極東ブログ「民主党政権下で日本の武器輸出三原則が終わるだろう」について
率直な感想を先に言ってしまうと、世界は本当に変わってしまったと思いました。何といえばよいやら、言葉にもならないほど落胆してしまいました。ちょっと待って、こんな筈ではなかったでしょ、と私が育った昭和と思わず比べてしまいました。極東ブログ「民主党政権下で日本の武器輸出三原則が終わるだろう」(参照)のタイトルからの連想で「ああ、またこの政府の馬鹿が・・・」と、この政府になってから特に外交的には失敗ばかりです。皮肉な話です。この政府が馬鹿のように狂ってもいたし方のない世界情勢なのだということが、とりあえず平面的に捉えられると思います。
冒頭にその理由が述べられている通り、北大西洋条約機構(NATO)の変化が大きく、その影響を与えているのは、ロシアの協調だと言うのです。まずこれに驚きです。
大戦後、欧州寄りの西側諸国と冷戦が続く旧ソ連のような東側アジアの共産圏を締め出すための軍事同盟としてNATOが設立されたのです。そのNATOにロシアが協調するとなれば、よほどのメリットがなければあり得ないというのが言わば昭和的なところなのですが、日本とNATOとの関係が活発になってくれる事は、日本にとっては望ましいことです。北朝鮮の核実験に強く反対的な態度を示してくれることが何よりも救いです。
日本の関わりとしては、アフガニスタンの人道的支援を保ってきていますから、NATOとの関係は、前政権までは良好だったと言えます。今思えば、こういう点では安倍政権や小泉政権での外交がありがたく思えてきます。このNATOが活発化することは喜ばしいのですが、何故ロシアが加担するのかという点で、極東ブログによると二点挙がっています。
不安定な中央アジア諸国の情勢にアフガニスタン戦争の影響を受けることを避けたいという思いもあるだろう。
NATO側の本音を言えば、ロシアからの脅威に対抗するためのMDなので、ロシアの協調というのは不思議にも見えるが、それ以上に重要な課題がのしかかった。明白なのはイランの弾道ミサイルの脅威である。当然ながらロシアもカバーしているので共通の敵と言えないこともない。
イランもこの動向に反応し、この間ミサイル実験(参照)も行った。イラン側からの声明でもわかるように、イスラエルへの敵意は剥き出しにされており、NATOとロシアとしてもイランとイスラエルの暴発の可能性に備えるという意味合いもあるだろう。さらにはパキスタンからの防衛という複雑な問題も絡んでいるだろう。
日本とロシアと言えば、先のAPECでのロシアのメドベージェフ大統領と日本の菅首相との会談が最新ですが、アメリカとロシア間にはすでにお約束が交わされていたということもあって、かなり強気な姿勢という感じを受けました。この空気には、日本もいずれうんもすんもなく合流せざるを得ないとするものがあったのかもしれません。
別の話ですが、11月6日「極東ブログ「非核三原則が実質的に終わる時代へ」に寄せる思い」(参照)では、ニュージーランドが日本と並んで非核原則を守ってきた国でしたが、アメリカとの軍事的合意の方向へ協議が進んだことを話しました。一体世界はどうなってしまうのか、大国はどんどん手を組みならが軍備を整え、他国の攻撃に備えていっています。唯一の被爆国日本は、「日本版のアンザス危機」(参照)を迎えるのではないかとの懸念も持ちました。そして今度は、武器輸出禁止三原則の終りまでもが起ころうとしていると言うのです。私はできれば、野党が否決すれば阻止できる範囲の話にして欲しいと思ったのです。
武器輸出禁止三原則は、佐藤栄作首相が衆院決算委員会で表明したのが始まりで、①共産圏諸国、②武器などを輸出してはいけないと国連決議で禁じられている国、③国際紛争当事国、の国に対して、武器輸出を禁じたものです。加えて、76年の三木内閣で、対象をすべての国に拡大することによって、憲法9条をより鮮明にしたのです。が、にもかかわらず、中曽根内閣の83年に、例外が設けられたのです。これは、米国にだけ限定された例外としての扱いでした。理由は、日米貿易摩擦の中での圧力を親米家の中曽根首相の配慮による外交の結果かと思います。
つまり、この三原則は、時の首相や政権担当の政党で可決されれば、如何様にも変更可能なゆるいお約束事とも言えるのです。そう思っている私の浅知恵から、政治家の考え一つでなんとかなることだと思っていたのです。
ところが、幸か不幸かこの緩さが、解禁にまで及ぶ可能性があるというのです。
特に重要なのは、日米がMDで共同開発している海上配備型迎撃ミサイルSM3の扱いだ。日本が武器輸出三原則を固持すると、共同開発の米国としてもこれを第三国に供与することが不可能になる。MDを推進しようとするNATO側からしてみれば、日本がNATOのMDの傘を妨害する要因に見えるし、平和への侵害とも見えてしまう。
これを回避するために民主党政権は武器輸出三原則を見直し、共同開発の対象国の拡大を検討している(参照)。拡大対象は、NATO17か国と韓国およびオーストラリアの計19か国となる予定だ。
中曽根政権がアメリカと交わしたように、また、最近では、小泉政権の給油問題で、アフガニスタン戦争に加担しないという表向きを作ったように、それぞれのケースで政府は慎重に扱ってきたのです。それを今後維持しながら、この三原則は清く残すべきだという保守的な考え方がでてきます。それが何故できなくなるのか?国民が普通に持つ疑問です。その答えはこうあります。
武器輸出三原則の例外を閣議決定すれば、武器輸出三原則は無傷で残る。だが、19か国へも主要先進国に例外が拡大されても原則は維持されているというのは滑稽な響きがある。実質的には、民主党政権下で日本の武器輸出三原則が終わることになるだろう。
武器輸出三原則を頑なに守ろうとすれば、文字通り「日本版のアンザス危機」と言うものです。世界から村八分にされ、孤立するのです。「武士は食わねど高楊枝」とも言っていられないということなのですね。日本は、なりふり構わず尻尾を振って、大国についてゆくしか生き延びる道はないという話でしょうか。
もう一つ、何故、NATOがイランやパキスタンに備えようとするのか?という単純な疑問も抱きました。が、直ぐに思ったのは中語との関係です。パキスタンとの関係は、極東ブログ「中国によるパキスタンへの核武装強化の支援」(参照)で詳しく解説されています。また、イランについては、中国は以前から武器を輸出していることは明らかです。このような、中国の核化拡散の勢いを伸ばそうとする動きを国際社会の話題にし、中国こそがその動きを断念せざるをえないようにしなくてはならないと思います。そのためのNATOであるなら、それは日本も大いに協力的でなくてはならないでしょう。
ただ、中国は一筋縄ではいきません。アメリカも手を焼いている通りです。先日も少し話題になったノーベル平和賞授賞式に出席しないように、との要望が中国から出され、賛同しているのがパキスタン、イラン、インドだそうです。このような動きを静止する権利も持ちませんが、寄り添って行く国を見れば、それは中国の息のかかった国々で、どうすることもできません。日本も多少の躊躇をしたのか、参加申し込みが締め切りから二日ほど延びた時は、この政府には不安ばかりなので、実は、冷や汗ものでした。
私は戦争の痛ましさを割りと身近に見聞きしてきましたから、戦争は怖いです。今までは、法律で命を守ってもらう以外考えられませんでしたが、現実の世界情勢の中で、日本だけ関わらないわけには行かないということがわかってきました。
心境は、誰かにしがみつきたいほど心細くて仕方がないです。
このところ大騒ぎしている「「暴力装置」が国家」なのだということがイメージできない人には打って付けの現実問題です。武器によって国家を守ると政府が決めることは、市民の総意でなくてはなりません。「暴力装置」は国家ではないと言う人達にとって、それを目の当たりにすれば理解できるのでしょうか。ただ残念なのは、言葉を理解できないだけではなく、武器輸出三原則がなくなることなどには無関心のようです。Twitter検索しても、この話題はあまりないようでした。この世界情勢になびく政府に国民が反対すると、今の中国のような状態になるのか?他国と歩調を合わせないと、日本は、世界から孤立状態になるのです。その先の日本の姿は、私には想像できません。
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