2010-07-15

昨日の「ゲゲゲの女房」で泣けた話

 昨日のゲゲゲの女房の話には感動した。思わず泣けた。その部分というのは、大手出版社の雑誌の連載が決まった時だった。号泣ということではないが、じんわりこみ上げて来たあれは、後から、何故あの場面だったのだろうかと思っていた。普通に良かったねというのとは何か違う。水木さんと山本七平さんが重なって、日本の素晴らしい男性、と思っているところにあると思う。
 私の小中学生の時代のころの覚えに、確かにこのような男性を記憶している。それは教師であったり、友達の親であったりと、誰か特定というのではないのだが、本当に懐かしい思いがある。子どもながらに、なんて立派な男性だろうか、とか尊敬できたものだ。その元の尺度というのは、子供時代に読んだ伝記にあったと思う。コツコツと研究を重ねて見つけた科学の不思議から、色々な事を見つけ出す研究家や、学もなく貧しい暮らしから丁稚奉公し、そこで苦労しながら自分の生涯をかける仕事を切り開いたり。アフリカで動物と暮らす中で様々な研究を重ねた人物などだ。これらの人について書かれた伝記からインプットされているのは、何があっても自分の信じる道を地道に進んでいれば、何かしら開かれる道があるのだということだ。母親の影響も強かったのかもしれないが、子供時代にこのような伝記に触れておくと、自分の中に尊敬されるべき人間像、もしくは、尊敬する人間はどのような人か、など、人間を嗅ぎ分けるような力が備わるのだと思う。子どもなので伝記を読むとストレートな印象で入ってくる。それが成長と共に、実際の人との関わり等から、自分自身の物事に対する尺度のようなものに変化したことを、あの水木さんの一場面に感動した自分から気づいた。子どもの頃の刷り込みは母からが大半だと思っていたが、そうでもなかった訳だ。
 幼い頃に読んだ沢山の伝記で知ったような苦労人が、水木さんの生き様と重なって感動したのだった。また、伝記の人物だけではなく、もう忘れてしまったような過去に遭遇した人物にも重なって、自分の中にある、人を尊敬するという気持ちにぴったりと重なったためだと思う。
 水木さんのように、ブレない信念を持ち、それを外さないで生きていれば、そのうち大成するのだとも限らない。また、将来の大成を目標にしないところが凄さでもある。自分が前面にあるのではなく、あくまでも周囲がその実力を認めた結果というのが凄さだ。本物とは、周囲が認めることで、自分がアピールして人に媚(こび)を売ることではない。そのへんのさもしい人とはわけが違う。そして、泣けた理由はここにもあった。
 水木さんのような生き方をする人を認めるような周囲が、今の世の中にはいなくなってきたということに、何とも情けなくなり、泣けてしまう。高度成長期には、この「人生こつこつ」のような人には価値を置かれなくなってしまった。この時代を作ったのが団塊世代だ。高度成長の波は、違う価値観にすり替えられてしまった。美しい純粋な生き方や、人間の尊厳こそもめちゃくちゃにする時代を作ったのは、戦後生まれのその心の歪からだと思った。
 高度成長期の価値観に、この私もついて行かれなかったわけだ。本当に微妙な世代だと思う。水木さんのような人は、あの時代だったからこそ大成したのであって、昭和40年を過ぎたら人の価値観は変わった。
 自分のことを思った点がもう一つあった。奥さんが、古本を集めて、その中からテレビに関した記事だけをスクラップしていたが、あの姿は、何ともけなげな優しさだと思った。夫を支える妻の姿として、私の好きな姿だ。見返りを求めない純粋な心が伝わってくる。
 私もかつて会社に勤めた頃、同じようなことがあった。膨大な雑誌、業界紙などから目次を切り取り、必要とされている記事を切り取って分類整理し、それをカードで引き出せるようなシステムにする作業だった。KJ法の原始版のようなものだ。読み捨てされる雑誌でも、分類整理すると保存の価値のある内容のものも沢山ある。そこに目をつけたのだった。水木さんがスクラップが趣味だと知った時、なんとなくそのへんの意味がわかった。
 書き物は情報だ。これを必要に応じて保存するという昔のやり方がスクラップだが、そのページには人の心が通っている。現代の、Evernoteにクリック一つで切り貼りするといったことだ。ただ、それが、あのように書棚にズラッと並ぶ光景は、もう皆無だ。そういう人の体温が伝わってくるような物がないことに、些か寂しさを覚える。

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 誰かも言っていたが、最近、私も戦前の人に関心を持つようになった。戦前の人の生き方や生活などが垣間見れるような、そのような情景に出会うのが楽しい。 
 少し前に読んだ「昭和東京ものがたり どうしても書き残したかった“激動の時代の人びとの暮らし”」山本七平などもじんと来る。

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コメント

同感です。その回のゲゲゲを見ていませんが、おっしゃりたいことがよくわかります。昔の日本人は立派な人が多かったですよね。お金があるとか地位があるとかそういうのではなく、人間として尊敬できるような人が。私も昔の人をお手本にすることが多いです。

投稿: 鰊 | 2010-08-07 09:02

鰊さん、古い話しとはいっても、そういう心を理解できるものがきちんと組み込まれていた時代は、素晴らしいものを残したと思います。今の日本は、これから先に何を残すのやら。考えてみると、私などは結構いい時代に育ったのかもしれません。それが分る鰊さんも。

投稿: ゴッドマー | 2010-08-07 15:34

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