2010-08-12

極東ブログ「南シナ海領有権問題に関わる中国と米国」と中国メディアの比較

「中国の列島線突破に驚き恐れる日米」(中国網日本語版(チャイナネット))

 というクリップ記事がTwitterで目に止まった。最初この記事内容は、中国式に正当性を誇示している書き方(内容)だと感じた。なんとなく気になってもう一度じっくり読んでみた。どうも腑に落ちない。先日、極東ブログで取り上げ、この海域の緊張と言うべきか、どちらかと言うと中国の鼻息の荒さをアメリカが沈めようとしている状況を思い出した(参照)。良い機会なので、中国の記事と事実関係をあたってみることにした。
 まず、第一列島線と第二列島線という軍事戦略上の概念だが、これは中国鄧小平の意向で、後に打ち出された中国人民解放軍の近代化計画の概念であったはずだ。こうなったのも、中国とソビエト連邦との冷戦の終結後、国境問題が解決したため中国の陸軍中心だった解放軍の問題は台湾問題に移行した。つまり、台湾を支援するアメリカを牽制する必要が出てきたのだ(参照)。
 すると記事本文のニュアンスが微妙に違う。その引用部分はこの辺りから。

中国の軍事専門家である戴旭氏は、「冷戦終結以降、米国が構築し中国の封じ込めに用いてきた列島線は未だ消滅していないのみならず、かえって絶えず伸長し、陸海両面での(中国)包囲網を形成している」、と主張する。戴氏の指摘によれば、米国は現在中国に対して、「C字型包囲網」を形成しているという。海上の包囲網は日本からインドに至り、陸上の包囲網はインドから中央アジアに至る。「“第一列島線”であろうが“C字型包囲網”であろうが、いずれにせよこれらが米国の地理戦略上の中国に対する桎梏であることは確かだ」と、戴氏は続ける。

 そうだろうか。何を根拠にこのように言われているかそのソースは分らないが、極東ブログで引用されていたクリントン氏の発言では、米政府のこの海域についての考え方は明確だ。以下がその引用だ。

I’d like to briefly outline our perspective on this issue. The United States, like every nation, has a national interest in freedom of navigation, open access to Asia’s maritime commons, and respect for international law in the South China Sea.
南シナ海の領有権問題について米国の考え方の概要を述べたいと思います。米国にとって、他のどの国々とも同様に、航行の自由、アジア公海がすべての国に開かれていること、そして東シナ海における国際法の遵守の三点は、国益をなしています

The United States supports a collaborative diplomatic process by all claimants for resolving the various territorial disputes without coercion. We oppose the use or threat of force by any claimant.
米国は、多様な領有権問題の解決に向けて、強制なく関係国が協調外交を展開することを支援します。米国は、関係国がどの国であっても、軍事的脅威の行使に反対します

 先日のエントリーと重なる部分でもあるが(参照)、この声明の趣旨は、中国に軍事的脅威の行使を「やめれ」と言っている。該当の記事では、日米がこの「概念」を持ち出しては中国にやいのやいの騒ぎ立て、結局不安になっていると解釈しているようだ。

近年の中国海軍の軍事力発展に伴い、排他的な制海権を追求する米国と日本は再び「列島線」概念を持ち出し、中国海軍が西太平洋における日米の影響力に対抗することへの心理的な防御線としての役割を見出している。そしてまた、中国海軍が前進の一歩を踏み出すごとに、日米両国は不安を覚えるのだ。

 この後に読売新聞の関連記事に言及して、「「最近の演習は、中国海軍が“第一列島線”外にまで展開を可能にする現代化を遂げたことを示している」、と述べた。」としているが、その該当記事は既に極東ブログで、唯一日本が取り上げた記事だとして引用されている。以下がそうだ。

中国の軍事演習については日本国内でも報道はあった。7月31日付け読売新聞「南シナ海で中国海軍演習、米・ASEANけん制」(参照)がその例である。

中国やマレーシアなど6か国・地域が領有権を主張する南沙(スプラトリー)諸島などを抱える南シナ海で、中国の胡錦濤政権が7月下旬、海軍による大規模な実弾演習を行うなど軍事力を誇示した。
先の東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)で南シナ海問題に結束して対処する方針を打ち出したASEANや、関与姿勢を強めている米国をけん制する狙いがあるとみられる。

 中国の解釈はおかしい。明らかに偏っている。ここで読売新聞がヘタに書かなくて良かったと内心ホッとしたが、明らかに中国網日本語版の表現が偏見めいている。だから何?って、特に何か変なことがこの先起こるとも起こらないとも言えないが、あちらの新聞の内容の通りではないということと、いち早く極東ブログがエントリーしていたことが、何よりの救いだと感じた。こうして比較してみて、自分で状況を検証できるということは何より心強いことだと思う。嬉しいことだ。
 これは、日本のメディアも考察できなかったわけで、まったく日本の新聞には愛想を尽かしてしまう。現に、報じられているソースは皆無だ。極東ブログには、今後もこのままの姿勢でお願いしたい。

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