極東ブログ「ロシア、メドベージェフ大統領の国後島訪問の思惑は二島返還だろう」について
9月29日の時点で「国内旅行」、という位置づけで延期されていたロシアのメドベージェフ大統領の北方領土・国後島訪問が昨日実現したようです。当時、「国内旅行」という表現でロシアの外務省高官が表現したことは寝耳に水で、この時は、これはまるで中国が尖閣諸島を「うちの島」という扱いで日本に挑んでいるのと同じじゃないのかと、嫌な予感もした話です。とうとうそれが昨日決行された、という落胆的な思いが過ぎりました。
極東ブログで「推測」として掲げられたいくつかの点でそれが確認でき、重ねて、世界で日本はどう評価されるのかという将来的な見方も含めて一緒に考えたいと思いました。(参照)。つまり、領土問題は政権の政治手腕にかかっていると思いますが、深刻なのは、現政権がこの問題を有利に展開できないのではないかという見方があることです。
内容からいきなり入りますが、この問題は、2012年に行われる次期大統領選挙まで様子を追う必要があると思います。
北方領土は自国の領土であるという主張を、何故このような形で強行したのか?を大きく二点にまとめられています。
一番の理由は、中国による強行な尖閣諸島海域侵犯と同様、民主党政権による日本の威信の低下である。
二番目の理由も中国と同様、ロシアのご事情がある。外部から見える範囲で言うなら、経済運営に失敗したロシア政府は、国粋主義的な強攻策に頼らざるを得ない。加えて、2012年に大統領選挙が予定されているために、現大統領としてはマッチョなシグナルを国内向けに演出する必要がある。
一番については、ごもっともなのですが、前段に、鳩山さんのロシア訪問の際の会談での話があり、笑えました。一概に鳩山さんだけが原因ではないでしょうけど、忘れもしないオバマさんとの会談を取り付けることができなかったことや、外国首脳陣から無視されても仕方のないような発言を思い出すと、ロシア大統領との会談の中味などあったものでもないでしょう。かえってそれが仇となって、相手に日本の手ぬるさを見せてきたのじゃないかとさえ思います。ええ、これは推測ですが、こんなことは日本人なら誰でも想定する範囲のことです。
二番目については、本文では具体的な事例は示されていませんが、Twitterに、この二番の内容をカバーしているのではないかと思われる記事がTweetされています。なかなかこのような記事は拾えないのでクリップした次第です。
➠モスクワ市長更迭 地方再編の完了 (1/4ページ)(Sannkei Biz)
ルシコフ氏の任期は来年夏までだったが、それを待てば、後任による来年12月の下院選と12年3月の大統領選に向けた組織固めが難しいと政府は懸念していた。
解任されたルシコフ氏は9月29日付ニュータイムズマガジンでメドベージェフ氏の民主主義に対する姿勢に疑問を呈し、スターリン主義的な独裁へと逆行するのではないかと警告を発している。
プーチン首相は「ルシコフ氏はモスクワ発展のため尽力してくれたが、メドベージェフ大統領との関係がうまくいかなかったのは明らか」と更迭を支持。後任選びについて、大統領に意見を述べたという。
メドベージェフ大統領がモスクワ市長を更迭した直接の理由にはあまり触れていませんが、記事の背景が事実だとすると、まるで独裁政治が始まるのかといった印象も受けます。
ここが面白いのだが、大統領選で現メドベージェフ大統領が敵対する相手はプーチン首相(前大統領)になりかねない(参照)。こがロシア政局の難しいところでもある。単純なストーリーとしては、メドベージェフ氏とプーチン氏が対立しているというものだが、私はこれはプーチン氏がハッパをかけているくらいものではないかと見ている。
と、ここまでの背景は分りやすいのですが、疑問が一つあります。ここへこて急に北方領土問題を出してきて、何故日本を困らせるのか?です。中国の時と同様に、民主党は、困ると前原さんが威勢よく威嚇に出るので分りやすいのです。
