極東ブログ「[書評]日本経済のウソ(高橋洋一)」で、本音が言いたくなる
うーむ。
この書籍はAmazonから新書紹介で知っていた。買いそびれたのではなく、タイトルを見て飛びつくほどの読みたい気持ちがそそられなかったからだ。そう思っていたので、書評に興味が湧いた(参照)。それによっては読んでみようかと思っていた。
のっけからこんな書き方は高橋さんには失礼な言い方になるが、感想にもあるように、高橋さんの本を読む以外にNetで読めるコラムなどを追いかけている私にとっては、高橋さんの思考パターンが分ってきている。考え方にほぼ同意しているので、話の根拠が何処にあるか、その展開の仕方などがおおよそ分ってきている。確かに、そういう読者にとっては、この政権の山がここで越えた後から回顧のような形で総括的な部分で述べてもらいだと思う。むしろ高橋さんの見識に期待するのもがある。だからといって、現時点で興味がないという意味ではない。今回二点に絞って、感慨として記されている二点について、読み手の視点やおかれた生活環境、年齢によっては、本書に網羅された現実問題のおき場所も変わるのであろうと思った。
そのうちの一点は、デフレも悪くはないと思えるような立場もありうるとした点だ。
年金生活者と、公務員やしっかりした労組のある大手企業の正規職員がそれにあたる。固定的な収入のある人にとってデフレは手持ちのカネを増やしているに等しい。もちろん、少しなりとも経済の全般を見渡せばそんなメリットが吹っ飛ぶくらいのこはわかりそうなものだが、後の千金のことのような政治状況はあり、率直にいえば、現在の日本の内閣は年金に依存するような老人票と、労組票を当てにしているのでなかなか変革は難しいだろう。
この政権が誰によって何のために動いているかという見方の道標にもなるのか、裏を返すと誰が誰を支えている社会なのかということは一目瞭然だ。このことから、中間層である20歳代から50歳代の将来に対する展望は無駄だ。現状維持して生きて行くだけで、税金は自分達の将来への投資ではないということだ。なんだか感慨というよりも絶望的なものを感じた。これは、勿論、書評の書き方の批判ではない。事実だから仕方がないことだ。
二点目は、ご本人の困惑だ。これは珍しいことが書評で書かれていると思った。
もう一点は、私自身の困惑である。私はどちらかといえばリバタリアンなので金融政策そのものを好まないが、それでも日本の惨状を思えばそうとも言ってられない。そこでインタゲ政策は実質的に国際的にも常識でもあり、最低限度のそうした政策は好ましいと思ってきたのだが、具体的にその数値について明確に4%以下では意味がないとする議論は、頭ではそれなりに理解できても、なかなか心情的にはついてこれない部分がある。だが、そうした曖昧な弱腰の見解は結果的に日本経済の宿痾を支援しかねないのかもしれない。
4%のリフレ率というのは、失速を意味するかに私は思う数字だ。何故かというと、デフレだからといってインフレにする必要はなく、インフレ傾向には持って行くもののインフレにしないのがいい状態だと思うからだ。極端に言うと、4%は性急なインフレ状態に陥るのではないかという懸念、というか心配がある。それは止めて、まずは2%くらいからデフレの底から上がって、つまりそれがインフレ状態なわけで、その傾向に徐々にもって行ったらどうなのかとは思う。おそらく彼もそう思っているのではないかな。どちらにしても、日本の諸先生方が4%というのならそれは4%になるのだろう。ここで2%と言ったところで、それは足を引っ張ることになるということから、それは回避したいという謙虚な心持ちから話しているのだと推察する。
物価高の経験もしている私達世代なので、その怖さも知っている。困ったことに。
最後に、一番の関心事であることにもきちんと触れている。
もちろん、その時には、GDPも増え税収も当然上がり財政問題は消えている。そこをきちんと国民に納得させる政治は可能なのだろうか。
そこが難問だと思う。だが、菅総理の日々存在感を薄くしている状況や、九月にまた御輿を取り替えようと活躍される面々を見ていると、そうした難問に悩む日はこないなのだろうなと、ほっと安心してしまうダメな私がいる。
思い切った金融政策や日銀が動かざるを得なくなるような力はもはや皆無で、足腰の弱さがこの政権だが、後先に確固たる考えもなしに口走る菅さんの発言やその後のブレには如何せんついて行かれない。とは言うものの、では他に誰がいるというのであろう。このままでは日本はダメに決まっているが、別の意味であホッとするというのは私も同じだ。
5年後に果たして書架から引っ張り出したくなるのだろうか。かもしれないという本書は、現実をきちんと見る上では欠かせない良書なのだろう。早速注文してみることにした。
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