきたことは、全て自分に跳ね返ってきたと言えるかな。問題は、その跳ね返ってきたものをぼやけさせることなく、そのままを見ようとするのがキツイ作業だった。これまでやり過ごしてきたツケが、回って来たに過ぎませんが、最近は何かにぶつかっても、胸のざわざわした騒ぎが起こらなくなったことと、何かを思っても客観的にその自分を見ようとするように変化してきたと思うのです。
 今まで、老い先の時間を自分の命の残り時間だと勘定し、焦りがあったのかもしれない。考えてみたら、何かが起こっていつどうなるかしれない命であるし、自分が老いて死ぬとも限らない。だから、残り時間の勘定をやめたのもひとつかな。
 昨夜の「finalvent's Christmas Story 5」に今の私が丁度重なって、安らぐような気持ちになりました。上手く言えないのだけど、テルミンの響きと、一卵性双生児のデュオのザ・ピーナッツの声の響きは似ていて、昔どこかで感じた安らぎを思い出させてくれました。ザ・ピーナッツの歌が、あんなに綺麗だったとは昔は思わなかった私ですが、あの晩、私が聴いていた曲も、実は同じように感じていました。
 私よりもずっと大人の人の曲だったはずが、今では、私よりも若い人の美しい歌として聴けるようになったのは、それが老いるということ。満更悪くはないな、と嬉しかったです。

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Newsweek「大はずれ!2010年の予測ワースト6」からはずれた日本は?

 クリスマスには何か楽しいことでも書きたかったな。
 年寄り臭いと言われるようなことが口をついて出始めたのは、年の瀬だから。この時期になると、誰もが一年を振り返るので、どうしても悔悟の情が湧いてしまいます。それも、Newsweekの「大はずれ!2010年の予測ワースト6」(参照)のように並べて、そうだったら いいのになそうだったら いいのにな♬って、笑って飛ばすのも良いなと思いました。そして、この記事が不思議と励ましてくれました。いや、不思議である必要はないかな。世界の「大物政治家」がホラを吹いたわけでもないでしょうけど、「大物政治家」の話だからこそユーモラスにおさまるのかもしれません。これって、願望が大きすぎたから実現できなかったのか、それとも、予測不可能なほど世の中が混乱状態だったからでしょうか。日本の政治家がここに殿堂入りでもしていたら、大物政治家として認められたことになるのでしょうけど、どうもそのレベルでもないかな。何ともしんみりな話です。
 日本の来年度予算が昨日決まりました。この予算編成は、政権交代後初めてこの政府が立てた予算です。菅総理が「今までは仮免だった」発言をされましたが、予算編成に承認を得た以上はこれからは本免です。
 予算規模は10年度当初より1124億円増で、これは「微増」と言えるらしいのですが、予算額は過去最大規模であると同時に、二年連続で国債発行額が税収を上回る結果です(中日)。つまり、望んだわけではないのに、私は700万円以上の借金をしちゃったのです。Newsweek風味で言うと、高速道路料金は無料になり、お年寄りや子ども達は安心できたはず。で、そうならなかったことばかりが並ぶ政府ですが、元々、入ってくるお金も知らずに、国民が喜ぶことばかり並べて約束したのが間違えの元です。また、それを真に受けた人は夢を見たというか、馬鹿を見たと言うことです。
 また、来年度予算で一番数字が読めないのが、税収でしょうか。これが不安定要素だと考える理由は、法人税率を5%引き下げて雇用促進ができる、といまだに菅さんが信じていることです。雇用促進に繋がらない話は先日も書いたとおりで(参照)、これによって景気の回復を望めないので、税収は減る方向だとも言えます。
 今までにも書いてきたことですが、国にみてもらおうとするとそのための税金を払うのは私達なので、公共料金がただになるというのは間違えた認識です。昭和の時代では、それがありがたいことだと思い込んだ嫌いもあるかと思いますが、皆が納める税金がぐるぐる回っているだけです。単純に、働く世代が働けない高齢者や子どもを養うという構成だけを取り上げると、無駄なくそれに当てた結果、お年寄りや子どもが餓死するようなことがあってはならないです。これが最低限守られることで、それを、政府に裏切られたと国民に言わせないようやってもらうだけです。
 高速道路を無料化にするためには税金が増えるのだと説明され、これに納得すれば、べつに政府に騙されたとは思いませんが、この政府はそこをきちんと言わないからダメなのです。もしも、高速道路無料化や子ども手当て支給の話の裏に、増税が必須であることが分っていなかったとしたら、政治家の看板を下ろすに匹敵します。「大物政治家」の前提も外れてしまいます。今更言うのもなんですが、これは、二流政治家がそれなりの政治をしたに尽きる話です。なおかつ増税をすると言えば、国民は騙されたと思うだけです。
 と、話しているうちに、どうやらまた増税に関して仄めかしているようです(日経2010/12/24 21:07)。

 菅直人首相は24日夜、内閣記者会のインタビューに応じ、消費税増税を含めた税制の抜本改革について「年明けの段階で未来に向かって方向性を示していきたい」と表明した。与野党協議を呼びかける考えも示した。 

 仮にこの政府が長く続かなくても、「未来」の展望は明るいものであって欲しいです。

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2010-12-24

「新START」を誇るアメリカと「DREAM法」を認めないアメリカ

 昨日のテレビで、久しぶりにアメリカ・オバマ大統領の声を耳にしました。「新START」を批准にこぎつけ、直後の記者会見のもようでした。「弾んだ声で力強く」とも思いませでしたが、着任後、外交や内政で上手くいっていないことが多い中で、やれやれだったかもしれません。反対する共和党から賛成票を確保したとは言え、この合意の内容が何にとって良いのか、私にはよく分りません。
 24日朝日新聞では、今後の課題に触れています(参照)。

 「核超大国」である米ロ両国は、核不拡散条約(NPT)で義務づけられた核軍縮義務を、新条約で一応果たす形だ。だが、履行されても、米ロ合わせて3千発以上の核弾頭が配備される。弾頭数の計算に保管分を含まず、爆撃機1機を一つの核弾頭と数えるなど、「核ゼロ」にはほど遠い。最低限の宿題をこなした段階に過ぎない。

 このため、オバマ政権は、次の一歩として、非核保有国の多くから期待される包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期批准や、米ロの戦略核をさらに減らし、戦術核や未配備の核の削減交渉にも入る意向を示している。

 議会構成がねじれる来年度以降の批准に見送れば、オバマ大統領提唱の「核なき世界」や、ロシアとの関係回復が危ぶまれるとろでした。「START1」の提唱から10年を要したのに比べ、自らの主導で1年8ヶ月で合意にこぎつけたというのは評価されているようですが、私は、少し複雑な気持ちを持ちました。
 超大国の米ロがこの合意に達したことで、世界の保有する核兵器がやや減ったとしても、増やしているインド、イラン、パキスタン、北朝鮮、中国などの国もあるのです。しかも、これらの一部の国と、ロシアもアメリカも国益のために共同開発を契約しています(参照)。この矛盾で世界が成り立っている今、国防の弱体化だと批判する共和党議員もいるそうですが、それだけではなく、「核廃絶」を唱えるオバマ大統領の平和願望が理解できません。
 また、これらの台頭国が、ロシアやアメリカが辿ってきたような道を辿らないと、核軍縮には至らないのでしょうか。加えて、富裕国がそれに払った代償は少なくはなかったはずですし、ここまでの道のりは長かったと思います。この無駄をさらに繰り返す世界の動きが、理不尽に思えてなりません。
 一方、「新START」の陰で目立たなかった「DREAM法」の改定案が懸案として残ってしまったのは、アメリカという国が変わってきたことを強調しているように感じました。
 この法案は、「優良な不法移民」に永住権を与えようとするもので、二年前の大統領選で支持を得たヒスパニック系を繋ぎとめるため、二年後の大統領選までに成果を上げる必要に迫られている懸案と言われています(朝日)。2010年12月12日

 正式名称の頭文字を取って「DREAM(夢)法」と呼ばれる。対象は16歳までに米国に入り、高卒か同等の学歴を持つ不法移民で、幼少時に親に連れられて入国したなど本人に不法滞在の責任を問えない場合だ。最低2年間、大学に通うか米軍に入隊し、かつ罪を犯さないなど「素行善良」であれば永住権を申請することができる。

一方、反対派の主な理由について、12月29日日本語版Newsweekが伝えています。

 不法移民に「恩赦」を与える行為はさらに多くの不法移民を呼び寄せる結果を招きかねない。大学か軍隊かという事実上の二者択一を突き付けることで、貧困層の若者に軍への入隊を強いることにもなる。
さらに、兵役を全うしても永住権を認められないケースが多そうなことも問題とされた。共和党の反対を抑え込むため提出された修正法案で、永住権取得の要件が厳しくなったためだ。

 これで思い出されるのは、2008年、日本に不法入国したフィリピン人夫婦の国外退去とその実子で、日本生まれの娘の滞在許可を巡る一連の問題です。日本は移民を認めていない国であるし、そもそも不法入国で日本人に帰化することも国籍をとることもできず、合法的に処理されました。
 この日本と比較するわけではありませんが、もともとは移民の国であるアメリカで、何とか合法的に解決できる道をつけて欲しいと個人的には願っていました。
 無国籍のまま生きて行くことがどれ程苛酷な生き方になるか、少しでも海外生活をしてみると分ることですが、一切の保障が無く、命は自分で守るしかないのです。最近の日本も個人情報に喧しくなってきている通り、何かにつけて身分を証明するものの提示が必要ですが、それが一切ないとなると、社会生活が困難極まりないことになります。不法入国した親の責任ではありますが、その責任を負う自覚すら親の念頭に無かったとしたら、果たして先進国の考え方で罪を問えるのか?という疑問もあります。
 アメリカ人として市民権を持ち、長く住みつくために永住権を持つ外国人にとって、アメリカは、少なからず門戸を開いている国であることは事実だと思いますが、この問題とアメリカがもともと移民の国であるということを一緒に考える原理性は無いかもしれませんが、何かが胸につかえます。
 オバマ大統領が、「米国では安全保障分野では与野党が協力する、という力強いシグナルを世界に送った」と、「新START」を誇るのであれば、「DREAM法」を人の生きる権利として認めるアメリカにはなれないのでしょうか。

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2010-12-23

アフリカの大統領選挙と国際社会との関係の変化

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 先月、西アフリカ・コートジボワールで行われた南北を統一するための選挙は、内戦が発生して失敗に終わり、元の南北に分断されてしまったのは残念な結果でした。アフリカの各国で行われる選挙は度々国際社会の話題になりますが、難しい問題を抱えています。
 お隣のギニアでも先月選挙が行われ、選挙直後は、コートジボワールと同様に死傷者が出るほどの混乱があったと伝えていますが、最高裁は、選挙の不正を訴えていた側のディアロ氏の訴えを退け、コンデ氏が大統領に決定したという経緯があります。また、1958年フランスから独立後、初めての民主的な選挙での大統領誕生であったようです(毎日)。
 アフリカの選挙が成功しない理由の根本的な理由に、フランスやイギリスの植民地支配によって民族の不平等な扱いによる不満や反発する素地が根深くあり、クーデターや内戦を起こす元となってしまうようです。選挙そのものは今更言うまでもなく、腕ずくで権力を勝ち取るという解決方法を平和的に解決するための手段でもあります。が、この選挙事態が争いの元になってしまうのが困った問題です。この争いの元を辿ると、改めて、いかに植民地支配の権力が猛威であったかを物語っていると思います。また、国連を中心とする国際社会の支援が、アフリカに別の意味で権力となっているのではないかとさえ感じます。
 コートジボワールに話を戻すと、暴力的な手段による「クーデター」として報じているフィナンシャルタイムズの引用に加えたコメントがが印象に残っています(極東ブログ)。

フィナンシャルタイムズの投げやりにも見えるこの論調には、帝国侵略のタネを撒いた西欧の傲慢さというより、すでにその絶望が内包されているようにも受け取れる。

 また、来年1月9日に南スーダンの独立を問う選挙の前ということもあって、情報を追っていたところ、コートジボワールの状態がさらに悪化していることがわかりました(毎日)。

【ジュネーブ共同】国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のピレイ高等弁務官は19日、大統領選の結果をめぐり混乱するコートジボワール国内の衝突で、過去3日間に死者が50人を超え、200人以上が負傷したとして、人権侵害に深刻な懸念を表明した。

 治安悪化と国連平和維持活動(PKO)部隊に対する活動妨害で調査は困難を極めているが「今後も引き続き事態を注視していく」としている。(毎日新聞 2010年12月20日 東京夕刊)

 さらに、国連主要国からもかなりの批判が出ているようです(毎日)。

➠コートジボワール:大統領退陣要求強まる 各国が制裁警告
 フランスのサルコジ大統領は17日、ブリュッセルで記者会見し、コートジボワールのバグボ大統領を「民意に反して権力の座にとどまっている。速やかに退陣する以外の可能性はない」と非難した。フランスはコートジボワールの旧宗主国で、同国に平和維持部隊を派遣するなど影響力がある。
 欧州連合(EU)は17日に採択した首脳会議議長総括で、同国治安部隊によるデモ隊への発砲を非難、バグボ大統領陣営に制裁措置を発動する方針を確認した。制裁では陣営幹部への査証(ビザ)発給が停止され、EU域内の資産が凍結される。サルコジ大統領は退陣要求に応じなければバグボ氏自身に制裁が科せられると警告した。
 また、国連の潘基文(バンキムン)事務総長は17日の会見で、権力の座に居座るバグボ大統領の行為を「許されるものではない」と非難し、政権移譲を要求。米国もバグボ大統領が退任しない場合、制裁を科す可能性を示唆した。
 また、アフリカ域内からも非難が強まり、ケニアのオディンガ首相は同日、バグボ大統領を退陣させるべきだとし、アフリカ連合(AU)に積極的対応を求めた。
 一方、バグボ大統領は、国連とフランスに対し、平和維持部隊を国外に退去させるよう命じるなど強硬姿勢を崩していない。(2010年12月18日)

 このような状況で、バグボ大統領を追放すると問題が解決するかと言えば、決してそうはならないと思います。
 選挙に破れてもなお居座るバグボ大統領の対応は、日本の私達には理解しがたいものがありますが、見方を変えると、軍や警察を支配している実権者であることから、容易に大統領の座から退くのは難しいということも言えるのではないかと思います。
 権力者と支配者側の両方に民族、宗教、地域などに対立があり、これらの対立は、力でしか解決できないという現実なのかもしれません。
 先に触れた南スーダンで予定されている選挙にも関心を寄せていますが、これまで避難していた住民らが、選挙のために帰国し始めているようです。

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➠約5万5000人が国民投票を控え、南スーダンの故郷へUNHCRハルツーム12月21日)発国連難民高等弁務官事務所

先週、UNHCRは3万5000人の帰還民、そしてこの歴史的な出来事を可能にし、北と南の架け橋ともいえる、受け入れ地アビエイとその周辺地域に対してシェルターなどの緊急援助を始めた。

さらにUNHCRは帰還ルートに一時滞在所を設け、帰還民の支援にあたっていると同時に、南部の主要地区や、周辺国においてUNHCRのプレゼンスとキャパシティーの強化を図っている。

2005年1月にハルツームのスーダン政府とスーダン南部の主要勢力、スーダン人民解放軍の間で南北包括和平合意がなされて以降、約200万人がアビエイ、ブルーナイル、そして南コルドファンに帰還している。これに加え、周辺国に逃れていた33万人の難民がUNHCRなどの支援を得て帰還している。

今年に入りスーダン南部では、民族対立や反政府勢力の襲撃などによって、1月以降、国内避難民となった21万5000人を受け入れている。

治安の悪化、公共サービス、生活必需品へのアクセスの欠如、及びインフラの未整備という環境の中で、帰還民に対し、恒久的解決の手段を見出すことは、厳しさを増す。このような状況の中で
UNHCRは引き続きスーダン南部への帰還民の援助と、地域への統合を後押しする。

 かつてジェノサイドが起きたスーダンでの選挙が民主的に行われることを願うのは勿論ですが、南北を隔てる境界線画定も解消されない問題も抱えているため、難しい状況が続いているようです。帰還している人の数から、この土地に住むことがどれ程命の危険にさらされていたかを物語っていると思います。それだけに、民主的な選挙を願う以前に、安全に事が運ぶことを願います。

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2010-12-22

フィナンシャル・タイムズ「新たな均衡に向かう世界 」って例えばこんなこと?

 12月17日英フィナンシャル・タイムズ紙の訳文「新たな均衡に向かう世界 」(参照)の冒頭の部分が頭にこびりついたように残っていて、このところ気になっている成長の速い国と遅い国の外交に関心がある中、ロシアとインドの外交に関する記事があったので触れておくことにします。
 日経記事「インド、ロシアと戦闘機を共同開発 首脳会談で基本合意」で、メドベージェフ大統領の外交の発展的な動きについて伝えています(参照)。記事では、ここ数年大型輸送機の契約をアメリカに奪われ、劣勢に立っていたとあり、商売敵のアメリカに対して優位につけているという日経らしい記事なのですが、私は、政治的には世界がどのような動きをして、その中で日本はどうなるのかという点を見て行きたいと考えています。このままでは立ち遅れるばかりの日本にどのようなチャンスがあるのか、そのことに関心があります。
 インドが軍備を強化する背景は、中印国境紛争(1959年)がベースにあり、この紛争後、中国の侵攻に加わったパキスタンの武装集団とインド軍による第二次印パ戦争(1965年)を起こしています。その後、中国は、パキスタン支援を継続的に行っているため、インドは、国防と牽制(けんせい)の意味で、中国とパキスタンに照準を合わせて軍備してきているという経過があります。
 日経記事で伝えている第5戦闘機は、敵のレーダーにとらえられにくいステルス性能に優れているそうですが、中国も独自に開発しているとして、インドとロシアの共同開発は2017年に実戦配備を予定しているそうです。つまり、中国に支援されているパキスタンも同等の軍備を備えるということです。
 また、インドはロシアのみならず、米中英仏にとっても貿易拡大や兵器の輸出先国としては大型商談がまとまるよい相手国であるとして、経済の流れを作る中心になっていると思われます。
 日本とは、10月のAPECで、経済連携協定(EPA)の締結を合意しています。ただ、日本とインドの利害関係は、先に挙げた国々とは違うと思われます。日本は、中国の意地悪でレアアースが入手できない苦渋をのまされたこともり、割と速い対応でインドからレアアースを買い付けられるように交渉を行いましたが、これはインドとの交易上は良好に向かっているとは言え、日本にとっては、支出する話です。ロシアは、最新鋭の技術をインドに売り、アメリカの商戦も同様に売り手です。
 ここで日本は何ができるのか?
 日本の新防衛大綱では、武器輸出三原則の見直しを見送ったので、例えば、ロシアやアメリカの武器や戦闘機開発にはほとんど今まで通りの関わりを維持するしかないとすると、隙間産業化できるのでしょうか。経済的にも日本はこれから何をして食って行くの?と、起業を考えるにしても、若い世代の頭脳の使い道すら閉ざされはしないかと懸念します。
 日本の外交カードについて、仙谷sorryの記者会見発言を伝えている産経ニュースの「甘い対中ODAへの認識 政府の戦略見えず」によると、政府開発援助(ODA)の意義を強調した発言があったようです(参照)。

 仙谷氏は、資金協力から、新幹線や石炭火力発電の共同開発などの技術協力に重心を移す考えを示したが、経済産業省幹部は「経済大国になった中国に技術を提供する必要があるのか」と疑問視する。
 ODAは発展途上国を支援し、友好国を増やす有力な外交手段だ。21年版ODA白書は「日中関係全体や中国情勢を踏まえ、国益に合致する形で総合的・戦略的な観点から実施していく」との方針を示した。
  しかし、沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件などで中国は日本の利益に反する行動をとった。外務省筋は「たとえ1兆円渡しても中国はびくとも動かないだろう」と述べ、もはや対中ODAが外交カードとして機能しないと指摘する。

 政府のこの指摘は、国内総生産(GDP)では日本を追い越して世界第二位になろうかとしている中国の現状から見ても納得できます。相手の欲しいものをこちらが持っていることで外交カードの効果があるというものですから、今の中国にはお金ではないと思います。このことを承知の上で、このようなちぐはぐを言われているのだとすると、これまでの仙谷sorryから学習したことから推測すると、裏に何かあるのかとも思います。が、頭の切り替えができていないだけだとすると困ったことです。
 中国やインドは台頭する国と言われ、先進国の仲間入りまでには至っていないようですが、急成長している国です。日本や欧米諸国は、先進国と言われていますが、負債を背負ってひーひーついて行くばかりとはこのことでしょうか。
 ここ数年、下火な話が年の瀬に皺寄せのようにやってきますね。わざわざ書くこともないかとは思いましたが、「新たな均衡」までの途中なのだと思うと少し気が紛れますが、日本の政府にその画策があるのかな。

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2010-12-21

極東ブログの「防衛大綱決定を巡る朝日新聞とフィナンシャルタイムズのリベラル漫才」に釣られて防衛大綱改定について

 17日、日本の防衛大綱の改定が公表(防衛省)され、Twitterで拾ったNHKニュースの記事を見て、ふーん、なるほど、と思って流してしまいました。このところ、高齢者の医療保険問題やこども手当てなどのぐじぐじしたニュースが続いていたのもあって、すっかり忘れていました。内心、今の日本の政府のすることには関心が薄れているのも事実ですし、これ以上書くとなると、悪口か愚痴になってしまうのがオチだという懸念もありました。ところが、最近お休みだった極東ブログで昨日、この問題についてイギリスファイナンシャル・タイムズ紙と朝日新聞の引用を掛け合い漫才風味で書いているのが超面白く、歯切れが良いのです(参照)。ついでに私も釣られて書いている始末です。
 まず、この大綱の特徴をズバリ言っちゃうと図の示すとおりの状況で、金額的には2005年から2009年よりも7500億円減少した23兆4900億円なのです。政府の緊縮財政から言ったらイギリス並みとは言いませんが、陸上の防衛費を減らして海空に重点を置いたため、相殺関係になっているということが特徴です。だからあまり書くことに意味がないと思っていたのも理由の一つなのですが、この表を見ていてあれ?民主党にしては上出来なの?これってもしかして、アメリカの言いなりにならないことがやれたこと?評価すべきかな。と、見直す部分もあるかに思ったので、そのことに触れておきたくなりました。

Boueisyou海空自衛隊の装備強化=総額は減少-中期防※記事などの内容は2010年12月17日掲載時のものです(時事ドットコム)。

 この2005年から2009年という足掛け5年間は削減こそ見られますが、決して増額されていません。アメリカは、中国の日本に対する強硬なまでの態度に対して、それを理由に「思いやり予算」の増額を要求していた筈です。ですが、自民党政権時代の据え置きを2009年の鳩山政権まで引き伸ばしてアメリカの要求に屈しなかったと言えばそういう成果です。そして、2009年は記憶にも新しい昨年のことですが、防衛費増額に反対である社民党と連立を組んだことが功を奏したと言うべきか、今年のこの時期までさらに延期されたのでした。これに良くアメリカが痺れを切らさずに付き合ってくれたものだと思いますが、その結果か、日本はあまり相手にされないというか、外交的には失敗ではないかと思いました。
 うっかりしていましたが、「思いやり予算」の呼称の変更が9月にあったのを思い出しました(産経ニュース)。

 米国務省の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)交渉に携わる高官は29日、共同通信など一部の日本メディアに対し「思いやり 予算」という呼び方は「時代遅れで、当てはまらない」と述べ、見直しを求める考えを示した。また日本が予算削減を検討していることについて「間違った方向 だ。増額が適切だ」とし、日本政府に対し予算を増やすよう求めた。

 また、この決定の直前に社民党との連立に合意したため、結局、今回の防衛大綱では武器輸出三原則の見直しを盛り込む込まなかったのです(参照)。
 現実にはこのような状況が政権交代の前後にあり、何を主軸にこの防衛大綱が決まったのか良く分らないのですが、極東ブログの朝日新聞とイギリスのファイナンシャル・タイムズ紙のリベラル漫才を「朝日新聞社説はなんとなく中国政府の代弁という雰囲気もあり、当の日本人にしてみると中国対英国の雲の上の会話といった趣もある。」と、コメントされている通りに読み替えてみて感じたのは、外から見られている日本を盾に、外交に力を入れるのも作戦的に良いのじゃないかと思いました。他国には、5年越しの大綱であることに大きく胸を張って、こうなったらポーカーフェイスでも使って強気の外交を広げたらよいのではないかな。
 日本の政府の杜撰さを腐すでもなく、なんか、FTのコメントが暖かいエールに感じられました。

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ベラルーシの人々が選んだこれからの5年-キルギス新政権との違い

 先日、民放でタレントが、キルギスに住むただ一人の日本人女性を訪ねるという番組に目が止まり、しばらく見入ってしまいました。その女性は現地の男性と結婚し、男性の弟とその両親、一人娘と共に同居している家族でした。その光景は、私が育った子どもの頃の昭和の一家団欒のように写って、懐かしい空気を感じました。キルギスと言えば旧ソ連ですが、中国に隣接しているためか東洋系の面立ちが親近感を呼びます。このキルギスの現在の人の暮らしぶりとは裏腹に、政府に関してはいろいろと問題のある国でもあります。
 キルギス系とウズベク系の民族対立の表面化により、400人以上の死者を出す民族衝突が起こり、隣国ウズベキスタンに越境したウズベク系難民は10万人以上に達しました。また、キルギス国内の避難民も約30万人に達し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、キルギスに「人道危機」が迫っていると警告を発する混乱状態にもなりました(極東ブログ:「キルギス南部民族衝突の背景」)。この混乱を収束すべく、6月に、国民投票によってオトンバエワ暫定大統領が信任され、新憲法案が承認されました。これによって、バキエフ大統領による独裁的な国から議会制民主主義がスタートしたことは喜ばしい結果だったといえます。同時に気になっていたのは、同じく旧ソ連であるベラルーシ共和国の大統領選挙でした。

