2010-10-08

極東ブログ「フィナンシャル・タイムズが日銀を褒め殺し」日銀、リフレ政策に非ず

 何から書き始めようかな。うーんと、まず、私の誤解であり誤読というかが昨日ありました。だからって、誰かを不利な立場に追いやるような迷惑をかけたほどの影響があったとも思わないですし、私なりにその誤解は何故起こったのかということは直ぐに自覚しましたが、ここで正しておかないわけにはまいりません。夕方、極東ブログから「フィナンシャル・タイムズが日銀を褒め殺し」というタイトルでエントリーが挙がった時に(参照)、「あれま、褒め殺しに引っ掛かったのは私じゃん!」と、思えて笑った次第です。言い回しが巧みなんですよ、ファイナンシャル・タイムズって。それもあって和訳には微妙に気を使うのですが、和訳の言い回しを見落とすことも誤読の大きな原因です。極東ブログが今回のエントリーを挙げた理由についてこう言及しています。

 今回も試訳を添えて見ていこうかと思っていたら、JBPressに翻訳が上がっていた(参照)。原文と比較してみたが、訳抜けもなく平易に訳されている。なので関心のある人はそれを参照されればよく、このブログで扱うこともないかとも思ったが、どうも微妙に誤解というか微妙な部分が読み取れていない人がいるかもしれないし、過去のエントリの経緯もあるので言及しておこう。

 しかも、「どうも微妙に誤解というか微妙な部分が読み取れていない人がいるかもしれないし」と言及されていて、推定一名、私だよなぁ、と、一エントリー挙げてもろたことに痛み入りました。昔小学校の先生に「間違った答えを発表したら、それはみんなの代表だから、良い行いだ」と、言われたことがよい教訓になっています。 
 で、誤解したままだとこの先どうなのか?は言わずもがな、あの日銀の行いが今後の日本の経済状態をどう左右するかと見るときに、とんだ日銀批判にもなり兼ねないことだと思いました。
 まず、先日日銀が発表した直後に、「10月5日、日銀発表の「包括的暖和政策」について」というまんまのエントリーを私は書いています(参照)。日銀のとった経済政策の大きな三点についても列挙していますが、それらは、一歩踏み出したという点で評価はしたものの、デフレの経済がインフレに向かえる数字だとはとても思えないという感想を書いています。殆ど期待薄です。そして、確かその日のうちに、日銀の今回の金融政策をどう見ているかについてのファイナンシャル・タイムズ英文版「Bank of Japan puts a toe in the water」がTwitterで流れ、ざっと読んだ時には手厳しい指摘だという感想を持ったのです。「puts a toe in the water」は慣用句で、「To start slowly and carefully」と英語では解釈する言葉です。日銀は用心深く始まった、とでも訳すと良いのか。全体の要約としては、「日銀は及び腰」だとファイナンシャル・タイムズは見ているのだと解していました。ところが、JBPress掲載の和訳が出たというので、これを読んだために誤読が生じたのです。この部分です。

 今回の決断により、日銀は対策が不十分だという非難に反駁している。資産買い取りにつながる扉の錠を外すことで、ほかの公開市場操作(オペ)の結果保有する資産に対して日銀が自ら課した制約からの避難経路が開ける。今後、さらに資産購入を拡大することは容易になるはずだ。

 つまり、ゼロ金利政策は大した意味がないが、とりあえず資産買い入れに向けて一歩を踏み出したと見るなら、日銀も前進したではないか、ということだ。えらいぞ、日銀、と。

 先の私のエントリーでも触れたのですが、日銀にあるまじき行動(意外性)として今回の政策を見るような空気が漂うだけでも市場というのは動きますし、その効果を狙うとういのもあると思っていた部分です。

 ここで日本の日銀が動くという発表をしただけで株価に直ぐに影響が出てきたり、これに伴って為替やレートに影響が現れますから、一気に目標を高く置くとよいかどうかもわかりません。

 この部分とリンクして自分に都合よく誤読したというわけです。「自分に都合よく」と言うのは、日銀の政策が良い経済効果を生むことへの期待です。その期待にある程度近づいてくれ、お願い~だ~♪日本のデフレ!ヤーッ!みたいな願望があるがために、「褒め殺し」に引っ掛かったのです。木遣りじゃねーっつのよ。
 極端に言えば、日銀はリフレ政策をしたのだという誤解のまま、今後経済が良くならなかったとしたら、極東ブログが言及しているような奇妙な問題になると思うのです。

 むしろ奇妙な問題となるのは、このまま民主党政権がじり貧にダメになっていたとき、リフレ政策は実際には財政政策と一体化しないと効果はないのに、魔女狩りのように単純な日銀バッシングが始まる可能性もないではないことだ。

 こうなると、日銀だけのせいではないはずです。
 ここまで書いきてふと思ったのですが、ファイナンシャル・タイムズ日本語訳を誤読した私だけに限らず、日銀の今回の政策に対して糠喜びしている人が多くいるのではないかという気がしてきました。
 民主党からは、日銀の今回の政策を高く評価しているというコメントがすぐに出ましたし、政府と日銀が二人三脚で・・・。みたいな書き方をしている新聞も目に入り、少なからず経済の上向きに期待感を持った人はいると思います。
 ですが、円相場がその後高止まりっしたままですし、それを思うと、市場は正直だなと思います。リフレ政策でもないのに何だか変な期待感があるような、そんな気になってしまったら、それは間違えというものです。

 昨晩、こんなニュースがまたしても飛び込み、念押しを頂いたと解しました。

日銀ゼロ金利の“まやかし”「表現多彩も内容は陳腐」★35兆円買い入れ 実際は「5兆円」ZAKZAK)

元財務官僚として政策の裏側を知り尽くす高橋洋一・嘉悦大教授は「表現は多彩だが内容は陳腐」と批判する。日銀の公表文書を検証すると、実はそんなに大騒ぎするような内容ではないことが透けてみえてくる。本紙コラム「民主党政権下の日本」の執筆者でもある高橋氏に、そのあたりを特別寄稿してもらった。

|

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 極東ブログ「フィナンシャル・タイムズが日銀を褒め殺し」日銀、リフレ政策に非ず: