元FRB議長ボルカー氏の指摘には「貿易戦争」への示唆が含まれるのか
今週アメリカで開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)は2日からだったと昨日思い出して、ニュースもググっていなかったので気になっていました。が、時差のことを指摘されて、まだ始まってもいないのだと気づく始末でした。やれやれ。そして、ここで思い出したのがバーナンキFRB議長の「ミニゴルフ」論のことでした(参照)。これは、先週Twitterで流されたクリップ記事で、なかなか上手い表現で印象に残る内容でした。
世界が注目しているアメリカの金融政策であるからして、FRB議長の抱える問題とその重みのほどは大変なのだろうと察します。極東ブログでは、先週のエントリー「米国金融緩和がもたらすヌルい戦争」(参照)で分析している通り、FRBが大きな勝負に打って出るようなこともなく、「貿易戦争をするくらいなら通貨戦争のほうがマシ」という選択をするであろ、と見ているようです。
中国が人民元を上げないなら米国がドルを下げるということだ。以前のエントリー「日本を巻き込む米中貿易戦争の開始: 極東ブログ」(参照)で述べたが、貿易戦争をするくらいなら通貨戦争のほうがマシだろうということだ。
そして、この政策面の具体的な幅というのは、バーナンキ議長の「ミニゴルフ」論なので、概ねびっくりするような事は起こらないという見方が強いのだと思います。既にこの議論や分析は終わっているのでこれ以上のことはないのですが、深夜に流れた関連ニュースを一つだけ拾っておきます。
それは、ボルカー元FRB議長の最新のコメントで、やはりFRBの今回の件を注視しているようです。記事で知ったのですが、ボルガー氏は、オバマさんの顧問だそうです(Bloomberg )。余談ですが、日本の残念な部分としてちょっと。
官僚OBは天下りはしますが、政治家の、それも政府のトップクラスの顧問という雇われ方はないですね。高橋洋一さんは、ここでも良く登場してもらっていますが、あれだけ辛辣に物を言う方は逆に敬遠されてしまうのでしょうか。それでも国民のためにはどちらが真実かと問えば、高橋さんのような方が顧問に就かれていたらどれ程まともな金融政策になるかと思いました。
話を戻すと、このボルカー氏のコメントで気になった部分です(ロイター)。
エコノミストの間では、FRBが3日のFOMC終了後に、追加緩和策として規模5000億ドル、期間6カ月の国債買い入れプログラムを発表するとみられている。
ボルカー氏はシンガポールでの金融改革に関する討議で「これは、金利にこれ以上の低下余地がない場合に緩和に向け実施される追加策だ。この措置について非常に強力な結果(overpowering results)は想定していない」と述べた。
FRBの新たな流動性供給策は、より長期的にインフレリスクをもたらす可能性があると指摘したが「その問題への対応が中央銀行の能力を超えることだとは思わない。かれらは対応を迫られることになる」と述べた。
原文が見つからないのでこの訳文で解釈すると、予想どおりの追加金融策を実施した場合(5000億ドル)、インフレリスクはあるものの、中央銀行が対応できる範囲でだ」という解釈でよいのでしょうか。
つまり、何?さらに
また、「金融政策の能力の限界に近付いている可能性がある」との議論に反対しないとし、FRBの政策上の選択肢は限られているとの見方を示唆した。
この解釈としては、QE2は最終的な段階での金融政策であり、これ以上のことはFRBのできうる限界を超えてしまうという意味なのでしょう。もっと深読みしてしまうと、今回の選択は、アメリカが貿易戦争よりも金融戦争の方がマシだとするるカーネギー・メロン大学のメルツァー教授の分析の(6)で触れている部分に照らしてみると、二者択一だったのです。この選択に限界があるのであれば、残るのはもう一つの選択である「貿易戦争」ということになります。これこそがアメリカの議会が望む政策につながります。
つまり、共和党に押されぎみの中間選挙の争点が、貿易戦争という構図を展開しないよう回避するためにも、QE2で時間を稼ぐほうが得策であるという、タイミングの問題があったのかもしれないと思えてきたのです。簡単に言うとQE2の意図することです。あまり妄想に走ると、「まあまあ、待ちましょう」とストップがかかるので、大騒ぎしないことにします。
事態が急変せずに、このまま静かにQE2が実施されることを迎えるのが現在のところの最良策なのかもしれないと思いました。
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