2010-08-07

「エノラ・ゲイ機長遺族は不快感」について

 私は広島や長崎に原爆を受けた日や、そのことについて触れて書いたことがない。あえてそうしていた。この日は、静かに慰霊する日として、心の中のいろいろな思いを外に出さないでいたい日だ。「火垂るの墓」を観るといつも泣ける。
 その日から65年が経った昨日の広島の「平和記念式典」には、これまで参加しなかったアメリカ、フランス、イギリスの三国からも代表が参加したそうだ。それについて、クリントン米国務長官のコメントにはこうある。

➠「原爆の日」受け入れる オバマ政権の意思(東京新聞)
「大統領は核なき世界の実現に向けて熱心に取り組んでいる」と強調するとともに「大統領は、(核なき世界は)長期的な目標だと何度も述べている」とも指摘。その上で「われわれはだからこそロシアと新核軍縮条約を締結し、その(核兵器削減の)成果を求め、核拡散防止条約(NPT)の再検討会議で不拡散体制の強化に取り組んだ」

 言葉の通り、アメリカの政権が変わり、静かに「核」に対する考え方にも変化が起きているのだと素直にそう思った。一部の日本人は、アメリカに謝罪を求めるような気持ちもあるのだろうが、原爆を落とした相手国に対する憎しみや、今まで参加してこなかったことへの不満や怒りを自分達の正義として訴える人も多くいたそうだ。こんなところから被爆したわけでもない私が言うと石でも投げるかに聞こえるかもしれないが、関係していないからこそ見えることや言えることもある。
 NHKニュースでも報じていたが、新聞各紙がこぞってこの内容を報じ、騒がしいことだと思った。

➠米 原爆投下機長の息子が批判(NHKニュース)8月6日 17時28分
 原爆を投下した爆撃機「エノラ・ゲイ」の機長の息子は、アメリカのメディアの取材に対し、「暗黙の謝罪に当たる」として、オバマ政権を批判しました。

「特別な日に当たることは知っているが、何を意図しているのかがわからない。戦争は終わったのであり、そっとしておくべきだ」と不満を示しました。そのうえで、「暗黙の謝罪に当たり、歴史を書き換えようとするものだ」と述べて、政府を代表して大使を出席させたオバマ政権を批判しました。さらに、ティベッツ氏は、毎年この時期になると多くの退役軍人から感謝の電話がかかってくるとしたうえで、「日本が真珠湾を攻撃してきたのだ。われわれは日本人を虐殺したのではなく、戦争を終わらせたのだ」と述べ、原爆投下は正当な行為だったと主張しました。

 以前にも書いたことだが、アメリカ人に広島や長崎の原爆投下の話をすると必ず「PearlHarbor」と返される。やられたからやり返してお相子だという以上に、アメリカがいかに正当かを延々と話す世代がある。ベトナム戦争に関わった年代が特にそうだった(参照)。また、アメリカの代表が広島の原爆の日の慰霊祭に参加云々を言い出すと、日本の首相の靖国神社参拝問題も同様に問われる。
 どちらが正しいかを議論したがる人もいるようだが、もはや戦争を起こさないために人はどうあったらよいのかという方向で動き出している。アメリカのルース駐日大使の式典への参加は、そのように受け止める。当事者には理解されにくいのだと思うが、私はそう受け止めている。
 爆撃に直接関わったティベッツ氏は、当時の米政府の命によって任務を遂行し、その意味では正当ではあると思う。但し、歴史に残る大きな惨事ともなったことで、人から攻撃を受けた痛手を負っていたにも違いないのだし、三年前に亡くなるまで生きた心地はしなかったのかもしれない。家族が、オバマ氏や政権に不満を表明するというのは、その表れではないかと心が痛んだ。
 みな戦争のために何らかの犠牲を払い、人が殺し合うことへの重たさを「罪」とするなら、一日も早くそんなことは止めたい。そう思う。

 ここに忘れられないメッセージがある。冷泉彰彦さん(作家:米国ニュージャージー州在住)のJMMに寄せたレポート「初来日を果たしたオバマとヒロシマ・ナガサキ」に、彼の解説と、今後の日米両国にとっての平和的な関係維持についての提案があります。

そうなのです。本当の鎮魂とは「相殺」であってはならないのです。同じことです が、謝罪であってもいけないし、謝罪の要求であってもならないのだと思います。 つまり日本の真珠湾攻撃やアジアでの戦争の災厄を引き起こしたことへの「懲罰」と して攻撃を正当化するのでもなく、「制空権を奪われて尚国体護持をタテマエに保身に走って敗北を認めなかった政治家」に責任を負わせるのでもなく、また「人類に核 戦争を封印させるためだった」とか「冷戦に備えた攻撃力誇示のためだった」という ような解説を加えることもなく、要するに誰かを非難するのでも、自責を強要するのでもなく、日米が一緒に追悼をするのです。

冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ) :作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大 学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わったか』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ共和党のアメリカ』など がある。最新刊『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)

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