2010-10-19

ウォール・ストリート・ジャーナルの二ヶ月前の記事が示唆することについて

 ウオール・ストリート・ジャーナルの二ヶ月前の記事は、今後の日本にとって大いに参考になる話だと思うので少し書くことにします。
 これは私の捉え方ですが、現在のアメリカ経済は良好になってきているという見方の上で、では、どのような経済政策を行ったのかと言えば量的緩和を行ったのです。そして、該当記事では、低金利政策は無意味だと言及しています。これの何が日本にとって参考になるかは言うまでもなく、現在日銀が行っているゼロ金利政策は無意味ではないのか?を考えさせてくれるからです。そして、アメリカ経済が何故良好だと言えるか?それは、このところの円高ドル安傾向が示しています。日銀が今月5日に行った包括的緩和政策を施行したにもかかわらず、ドルは安くなっているからです。
 事は、昨夕Twitterで流れたウオール・ストリート・ジャーナルの8月17日の「【オピニオン】FRBによる日本型量的緩和は間違い」(参照)の記事にありました。FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の低金利政策に関して、ジェラルド・オドリスコル Jr.氏が意見を述べているコラムです。しかも、日本を引き合いに出して「確かに理論上はこうした効果があるのだろうが、教科書的な政策は現在の米国の状況には当てはまらない。」と明言しています。
 これを最初に読んだ時、アメリカが低金利政策を行おうとしているとは知らなかったので、ごもっともな指摘だとは読んだのです。が、アメリカが現実に取り組んでいない政策です。しかも、この記事は、2010・8・17の日付だったことに気づいてそれこそ意味不明で、何が日本に関係あるのか解せませんでした。「2ヶ月前というけどこれからの話ですよ。“@godmother: @finalvent あり得ない!降参。記事の意図を教えてください。”」(参照)という回答をもらってやっと意味が掴めたのでした。もしも記事を読んで混乱されたとしたら、それはきっと私と同じ思考回路です。お気をつけください。
 この指摘は何を指しているかというと、日本が今行っている低金利政策は(ゼロ金利政策)は、アメリカ経済の立て直しには効果がないとしながら、その理由をアメリカの情勢に照らしてまとめています。では、これが、アメリカだけの問題かよ?と、柔軟に思考を巡らせて見ると、日本経済の先が透けてみえてくると言うものです。必ずしも当てはまらない部分もあるにせよ、日銀のとっている現在の低金利政策の先行きを知る一つの具体例です。

 日本型の量的緩和に向けたFRBの動きは間違いだ。国際決済銀行(BIS)が2009-10年度の年次報告で警鐘を鳴らしている歴史的な低金利が、経済活動をゆがめるのは必至だろう。住宅バブルの時がそうだった。低金利によって資産価格が不自然に高くなるため、バランスシート回復が遅くなる。また、貯蓄が不利になるため、バランスシート再構築の過程が長引く。

 減税がなくなれば景気低迷の最中に限界税率が大幅に上がることになる。そうなれば、貯蓄や資本増強の一段の妨げになり、企業の事業拡大や雇用に水を差すだろう。ガイトナー財務長官は、1932年に議会を説得して増税に踏み切ったフーバー大統領の過ちを繰り返す提案をしている。

 ここに抜粋した二点がアメリカがやってはいけない間違え政策だと指摘していますが、「日本的な量的緩和」で指しているのは現行のゼロ金利政策そのものです。本来は、金利が低くなると貯蓄に魅力がなくなるので使う方に向かうという考え方のようです。これを市民感覚なレベルで照らしてみると、逆なのです。国民の総貯蓄高の近々は「BigLobeマネー:資産運用の考え方」より。  

Image_01

 このグラフから何が読めるかというと、国民の預貯金は1996年あたりからずっと横這いです。(資料の新しいものが見つかり次第差し替えます)日銀が為替介入をしたのは今年9月と10月ですから、効果がどのように現れるかは、少なくとも半年か一年先だとは思います。個人的な意見ですが、現行の0~0.1%のゼロ金利でも国民は預貯金を出すとは思えず、むしろ、デフレ不況がこれ以上長引くと、先行き不安のため財布の紐は固くなる一方ではないかと思います。アメリカの例では、こう話しています。

 大半の場合、投資ブームは健全なファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)とともに産業をけん引する。しかし、低金利の資金が出回り続けると、ファンダメンタルズは忘れられ、この過程は古い言葉でいう熱狂(mania)に変わる。持続不可能なものは持続せず、バブルは危機の中に幕を閉じる。

 バブルの崩壊は、日本は1980年代に通ったばかりです。1990年ごろからデフレ期に入り、現在のところスパイラルの渦中です。
 記事で指摘されている二番目の増税についてですが、日本は、じわりじわりと増税を止むを得ないとして始めています。喫煙者には打撃のようですが、それでも少数派である愛煙家には増税のための値上げでした。市中銀行のバランスシートは知るところではありませんが、「我が家の家計簿」単位では多少分ります。
 入ってくるお金に給料以外であるとしたら、受け取り利息である投資や預貯金の利息です。これを当てに生活できる時代も私は知っていますが、バブル崩壊後の世代にとっては、「何?これ」的な時代物になってしまっています。例え話が全く例えにならなくてゴメンネの世界ですが、言いたい事は、長引くデフレ状況では安易な増税はダメだと言うことです。この話は、昨日のエントリーの補足のような形になりましたが、ありがたい情報です。
 アメリカの金融緩和が功を奏して経済の立て直しが進むとすれば、日本は、平行して緩和しないと太刀打ちできない経済状態に陥ることを意味しています。
 書きながら、なんて当たり前な話だろうか、と思えてきたのでこの辺で終わりにします。

|

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ウォール・ストリート・ジャーナルの二ヶ月前の記事が示唆することについて: