極東ブログ「非核原則が実質的に終わる時代へ」に寄せる思い
ちょ、ちょっと待って。なにこれ。
ニュージーランドがアメリカとの軍事同盟の再構築を目指すことになった、と。「ウェリントン宣言」というらしい(参照)。
非核原則を掲げていたニュージーランドの方向性が実質的に変換すると同時に、この動向は日本の非核原則にも影響を与えることになると思われる。自民党時代にはそれなりに堅持されてきた非核原則が民主党政権下で実質的には終わる時代へと進むだろう。
こんなこと、そんなに簡単じゃないでしょ、と思うのですが、何を根拠に「この動向は日本の非核原則にも影響を与えることになる」と、しているのでしょうか。このことは、日本もいずれ核武装する方向になるということでしょうか。
昨日の私のエントリーでは、尖閣諸島問題と北方領土問題を具体的に挙げて、現政権の今後の外交をどうするのか、それが読めないことの不安を話したばかりです(参照)。今度は、ニュージーランド新政権が、「アンザス(太平洋安全保障条約, ANZUS:Australia, New Zealand, United States Seurity Treaty)復帰」に向かっていて、いずれ日本も影響を受けるだろう、とは。これが、私のエントリーへの答えだとしたら信じがたいことです。
何故こんな理屈が成り立つのか、自分の目で確かめないことには納得がいきません。もう一回じっくり読んで、その辺のところをきっちり押さえて置くことにします。エントリーにはこうあります。
政権交代後の民主党政権以降では不明確ながらも、日本の非核原則の歴史的経緯の明確化に合わせ何らかの再検討を求めているようもであり、それがうまく機能しなければ日本版のアンザス危機が起きる可能性もある。このことは昨年ゲイツ国防長官訪日時にすでに議論されていた。関連記事はジャパンタイムス「A good time to remember the ANZUS alliance's fate」(参照)で読むことができる。
言われるままにジャパンタイムスの記事に目を通しました。かなりの長文で政治的な背景や思惑が含まれているとみられ、一部に訳しきれない部分も残しました。ここで確認したかった部分だけ後で拾うことにするとして、まず、ゲイツ氏が「アンザス危機が起きる可能性もある」と示唆したことから、このアンザス危機を理解する必要があります。Wikipediaから引いてきました(参照)。
太平洋安全保障条約(たいへいようあんぜんほしょうじょうやく、Australia, New Zealand, United States Security Treaty)は、アメリカ合衆国とオーストラリア・ニュージーランドの間で結ばれた軍事同盟に関する条約。1951年9月調印。締結各国(オーストラリア・ニュージーランド・合衆国)の頭文字をアルファベット順に取って、ANZUS(アンザス)と略される。
このアンザスに危機が起きたというのはエントリー中に説明されている通りです。以下がその部分です。
アンザス危機が発生したのは、1984年非核原則を掲げるニュージーランド労働党(デヴィッド・ロンギ首相)が政権につき、同国に寄港する船舶に核保有検査を義務づけたことがきっかけだった。
米国は当時から戦略上、軍船の核兵器保有を明示しないことが原則であったたが、新政権の方式により米軍船のニュージーランド入港が不可能になった。事件としては米軍船USSブキャナンの入港拒否がある。この対応に怒った米国はニュージーランドの防衛義務を停止するに至った。また貿易面でも関係が悪化した。インフレは進み失業率は悪化し、国は疲弊した。
「日本版のアンザス危機」というのは、どういう危機なのか?つまり、アメリカが日本に見切りをつけて非核三原則が解消され、同盟国ではなくなるという危機です。そうならないようにしたいと匂わしているのが、昨年11月、ゲーツ氏の訪日時、北沢防衛大臣との会談での意味深な言葉です。
Secretary Gates, and Sawa Kita Defense "secret agreement" when discussing the issue, "we would love to have a negative impact on bilateral relations and the nuclear deterrent is careful not care," he warned. The same applies to "the first use."
ゲーツ長官は、「核密約問題が核抑止力と日米関係にマイナスの影響を及ぼさないようにすることを希望する」
この「核密約問題」というのは、日米安全保障条約の際佐藤栄作首相とニクソン大統領間で交わされたとされる例の密約(参照)です。密約によって暗黙の了解があったということは今では明らかですが、昨年のこの時点ではその発覚を念頭に置かざるを得なかったわけです。このことが最初の疑問である「この動向は日本の非核原則にも影響を与えることになると思われる。」につながるのではないかと思います。
昨年、政権交代した時点で鳩山政権が掲げていたのは、「対等な日米関係」や「普天間基地の県外国外移転」「官僚支配を終わらせる」などでした。あからさまに、対米従属をやめようとしている観を強く感じましたが、これらを受けて、日米安保体制を壊そうとしているという見方がアメリカにあり、ゲーツ氏から先のコメントが出されてのではないでしょうか。 そしてこれが、極東ブログの解説の以下の部分につながります。
英国や豪州などの政局の動向を見ても、労働党的な政権がより世界情勢の変化に合わせて現実的な政権に変化する傾向がある。かなり遅れた日本でもようやく近隣の危機状況や世界の現実に合わせた政権に今後は移行するようになるかもしれない。
日本は世界で唯一の被爆国であり、ニュージーランドの非核三原則よりも、より国民の意識が核廃絶に敏感ではないかと思います。近隣の危機状態に足並みをそろえて、まさかに日米同盟解消へ向かうとは思いたくありませんが、本当にそうなるのかもしれないという危機感は持ちました。「歴史は繰り返す」といいますが、その変革期にさしかかっているのだと仮定して民主党の動向をこの一年で振り返ると、否定できないのです。
昨日極東ブログのこのエントリーを読んでから、私の気持ちの中に起こった抵抗が邪魔して過去記事や古い文献が素直に読めず、解読するのに時間もかかりました。日本がニュージーランドの後に続くようなことがあってはならない、と、そう強く抵抗するのですが、この政権が続くうちは安心できないのだと感じました。
非核三原則の背景に「密約」があり、その密使だった若泉敬氏の悔恨の念が虚しかったことを思い出し、極東ブログ「沖縄本土復帰記念日」(参照)を読みながら改めて惜別の思いがこみ上げました。
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