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 ベラルーシが気になる理由は、ルカシェンコ大統領が4期目(任期5年)に決まれば、この国はさらに次の5年間が独裁国であり続けることの是非がかかっていたことです。言わずと知れた「欧州最後の独裁国」の選挙です。国際的には、この強権政治に対する批判は強く、欧米諸国との関係は冷え切ってしまった状態であったため、関係修復の意味でも選挙が民主的に行われることに期待はありました。が、ルカシェンコ氏の再選という結果を昨日知って、今後の国際交流の中でこの国はどう発展するのか、気がかりな点もあります。憶測や妄想めいた話ばかりになってもどうかと思うので、選挙の経過(毎日jp)から記録しておくことにします。

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 旧ソ連のベラルーシで19日投票された大統領選挙(任期5年)は即日開票の結果、現職のルカシェンコ氏(56)が4選を決めた。一方、治安当局は同日夜、抗議運動をしていた野党候補者を含む100人以上を逮捕、事態は混乱しており、国際社会からの非難の声が上がり始めた。選挙管理委員会によると、開票率99%で、ルカシェンコ氏が79.67%を獲得。野党候補のサニコフ元外務次官(56)が2.56%で、残りの8人は2%以下にとどまった。有権者数は744万人、投票率は90.66%だった。

 投票率が90%以上で80%の得票率で当選した大統領選出などと聞けば、アフリカ・ルワンダのカガメ氏の選挙を思い出しますが、それはさて置き、この選挙が民主的に行われなくてはならなかった理由は、外国の選挙監視団を受け入れた事と、民主的な選挙を行うことを条件に欧州連合(EU)から最大30億ユーロ(約3300億円)の支援が約束されていたためです。実際、この選挙のどこが民主的だったのか、調べてみてもそれについてはあまり鮮明ではなく、強いて言えば、候補者の擁立が今までになく多人数であったことと、野党候補者の集会を認めたことくらいでしょうか。へっ、そんなことは選挙では当たり前だ、というレベルですが、実際はこのようなレベルでも独裁国では画期的だと言えるようです。が、どうも選挙後の集会では、これまでのルカシェンコ独裁政治批判が始まり、選挙のやり直し請求が出てきたと言うのです(時事ドットコム)。

  【モスクワ時事】ベラルーシ大統領選で4選を決めたルカシェンコ大統領は20日、「ベラルーシでは役立たずの民主主義はいらない」と述べ、民主化を拒否する考えを表明した。同大統領は大規模な抗議集会を開いた野党勢力を「ならず者」と非難した。
 「欧州最後の独裁者」と呼ばれる同大統領は選挙戦中、欧米の民主化要求に一定の譲歩を示していたが、西側との関係修復は困難になったとみられる。
 19日夜、ミンスク中心部の広場で開かれた集会には数万人が参加し、大統領陣営による選挙不正に抗議した。治安部隊は実力行使で集会を解散させ、約600人の身柄を拘束。インタファクス通信は大統領選の野党候補9人のうち7人が拘束されたと伝えた。
 選挙監視に当たった欧州安保協力機構(OSCE)は20日、「ベラルーシは民主的な選挙の実施には遠い」と批判。特に票集計に問題があると指摘した。米国やポーランド、ドイツ、リトアニアはルカシェンコ政権の強権発動を非難する声明を出した。(2010/12/21-01:27)

 欧米諸国の指摘のとおり、民主的に選挙は行われなかったのかもしれませんし、ベラルーシの人々にとって、独裁的な政治にどこまで不満があったのかも定かではありません。しかしながら、圧倒多数の得票数でこの独裁者が再選されたのです。これと言うのは、欧米諸国が民主的な選挙を望み、EUからの3300億円を望んで受け入れたにもかかわらず、この国自体が民主化を希求したこととは一致していなかったのではないだろうか。例えば、民主的な国による民主化の指導がアフリカなどの国で上手くいったという例が多くない、ということとも連想します。国が変わるためには、長い年月その国の人々がそれを願って繰り返し求めて行くようなプロセスがあってしかるべきで、それは、バキエフ政権に変革を望んだキルギスの結実からもうかがえます。
 今回の選挙では、得票が、例え不正からとしても、ルカシェンコ氏をそれなりに支持したベラルーシの人々が出した結果であり、民主化を心底願ってはいなかったという現れかもしれないと感じました。ただ、国際社会の仲間入りを思うと、欧米諸国とは難しい関係が少なくとも5年は続くのだろうと思います。また、そういった点で国が貧しくなり弱体化すると、それを拾う神もいるのです。だからと言って、ベラルーシが不幸な国だとも言い切れません。日本が民主的な政治を行っているのか?と思えば、うーん、難しいところです。

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2010-12-20

大延坪島(テヨンピョンド)付近の海域での射撃訓練実施にまつわる問題-北朝鮮の交渉相手は誰?

 北朝鮮の強い反発があるにもかかわらず、韓国の射撃訓練の実施を予定通り18日から開始していたらどんなことになっただろうかと大変気がかりでした。一般市民の感覚では、有事発生の危険を冒してまで訓練の実施をする必要はないのではないか、と軽く思ってしまうのですが、李明博大統領は、北朝鮮との力関係で優位につけたいという戦略からか、決断に苦慮していると報じています。一両日中に何らかの方向が見えてくるのではないかという思いはありますが、現時点での様子を掴む意味で記事を拾っておきます。 

射撃訓練実施に悩む韓国 北朝鮮の挑発、見極め難しく朝日

韓国政府内で、北朝鮮の第2次挑発の可能性を巡ってぎりぎりの分析が続いている模様だ。

 韓国軍は「最も気象条件の良い時期に1日だけ実施する」と発表。天候を理由に18、19両日は実施しない見通しという。しかし、18日は同島周辺でほぼ晴天が続いていたため、こうした理由に疑問の声が上がっている。

 韓国政府関係者らによれば、韓国軍が訓練実施に最も熱心とされる。元々、先月23日に実施中の射撃訓練が、北朝鮮軍の砲撃で中断。軍は「早く再開しないと、この海域で演習できないという悪例を残す」と主張しているという。軍事関係筋は「発表した以上、延期すれば更に北を有利にする」と語る。

 一方で、政府内には北朝鮮の2次挑発を憂慮する声もある。韓国軍は北朝鮮が砲撃すれば、「断固たる対応を取る」と宣言。航空機による空爆も検討している。北朝鮮も「より深刻な状況を再現させる」と警告しており、戦闘が拡大する可能性がある。拡大しない場合でも、2次挑発が韓国社会や経済に深刻な影響を与えることは必至だ

アメリカ政府は

 韓国全面支援を表明している米政府は表向き、「韓国は主権国家として軍事訓練をする権利がある」(クローリー国務次官補)と理解を示している。クローリー氏は17日の会見でも、「北朝鮮は訓練をさらなる挑発行為の口実にすべきではない」と牽制(けんせい)した。

  ただ、北朝鮮の出方が読み切れない中、米側は「銃撃の応酬という連鎖反応が起きかねず、事態が拡大して制御できなくなる懸念がある」(米統合参謀本部のカートライト副議長)との不安も強めている。米軍はアフガニスタンとイラクの二つの戦場で疲弊、朝鮮半島のこれ以上の軍事的緊張は避けたいのが本音だ。

ロシアは日経)国連安保理への働きかけを積極的に行ったもようで、このことは今の緊張状態にどう働きかけて行くのか期待するところです。

 国連安全保障理事会は19日午前(日本時間20日未明)、北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)への砲撃で緊張が高まっている朝鮮半島情勢への対応を話し合う緊急会合を開いた。同会合は、ロシアが安保理議長国を務める米国に開催を要請。ロシアは、南北双方に緊張を激化する軍事演習などの行為を自粛するよう求める内容の声明採択を目指している。

  これに先立ち、緊急会合開催を要請したロシアのチュルキン国連大使は18日、記者団に対し「安保理が北朝鮮と韓国の双方に(軍事的な行為の)抑制を警告するメッセージを送る必要がある」と述べた。

 北朝鮮が11月23日に砲撃して以来、国連安保理がこの問題を取り上げる正式な会合を開くのは初めて。米国や日本が主体となり水面下で非難声明のとりまとめを探ってきたが、中国による反発で交渉が難航していた。

中国は、自制を促したとして具体的に動いたようです。

 中国:南北に自制要求…韓国訓練に北朝鮮「打撃」警告毎日新聞 2010年12月19日 0時21分

 中国の張志軍筆頭外務次官は18日、国営中央テレビの取材に応じ、中国外務省が韓国と北朝鮮の駐中国大使を同日までに緊急に呼び出して中国側の立場と主張を改めて伝えたと明らかにした。また、韓国軍が計画している延坪島(ヨンピョンド)周辺での海上射撃訓練に北朝鮮が新たな「打撃」を警告していることを念頭に、自制と衝突回避を重ねて求めた。

 この中で張次官は「現在の朝鮮半島情勢は一触即発の状態で、中国側は深く懸念し、憂慮している」と強調。「6カ国協議首席代表による緊急会合の必要性と緊急性がさらにはっきりとした」と語り、早期の対話再開を呼び掛けた。

 周辺国は、このように朝鮮半島で有事が起こらないよう、韓国と北朝鮮に呼びかけていますが、冒頭に挙げた「射撃訓練実施に悩む韓国 北朝鮮の挑発、見極め難しく」の記事でも触れている通り、韓国の決断が今後の北朝鮮問題をどのように運ぶかの鍵になっているようです。
 ここで、韓国が北朝鮮の挑発行為を批判し、警告を発するのは更なる危険を招くようには思いますが、韓国の筋は通ると考えます。また、リスクを半分背負って切り込むよりも、国連安保理の仲介に応じるという形を取って自制するのが穏当かもしれません。
 牽制だったか本意であったか、韓国の李明博大統領が繰り返し声明を出している北朝鮮に対する報復措置が、今となっては決断を鈍らせているのか、面子と有事のリスクが天秤にかかっているのかもしれません。この判断を待つよりも先に、外国人を含む一般市民の非難が心配です。安全確保はできているのでしょうか。そのことを報じる記事がないことが気になります。
 ところで、北朝鮮の交渉相手に関して疑問な点があります。
 北朝鮮は、金正日氏の体調悪化や老衰なども重なって、軍をその指揮下に置いていないのではないかと感じます。11月の北朝鮮の砲撃もかつてなかったことである上、核施設の披露やミサイル実験など、金氏が健康で軍のバランスを取っていた頃には起こらなかったことです。北朝鮮の軍の分裂や権力闘争が表面化しているのではないかと憶測しています。この憶測の上に、さらに前提としてですが、各国が北朝鮮の誰と交渉をするのが好ましいのかという点がはっきり見えてこないのが気がかりです。金正日氏の指揮下で軍が動いているのか、または、統率力が衰退した金氏をよそに、軍内部で権力の争奪があるのか、などは、一切透けて見えません。最悪の事態として、韓国との有事が北朝鮮軍内部の抗争のダシに使われるようなことにはなって欲しくないと懸念しています。
 北朝鮮の軍の分裂抗争を憶測する理由は、金正日氏の後継者である金正恩(キム・ジョンウン)氏のお披露目エントリーでクリップした記事によります(極東ブログ「コスプレ金日成、見参、その陰で」―はじめて知った後継者問題の舞台裏)。

 統一部の関係者は、「金英徹氏が今後も重要な地位を維持し続けるならば、今後の韓国に対する軍事挑発でどのような形で現れるか、注目に値する」と述べた(朝鮮日報)。

 金氏の側近である張成沢の指導体制が実質的だと報じられていましたが、失脚したとされた呉克烈氏の後継者である金英徹氏のことも同時に浮上していました。その後、金英徹氏のことを報じる記事は特にないようです。

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2010-12-19

コソボ総選挙で浮上した問題

 今月12日、2008年にセルビアから独立後コソボで初めての総選挙(120議席)が行われました。サチ首相率いる与党コソボ民主党が得票率33.5%で、首位で第一党を維持したとは言え、単独過半数に満たなかったため、連立交渉が焦点となり、難航が予想されています。また、コソボの民主化を確認する意味でも注目が寄せられている選挙であったのは言うまでもないことと思います。
 1990年以降、アルバニア人が独立を宣言したにもかかわらず、連邦の中心であったセルビアでは、連邦崩壊の危機感から憲法を変えて、それまでコソボに与えていた自治権を大幅に削減し、独立も住民投票も認めないとして軍隊を送り込み、実力行使によって反対してきた歴史的背景もあります。コソボの独立後、選挙が民主的に行われることは、これまでの政治が民主的であったかどうかを見極める意味でも興味深く思っていました。
 ところが、日本で報じられている中で、この選挙での不正の可能性や、サチ首相の臓器密売疑惑の記事を見つけ、無事に終わったわけではないと知りました。注目選挙だけに、陰謀論的な事を言い出す人もあるのかもしれないとは思ったのですが、クリップしておくことにします。
 まず、選挙が不正に行われた可能性について(産経ニュース)。

