10月22日、G20を迎えるにあたって
昨夕の「“通貨安競争”回避へ議論」というNHKニュースで(参照)、「通貨安戦争」って言っていない!という点がインパクトで、つい内容に引き込まれてしまいました。この言葉は、ブラジルの財務相が「通貨安競争(currency wars )」と、言った事が広まったそうです。「戦争」ではなく「競争」という言葉を使うと印象は変わりますが、報じている内容には危機感があり、何ともちぐはぐ。私が理解していることとの矛盾があったので少し触れておきます。
ニュースは、22日から韓国で二日間開催されるG20での主なテーマとなることについて報じていて、「通貨安競争」についてが主な意見交換の主題となるとしています。
会議では、輸出を増やして景気回復を図ろうと、自分の国の通貨を安値に誘導する、いわゆる「通貨安競争」について意見を交わす見通しです。「通貨安競争」は、保護主義的な動きにつながるなど、世界経済に悪影響を及ぼしかねないという懸念が出ています。
の「「通貨安競争」は、保護主義的な動きにつながるなど、世界経済に悪影響を及ぼしかねない」の部分で、正にアメリカが口火を切った金融緩和政策であり、続く日本の包括的緩和政策のことではないですか。先のG7では、貿易黒字を保っている中国が、アメリカのこの緩和政策に反対的であったのは明白です。ドルが増えることでドル安になると、その影響として中国元が上がるという理屈です。ニュースでは、こういった背景から、新興国の反発が強まっている中での会議での論点を挙げていますが、会議の目的がはっきりしているようですが、ズレを感じます。
会議では「通貨安競争」を避けるため、各国がどこまで議論を深められるかが焦点となります。また、日本にとっては、先月実施した円売りドル買いの市場介入は、あくまでも急激な為替の変動に対応したものだとする主張に、各国の理解が得られるかも課題になりそうです。
ここが私の気になった部分です。
「通貨安競争」を避けようとして議論を深めるのが会議の目的のように報じている部分ですが、そうなん?
まず、対中と対ブラジルでは、その対応策が違ってくるというのと、「通貨安競争を避ける」という点で、その必要が何故あるのか?です。
前者の中国に関しては、中国の協調性を期待するのは日米だけに限らず韓国も非常に注視している部分で、先日も中央日報の社説のチャイナマネーを味方につける話を紹介しました(参照)。この中国の反発に対して日本は、「あくまでも急激な為替の変動に対応したものだ」と説明し、中国に対する圧力ではないとことを強調するのは良いとしても、はっきり言って、日本の金融政策は微々たる物で、他国に影響を及ぼすほどではないと「メディアが書き立てる「通貨安戦争」悪者論を鵜呑みにするな G7で為替介入に理解を求めた政府のお粗末(高橋洋一:ニュースの深層)」(参照)で言及しています。
量的緩和については、他国に対抗するためには基金規模の増加分が少なくとも40兆円以上ないと効果がでてこないのに。日銀では、GDP比で見て日銀の資産はすでに大きいとかいうが、重要なのはGDP比の水準ではなく変化率だ。日本の水準が高いのは、日本が現金社会というだけだ。
さらに、ブラジルに関しても中国と同様の不満があるようですが、他国とブラジルが違うのは、インフレ率4.7%という数字からも、景気は良好だと言えるというのです。因みに日銀の目標は1%です。そこにも到達していないほど日本はデフレ状況です。ブラジルほど景気が良好であれば、周辺国が多少通貨を増やしても体力はあるでしょう?と、私も思います。
さて、問題は「通貨安競争を避ける」と報じられた件です。
高橋氏は、まったく無問題としています。1930年の例を挙げて、その後のアメリカの経済学者の分析では、国の経済を立て直すために通貨を増やしてインフレ傾向にすることには限度があり、そのコントロールの範囲で強調するため、心配ないとしています。
それは以下のような理由からだ。どこかの国が通貨引き下げをすると、短期的には外国はマイナスの影響を受けるが、外国も金融緩和する。そうすると両国ともにインフレ率が高くなるが、両国ともに許容できるインフレ率に限界があるので際限のないインフレにはならないように、金融緩和競争はいつまでも続かない。世界の先進国では2%程度のインフレ目標があるので、4、5%のインフレにはならないだろう。
各国ともそこまで馬鹿じゃないんだからインタゲやりなさい、という文脈でしょうか。この辺りから日本経済を見ると、如何に馬鹿かと言われているように感じます。日銀については、「フィナンシャル・タイムズが日銀を褒め殺し」(極東ブログ)が、海外の視点として分りやすく説明しています。
話を戻すと、メディアで「通貨安戦争」などという言葉をやたら連発して流行らすので、無知な私などは何が起こるのかと不安になるのです。それが起動力となりいろいろ調べてみるのですが、飛び交う情報の中身や意味を知らないと、言葉に振り回されてクタクタになります。この件で調べている最中、酷い記事(「世界通貨戦争、敗者は誰だ」日経ビジネスONLINE)に出会いましたが、多くのメディアが「通貨安戦争」を過大解釈し、言葉を面白がって報じているように感じます。「マスゴミ」と言われる由縁ですが、言葉の解釈や意味について行かれないがための災いでもあると痛感しました。
問題は、G20です。この会議が建て前で終わってしまうと、日本の政治を支える柱がぐらつき、ついては国民が不安な年明けを迎えることになるのです。望みをかけるのも甚だしいことですが、しっかり取り組んでもらいたいです。
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