牡蠣とほうれん草のキッシュ風(タルト生地のないタイプ):気になる「亡命ロシア料理」のオムレツ
牡蠣が美味しい季節の到来です。今年の春のチリ大地震の影響で牡蠣の養殖場が被害を受けたことや、海水が温かく、広島産の牡蠣の入り方が芳しくなかったため、あまり食べませんでした。今シーズンは少し挽回したのか、出回り始めから大変大粒の牡蠣が見られます。
今日は、1パック150g(実質)の加熱用牡蠣を使って大きなキッシュを作りました。若い男性ならおそらく半分以上、一食で食べてしまうくらいの量ですが、我が家では食べ過ぎないように小分けにして食べます。残りは、お弁当にと思い翌日になっても生臭みが気にならないように丁寧に掃除をします。
また、牡蠣とほうれん草を卵液に混ぜる前に、小麦粉を軽くまぶしてバターソテーします。ちょっと一手間の、この小麦粉の威力は絶大なのです。
牡蠣をソテーすると縮んで小さくなることはご存知ですか?貝類は水分が多いので大変小さく縮んでしまいます。ソテーしながら、いつまでソテーすればよいのか、その目安が分らなくなるほど延々と水分が出ます。最終的には凝縮された旨味が残るのですが、小さくなった牡蠣の存在感はトホホです。今回は、これを解消する技を使って下ごしらえをします。この方法を知っておくと、オムレツや炒め物にも牡蠣を具材として使えるようになるので、料理の幅が広がります。
まず手始めに、臭みが残らない掃除方法です。
▶2%ほどの食塩水を小ボールに作り、黒い筋の入った「貝ひも」の特に内側の部分を軽く指先で撫でるように一つずつ食塩水の中で洗います。▶次に、流水で洗い流して笊に上げ、まずを切ります。この時、ボールの食塩水が黒っぽく濁るので、どれ程汚れているか確認できます。かなり濁ります。これが全て、臭みの元になっているのです。
▶料理する直前に、キッチンペーパーなどで牡蠣の水分を吸い取り、小麦粉を軽くまぶします。できるだけ薄くつけるのが好ましいので、刷毛を1本持っていると便利です。この小麦粉は、牡蠣が縮むのを防ぐためと、牡蠣から出る旨味の含まれた水分を逃がさずに閉じ込める役割をします。▶バターソテーする時は、割りと強めの火加減で表面を素早く焼きます。
▶次に卵を溶き混ぜ、牛乳や他の調味料を混ぜてから下湯でしたほうれん草と牡蠣を軽く混ぜ合わせます。ほうれん草の下茹での詳しい方法はこちら☞godmotherのHint&Skill▶バターを縫った耐熱のパイ皿に生地を流し込み、表面を平らにしてチーズをのせます。▶200度に予熱したオーブンで10分、焼き具合を竹串などで確かめて出来上がりです。ここまでだと、なーんだスパニッシュオムレツのオーブン版じゃん!なのですが、実は卵液には市販のクッキー用のプレミックス粉が少し混ざっています。これが裏技なのです。
この方法を覚えたのは二つあって、故長島亜希子(長島茂雄夫人)の「私のアメリカ 家庭料理」に書かれている「Impossible Quishe(まさか!のキッシュ)」のレシピからと(☞レシピ)、もう一つは、極東ブログ「オムレツと小麦粉についての悩ましい問題」(参照)の記述にある、「亡命ロシア料理」に書いてあるオムレツのレシピからです。ただし、両者が同じ考え方で作られているかどうかは不明で、これは推測ですが、「亡命ロシア料理」に言及されているオムレツの方が歴史的には古いので、移民の多いアメリカに、ロシアの小麦粉を卵に混ぜて焼くオムレツが影響を与えたのではないか?と、関連づけてみました。ずっと長い間、このことは不思議なままなのです。実は、私はこの本は未読ですが、finalventさんは、「卵2個に小さじ1の小麦を加える」という、この本のレシピに忠実作っていたというのです。その理由を聞かれた私も、最初は小麦が何のためなのか分りませんでした。そこで早速実験をしてみて、初めて、その効果が分ったような気がしたのです。
