2010-10-11

極東ブログ「国連報告書によるルワンダ現政府軍による虐殺(ジェノサイド)」―問われる正義の追求

 今回の摘発に関して、「ブログとして取り上げておきたい」という意向の元にエントリーが公開されました(参照)。人権問題としてジェノサイドが21世紀に持ち越されるとも思いたくない問題ですが、現実問題のようです。このエントリーのお陰でいろいろ見直す機会となったというのが正直なところで、ルワンダの虐殺は私の中では歴史上の事件として過去のことになっていました。
 さて、冒頭の部分で私の勘違いがあって、過去の事件が覆されたと思い込んだのです。これが違って、新事実が浮上したと理解するまでにやや時間がかかりました。このような勘違いは余りないこととは思いますが、念のため遡った部分から記録的に書いておくことにします。
 まず、タイトルにある「ルワンダ現政府軍による虐殺(ジェノサイド)」の前に、「ルワンダ虐殺」と呼ばれている1994年に起こった民族紛争が第一段階にあります。これは、同じ言葉を使う民族であるフツ人によるツチ人の大量虐殺です。
 この「ルワンダ虐殺」が起こった発端は、フツ系ハビャリマナ大統領らの航空機がツチ系により撃墜されたことで、政府軍やフツ系過激派民兵らによるツチ系住民やフツ系穏健派の襲撃が始まり、80万~100万人が虐殺されたと言われています。
 この紛争が終息したのち、フツ系のパストゥール・ビジムングを大統領に、ツチ系出身のポール・カガメを副大統領に新政権が立ち上がりました。そして、この政権が、現在カガメ氏を大統領とする現政権へとつながって建国されたという経緯があります。
 問題は、この政府軍が虐殺を起こしたのではないかという疑惑です。因みに、少しさかのぼって、極東ブログ「戦争犯罪としてのダルフール危機」(参照)ではこのように触れています。

 ルワンダのジェノサイドについては、一般大衆が多数参加し、農民がナタを持って殺戮を遂行したとの理解が流通している。しかし、公刊された文書資料や聞き取りから状況を再検討すると、民間人が殺戮に関与した例もあるにせよ、多くの場合、軍や警察が近代的武器を持って殺戮を実践したことがわかる。また、殺戮の動員に際して重要な役割を担った民兵組織は、一党制時代に由来するものであった。殺戮実践の方法は、ポスト・コロニアル国家の構造と密接に関連している。

ルワンダ・ジェノサイドは「軍や警察が近代的武器を持って殺戮を実践した」のが重要な点で、まさにその点において、ダルフール危機と重なる。

 以前読んだ「ジェノサイドの丘」(フィリップ・ゴーレイヴィッチ著)に描かれているカガメ大統領は、規律正しく清廉で公正な政治家というイメージで、これまでルワンダの英雄として尊敬され、国も成長を続けてきたのです。

Photo

 批判を許さない独裁者か?と、問われる事になるとは残念です。
 カガメ氏がどのような経緯で虐殺だと問われているのかをいろいろ調べたのですが、ニュースソースとして拾っておくのが無難だと思い、ニュースウイーク「「英雄」カガメ大統領が逆虐殺に関与?」(2010・9・2の記事で、9月8日号掲載)を引用します(参照)。

さらに先週リークされた国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)の未発表報告書で、ルワンダ軍が90年代後半にジェノサイド(大量殺戮)を行った疑いが浮上した。

 仏ルモンド紙が入手した報告書によれば、94年とは逆にツチ人部隊がフツ人部隊を追ってザイール(現コンゴ民主共和国)に侵攻した96年、ルワンダ兵らは何百人もの男女や子供を集めてくわやおので虐殺したり、フツ人難民を焼き殺したりしたという。

 ルワンダ政府はこの疑惑を否定し、報告書が公表されればスーダンのダルフールでの平和維持活動から撤退すると脅しをかけているという。ルワンダの平和には、まだ不安定な要素がありそうだ。

 また、国内でも報道があるというので検索してみると、確かに9月14日にはMSN産経ニュースが報じています(参照)。
 また、NHKでも報じた痕跡はありますが、ソースの保存はありませんでした。
 16年前にルワンダで起きた第二の虐殺の首謀者が、2010年8月の大統領選挙で93%の得票率で再選されたカガメ氏だという疑惑が正しいとなると、国際的な犯罪者という扱いになるのです。ルワンダはどうなるのか。国家が崩壊してしまうということになるのだろうか。これが深刻な問題にならないはずはないのです。

 報告書はジェノサイドの断定については、国際司法裁判所が決めることだとしているが、ルワンダ政府は公表以前にこの報告書の草案を察知し、発表すれば、ダルフールに同国から派遣している国連平和維持活動(PKO)部隊を撤退させると脅しをかけた。国連はそれに屈することなく発表に至った。
 発表後もこの報告書について、国連の背景に国連の失態を糊塗するといった非難もある。また、現ルワンダ政権への反発を正当化し、政情を不安定化させるといった非難もある。後者については当然とも言える非難だろう。
 どうしたらよいのか。当然ながら、大変な難問である。
 主権ある国家を崩壊させる懸念を侵してまで、正義を追究する必要があるのだろうか。少なくとも、ジェノサイドはその必要性を問いかける大きな問題である。

 調べたことを並べただけに過ぎない内容になってしまうのですが、調べるているうちに思ったのは、「虐殺ではなかった」とは思いがたいです。仮にカガメ氏が国際的な犯罪者と断定されても、彼が大統領として建国のために費やした熱意や功績と虐殺の問題は別であるということ。また、16年間ルワンダ国民が信じた指導者が、虐殺という非人道的な行為の基に現職に就いているという事実を受け止める他ないということです。これには当然時間がかかることだと思いますが、虐殺された中に家族が含まれているとすれば、残った家族のカガメ大統領に対する気持ちは、憎悪に変わるでしょう。そして、反感を持ったり非難も起こり、再び紛争が起こることも予想されます。この時代にあってはならないことですが、暗殺も可能性の範疇に入れておく必要もあるかもしれません。
 16年前に起きた事件が公正な裁判で虐殺であると認定され、有罪であっても、現職大統領としての資質を問うべきではないのか。または、裁判にかける事の是非を今からでも問い直す必要があるのか。ルワンダ国民の胸中は、混乱と戸惑の中にあることは言うまでもないことですが、日本人である私は、この問題をどう捉えようとしているのか、それすらもはっきりしないというのが今の気持ちです。

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