 コソボのサチ首相は14日、12日の同国議会選挙(120議席)で自らが率いる親欧米の与党コソボ民主党が得票率33・5%で首位に立ったとの選挙管理当局の中間開票結果を受け、他党との連立交渉に入る考えを明らかにした。ロイター通信が伝えた。

 一方、サチ氏の支持者が多いコソボ中部の二つの地区では、投票率が全国平均の約2倍の90%以上に達したとされ、欧州の選挙監視団が不正の可能性を指摘。フランス公共ラジオによると、第2党となったライバルのコソボ民主同盟は14日、開票結果に対する異議を司法当局に申し立てた。選管の最終開票結果は週内に出る予定。(共同)

 そして、選挙後、サチ首相に起こった臓器密輸疑惑について朝日新聞では次のように報じています。

 【ウィーン=玉川透】コソボのサチ首相が、セルビアと争った1990年代末のコソボ紛争時、セルビア人らから臓器を摘出して密売する組織に関与していたとの疑惑が浮上、欧州47カ国でつくる人権擁護機関の欧州会議(本部・仏ストラスブール)の委員会は16日、加盟国に真相解明を求める決議を採択した。AP通信などが伝えた。

 この疑惑は2008年、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(オランダ・ハーグ)の元主任検察官が著書で指摘。これらの情報を基にスイスの国会議員ディック・マーティー氏らが09年に現地調査し、欧州会議に報告書を提出した。

 報告書は98~99年のコソボ紛争時、コソボで多数派だったアルバニア系武装組織「コソボ解放軍」が、セルビア人らを隣国アルバニアに拘束して腎臓などの臓器を摘出し、海外の闇市場で売買したと指摘。当時、コソボ解放軍幹部だったサチ氏らが主導的に関わったなどとしている。

 来年1月下旬の加盟国による会議でも、報告書について議論される予定という。

 一瞬この報道を陰謀ではないのか、と疑ったほどです。
 その第一に、発表のタイミングが選挙の直後であることと、この摘発の元になった著書が、「旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷の主任検察官によるもの」というだけで、名前に言及がないため、信憑性に欠けることです。さもなくば、コソボ独立に反対的なアルバニア人の陰謀である可能性もあります。その理由は、コソボ独立宣言当時の背景にあります。
 1990年当時、多くのアルバニア人が不十分な証拠でセルビア警察に逮捕されたり、不当に監禁され、拷問を受けたり、殺されたりした事実もあり、西ヨーロッパ諸国は、セルビア政府の行為に重大な人権侵害の疑いがあると批判していたということもあります。
 また、スイスの国会議員が欧州会議に現地調査の結果を報告したという点で、陸続きである欧州周辺国としてはコソボ政権が活発化する傍らで、かつてのセルビア軍による無差別殺人のような悪夢の繰り返しを懸念するという意味で、コソボ政権を支持したがらないという理由はあると思います。コソボ独立宣言に反対であるセルビア他、ロシア、中国などがいまだに反対している状況下では、いろいろな疑念がわいてくるのは当然です。
 サチ首相を落としいれたいとする動きなのか、本当にこのようなことがかつての紛争の雑多の中で起きたことなのか、後味の悪い選挙であると思います。
 問題は違うとは思いますが、アフリカのルワンダ・カガメ大統領に起こったジェノサイド疑惑も16年前のこととは言え、コソボ独立宣言と時期が重なります。この頃というのは、世界的に民族闘争で荒んだ時期でしたが、表に見えない部分で多くの人が無意味に殺害されたのだということを忘れてはならないと思います。

***

 ここまで書いてから、告発の元になった著者のことを調べて分った点があるので追記します。
サチ首相の臓器密売関与をめぐって」(swissinfo.ch

欧州評議会法務人権委員会のメンバーであるマーティ氏が行った調査によると、コソボのハシム・サチ首相はセルビア軍と戦った「コソボ解放軍 ( KLA ) 」の一派である犯罪組織のリーダーだった。この組織は1999年6 月から2000年にかけ、麻薬やセルビア人捕虜の臓器を密売していた。

 マーティ氏が2009年から2年かけ行った同調査は、スイス人カルラ・デル・ポンテ氏の著書『追跡、戦争犯罪と私( La traque, les criminels de guerre et moi )』の中に記載された報告に基づいていた。

 現在アルゼンチンのスイス大使を務めるデル・ポンテ氏は、元国際連合戦争犯罪主任検事で、旧ユーゴの国際戦犯法廷 ( ICTY ) の検事を務めた。著書には、「コソボからアルバニア北部に連れ去られた、セルビア人捕虜約300人の体から臓器が摘出され密売されていたという証言がある」と記されている。

コソボの反応
 14日にマーティー氏の調査報告が欧州評議会のサイトに掲載されて以来、サチ首相は、調査を「スキャンダラスで、とんでもないデタラメ」と決め付け、
 「これはコソボのイメージを覆すために作られた。今後あらゆる政治的、法的手段を使って真実に光を当てていく」
 と述べている。

セルビアの反応
 一方、セルビアの戦争犯罪担当検事たちは、自分たちが提供した資料が調査に役立ったことに満足したと14日発表し、
 「長年、臓器密売の調査を行ってきたわれわれにとってこの日は記念すべき日になった」
 と語った。彼らによれば、コソボが行った臓器密売の犠牲者はおよそ500人に上り、うち400人がセルビア人捕虜で、残り100人が非アルバニア系の捕虜だという。

 しかし、コソボの最大日刊紙「コハ・ディトレ ( Koha Ditore ) 」の編集長は
 「これは単にサチ首相の問題に留まらない。同時に ( 戦争に介入した ) 西欧諸国の問題でもあり、1999年の介入の仕方でもある。さらに、この調査は、1999年以降に起こったこと( 臓器密売など ) はたとえ何であれ、戦争そのものやセルビアがコソボで行ったことよりもっと重要な犯罪だと言っているかのようだ
 と話す。

 北大西洋条約機構は当時、コソボ内のセルビア軍に対し78日間に渡る空爆を行った。

 臓器の密売が事実であるなら、売る側の向こうには買う側があり、この臓器売買の行為の重さを問わなくてはならないと思います。

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2010-12-18

糖三角(タンサンチャオ)ウー・ウェンの「北京小麦粉料理」から-寒くなってきたら蒸し饅頭!

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 寒くなってくると中華饅頭のほかほかふわふわが嬉しくなります。我が家でも、この時期になると豚まん(☞レシピ)が大変人気のおやつでした。「でした。」というのは、子ども達が家から学校に通っている頃は、お腹を空かして帰宅し、夕食までのちょいの間のつなぎのおやつでした。暇な時に多めに作って冷凍しておき、中華蒸篭で蒸したり、レンジでチンすれば直ぐにほかほかの中華饅頭が食べられます。

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ウー・ウェンの
北京小麦粉料理
By ウー ウェン

 きょうはウー・ウェン先生の「北京小麦粉料理」から「糖三角(タンサンチャオ)」の紹介です。粉料理は、作るのに時間がかかるとか、難しいと思われている節もあるかと思いますが、糖三角は、本書でも比較的簡単な部類だと思います。粉料理だからということで敬遠していては勿体無いと思い、人気のあるウー先生の本から紹介します。簡単なものを手始めにチャンレンジして見るとわかると思いますが、とても楽しいのです。きっと欲が出てきて、どんどん作りたくなると思います。この本の料理は丁寧な解説も手伝って、思ったほど難しさを感じずに作れると思うので、私としてはお勧めの一冊です。かく言う私も、勧めてもらって知った本でもあります(参照)。
 糖三角はちょっと不思議な蒸し饅頭で、餡に特徴があります。黒砂糖と小麦粉を混ぜ合わせて饅頭の生地に包むただけのものですが、蒸しあがってみると、画像のように餡子のようなモッチリとした食感に早代わりします。種明かしをしても信じてもらえないほど、意外で面白い作り方です。生地は、イースト菌で膨らませるのでそれなりの待ち時間はありますが、ぬるま湯を使っていますし、手のぬくもりでこね上がった生地の温度は醗酵にとっては適温で仕上がるため短時間で醗酵します。目安は、最初の生地の大きさの倍くらいです。分割した生地を丸く手で押しのばし、餡になる黒砂糖と小麦を混ぜ合わせたものを包んで蒸せば出来上がるというスピードも魅力なのです。

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 包み方は、出来上がりが三角形になるように中心に向かって張り合わせるように指で摘まんで閉じます。

材料(8個分)

  • 薄力粉・・200g
  • ドライイースト・・小さじ1
  • 砂糖・・大さじ1
  • 塩・・一つまみ
  • ぬるま湯(40度くらい)・・110cc
  • サラダ油・・大さじ1

  • 黒砂糖・・大さじ6
  • 薄力粉・・大さじ4

作り方

  1. 大き目のボールに生地の材料を全て軽量し、菜箸で混ぜながらぬるま湯をちょろちょろ加え、粉っぽさがなくなるまでよく混ぜ合わせる。
  2. 菜箸についた粉を綺麗に取って生地を台の上に移し、手首の付け根で生地を手前から向こうへ押しながらキメを細かくする。
  3. 2の生地を5分ほどこねたら再びボールに戻してサラダ油を加え、指で掴むように馴染ませる。
  4. ボールの周囲の油がなくなって生地に艶が出てきたら丸くまとめる。
  5. ボールで乾燥しないようにぬんれ布巾をかけて、ビニールの袋に入れて生地が倍に膨らむまで醗酵させる。(夏場は室温で30分、冬場はストーブの傍などで1時間ほど)
  6. 醗酵が終わったら生地をそっと取り出し、30cmほどの棒状にそっと丸める。
  7. 目分量で8等分すし、断面を潰して円形にする。
  8. 黒砂糖と小麦粉をボールで混ぜ、目分量で8等分する。
  9. 生地を10cmの直径に丸く手で潰してかたどり、左手に乗せ、黒砂糖の餡の元を中央に乗せる。
  10. 生地の手前を一部摘まみ、そこから半周分摘まんで閉じる。
  11. 残りの開いているところを両方から同じように摘まんで閉じて三角系にする。
  12. オーブンシートにのせて蒸篭に間隔を置いて並べて30分ほど二次醗酵させる。(ない場合は台に置いてぬれ布巾をかけ、ビニールで覆う)
  13. 強火で沸騰している中華鍋に蒸篭を二段に重ねて蓋をし、10分蒸す♬

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ロシアが抱えている問題

 ロシアでは毎年恒例で行われているそうですが、プーチン首相が国民との対話をするテレビ番組があるというのがちょっと面白いと思いました。この対話は4時間半にも渡って一般国民からの質問に答えるというので、どんな質問があったのかと興味津々でしたが、報じているのは「毎年恒例の国民対話、プーチン首相が答えなかった質問は?」(AFP)でした。事前に寄せられた国民からの質問に答えて行くという番組展開で、答えなかった質問から、ロシアの国民感情と政府の間の空気ようなものを感じました。

「医者がわいろや謝礼金を受け取るのをやめるのはいつですか」
「ロシアの封建制度が終わるのはいつですか」
「いつになったら表現の自由と自由選挙が認められますか」
「いつになったら役人や金持ちに法律が適用されますか」
「真の民主化はまだですか」
「いつか豊かに暮らせるようになりますか」
「一体いつ政界を退く予定ですか?」
「ロシア国政の混乱はいつか終わるんですか」
「あなたの気に障る質問は、あなたの耳には届かないんですか?」

 抜粋記事なのですが、国民に約束しているいくつかの公約が履行されていないことへの質問なのか、単純な質問なのかわかりませんが、国民の不満は、抑圧によるのか、ロシアの国民感情に触れるのは珍しいことです。いずれにしても、ロシア国民の声は、自由平等を求める叫びのように感じます。また、このことが気になるのは、大統領選挙を二年後に控えているメドベージェフ大統領の国民に対するアピールが、どう展開して行くのかという点です。
 調べているうちに気になったのは、「ロシアで民族対立が激化、若者グループ1000人以上を拘束 」(AFP)で報じているように、ロシアは移民を受け入れている国です。日本はこの点に関しては国を閉ざしているので、難民・移民で問題が起こるようなことはありませんし、その危機感をかんじることもないため、なんとなく他人ごとになりがちな問題です。

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 事の発端は、どうやらサッカーファンの対立からのようです。

 ロシアでは4日、モスクワのサッカーチーム、スパルタク・モスクワ(Spartak Moscow)のファンの男性が、北カフカス出身のイスラム系の若者グループに射殺される事件が発生。これをきっかけに、ロシア系の民族主義者とカフカス出身者など少数民族の若者との間で民族対立の緊張が高まっていた。

モスクワのほか、第2の都市サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)や南部サマラ(Samara)などでも、武装して集まった若者グループらが身柄を拘束されている。

 モスクワでは近年、市場や建設現場で働くロシア南部や中央アジアからの出稼ぎ労働者が増加していることから、市当局に対し、移民の数を制限しロシア系住民に職を与えるよう求める声が高まっているいる。

 この暴動の発端は、今月2日にスイス・チューリッヒで行われたワールドカップ開催地抽選会で、ロシアが2018年のホスト国に選ばれたことから急激に高まり出したというのですが、サッカーファン同士の揉め事ではなく、ロシア系民族主義とカフカス出身者などの少数民族の抗争と捕らえているようです。これに対して、メドベージェフ大統領は次のように声明を出したようです(毎日)。

 メドベージェフ大統領は暴動を「ポグロム(集団的な迫害)であり、罪を犯したものは罰せられる」と非難。ロシアでの18年W杯開催が決まった直後にクレムリンのすぐ隣で起きた「不祥事」だけに政権は衝撃を受けている模様だ。大統領は簡易ブログのツイッターで「国内とモスクワは全てコントロール下にある」と強調したほどだ。

 また、先のプーチン首相の「答えた質問」に対して、政治的な批判もあるようです。

プーチン首相は、国内で激化する民族対立をめぐって「あらゆる過激思想」は「ウイルスだ」と非難。また、脱税などの罪で服役中の元石油王ミハイル・ホドルコフスキー(Mikhail Khodorkovsky)受刑者について、「泥棒は刑務所にとどまるべき」と発言した。反プーチン派のホドルコフスキー受刑者は禁錮8年の実刑判決を受け服役中だが、別の罪で近く判決が言い渡される予定。リベラル派は、政敵に対して重すぎる制裁だと批判している。

 ロシア外交が充実して来ているとは裏腹に、国内の問題としては、他のヨーロッパ諸国が抱える移民問題と同様、深刻化しているようです。
 メドベージェフ大統領の背景に、このような政治課題があったのを知って感じたのは、大統領選ではその指導力が問われるという点です。民族抗争に対する政府弾圧が激しくなれば、自由や平等を願う市民感情は、反政府となるのは必須ですし、不満や要望を国に希求する感情も高まるのではないかと思います。
 ロシアのこの状態は、中国政府が国民の民主化傾倒を弾圧する姿とも重なり、六四天安門事件(1989年6月4日)のことが浮かびました。中国は政府よりも軍の力の方が勝っているため、この国が変わるためにはどれ程の時間がかかるかわかりませんが、ロシアが中国と違う点は、NATOなどを始め、最近ではポーランドやアメリカとも友好的な関係を持つようになり、世界が受け入れ始めている点です(参照)。内政を変えざるを得ない状況が、外交を通して固まって行く可能性もあると思います。また、北方領土問題ではロシアに二島返還の意向があるとする中、日本が四島返還を頑なに守り通すだけでは折り合いを見る事はできません(極東ブログ)。それがロシアの日本に対する外交カードとなるのか、どのような手を日本に伸ばしてくるのか気になります。今後も注視して行きたいと感じました。

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2010-12-17

いつまで待てばよいのか税制改革-法人税減税5%にも所得税率引き上げにも今は賛成できません

 僅かながらでも法人税を納めているので、今回の法人税減税にはそれなりの関心があります。菅政権の法人税減税5%についてですが、率直に言って、たったの5%減税でどうやって雇用促進までやれるというのか、何を考えているんでしょうか、と、驚いて呆れました。菅さんが目論む経済成長や雇用促進の改善の内の、雇用促進は、経営現場感覚では無理です。また、減税事態は嬉しいことのようにも思いますが、それがそうでもないらしいのです。骨髄反射した私の頭を冷やしてくれたのは、高橋洋一さんの解説でした「法人税5%引き下げでわかった 税理論も実行戦略も欠如した民主党のお粗末」(ダイヤモンドオンライン)。
 ここで指摘されている通りだと思える部分は、実際に会社の経営側に立てば分ることですが、高橋さんの挙げている「成長か、所得配分か税制改革の目的すら不明確」(参照)の説明です。

 資金を人に投資するか設備投資に回すか、または内部留保にして後で使うかは経営者が決めることで、たとえば減税と引き換えに雇用を要求するのは、経営判断の否定になってしまう。雇用というのは、経済の派生としてでてくるものだ。経済のパイを大きくして景気が良くなったら人を雇う、というのが正しい順番で、企業に人を雇わせて景気を良くするというのは本末転倒である。

 菅さんは、何故このようなマズイことを言うのだろうか?スイッチが違うところに入っているとしか考えられません。そして、この決定前に、菅さんは経団連会長の米倉弘昌氏と会談したとの情報を得たのですが、残念ながらソースがないのでここでは言えませんが、その米倉氏のインタビューでは、菅さんの取り違えを批判しています(Yahooニュース)。

➠経団連会長「何を考えているのか」法人税減税で政府批判
 また法人税引き下げの条件として企業側が雇用確保などを約束すべきという意見が出ていることについては「私が約束したとしても経済界がやってくれるかどうか。経団連は予測値を提出済みだ。資本主義でないようなことをやってもらっては困る」と語った。

 経団連は実質減税で5%という要望を崩しておらず、課税ベースの拡大については政治判断に委ねている。

 お昼のワイドショーのような話になってしまうのでこの辺でやめておきますが、つまり、菅さんのお説は、経営現場からも識者からも受け入れがたいめちゃくちゃなことなのです。企業が雇用を促進するかしないかを強要できる立場の人も団体もいないのにもかかわらず、そんなことが本当にできるとしたら、それは、お隣の国くらいだと思います。これは菅さんの放言なのか失言なのか、兎に角、周囲を困惑させます。
 そして、悩ましいのは、この減税措置が見切り発車であり、よい結果を生まない政策なのだと早くも見破られてしまっていることです。高橋さんの解説の前段にあるマクロ経済の観点が非常に分りやすいです。数字が並ぶとちんぷんかんぷんになる人は、単位を変えて数字を小さくすると直ぐに分ります。
 そして、高橋さんの最後の部分で指摘されていることは、戦後の目覚しい経済成長の中で思わしくない方向へ成長してしまった税制を改革すべきではないかと感じる元になりました。

日本の法人税率が高いのは、納税者番号的な仕組みが先進国の中では珍しく徹底していないので、個人の資産・所得把握が不十分な結果ともいえる。この観点から見ると、納税者番号の導入が先決で、それで得られた所得税増収分を法人税減税にあてれば、5%どころか10%以上も引き下げることができる。

 これを知って困惑したと言うか、菅さんには悩まされます。
 と言うのも、一昨日のエントリー「アメリカのようになりたくない-日本の医療制度改革」(参照)で「高額所得者から高い税率で税金を徴収することにためらう方がおかしい」とまで言い切り、どれ程この政府に協力しようと考えても現時点では無駄になるのかもしれないと思うからです。がっくし、でした。
  納税者番号制度とは、佐藤内閣で検討はされたようですが、制度化されないままボツった案です。国民一人一人に番号を宛がって納税以外にも共通に整理番号として用いるという内容です。このような制度が必要かどうかは別として、現行では税金の徴収が正しく行われていないということです。ですから、高額所得者者に限定して増税することは、公平性を欠くと言えます。
 誤魔化しと言っては語弊がありますが、収支の科目の解釈はいろいろで、経費と見るか個人消費と見るかでは課税対象が変わります。また、正確に計算されない部分があったり、正しく申告していない業者など様々だというのは言わずもがなです。また、個人商店の消費税納税などは行なわれていない方が多いと思います。これは売り上げの限度額が消費税課税対象額に満たない場合です。それでも売り上げには消費税が上乗せされていますし、仕入れにも同様に課税されています。一番誤魔化しの効かないのは(というのも語弊はあるのですが)会社員だ、という話は昔から誰もが思うとおりだと思います。と、不満を言いたいのではなく、昔から市民はニコニコ納税ではなく、如何に家にお金を残すかに努力しているのです。ですが、納税方法が整備され、セコイ野心など露呈もしなくなり、納税が当たり前のことになれば脱税もなくなります。監査の目を光らす作業に費やす時間や人件費は無駄な経費として、税金の使い道から浮いてきます。
 今回の増税と減税の無意味がそれなりにわかってくるのはいつのことになるのかと思いますが、菅さんが結果論として後で失敗策だと気づいた時に今の椅子に座っているようでしたら、是非とも税制改革を真っ先にやってください。

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2010-12-16

変わったロシアとポーランド-日本とロシアも変わるのではないか

 丁度一週間前、今後のロシアと日本の外交課題の展開が気になっている点についてエントリーを起こしましたが、その後の目立った動きもなく、政府は、政権の内部問題でてんやわんやのようです。このような状況でもきちんと注視してみようと思った矢先、Twitterのラインをチェックしていて見に止まったNHK解説委員室のブログが興味深かったです。扱われた「時論公論 「自己主張するロシアとどう向き合うべきか」」(参照)が正に、日本のロシア外交問題なのです。一昨日取り上げたドイツとフランスのに近づくべく、日韓も何とかならないだろうか(参照)、という問題と平行して、日本は、ロシアとの外交も大きな課題に直面しているのでクリップしておくことにします。
 ロシアの哨戒機が日本とアメリカの合同演習の真ん中を二度も横切るというハプニングがあり、一時演習を中断したという事態が起こったのは先週のことです。何かの偵察か、牽制(けんせい)かという懸念を持ったのですが、ロシアのこのような動きを政府はどう見ているのか、今後のロシア外交をどう進めるのかが気になるところでした(参照)。ましてや、民主党が社民党と復縁したのは6日のことでしたから、これが何を意味するかという点で一番気がかりは、社民党は、武器輸出三原則の見直しに反対であることです。懸念される問題は、これによって官首相は見直しを取りやめ、政権内部の意見分裂と、三原則保持のままでは諸外国の流れに乗り遅れ、孤立するのではないかということです。
 幸いと言えばよいのか、社民党と合意した件で党内部で意見が割れることはないようです。それというのも、社民党と連立を組まなければ通常国会で三分の二の議席数が確保できないという事情の方が重たいからでしょうか。10日の琉球新報社説「武器輸出三原則 輸出禁止の「国是」堅持を」(参照)の意見は保守的で、視点としては、官と企業の癒着の点でこの三原則を変えることに批判的です。日本の政府のすることに一々癒着体質的な問題が浮上するのは仕方のないことですが、あえてその論調を外して武器輸出三原則の見直しをしなかったら、本当に安全なのだろうか?記事では次の点でも触れています。

 国際的に武器を共同開発・生産した場合、相手国を通じて武器が紛争当事国に流出する可能性がある。このケースは憲法に抵触するのではないか。米国の外圧も働く。日米が共同開発しているミサイル防衛(MD)の迎撃ミサイルについて、欧州へ売却できるようにするため、米政府が日本政府に武器輸出三原則の見直しを求めていた。

 アメリカとの協力体制を強固なものにするというのを前提にするのは、日本にとっては当たり前とは思いますが、この部分で見落としていたのは外交チャンスの拡大化という点でした。
 NHKの「時事公論」に戻ると、ここでは日本外交のチャンスとして、ロシアとポーランドの例を挙げています。

 ポーランドは帝政ロシアによる支配、そして第2次世界大戦初期のソビエトによる侵攻、さらにポーランド捕虜が虐殺されたカチンの森事件、そして第2次世界大戦後自らの意志に反してソビエトの支配する社会主義圏に置かれたことなど、歴史的にロシアに対して深い警戒感を抱いています。

 ポーランドはヨーロッパの中ではもっとも反ロシア的な政策を続け、一年前は日ロ関係よりもロシアとの関係はさらに冷却化していました。何故ポーランドとロシアが劇的に関係を改善できたのでしょうか。

  これに対しポーランドは地対空ミサイル・パトリオットを配備するなどアメリカとの同盟関係をまず強固にしました。その上で米ロの関係再構築リセットの流れを上手く利用しました。

 日本が対米関係が揺らぐ中で日ロ関係も後退してしまったのとは対照的です。
 ヨーロッパ全体としてはドイツを中心に長期的なロシア関与政策を続けていますが、その一方NATOの同盟関係を強固にして安全保障面での隙は見せていません。