話が外れたついでなので寄り道しますが、一般的なオムレツは、表面がしっかり焼いてあって成型され、中は半熟のようなスクランブルエッグ状態になっているものです(Youtube参照)。「亡命ロシア料理」では、このあと予熱したオーブンでオムレツを焼くとあるそうです。ね、変でしょ。せっかく中はとろとろ状態にしたというのに、さらにオーブンで焼くというのです。実は、この不思議に私はまんまと乗せられて、このエントリーが掲がった直後に試してみたのです(☞レシピ)。小麦粉の力は、ここで初めて発揮されたと言っても良いと思います。
オーブンの熱でどんどん膨らむ理由は、オムレツが半熟であることが必須条件なのです。スクランブル状になった卵は空気をたっぷり含んでいるため、オーブンの熱でその空気が膨張して膨らんでいたのです。本当に風船のように膨らむのです。それを「数秒以内に食べる」という理由も、取り出せば直ぐに納得がいく筈です。いや、このときは楽しかった。お陰で、キッシュの卵生地に小麦粉を入れるというのが恒例になったのです。つまり、膨らんだ状態をそこそこに安定させる効果です。小麦粉をもっと入れれば、オムレツの膨らみ具合はもっと大きな状態で長く持ちこたえそうなものですが、粉っぽくなってしまうような気がします。だったら、初めからパンケーキをお作りなさいよという話に帰結しちゃうのです。こんなことを終日考えていたら、やっぱり「亡命ロシア料理」を読んでみたくなり注文しました。Twiitterでこの本のことを聞くと、大変面白い本だと知り、まずは読んでみます。
さて、牡蠣のシーズンですから、諸先生方の歴代のレシピを生かしつつ、美味しい牡蠣のキッシュを味わってみてください。作り時間は概ね30分です。これは、牡蠣を丁寧に洗ってバターソテーするまでの時間で、オーブンで焼いている時間は料理時間とは数えません。昨日のフォカッチャのエントリーに「パン焼き機かオーブンが欲しくなった」というコメントを頂きましたが、如何でしょう?このような卵料理は早速オーブンが活躍します。オーブン料理の良いところは語りつくせないほどありますが、大雑把に言うに、材料を放り込んだら後は焼けるのを待つだけです。魚などはふっくらとジューシーに仕上がります。塊の肉はゆっくり焼いてこんがりしあがります。ハムもできます。右のカテゴリー欄の「オーブン料理」が多少参考になるかと思います。
材料
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コメント
新居に越してきて1年が過ぎ、ガスオーブン、やっと最近よく使ってます。
鶏もも肉や豚バラを野菜と焼く、グラタン、パン、スイートポテト、こんくらいなので、ここ参考にしてさらに活用します。
魚にオリーブオイルでオーブンと、このキッシュ、いってみます。
先日のコメント誤字ばかりですいませんでした。
今月、旦那の趣味のスポーツの試合のため長野に家族で行く予定でしたが、負けてしまいシーズン終了。
来年は優勝してもらって長野行きたいところです。
私にとってゴットマーさんが長野のイメージなので。はは。では。
投稿: みみこ | 2010-11-17 09:15
みみこさん、あははって笑っちゃうとマズイけど、この間の名無しさんね。そうだろうと思ったけど、ネットって分らないことが起きるので言及しなかった。それはさて置き、もう一年たつのですね。オーブン料理に幅が出ましたね。キッシュと魚の丸焼き、同時でも良いようなバランスかもですよ。
長野に来るなら、うちに泊まって駐車場でバーベキューでも!来年頑張っておくれ父ちゃまによろしく。
投稿: ゴッドマー | 2010-11-17 11:35