2010-09-29

Newsweek曰く「米中「貿易戦争」を覚悟せよ」、マンデル教授曰く「災難」

 昨夜のTwitterクリップ記事には驚きました。「米中「貿易戦争」を覚悟せよというNewsweekのタイトルです(参照)。何が始まるというのか?と、また中国か?という関心と嫌な予感がしたのですが、読んでみると大国同士の深刻な貿易摩擦問題でしたが、かなり深刻な状態だということと、これは中国とアメリカだけの問題ではなく、やがては世界中が影響を受ける大きな問題と発展するような兆しを感じる内容でしたので、気になる部分を取り上げておくことにします。。
 冒頭にいきなり

「スムート・ホーリー法の歴史を知っている人なら、間もなく米中貿易戦争が勃発すると聞いて平常心ではいられないだろう。」

 このように始まっているのです。「米中貿易戦争の勃発」というだけでも充分驚きではありますが、すみません。「スムート・ホーリー法」は知りませんでした。早速調べてみると、検索結果にいきなりWikipediaぢゃないですか。知識のない人には要注意だと先日指摘を受けた辞書でありバイブルなので、ちょっとスルーして他を当たってみました。少し長いのですが、以下は詳しく説明しています。この場に及んでは、「スムート・ホーリー法」をばっちり学習せねばという思い入れだけですが。

ホーリー・スムート法
引用アメリカの下院は、景気が絶好調だった一九二九年五月に、関税を大幅に引き上げる法案を通過させていた。 それは、外国産業が低賃金労働によって、またはダンピングによって、アメリカに安い商品を輸出することを防止し、 アメリカの産業に悪影響を与えないことをめざす法案だった。 アメリカには資本も資源もあり、また技術や労働力にも恵まれている。 したがって、「高度の自給自足状態」が確保できれば、経済の繁栄が持続できるという理屈だった。
株式市場が崩壊した後にも、議会では、アメリカが海外経済からの悪影響を断ち切れば、国内の産業が保護され、 順調に操業・雇用が維持され、経済は回復するという考えが強かった。 こうして三〇年三月には、上院でも関税引き上げ法案が通過した。 三ヵ月後、両院の協議を経て、法案推進の中心となったホーリー下院議員、スムート上院議員の名前にちなんだ法律が成立した。
それは、アメリカの関税率を平均一三パーセント引き上げ、五割強にする関税法だった。 ただしアメリカでは、課税品の割合が三分の一程度だったため、輸入品全体に対する税率は、四パーセント増の一六パーセントとなった。 しかしこれは、すでにアメリカが世界最大級の貿易国(二九年に世界の総輸出の一六パーセント、総輸入の一二パーセント)になっている状況に対して、 近視眼的、自己中心的な政策だった。 このように関税障壁を高くすれば、ますます世界貿易が縮小し、世界経済がいっそう悪化することになるからである。
木村靖二・柴宜弘・長沼秀世 「世界の歴史(26)」  P.295

 これを中国に対してのみ行使するという法案を二日後に通そうという、このことに対してNewsweakが慌てるのもむりはありません。しかも9月24日、米下院歳入委員会で可決してしまったのです。この調子で下院本会議で通過すれば、示唆の通りの「貿易戦争」になるというのです。
 確かに中国の人民元だけが最小評価であるし、そのお陰でこの十年間、輸出主導で経済成長を遂げてきているとは思います。輸出品を安価に輸入品を高値で扱っているため、アメリカ輸入業者は最も安い中国製品を買うのです。すると、自国の製造業者が太刀打ちできないため廃業に追い込まれ失業者を生み出している、というのがアメリカの抱えている雇用問題だというのです。これって、アメリカだけではありませんよね。日本だって韓国製品も多い中、衣類などは中国製がかなり安価です。まあ、インドの絹のスカーフなども数百円であります。
 ここでこの法案が通ると、中国輸入品には高い課税が課せられることになるので業者は輸入を自粛したり、他国のさらに安価な商品を輸入するようになります。また、それに対抗して、中国がアメリカ製品の輸入をしなくなれば日米間の貿易が凍結状態になりかねません。ここで中国がこれを回避するために動くか?が大きな「賭け」なのです。人民元のレートを引き上げるようなことがあれば、それが本来の狙いだとは思いますが、そっちにはなびかないのが中国という国ではないかと思います。
 それでもNewsweekは

 いま対立しているのは、世界秩序に関する2つの考え方だ。旧来の秩序を作り上げ、守ってきたアメリカは、おぞましい選択に直面している。中国の野望に抵抗して、誰もが敗者となる貿易戦争を始めるリスクをとるか、あるいは何も手を打たず、中国に新たな通商体制を構築させるのか
 前者は危険を伴う。だが、後者は世界を破滅させるかもしれない。

 以上のように、下院で法案が可決されることに賛成意見のようですが、同じくTwitterでクリップした記事、「マンデル教授:人民元の上昇促す米国の法案、通過すれば「災難」に」(参照)では、このように話しています。

9月27日(ブルームバーグ):ノーベル経済学賞受賞者のロバート・マンデル米コロンビア大学教授は、人民元の上昇を中国に促す米国の法案は立法化されれば「災難」を引き起こすと指摘。対中貿易赤字を縮小することはできないとの見解を示した。
 マンデル教授は同法案について、「世界経済やアジアの安定に大きなダメージを与えることになる」とした上で、「国際関係の安定を傷つけることになる。経済の歴史において、法制度によりある1国の通貨が他国の通貨に対し上昇を強いられた例は存在しない」と付け加えた。
  また、中国が元の上昇を容認することで米国、もしくは米国の国際収支にプラスとなるとは過去の歴史が示していない指摘した。
  同教授は「米国の赤字に大した影響はないだろう」と予想。「米国は1980年代以降、巨額の赤字を抱えてきた。中国が為替レートを変えても、米国の巨額赤字が変わることはない」と続けた。

 それでは、アメリカはどうしたらよいのでしょうか。益々オバマさんの頭を悩ますことになりそうです。アメリカの不景気と雇用問題が改善されないとなると、11月の中間選挙が気になるところです。その前に、明後日の下院で、この法案が通るのか通らないのか、それがまず問題です。注視することにします。

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