2010-08-08

気持ちのよいこと

 毎日暑い日が続き、日に日に弱っていくような感じがするというのは実感としてある。食欲がそれほど落ちるということでもないが、あれやこれや食べたいというほどの元気は出てこない感じ。立秋は暦の上では昨日だったとはいえ、実際、少しだけ涼しくなった。昨夜は、エアコンに頼ることもなく何とか寝付くことができた。これ以上暑くて寝苦しい夜が続いたら、喉の調子が変になるのではないかという限界だった。
 今日は、この暑い中、元気を出して木曾の上松(あげまつ)の行きつけの木工所へ行こうかと計画中だった。結論としては行かないことになったのだが、今使っている檜のお櫃をメンテに出そうかと思っていたところだった。
 考えてみれば、丁度一年前、友人とこの木工所へ一緒に行って買い求めたお櫃だった。全て手作りで、職人さんも少ない中、なかなか希少なものだということだった。このお櫃に異変が起きたのは購入してから一ヶ月くらい経ってからだった。底部と、そこから立ち上がっている側面のつなぎ合わせが黒っぽく変色し始めたのだ。見た目、カビのような色だった。様子を見ながらつかっていたが、その染み出したような変色部分はどんどん広がっていった。まるでカビだが、カビの生えるような使い方はしていない。おかしいと思って木工所に問い合わせてみると、百個に一個くらいの割合でこのようなことが起こるのだとか。カビではないにしろ、あまり気持ちのよいものではない。削って修理すると言ってもらったので、梅雨が明けたら早速持って行こうと思っていた。
 ちょっとしたメンテといえばそうだが、ここで待てよ、と思った。「分解して変色した木を削って・・」というのが引っかかった。つまり、せっかくの厚みのある桶の板を削るということは薄っぺらくなるということだ。それは困ると思った。この木の厚みのお陰で保温力抜群のお櫃が自慢だというのに、変色の範囲から想像すると、相当に削るのではないかと踏んだ。
 ここまで考えてくるともう腹は決まったも同然。カビのように見えてもカビではないし、お米に害があるということでもない。たったのそれ如きのことで、メンテすることに否定的な考えになった。ここで、このように思っていることを電話して話した。
 すると、電話の向こうの声が明るい。凄くホッとしている様子だ。しばらく彼の話を聞いていると、本音が出てきた。分解して直すことはできるが、やはり私が思ったとおり、元の原型はなくなる上保温力も落ちる、と。しかも、変色したからといって食べるご飯に影響もない。できれば修理しないでそのまま使った方がお櫃にとっては良いのだと言う。
 私の気が変わったことを伝えて、さらに、実家用に追加注文したのだが、それが嬉しかったのか、超格安にすると言ってもらった。別にお商売なのだから、そのような気は使わないなくても良いのだが・・・。彼は、元々私から儲けようとはしない人で、店にわざわざ足を運んでくれただけでよいのだと言って、いつも買い物をする時は、「これ、いくらだったらいい?」と、私に買いたい金額を決めさせる人なのだ。とても面白い人だ。
 ここに良く出てくる画像に、丸いまな板に覚えの方もいるでしょう。あれもそう。東京のデパートだと1万円以上するらしいが・・・(ry 
  結局、メンテをしないことにはなったが、それが、気分が良い。職人さんや私も、お櫃の変色は本意ではないことなだけに、本当なら不良品扱いの部類になるのかもしれない。でも、自分達の気持ちさえ収めれば、お櫃にとっては手を入れない方が良いわけで、なんだか良いことをしている気分ではある。清々しく気持ちの良い時というのは、得てして自分の思い通りにならない時に多く感じるものだ。

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