2010-10-21

料理って何だろう

 料理のブログを毎日書く傍ら、時事問題に触れるエントリーを書いているせいか、全く異質のものを取り上げているからこそ思うのかもしれませんが、料理に関しては私は進歩がないと自己診断しています。刺激がないから料理にエッセンスが加わらないのだろうか?食材の勉強不足だろうか?トレンディーな食材をもっと掴むべきじゃないか?料理法が古臭いのじゃないか?などの疑問をあえて自分に投げかけて、時々立ち止まって見直すことがあります。が、所詮は自分自身の考え方という固定的な枠内であることと、自問自答というのは結局巡り回って自分に返ってくるだけのような気がします。どこを切ってみても切り口から新しい発想が生まれない、または見えてこないというかです。
 先日、NHKでチラッと見た辰巳芳子(料理研究家85歳)さんを紹介する番組を見て、昔と変わらない口調だなぁとつくづく感じていて、その途端に番組を見る気がしなくなったのです。昔から知っている小うるさい料理のお婆ちゃんというか、あ、またかみたいな感じ。辰巳さんの大切にしているものは分っているし、ごもっともなのですが、押し付けがましいというか。聞く側に考える余裕を与えない口調と捉えているのは私なのですが、その奥に確固たる自分があって譲らない姿勢を強さと感じるのです。まるで私の母を見るようでした。実際の年齢も近いのです。あの時代の人と言ってしまえばお終いですが、でも、そういうこと。感性を問われているのはこちらの方で、相手はそのきっかけを言ってくれているだけなのです。昔の人に多いタイプです。実は、このように辰巳さんのことを思ったのが今回考える刺激になったのです。
 料理研究家と称する、年配の方の出演するNHKのテレビ番組は音声でも聞きます。朝のニュースから朝連ドラの流れですが、皆さん結構お歳です。辰巳さんよりも少し若いと見ても70歳代後半の先生も多いですが、辰巳さんとの違いを感じるのは、年齢から想像する相応の料理を裏切るというか、新しいことに挑戦的なのです。番組の趣旨やターゲットにしている視聴者のニーズに合わせた構成でしょうから、料理の先生の妥協というのはあるかもしれません。ですが、このような番組の要求に柔軟に対応できるというのも実力です。そういう点がすごいと思うのです。こういうことに触れて、さらに自問自答が始まるのです。
 料理する自分って、その魅力は何だろう?一番ピントがあうのが「このおいしさを知るのが人生の楽しみだよ」この言葉です。前にこっそり私に言ってくれた人がいて、言われた時に、何故この端的な言葉に行き着かなかったのだろうか、と考え込むほど新鮮でした。自分で考えても辿りつけない部分に、人の感性から引き出されて気づくということは良くあります。
 さて、「この美味しさを知る」という辺り、私は少し鈍っているかな。辰巳さんはこのように言っていました「あなたねぇ、このお出汁を使わなかったら、貴方は一生後悔しますよ。」脅迫的な言い方ですが、言いたいことはきっと「美味しさを知る」と同じでしょう。これを欠かしてはならないということではなく、「味を知りなさい」という叱咤激励かもしれません。ですから、この、「味を伝える」というのが最大のテーマです。これ、難しいです。作ったものを目の前で食べてもらっても同じように味わうことすら出来ないのに、、これを文字で書き表すというのはもっと間違えのようなもの。これは、人が持つそれぞれの領域の問題なので、踏み込むことの方が間違えなのです。強いて言えば、味わいは分け合えないけれど、喜びや嬉しさは共感できることではあります。
 何を意図して書くか、という提案する側のテーマを一方的に考えても良く分らないので、今の若い世代で、子育て真っ最中であったりする世代、つまり30歳代かな、この世代の女性がどれ程料理に関心があるか、時々知りたくなります。例えば、Twitterで見かける料理の話しなどから推測すると、食材に関してかなり知らない様子。それがダメだと言いたいのではなく、そこで思い知るのは、私が書く内容はこの世代(これらの人達)にはほとんど理解されていないのじゃないかということです。スタート地点がずれていては、元も子もなくなります。そして、書いていることに意味を見出せなくなったりするのです。こうなると、何故ブログを書くの?と、また、例のドツボにはまってしまいます。
 伝わらないことをこの先延々と書くことには意味がないのは明白です。では、ターゲットを自分目線に絞ったらどうか?いや、それしか出来ないが。ジャーその線でやったらいいやんか。と、戻ってくるのですが、心のどこかで、ブログというのはそもそも終わっている世界かな、とかぐずぐずと諦め感なども思います。
 話を戻すと、人生で出会う食材や料理と言っても、私の中にあるのは、目先の違いや新しいものではないことが多く、それこそ足元の小さな雑草のような気づきでしかないのです。ちょっとした食感の発見や、味わいの中のちょっとした苦味が美味しいとか。昔食べた酸っぱい果物や舐めた砂糖や塩の味わいとか。そんな中に、今でも忘れらない味わいとして残るものがあるのです。そういうことを私自身が楽しむ世界でしかない。そのことを小分けにしてここに時々書いてるといった程度のことなのです。でも、それが伝わらない時代というか、伝えにくくなったと感じています。以前、気になっていたことを思い出したのですが、当たり前のことではないかと思う以下のいくつかの点です(finalventの日記)。

