極東ブログ「夫の悪夢(藤原美子)」について
一昨日届いた「クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語」マーク・ベニオフを読み始め、しばし本の世界に入っていた。本を読み始めるとその世界にだけいられるというのは、ある意味現実逃避なのだが、この時間がなんとも好きでたまらない。途中ニュースから、「バカも休み休みに」というフレーズが何度も流れ、菅首相が自民党のマニフェストをパクったと谷垣さんが怒鳴っていた。目糞鼻糞を笑うの話だわと思って可笑しかった。昨日という日は、それ以外はこれと言って面白い話はまったくない一日だった。このような日には読書に限る。
極東ブログでもこのところ書評が続いている。ここで紹介される書籍もいつも面白い。昨夜「夫の悪夢」藤原美子の書評エントリー(参照)を読んだだけで寝てしまったが、目をつぶってこの著者の事を考えていた。先日Twitterで藤原ていの事が少し話題になった時、この一族の家系を調べてみていろいろわかったことがあった。
「藤原」という性は、諏訪には五万といる。それと両角。藤原美子さんの夫である藤原正彦氏は数学者で、新田次郎と藤原てい(作家)の次男である。藤原ていを知ったのは、「流れ星は生きている」からで、この著者で、随分昔に読んだ。戦後の私達世代くらいまではかなり読まれた名作でもあると思う。特に私の母も父も満州引き上げ者で、当時の話を直に聞いていればその凄まじい光景が、この本から浮かんでくる。
すっかり忘れていた話だが、新田次郎は(にったじろう)はペンネームで、角間新田(かくましんでん)という諏訪の地名から取ったときいている。ここは角間川の谷を挟んだ山間にあり、私の住む町の隣町だ。10分ほど坂道を霧が峰高原に向かって登ると、そこが角間新田だ。ここに実家があり、その坂道を下る途中に諏訪二葉高校、諏訪清陵高校と並んでいる。この高校は、現在は両校とも共学だが、昔は二葉高校が女子高、清陵高校は男子校で、共に県内でもトップクラスに属する進学校ということになっている(らしい)。私はこの土地で生まれたわけではないので、古い話はよく知らない。
藤原ていは、隣の茅野市の出身で旧制両角。これらの名字は諏訪・茅野では特に多いからか、人を呼ぶ時には、下の名前でないと何処の両角だか藤原だかわからなくなる。そして、長野県が昔から教育県と言われてきているだけに、多くの文学者や俳人、詩人を生み出している。最近ではお笑い系も多いらしい。この二人の馴れ初めは、高校が隣同士だったからだろうか、その辺はよく知らないが、二人は結婚し、満州に移ることになったのだ。死に物狂いで満州から引き上げてきた話が「流れ星は生きている」だった。そのていが、嫁である美子さんにこのように話したそうだ。
「美子さん、正彦をどんなことがあっても戦地に送ってはいけないですよ。そのときには私が正彦の左腕をばっさり切り落としますからね。手が不自由になれば、招集されることはありませんよ。右手さえあればなんとか生きていけますから」
続けて、
本当の戦争というものを体験した反戦の心というのはこういうものである。それをストレートにぶつけられた著者は、もちろんストレートに受け止めることはできない。そこは簡単な言葉にはならない。このテーマは本書全体に薄く、人が年を取ればわかるように書かれている。
私の前振りが長くて、それだけで話が終わりそうだが、「夫の悪夢」の著者である藤原美子さんは、藤原ていの次男の夫人であるというだけで読みたくなる本だ。書評の冒頭に、40歳を過ぎたら是非読んで欲しいと評しているこの意味が、なんとなくわかる気がする。まあ、私は既に相当過ぎてしまっているし。
読書続きだが、とっぷり漬かるのも悪くないかな。早速注文してみることにする。
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