日本の安全保障問題の最高責任者は誰?―極東ブログ「財政再建か、安全保障か」が問う
尖閣諸島沖の衝突問題から発展して中国は領有権を打ち出してきている点で、これからの成り行きを思うと緊張してしまうのですが、昨日のNewsweek日本語版のコラム「日米弱体化のスキが生んだ尖閣問題」(参照)で、ちょっと違った角度で中国を見ていることに驚きました。日本と安全保障条約を交わしている当該国としては当然な見方なのかもしれませんが、日に日に熱くなっていると思われる中国の国民感情とは別に、中国政府のスタンスに着眼しているからこそだと思いました。
「中国は、日米両政府の関係は冷め切っており、アメリカは他のことに気を取られていると感じたのではないか」と、先週日本にいたリチャード・アーミテージ元米国務副長官はメディアに語った。「だから中国は、アメリカがどこまで見逃してくれるかを試している」
もし尖閣諸島で日中が軍事衝突することになれば、理論上アメリカは日本の助けに馳せ参じるということだ(ただし、領有権を認めたわけでもないのにそんな負担はバカげていると鼻で笑うアメリカの専門家もいる)。
これでは日本はまるで「中国のリトマス試験紙」ではないかと思った部分なのですが、日米関係が冷え切ったと周囲に見られているというのも観念的な表現で、何をとってそう見られているのかは分りませんが、日本の首相がころころ変わっても、アメリカの姿勢はあまり変わっていないというか、元々相手にされていない節はあると思います。但し、ここでG20が開催され、菅首相とオバマ氏の会談も予定されているので、両国の関係をアピールするチャンスにはなると思います。また、台湾の着眼点は、尖閣諸島とは目と鼻の先だけあってより具体的だと思いました。
台湾では日本メディアの報道を受けて20日、日本は72年以来で初めて「南西諸島」を焦点とした陸上自衛隊の1万3000人規模の増員を検討していると報じた。
この件に関しては、私もうかつで、ソースを抑えていませんでした。慌てて検索した始末ですが、日経の「陸自定員1万3000人増要望へ 新防衛大綱で」(参照 )によると
陸上自衛隊が東アジアの安全保障情勢などを踏まえ、定員を現在の15万5千人から最大で1万3千人多い16万8千人に増やす案を検討していることが19日、分かった。年末までの策定を目指す新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)に盛り込みたい考えだが、財政事情が厳しい中、増員に強い反対論が出るのは必至だ。
陸上幕僚監部は中国海軍が活動を活発化させている南西諸島を念頭に、島しょ防衛の強化が必要として防衛省内局と定員増の調整に入った。沖縄県の尖閣諸島(中国名・釣魚島)を巡る日中間の摩擦などを背景に、島しょ部での抑止力の向上には政府・与党の理解が得やすいとの判断もあるとみられる。
政府がこのように動いているとは知りませんでしたが、その元になる「核の傘」がどう機能するのか、日本政府はアメリカとの協議を一切行っていません。先日、極東ブログの「財政再建か、安全保障か」(参照)で触れている、イギリスの例と照らした日本の安全保障の問題そのものです。
日本は、あまりにも明確だが、憲法によって軍隊を持つことができない。かろうじて可能なのは自国防衛のみだが、これも非核三原則から核防衛は放棄している。このことが、米国との同盟で核の傘に入ることと同義であったのは戦後史で明らかだろう。
英国では自国の核防衛がどうあるべきか首相に問われると高級紙が言明する。そして一国の首相たるものはそれに答えている。
日本で同種の問いを菅首相に提出したときどのように答えるだろうか。
麻生元首相は2009年7月、日本の有事の際、米国による「核の傘」がどのように運用されるのか、米国と具体的な協議をするために定期協議の開始を米国と合意した。麻生政権が倒れた後、この定期協議の計画は潰えている。
話は逸れますが、極東ブログの記事というのは、その時々のトピックスのみならず、後々に変動する情勢を検証する時に基準になる内容を持っているので、情報に筋が立てられます。それだけ中立的に書かれているのだと思います。
さて、日本政府はこの先日中問題をどう解決してゆくつもりなのか?全く手の内を見せないので分りませんが、もしかすると「手の内」のようなものはないのでしょうか?気になったのは、昨夜FNNが報じた「尖閣諸島中国漁船衝突事件 仙谷官房長官、ハイレベル協議呼びかけも中国外務省は拒否」(参照)では、このように報じています。
仙谷官房長官は「できれば、早急に(日中双方の)ハイレベルの話し合いというものが行われた方がいいだろうと、いうふうにも思っております」と事態打開への意向をにじませた。
しかし、中国外務省は22日夜、この呼びかけを拒否した。
こうした中、菅首相は、政府専用機でアメリカへ向け出発した。
菅首相は、日本出発前に「日中の関係についてはですね、この問題は冷静に対応していくと。特に新たな予定を何か考えているかということであれば、特に新たな予定は考えておりません」と述べた。
あらら。今のところ具体的に言及できないのか、方策がないからそう答えているだけなのか?菅さんのコメントではとても不安になるのです。益々アメリカとの関係をアピールする時なのではないかと思います。そのためにも、アメリカの「核の傘」にどこまで日本はお世話いただくのか、協議を持っていただきたいです。
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