 ポーランドがアメリカと協力して国防をロシアと共にする関係構築までになったのは、外交戦略がよかったことと、利害関係の一致点として、アメリカとの軍地同盟の流れに乗ったということだと思います。国を守るという点で軍備する時代ということにかなり抵抗のある私でしたが、先日行われたCOP16での日本の孤立が丁度浮かび上がり、あの図式から、これからの日本と諸外国との軍事同盟を映し出しているかに見えてきて、孤立では守れないひ弱な日本を思い知りました。他の意見に寄り添うような姿勢が日本の外交にないのは、頑固としか言いようがありません。諸外国からはどのように見えているのか?と、気になりました。最近騒がれているWikileaksにも漏れ零れる話もなく、それだけ相手にされていないのか、国際的に「ハブ」なってしまったのかとさえ思います。
 先のエントリーでも書いていることですが、安全保障としての同盟であり、そのために必要な協力を日本は何でできるのか?この点が必ずしも軍備であるとは限りませんし、武器輸出三原則に抵触しない部分でできる事はないのでしょうか。
 社民党と手を組んで行く他道がないというのなら、その限られた枠内でできることを模索し、関係諸国の利益となる方策を日本も共有できる事として同盟関係を持って欲しいです。そのためにも、菅さんを引きずり出すしかないように思います。

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2010-12-15

アメリカのようになりたくない-日本の医療制度改革

 11月の中間選挙で敗北し、文字通りねじれた政権運営を担うことになったオバマ大統領です。その実績とも思われた医療保険制度の法案成立後にもかかわらず、「違憲」との判決が下ったようです。これには、私の常識観が驚きました。アメリカで言われている自由と平等とは何?と思わずわが国のことは棚に上げっ放しで他国の心配などしているばあいかよ、と思いました。何処の政治も経済も今や大変なことになっているものだとしみじみ思いました。
 アメリカは州ごとに法律が違うことは日本でも知られている通りですが、病気や怪我で医者にかかる権利は平等にあっても、アメリカ社会では金持ちしか医者にかかれない現実に、国家がそれを制度化し、貧困者でも保険加入できるよう補助しようとした法案です。が、何が違憲となるほどの問題なのか。非加入者は違反とみなし、罰金を課すことだったようです。それこそが、自由を拘束するということでしょうか。
 この法案の争点に関して、産経ニュースは以下のように報じています(参照)。

 バージニア州の連邦地裁は13日、オバマ政権の最重要課題として今年3月に成立した医療保険改革法について、国民に保険加入を義務づけた条項が合衆国憲法に違反するという判断を下した。

 連邦地裁は、国民の医療保険加入を義務化し、非加入者は罰金を支払うとする「個人強制保険条項」は、「憲法が規定する議会の権限の範囲を超える」と判断した。憲法は、議会に「州間の商取引」を規制する権限を与えているが、その権限を超えるという。そのうえで連邦地裁は、強制条項をめぐる論争が「参加を選択する個人の権利」の問題との見解を示した。

 日本や欧州では国民皆保険が当たり前で、保険証は、各家庭が加入する保険機関から支給品のように配られていますから、これさえあれば安心だと依存しているようなところもあります。日本では、まさかにこの保険制度がなくなるとは考えにくいことですが、国家と個人の関係や個人の自由に関する考え方は、アメリカ独特の考え方から成り立っていると思います。
 さて、この問題の本質を考え出すと、人の命の話から権利の問題まで引っ張り出してこなくては中途半端です。私の手には負えない問題であることと、私個人が訴えてもどうにもならないので政府に任せるしかないのですが、この気持ちはアメリカ国民にしても同様である筈です。
 オバマ政権にとってはこの改革は「オバマ改革」としてその根幹とも言われていますが、アメリカの20以上の州が提訴しているなかで、バージニア州は始めてとは言え、この違憲判決の影響は大幅な見直しや改革案の撤廃問題へと発展するのではないかと懸念されています。正に、共和党が勢いづく、よいきっかけともなると思います。
 日本は、来年の通常国会を見据えて、高齢者医療制度改革案でつまずかないよう大変苦労しているようです。というのも、2013年導入を目指す厚生労働省の新制度案に盛り込まれた70~74歳の窓口負担2割引き上げへの負担増は、民主党の公約に掲げた一割維持とは違うためです。来年の統一地方選挙への影響を懸念しているためだと思います(産経ニュース)。

 提言では、70~74歳の窓口負担について、昨年の衆院選で掲げた民主党の「政策INDEX2009」で1割維持としていることを念頭に「党公約を反映すべき」と指摘。低所得者を対象とした保険料軽減措置(最大9割)を段階的に縮小する案に対しても「慎重な検討を求める」とした。

 負担増を見送るために必要な財源については「税制の抜本改革を踏まえた公費負担割合の引き上げ」を挙げ、消費税の税率引き上げを含む税制改正で捻出(ねんしゅつ)するよう求めた。また、新成長戦略の実行による増収分を充てるべきとの考え方も盛り込んだ。

 直ぐに政局の問題にしてしまうのは何ともやるせないのですが、後にも先にも結局は国民の負担なのだと諦めていますし、党公約云々したところで今の政府への支持はそれくらいでは挽回できるものではありません。ただ、アメリカのようにはなって欲しくないです。
 日本の医療制度から見るとアメリカの保険制度は、人の選択の自由を尊重するあまり格差社会で生まれた貧困者の選択肢がないのが実情です。これは、誰もが平等に選択肢の自由を認められてはいないと思います。何を平等と定義するのか?と問われれば、誰しも健康に生きることを望むことに不平等なことなどないはずだと言いたくなります。日本にも貧困はあり、大変生きにくい経済状態ですが、高齢者に限らず誰しも充分な医療を受けられるような社会であってほしいです。そのために、高額所得者から高い税率で税金を徴収することにためらう方がおかしいと思います。

追記: この記事をエントリーしてから気づいた読売社説が、増税に関して触れているので追記します。

➠個人課税強化 高所得層狙い撃ちは筋が違う12月15日付・読売社説

今回の控除見直しは、子ども手当増額など、ばらまき政策のツケを高所得層に押し付けた形で、税制の抜本改革につながるものではない。公平な税負担を実現するためにも、消費税率引き上げなどに早急に取り組むべきであろう。

 私の感覚とは真逆の話を増税に関して触れています。論点がバラけていて、増税の何に意見したいのかよく掴めませんが、おそらく最後の部分が一番言いたいことなのかとは思います。なぜ読売が、しかも社説で高額所得者の加勢をするのか?とても不思議。また、この場合の「平等」の定義とは何でしょう?はっきり言えることは、均一であることは、平等とは思わない私です。

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2010-12-14

変わったドイツとフランス-日本と韓国も変わるだろうか

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フランスの戦い
降伏したイギリス兵とフランス兵(北フランス)

 フランスの戦い(Battle of France)は、第二次世界大戦中の1940年5月に、ドイツによるフランス侵攻を目的とする二つの大作戦によって展開された戦でした。僅か一ヶ月の間にドイツの包囲作戦でフランス政府の降伏へと追い込んだ後、フランスはドイツの占領下になり、前権力をペタン将軍に委任するという条件の下にファシズム体制の国家となったのです。
 さて、12月10日、かつての侵攻国フランスにドイツ軍部隊が正式に着任したという小さな記事を見つけ(時事ドットコム)、これは、欧州の考え方の柔軟さであり、戦争の痛みを再び味わうことを避けるための友好的な安保体制をとったのだと解釈しました。今や、戦争を繰り返さないために軍備する時代の到来であり、軍備をしないで保身できるという時代の終わりなのだと感じました。
 一方、日本では皮肉にも韓国との間に米国を含む米韓日の合同演習の話があり、12月初旬の米韓統合演習後、日本にも演習に参加してはどうかという打診があるなか、結論が出ない状態です。にもかかわらず、菅首相の発言が物議をかもし出しているらしいのです。
 昨日毎日新聞が伝えたことによると、菅首相の「朝鮮半島有事の際の邦人救出に向け、自衛隊派遣を想定した協議を韓国側と行いたい」という発言が韓国を刺激したということで、朝鮮日報の社説記事に書かれたそうです(毎日JP)。

さらに「(こうした一連の動きを)中国は敵対的な動きと見なしている」と指摘し、韓国としては「何倍も慎重で敏感に受け止めるしかない問題で、菅首相の発言は誤解を招く不適切な発言だ」としている。

 一方、聯合ニュースは12日、菅首相発言に対する韓国政府側の反応を「ひとことで言えば『突拍子もない』というものだ」と伝えた。政府当局者は「韓国政府には事前に何の相談もなかった。敏感な安全保障の懸案に対し、日本の首相が突然切り出したのは、おかしい」と語った。

 また、青瓦台(大統領府)高官は「現実性のある話ではない」とし「おそらくそれほど深く考えて述べた話ではないのだろう」との見方を示したという。

 そして、昨夕、ハンギョレ新聞社説で、韓国感情というものが具体的に伝えられているのを知って、私自身の認識も新たになりました(ハンギョレ新聞)。以下がその抜粋です。

 まず延坪島事件以後、そうでなくても緊張が高まっている状況で友好国の総理が有事事態を想定した避難などの発言で国内外の不安を刺激しかねないという点だ。

 第二に、韓半島の不幸な事態を機会として利用し、自国の利益を獲得しようとする軽薄な内心があらわれている点だ。

 第三に自衛隊の活動範囲が自国民避難以上に拡大する余地があるという点だ。

 さらに大きな問題は、菅総理発言の没歴史性だ。韓半島は日本に強制的占領された傷を抱いている地域だ。さらには今年は韓国・日本強制併合100年となる年だ。ところが日本総理たる人が、韓半島に自衛隊を派遣する問題をためらいもなく話しているのだ。韓半島住民たちの感情などは知ったことではないという話だ。

 それでも、我が政府の一部では日本が要請してくれば検討することができるという意見が出ている。許されない話だ。どんな名目であれ、韓半島に日本兵力が再び進出することがあってはならない。

 最後の二段部分が韓半島住民の感情そのものではないかと思いますが、ポツダム宣言によって大日本帝国による朝鮮領有は終了したにもかかわらず、戦後ずっとしっくりいっていない日韓状態です。
 私事ですが、東京の朝鮮高校や朝鮮大学に友人はいましたが、戦争の話や日本人との結婚観などの話になると大変興奮し、その様子や話から、在日韓国人は親の代から戦争の痛々しさと日本軍の残虐性を言い伝えて育てているということが理解できました。
 つまり、和解には時間もかかれば納得の行く条件も整えるべく、韓国が何を望んでいるかいないのか、じっくり対話をする必要があるのだと思います。たとえ韓国の政府と日本の政府間で合意したとしても、韓国国民感情を逆撫でしないよう充分配慮する必要があるのです。そして、その条件は、きっと日本にとってはあまり都合のよい話にはならないような気もします。
 同じように第二次世界大戦の傷を負ったフランスが、今や、ドイツ軍を受け入れて安保体制を築いている一方で、日本が自国を守るすべとして、韓国との和解は必須であるのはいうまでもないことですし、共に、平和維持は揺るぎない合意点にも関わらず対話できない状態です。この問題を含めて、日本の安全保障を今度どのように展開するのか、この政府にやり遂げてもらうしかないのです。
 民主党が外交問題で失敗を重ねていますが、そのパターンを振り返ると、日本の都合だけを主張していることが多く、相手国が望んでいることに譲歩的な姿勢を見せているとは思えません。
 手前勝手な言い分だだけを通そうとする相手に対して、友好関係が生まれるなどあり得ない話です。そんなことは、子どもの喧嘩の仲直りと同レベルなのですが。

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2010-12-13

アフリカ・スーダン南部独立を問う住民投票は行われるのか

  アフリカ・スーダン南部独立を問う住民投票が1月9日に予定されている中、投票実務を担う住民投票管理委員会が「投票の先延ばし」案を示唆したため、これに南部の独立推進派が猛反発をしているという現況になっているそうです。いつものことですが、この状況を報じているのは今のところ毎日新聞のみで、日本の他紙は報じていません。中国がスーダンに武器供与していることを突くことにならないよう、良く言えば、日本政府に配慮しているためでしょうか。情報が少ないとは言え、選挙目前の現況としてクリップしておくことにします。
 バジル政権が安定し、南部の独立がその足固めの一つとなるのが世界が願うダルフールの姿であると思いますが、なかなかそのようには進んでいないようです。投票先延ばしの経緯は次のようです(毎日)。

 投票の有資格者は推計約600万人おり、投票管理委は当初、先月15日~今月1日を有権者登録期間としていた。しかし同委は先月26日、「技術的な問題の発生」を理由に登録期間を今月8日まで延長した。同日までに約300万人が登録したとみられるが、同委は登録締め切り前の2日に「投票日の3週間先延ばし」を決定するようバシル大統領に要請する意向を示唆した。

 これに対し、南部の自治政府側は「独立阻止を目指す政府の投票引き延ばし」と反発。予定通り1月9日に投票を強行する構えを見せており、大統領が投票先延ばしを決定するかが焦点になっている。

 中央政府は北部にその拠点を置き、国家財政の大半を生み出す南部の独立に消極的だということが潜在しているため、投票を実施することを難しくしているという見方があります。この状況下にも関わらず、日本の政府は、閣議で10日、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づく選挙監視団の派遣を23日から順次出発させることを決定したというのです(時事ドットコム)。
 アメリカを始め各国がこの選挙の実現を願って協力的な動きをする中、本当にこの選挙が実現するのか。また、このようなお膳立ての元に仮に選挙が正統に行われスーダン南部の独立が叶ったとしても、それが本当の意味での独立になるのか、いろいろな思惑が巡ります。
 これまで支援してきたアメリカについては、11月10日号 Newsweek日本版では、「スーダンが問うアメリカの限界」というタイトルで問いかけられていましたが、国際支援による民主化や経済支援は、その相手国の本来の成長にはならないということを感じます。巨額の援助は新たな戦争への資金供与となりかねないこともあり、今回の投票が行われるかどうかはその判断基準にもなるのではないかと思います。そして、皮肉にも、同じアフリカのコートジボワールの南北統一のための大統領選挙は、国を二分する結果となったように、これらの国の平和を願う欧米諸国の支援ではどうにもならない問題を抱えているということを感じました(極東ブログ)。
 ここまできてスーダンの投票が実現できないとなると、それは、内戦という一番望まないことに起因することだと思います。世界中から独裁者のレッテルを貼られているバジル大統領の決断は、自らの危機とも言えるのではないかと思います。

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2010-12-12

ムツのムニエル 醤油ベースのソースが絶品!:書かないと罰当たりだと思ったよ

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 料理のエントリーするつもりは特に予定していなかったのですが、先日食べたムツのムニエルがなんとも美味しく、この旬の美味しさを知らせないでは罰が当たるような気がしたので、急遽、書いておくことにします。

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 今回使用したのは、頭から尻尾まで約30cm強のサイズで、ムツとしては小型です。ムツは、大型が多く、そのほとんどは切り身ですが、切り身よりも頭から尻尾まで丸ごと料理するのが腕の振いどころもあります。そして、大きくても小さくてもムツに共通して言えるのは、ほどほどに脂がのっている白身で、大変柔らかく繊細で上品な味わいがあります。お値段も高級魚の部類でしょう。ですが、魚は、美味しいと言われるものを食べて味を確かめないとダメですね。そして、なにが贅沢(ぜいたく)かといえば、旬のものをそのときに頂くことができる、ということではないかと思います。お野菜だと旬のものは往々にして数も多く市場では安価となるのですが、魚の場合は、特に、ムツのように網で漁をするでもない深海魚は希少で、高値がつきます。

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 さて、この魚はどんな料理でも美味しいと定評があります。このところ我が家では煮つけやポワレが多かったので、単純に小麦粉をまぶしてバターソテーしてみました。問題のソースですが、今回は魚をソテーしたフライパンに新たにバターを溶かし、醤油と酒で味を調えたソースにしました。これが、ムツのソテーにこれほど相性がよいとは思いもしなかった感激の一品になった理由の一つです。また、量的には、半身を一人分として食べてしまったのですが、これはかなり大盛りと思います。普通は、三枚に下ろした身の半身が一人分位だと思います。材料は、4人分と考えてもよいかもしれません。
 取り除いた頭と中骨は塩を振って臭みを抜き、水洗いした後水から煮て、翌日の味噌汁の出汁にしました。これも絶品です!

材料

  • ムツ・・1尾
  • 粗塩・・小さじ2
  • 胡椒・・適宜
  • 小麦粉・・小さじ2
  • バター・・30g
  • 醤油・・大さじ1
  • 酒・・大さじ1
  • 付け合せ野菜:ブロッコリー・にんじんのグラッセ☞レシピ・キノコのソテー☞「修道院のレシピP218

作り方

  1. ムツを三枚に下ろし、皮目に飾り包丁を入れたらバットで両面に粗塩を振り、30分ほど置く。
  2. ムツから水が滲み出したらキッチンペーパーで吸い取り、胡椒を振る。
  3. 2に小麦粉をまぶす。
  4. 皿に付け合せの野菜を盛り付ける。
  5. 3の小麦粉が馴染んだらフライパンにバター20gを溶かし、ムツの皮目を下に並べて焼く。
  6. 周囲が白っぽくなって皮に焼き色がついたら裏返し、中まで充分火を通す(両面で7~8分)。
  7. 焼けたムツを皿に盛り付け、フライパンで残ったバターを溶かして酒と醤油を加え、アルコールを飛ばしてソースにする。
  8. ソースをムツに回しかけて出来上がり♬

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2010-12-11

地球温暖化に関するCOP16(メキシコ)における日本と今後について

 国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)で、京都議定書の延長に反対する日本と、延長を促す関係国が対立状態になっていることが関心事ですが、この問題は、単一的に環境の部分だけを取り上げるというよりも、日本の国際的な信頼の損失や国内産業の今後が気になりました。
 私は、昨日の午前中までこの件で「多勢に無勢」の感を思い、日本の妥協もありうることだと思っていましたが、どうもそういう雲行きではないらしい。松本龍環境相は、各国代表と会談し、京都議定書の延長反対と、ポスト京都の新しい枠組みに支持を求めたというのです。多数派の途上国はこれとは逆に、日本に妥協を求める声が強まっているというのです。では何故、日本が強行に言い張るのか?延長することによって米中の参加が見込めるというわけでもなく、さらに温暖化削減効果が薄く、公平性を欠くと考えているとしています。理屈ではそうである部分と、現実問題は必ずしもそうではないという途上国側の日本に対する非難があり、交渉が進んでいない状態です(日経)。

 これまでの交渉でポスト京都の合意が遠のいた最大の原因は温暖化ガスの二大排出国、中国と米国の同意を得られていないことにある。中国は国内の削減目標はあるが、自主目標だとして外部による検証は拒否。米国も中間選挙で温暖化対策を推進する民主党が敗北し、削減義務を伴う新枠組みは受け入れにくい。

 新興・途上国はこれからも先進国が削減義務を負うよう要請。「京都議定書の延長を目指すべきだ」(中国の解振華・国家発展改革委員会副主任)との主張を繰り返した。日本などが延長を受け入れるなら、自らにも緩やかな規制の網がかかる新たな枠組みを受け入れる姿勢を示し揺さぶりをかける。

 この状況を松本環境相は、電話で管首相に報告し、そのやり取りとりが以下です(時事ドットコム)。

「中国と米国を(温暖化対策の枠組みに)巻き込むよう頑張っている」などと交渉の状況を報告した。福山哲郎官房副長官が明らかにした。
 これに対して首相は、「その方向で頑張ってください」などと激励した。環境相はこのほか、京都議定書について「(延長拒否という)日本の立場を守れるよう、最後まで頑張る」とも述べた。(2010/12/11-00:14)

 この会話が事実だとすると、菅さんは問題意識が薄いとしか思えません。日本は関係国が交渉に応じてくると信じているのでしょうか。ここまで拗れていると決別という形になる寸前でどこかで日本が折れるか、現時点を決断の限界として関係国との妥協点、つまり京都議定書の延長を認めるという結論するところだと思うのです。日本がここで柔軟姿勢をとれないで終わると、今後の日本経済はどうなるのか?そちらの方が怪しくなると思います。
 内需の拡大という観点から、COP16が存続し続ける意味があると思います。これは日本が望める唯一の経済効果でもあると思います。最近言われなくなった「グリーン・ニューディール政策」はアメリカのオバマ氏が2008年に当選当時打ち出した経済政策です。今となってはオバマさんも人気が低迷し、あまり言われなくなった感もありますが、日本は、この政策にあやかって脱温暖化をはかり、二酸化炭素排出量を削減するなど、自動車や電気機器産業が生き延びる兆しを持った感はありました。これまでのダムや道路を作る公共事業から脱温暖化に切り替え、環境と経済を活性させるのが政策課題とした筈です。
 ここでもまた、鳩山と出て来るのですが、結構尾を引いています。鳩山さんは、当時、全ての主要国の参加によるという前提で「25%削減」を言ってのけたのです(読売)。

民主党の25%削減は国内削減分だけでなく、日本の技術や資金を使って海外でガス削減に取り組んだ分や国内の森林吸収量も含んでいるが、その内訳は示していない。今後、どのような手段で目標達成を目指すかが焦点となりそうだ。

 批判もありましたが、企業の開発意欲に拍車をかけたのも事実だと思います。が、言っただけで無策でした。まったく「焦点」などありませんでした。民主党政権の環境エネルギー政策がつまずいたのは、既にここで始まっていたわけです。今度は、ここに菅さんです。COP16の結果如何では、菅さんの命取りになるかと懸念します。というか、日本は世界から見放されるのではないかとさえ思います。

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2010-12-09

メドベージェフ大統領の外交と、武器輸出三原則の見直しを見送った日本の課題

 3日から10日までの予定で実施されている「日米共同統合演習」の空域にロシアの哨戒機2機が侵入し、訓練が一時中止となった事を知りました。仙谷官房長官は、「訓練の詳細については事柄の性質上、答えを差し控えたい」としたことで普通に聞き流せない思いがあって、ネットのニュースを少し調べたところ、8日午後にも電子偵察機が進入したそうです。訓練中に二度もこのような行動を取るというのは意図的な事だとしか思えませんが、その理由は定かではないようです。また、訓練の中心部を横切ったというのは異例で、ロシアのこのような動きについて、各紙とも捉え方に違いはあるのですが産経ニュースは、「妨害」として報じています(参照)。

 3日から10日までの予定で実施されている「日米共同統合演習」の空域に、ロシア軍の哨戒機2機が進入し、訓練を妨害していたことが7日、分かった。ロシア機は日本海・能登半島沖に設定されていた訓練空域の中心部を横切り、米軍と自衛隊はイージス艦を使った訓練の一部を中止した。政府内では、前原誠司外相が4日に北方領土を上空から視察したことへのロシアの対抗措置との見方が強い。

 確かに訓練側にとっては、一時中止となった要因では「妨害」という見方もあるとは思います。この一連の事はどれほど異例の事かということではNHKは次のように報じています(参照)。

 同じ空域にはロシア軍の哨戒機2機が6日にも進入し、このときは、機密性の高い情報を収集されるおそれがあるとして、訓練が一時、中断されています。防衛省によりますと、演習の際、他国の軍用機が訓練空域に連続して進入してくるのは極めて異例だということで、今回の演習にロシアが強い関心を寄せていることがうかがえます。

 2012年のロシア大統領選挙を意識したメドベージェフ大統領による強い指導者の演出効果としては、日本を対象に選んでいるかに思われます。横浜APECの直前に国後島へ「国内旅行」として、ロシア首脳陣が降り立ったのは初めてだとする視察をしたのも、今回の挑発的な行動もその一環なのか気になります。
 また、メドベージェフ大統領の外交手腕とも言うべきか、NATOに対してロシアが協調姿勢を見せたことは、ロシアが国際的にも評価されつつあるということであり、同時に日本との外交にメリットがなくなってくるということか。既に日本は相手にされていないのかもしれませんが、こうなると、日本の外交カードは何なのかということが問題になってきます。そして、もっと気がかりなのは、今後の日本の防衛力です。
 日米の抑止力の行使でもある統合訓練の真ん中を横切らせるロシアの神経は、大胆すぎます。前原外相が4日北方領土を上空から視察したことへの対抗措置か、また、沖縄基地移設問題が解決しない日米同盟が機能状態にあるかを瀬踏みしているのかと、思惑は色々あるようです。このような事態に対応するための日本の軍備が気になるところですが、皮肉にも6日菅総理は、社民党と協力体制を組むことを決めたのです(NHK)。

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菅総理大臣は、社民党の福島党首と会談し、来年の通常国会で、社民党が求めている労働者派遣法の改正案の成立を目指すことや、来年度の予算編成に向けて両党が協議していくことで一致する一方、福島党首は武器輸出三原則の緩和を行わないようけん制しました。

 菅首相が武器輸出三原則の見直しを先送りしてしまったことで、主力戦闘機の国際共同開発に参加できなくなるということです。言っても始まりませんが、社民党に傾倒してしまったことは、国民の安全を守れなくなった第一の原因だと、後で後悔しても始まりません。余談ですが、社民党はTPP参加にも反対で、沖縄辺野古移設にも反対しています。この社民党と手を組む菅さんは、かつて鳩山さんが沖縄基地問題で火傷をしたことが学習できていません。誤解なきよう付け加えますが、私は、武器輸出三原則がなくなり、いずれ日本は核保有国になるようなことを本意として願っているわけではありません。ですが、周辺国の軍備体制を見れば、戦後の平和ボケな感覚ではいられないと感じています。
 極東ブログでこの件について書かれたとき(参照)、戦後、戦争をしない国になった筈の日本が軍備を積極的にする国になろうとは信じがたいことでした。拒絶するような気持ちの反面、隣国の核保有や中国の武器輸出先などを見渡すと、素手ではいられなくなるということを思います。菅さんと福島さんのこの満面の笑みの内側に、ロシアとの課題は置かれているのでしょうか。