現状の困窮したロシア経済を考えれば、サハリン州の日ロ共同開発液化天然ガス工場も順当に稼働させたいし、対中国・対米の関係上、ロシア側としては極東域で日本との関係を友好にしておきたい。おそらくメドベージェフ大統領の脳裏にあるのは、二島返還に加え、「もっとカネを出せ」ということであり、その際、カネにつられて残りの二島民が友好とはいえ日本化するの阻止したいということだろう。
その辺の分析には納得がいきます。麻生政権時の会談で、「向こうは2島(返還)、こっちが4島では進展しない。これまでの宣言や条約などを踏まえ、政治家が決断する以外、方法はない」と語った。といいますから、その流れだとこの分析は順当だと思います。
自分で分析したわけではないのにこう言っては何ですが、ネットで可視化の範囲の記事を読み、ロシアの政治や経済状態と照らしてみれば、私程度でも北方領土に何をしにくるのかくらい考えます。犬の遠吠えのように威嚇しても相手が「必ず行く」といえば来るのです。その前に手を打つでもなく、たったの4時間とは言え、ロシアの現職大統領が北方領土に降り立った意味は何を残したのか、重く受けとめてもらいたいです。
自民党時代ならこうした難問にまだ展望が開けるのだが、民主党の頭の悪さは底なしの様相を示しているので、複雑な外交の機微が読み取れるのかまったく不明である。また、たかがブロガーの稚拙な意見ですら四島返還論の障害とみなされるようでは、この問題は今後もただ硬直するだけだろう。
なにより誤解していただきたくないのだが、私は別段二島返還論を支持するものではないということだ。四島返還論でもよいと思う。ただ、それならそれできちんと国家戦略が日本国民にもまたロシアにも伝わるようにしてほしい。だが、それはこの政権では絶望的なのではないか。
「国家戦略」という文字に触れて、ようよう思い出した程度で触れるのも気が引けますが、言わせてもらいます。国家戦略室は、国の重要な政策や方針を検討したり企画する部署ですから、今回の件は、この部署は機能したのでしょうか?外相の前原さんが表に出ては声明のようなことを発表していますが、個人的な見解を述べるに終始してしまうのが目立ちます。後で与野党から批判が出てくるのを見ていると、内部で議論されていないことが推測されます。それが一番気になるのです。つまり、野党とのねじれと民主党内のねじれが同時に起こるので、私には、この政府は混乱した烏合の衆にしか写らないのです。組織の構造の骨組みは何のためなのかと、いつも気になります。
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コメント
いつも読んでます。
料理の写真もまいどおいしそうで楽しみにしています。
ですが政治のことはさっぱりで色々ご教授願えればと思います。
さて、私はアンチ民主党ではありますが、今回の件は残念ながらも、ま仕方がないかなぐらいにしか思っていなかったのですが(すいません軽く考えていて。)、
godmotherさんは今回の4時間の滞在の前に手をうてば滞在を防ぐことができたと考えられてるみたいですね。
具体的にどうすれば防ぐことができたと思いますか?
また民主党以外の政党(自民党から共産党まで)はそれぞれどのような対応を取って今回の件を防いだと思いますか?
素人の思考実験に付き合って頂けると幸いです。
投稿: いつも読んでます | 2010-11-03 23:34
いつも読んでますさん、言葉が足りなかったのかもしれませんが、手を打って滞在を回避できるという意味ではなく、この政府の対ソ政策を問う意味から発言しています。この件は、今日のエントリーにかなりぎっしり書いています。ご参照ください。
民主党以外の政党の考えまでは推察していませんが、少なくなくとも前政権の麻生さんの考えはあったと思いますし、その件も一緒に触れて書きました。
自民党は民主党をまともに批判することもできないほど劣化してしまって、これでは野党といえるのか?と言う疑問の方が大きいので、調べる気にもなりません。
私も人の意見を聞きながら暗中模索のような状態なので、いろいろなことが起こるたびに考察して行こうと思っています。
投稿: ゴッドマー | 2010-11-04 07:28