10月5日、日銀発表の「包括的暖和政策」について
昨日日銀が、「包括的暖和」と称して、金融政策を打ち出しました。それは、久しぶりに聞く朗報というかで個人的には嬉しかったのです。ニュースを断片的に聞いていた範囲では画期的な計画のもとに実施されるとありましたが、どうも聞く印象とその計画の中味がチグハグで、次第に、喜ぶほどの数字かな?と思うようになったのです。また、白川日銀総裁の記者会見の印象では、思い切った政策だと話していました。その内容とは、ゼロ金利政策の復活、実質上のインフレターゲットの導入、国債やコマーシャルペーパーなど五兆円規模の金融資産を買い進めるというものです。こうして並ぶと、ものすごい勢いで日本の経済が良い方向へ向くような華やい空気を感じますが、市場は常に動いていますし、ぬか喜びは禁物です。ただ、このように金融政策にテコ入れするという空気が漂うと、それだけでも市場が動く要因なので、白川さんの記者会見の言葉にいくらか弾みのある口調が演出されても良いとは思います。
私が気になったのはインフレターゲットの目標値です。「1%」と聞いたときは、何の数字か疑ったほどです。ここで、経済の専門家高橋洋一氏の意見と比較です。氏は、現状の日本なら目標を4%だとも言っています(「日本経済のウソ」)。始めは驚いたのですが、説明を読むとこの数字には納得できる裏付けがあります。私は、これに賛成とまでは言い切れませんが2%という数字ならまだしも、と思ったのです。デフレが急激にインフレになることを恐れるのは消費者も同様で、困ります。だって、財布にお金がないのに物価だけが高騰してしまうと何も買えなくなります。それにしても1%の好転というのは、何をどう望めるというのでしょうか。依然、デフレスパイラルの中である数字かな、と思うとがっかりな気分になりました。幸先の良いスタートにはとても思えなくて申し訳ないのですが。
インフレターゲット(時事ドットコム2010/10/05-22:28)
インフレターゲット 特定の物価上昇率(インフレターゲット)を掲げ、その達成を目指す金融政策運営のこと。デフレ下では、金利引き下げなどの金融緩和を通じて物価の上昇を促すことを指す。日銀は今回、「物価安定が展望できるまで実質ゼロ金利政策を継続する」と表明。日銀は望ましい物価上昇率を1%程度としているため、事実上のインフレターゲットとなる。
ただ、日銀は、ゼロ金利を続ける条件として「(バブルの発生など)金融面での不均衡が生じていないこと」を挙げており、物価上昇率の達成のみにとらわれない姿勢も示している。
また、白川さんの話の中に再三再四出てきた言葉が「物価安定が展望できるまで」だったので、この解釈に困った私です。デフレからインフレに上向き、水平を保てるまでと解釈したらよいのか、それまで1%を目標に緩和措置を行なうというのです。私の疑問は、その数字でデフレから脱却できるのだろうか?ということです。ここで日本の日銀が動くという発表をしただけで株価に直ぐに影響が出てきたり、これに伴って為替やレートに影響が現れますから、一気に目標を高く置くとよいかどうかもわかりません。が、あまりにも最初の一歩が小さな一歩じゃないですか。
物事が動く前に色々先走って不安材料を並べるのも如何かと思うので、これくらいしておきます。ただ、待ちに待った金融政策のお祝いとまでは行きませんが、大きな前進につながる事を祈るばかりです。
日経の制作ビデオに白川日銀総裁の昨日の会見全容と、その後の記者とのやりとり全ての収録が見られます。興味のあるからはどうぞ。
☞【映像】白川総裁会見、全容はこちらから:日銀は5日、追加の金融暖和に踏み切った。今回の金融暖和を「異例の措置」とする白川総裁。記者会見のすべてのやりとりはこちらから。
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