料理がイマイチな7つの理由
 inspired by 自分で作った料理がイマイチな7つの理由 - GIGAZINE

  1. 素材を理解してない(魚の霜降りとか)。
  2. 調理プロセスの意味を理解していないで、実はレシピを誤解している。
  3. 味は調味で直せると思っている(味は最初から決まっているものとして作るといい)。
  4. 味の出し方のベースができていない(出汁やストックもお粗末)。
  5. 油の選び方、扱い方、管理方法がへた。
  6. プロの真似したり、コツで料理を作ろうとする。
  7. 珍しい素材や調味料で美味しくなると思っている(男の料理やめれ)。

 伝わらない壁と思うのはこれらのことがあるからかなと思います。それが私の前にやっと少し見えてきているということが残念であるのと、この辺で降参して、今後一切自分に問わないと決める、とか。思いっきりエゴの世界を生きるとか。どうなのかなあ。

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コメント

初めまして、こんにちは。

いつも、料理(生活や足元)と時事問題(社会・世界)をよく考えて
取り上げられているブログ、感嘆する思いで拝見しています。

私もウェブログする身として、読者の反応・感想を知ることが出来ない時、
(コメントが無い時ですね…)自分のやっている事が正しいのか意味があるのか
分からなくなること、しょっちゅうです。

それでも、発信する事に私は意味があると思っています
(自分自身の確認にもなりますしね)。

Godmotherさんの豊かな感性と洞察力、
そしてそれに基づいた技術や経験を知り・感じられるこちらのブログ、
これからも更新を楽しみにしています。

投稿: わかな | 2010-10-21 14:59

わかなさん。ご心配いただいたようですね。ぶっちゃけ、悩み事や迷いごとなども書いてしまうのでありゃ?と思われたかもしれませんね。
内面の思いを素直に出してみて次へ進むという感じです。少し気持ちが軽くなると余裕が出てくるというのもあります。

応援、ありがとう。
ぼちぼちやってまいりますね。

投稿: ゴッドマー | 2010-10-21 16:29

公開の場でこれだけご自身をオープンになさる事、素晴らしいです。
(「強さ」が無いと出来ない事だと思います。)

沢山のヒントを頂いています。

投稿: わかな | 2010-10-21 17:43

わたしはまだまだひよっこですが・・。
それでも最近本当に料理って奥が深いなと思います。

料理をするようになってやっと10年くらいです。
食べる事が大好きで、だから、
ある程度は適当においしく料理できると
自分が勘違いしてた事に最近やっと気づきました(笑)。
適当においしいのとちゃんとおいしいのって、
違うんですね。
お恥ずかしながらやっと最近気づきました。

そして改めて、
今色々な料理方法や本があふれている中、
昔から伝えられてる事は本当なんだなと
やっと少しずつですが理解できる様になりました。
料理の「さしすせそ」の意味ってすごいですね。

godmotherさんのブログ楽しみにしています。

投稿: mimo | 2010-10-21 20:43

mimoさんは、人生ですごくよい時期にいいきっかけに巡り会ったのだと思いますよ。誰にでもそういうチャンスはないと思います。いろいろな偶然的が重なって、この時とばかりに開花することって料理だけではなく、いろいろな事に起こるのです。チャンスに巡りあった時は、気持ちに素直にやってみることがそのチャンスを掴むことに大きく関係していると思います。

私は、そうですねぇ。ぼちぼちやって行きます。

投稿: ゴッドマー | 2010-10-22 07:57

お久しぶりです。この記事にコメントしようしようと思い日がたってしまいました。

辰巳さんもゴットマーさんも私にとっては同じ存在です。『本物の家庭料理』を教えてくれるひと。

30代、子育て真っ盛りの私にはいいバックグランウドがあります。おばあちゃんがうんと料理上手で、お正月や行事のときなど、季節のおいしい料理を食べさせてくれました。母もそれなりにがんばって料理してました。
お正月、おせちもおもちもみんな手作りでした。

味覚は生まれた頃から、薄紙を幾重にも重ねていくような過程でできあがっていくものだから、ゴットマーさんの感覚が若い世代に伝わらないのは今の時代において不思議ではと思います。

まとまらずしんません。何が言いたかったかというと、私にとっては、ここはなくてはならない場ということです。
おいしいごはん食べたいし食べさせたいからです。

投稿: | 2010-11-12 00:19

世代が変わることへの不満を言っても仕方ないですが、究極、自分がどうしたいのかと問いながら、自分が生きたいように生きるのが一番よいのだと思います。他から影響を受けながら若い頃は良く迷いましたが、その過程が現在の自分自身を築いている礎です。

家庭環境としては三世代揃っているというのは羨ましいです。いろいろ学ぶことも多く、先立たれてしまうと後悔しても始まりませんしね。

投稿: ゴッドマー | 2010-11-12 07:29

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