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2010-12-07

米韓FTAの決着のメリットは何か?日本は何もできないで終わる

 12月5日付け日経の社説・春秋 記事で韓国と米国が自由貿易協定(FTA)交渉を最終決着したことが、日本の農地・農協の抜本改革にどう迫るか、と投げかけられていました。(参照)。 APEC直前のオバマ氏訪韓の際に合意に至らなかった事からあまり日が経っていないだけに、意表を突かれたという印象を受けました。これを受けてメディアが報じていることは、日本政府の弱腰姿勢を叩たいていると、そういう印象です。
 米韓のFTA合意は、日本の自動車や電気産業の輸出に大きな打撃であるというのは事実だと思いますが、菅政権の政治手腕はそれに太刀打ちできない脆弱な体質だというのはどうなんだろか、という疑問を思いました。確かにそうだと思う部分と、政治家の背景を思うとそればかりが原因ではなく、政治が変わらない根本理由は、私達にあるのだと思いました。それについて、話をまとめておくことにします。

 結果論ですが、このFTAに対抗できるとすれば、TPPに参加する他日本の輸出を支える手立てはないようです。そのTPP参加の意向は、米韓のFTAが前提にあったとは思いませんが、菅さんは動いているようです。

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 菅首相は、「食と農林漁業の再生推進本部」を設置し、自らその議長に就任した上で、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を具体化しようと積極的です。千葉県のトマト農家でトマトをつまんで、「十分意欲のある皆さんならばやれると心強く思った」(参照) と報じています。何ともほのぼのする光景です。日本の野菜や果物が、世界中で一番美味しいのではないかと思うのは私だけではないと思います。何年も前から誰もがそう言っていますが、それが、日本を支えるまでに成長しないのは何故か?専門家の意見はいろいろありますが、政治的に言えば、日本の政党を支えている各団体がうんと言わないことはできないのも背景にあると思います。
 農業改革が進まない理由に幾つもの問題があると思いますが、政府は、50年も前からこの改革に着手してきたにもかかわらず、いまだに何も変わっていません。考えられる原因は、少子化によって農業人工が増加しないことや、都市に移り住む人が増えたことによる過疎化などが大きいと思いますが、そもそも米(こめ)離れが進む日本で農業改革の名の元に規模拡大政策を打ち出しても意味がないと思います。このナンセンスな政策を繰り返しながら、農家にバラマキを施行してきた自民党は、現在でも田舎では人気があります。議席の確保も田舎あっての自民党です。そして、現在の国会はねじれているのです。菅さんが農業改革に本腰を入れてTPP参加の実現を目指せば、農業者の収入確保をどうするのかという問題が必ず出て来ます。農業だけは政府に面倒を見てもらっていると言えばそうです。問題は、その体質を変えるのか、同じようにばら撒きながらTPPに参加するのかですが、それは虫が良すぎると、今度は自動車工業業界や電気機器メーカーが黙ってはいないでしょう。それが、今回の韓国と米国のFTAの決着のオチかもしれないと思います。
 ただし、中国に関しては動きができるのではないかと思います。中国も韓国や米国を輸出先国としていますから、アメリカから輸入品が増え出すことによって、中国も黙ってはいられなくなるでしょう。中国の人民元が低すぎることが米国の失業率を高くしていると考えている事からも、アメリカの狙いは、中国を間接的に動かすことが目的なのかもしれません。元々、韓国とFTAを結ばない方がアメリカにとってはラッキーだったという見方もあったのです(参照)。経済大国のアメリカと韓国が手を組んでも、どちらにとってもメリットのないFTAだと決め込んでいましたが、損をして得を取るということもありなのか?この場合は。
 私の単純な疑問ですが、FTAの合意をし始めたらどの国とも協定を結ばなくてはならなくなる、というエンドレスな馬鹿馬鹿しさはないのでしょうか?将来のことは誰も思わないのでしょうか?カンフル剤だと言われる由縁も、中国を揺さぶるために、アメリカにとって韓国とのFTAは、日本とよりも意味がおおきいのかもしれません。

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2010-12-05

最悪な書き手が、だから書くなんてもっと変な話なんだけど

 ネット上ではブログを始めようが止めようがいろいろ聞かれることもあまりないのですが、リアルではそうは問屋が卸さないという温度を感じます。聞かれて、決して嫌な気分ではないし、それがリアルの交友でもあるわけです。逆に、この交友関係をネットで求めるのはどうか、という疑問はありますが、並べて比べるのは無理があります。ただ、自分の心の中の相手の存在がどのような位置にあるのかで、時には、リアルな交友関係で共有できることよりも掘り下げた話ができることもあります。自分から発することが、より純粋であるような気がします。まあ、ブロガーと言ってもいろいろなので、これは私の場合に関してです。
 ブログで書く行為は、私の場合読み手を想定して書くと言うことはあっても、読み手の解釈に注文をつけるようなことまでは願いません。そんなことは当たり前のことだった筈なのです。が、ここでそれがそうではなかった自分に気づき、愕然としました。自分に失望したのです。失望などと表現すると、いかにもこれまではそういうことはなかったかに思わせてしまうかな。そうではない。思い上がっていたつもりもないけど、でも、どこかで気づかないうちに読み手に寄りかかっていたのかもしれません。
 自分自身の純度が書くことなら、では何故人に「わかってほしい」と求めるのか。それが虚しいことは百も承知のことです。この体たらくな書き手は、書き手でもないわ。何者だ、と怒れてきたのです。
 先日「政治外交に関しては特に、自分自身の意見を書きましょう」という意見を頂きました。この言葉の背景には、きっと、私の書いた内容が受け売りだと判断されたからだと思います。ここで、「そうか」と受け止められない私の気持ちの抵抗があり、「ご理解いただきたい」と、言っている自分が正にそれだったのです。読み手の解釈に、書き手が注文をつけるって何?こんな馬鹿な話があってはならないことです。だから、私は書くことに失格したのです。自分で自分を戒めずに誰がするかと思えば私しかいないのです。
 これは自閉的な回路であるし、その先は、自分が煮詰まって自暴自棄になるか、腑抜けになるか。あまり若くはないので、そうめちゃくちゃなことは起こらないとは思いますが、もっと若いころ、この先には何もないことを味わってきたし、そこから這い上がることもやってきた。あれ以上のどん底はないくらいのところまで気持ちが落ちたことだってある。だからこの繰り返しは、時間を無駄にするくらいのことしかないのです。
 同じことを繰り返さないという賢い方法で、ここに両極端な分かれ道が見えてきたのです。一つは、自閉的な回路の向こうに何かがあるとしたらそれは何か、もう一回落ちて覗きに行く。もう一つは、書き手としてもっと腹を括って「人に自分への理解を求めない書き手を目指す」つまり、私という未熟な人間を晒しながら今は前に進んでみる。
 だったら後者だろ。
 ココログの料理レシピは膨大な数に膨れ上がり、データが飽和状態で、料理名や材料名で検索してもヒット数が多くて、慣れていない人や携帯からでは見切れないのが現状です。つまり、実用的ではないのが悩みの種でした。が、それに対応できる方策も見つからず、結局、ここはこのまま利用されるしかないのです。と同時に、料理に関して書きたいことはそこそこ書いてきたという気持ちもあります。
 書き手として止められない理由ははっきりしているのに、直ぐに何かを書きたいということでもないし、かと言って、ここでこのまま続けるのには無理があります。また、違う角度で模索してみようと思います。

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2010-12-03

利根川流域1都5県の知事らの八ツ場ダム負担金留保の解除問題

 今朝、八ツ場ダムの負担金を保留にしていた利根川流域1都5県の知事らが、本年度分の建設負担金と利水者負担金など約88億円の支払い留保の解除をしたということを知って、気になる点を書いておこうと思います。
 栃木地元紙による「6都県知事、八ッ場ダム負担金支払い留保を解除」(下野新聞社)の情報は、寝耳に水でした。このような重大な話が、内々の会談でまとまってしまってよいものだろうか?馬淵さん、大丈夫なの?という嫌な予感もしました。このダムの問題を整理して考えようとすると、どこまで遡れば良いやらと困惑します。考えやすく焦点を置くために、現時点で問題だと思うことをまずは先に置くことにします。
 前原誠司前国交通相は就任後、ダムの中止を宣言した事で住民の反発が露呈し、その時点で話し合いが決裂した状態のまま馬淵氏に引き継がれたのは今年の菅政権発足後の人事でした。そして、馬淵国交相は先月6日、前原前国交相の発言を事実上撤回ではないかという意味合いの表明をしました。
「私が大臣としては一切、『中止の方向性』という言葉には言及しない」と表明した(朝日新聞)。そして、ダム建設中止の方向性に反発していた一都五県が負担金を留保するまでに至ったというのがこれまでの経緯です。この直接的な原因は何か?
 これは、民主党政権に変わってから、それ以降もどんどん発言にブレが生じる政権なので、一言でこれと限定しにくいのが原因究明をさらに難しくしています。振り返って思うに、世間交代へ導いた直接的な力であった小沢さんが、「国民の生活を第一とする政治」を挙げたことが民意を集めることに繋がった点から考えると、現行はまったく正反対で、しかも当時のマニフェストの内容も何もあったものではありません。国民から詐欺師だと言われるような政党です。何故このような流れになるのか?一つには、民主党を構成する党員のお里は、松下経営塾出身者や、旧民社党系議員という経団連と同じよなことを主張するようなメンバーであることも相俟って、党内部の意見が常にまとまらないことが結果的に烏合の衆のような政党になっていると思います。理想を掲げても現実的には無理な点です。このような党内部のごたごたした背景に、八ツ場ダム問題解決に取り組む担当大臣が不在であるとしか言いようのないです。怠慢としか映らないのです。
 今回の留保解除の条件は、政府の不履行、つまりダムの中止があった場合は訴訟を含め徹底的に追求するとありますが、ということは、地方はこの件で一切損はしないということを政府が保証したかに報じられています。

 会談では6知事が連名で八ツ場ダムの早期完成を求める申し入れ書を提出。この中で来年秋までに結論を出すとされる八ツ場ダムの検証について「最大限早い時期にわれわれが納得できる結論を出すことを求める」とし、負担金の支払いは「あくまでもダム本体の建設が前提」とくぎを刺している。

 これに対し馬淵氏は「申し入れ内容を重く受け止める。検証は可能な限り前倒ししたい」と答えたという。

 これは、県民感情としても相当の申し入れだと思います。また、ここへ来てこの負担金の留保を早急に解決しなくてはならない事情として、このまま支払い留保が継続されれば1月上旬には資金が枯渇し、用地買収などの生活再建事業に支障が出る可能性がでてくるということらしい。つまり、どのような形であれ、ここで留保を解除せざるを得ない地方の事情があったということです。
 ここで、誰がこの立場であろうと、この場ではこの条件で「ダム中止を撤回」するという方向付けしかないように思いますが、このような付け焼刃的な手法では、本来の問題解決を先送りする言い訳のようになるだけだと思います。余談ですが、これは、鳩山さんが普天間基地移転問題を引っ掻き回したような状況と似てきているような気がします。この展開になったきっかけは前原さんのダム中止表明からでしたが、前原さんを腐すわけではありませんが、JALを絶対に潰さないと断言したあと、結局会社更生法による整理ということになりました。まだ、いくつかあります。一旦発言したことがどうにもならないうちに、担当大臣を変えるという人事手法もありますが、この後に続いた馬淵さんが、この問題の解決に現在当たっているかといえばそうではないと思います。最近、不信任決議案を野党に可決され、その件では忙しかったと思います。
  政治家は、国民の生活を良くするために働く人達です。このことは小沢さんの言葉を借りるまでもなく、政治家が政治家になるために国民に約束したことです。こんなことは、今更言うことでもありませんが、ではこのダムの問題では、関係住民の同意がなくてはどちらの方向にも決まらないはずだとうのに、その話し合いもない状態です。政府は住民に、中止や続行の両方で起こりうるデメリットに対する回避策や対応策、またはそれ以上に生活の確保となるような案を提示することで話し合いの場を設けることもしていません。
 馬淵氏の付け焼刃的な対応措置は、この先、次なる問題を引き起こしはしないかと、そのことが気になります。菅総理は、「何らかの前進があったことは良かった」と述べた(日経)。とコメントされたそうです。
 「何らかの前進」て、あまりにも抽象的な表現でさっぱり分りません。いずれにせよ、この支払いのつけは、国民に税金として跳ね返る問題であると言うことだけははっきりしているので、これを「前進」とはあまり思えません。

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2010-12-02

「godmotherの簡単料理コーナー」立ち上げました

 今まで更新してきたようなレベルを維持するのはちょっと難しい私的な状況も背景にあり、お休みするつもりでした。ところが、メールで続投の要望を多く頂き、内容は薄いものかもしれませんが、忙しい方向けのレシピという限定的なもので別のサイトで立ち上げました。今までどおり我が家の献立から紹介するという形になりますが、ぼちぼち更新します。
 隠れてこっそりアップしたのですが(当初はIDも変えていたのに)バレてしまいました。ネットで隠れてやるのは無理ですね。なんか、直ぐに見つかっちゃうww

 こちらです☞『godmotherの簡単料理コーナー

アドレスが変わりました。変更後は☞http://www.godmother-recipe.com/

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