イラン制裁に対する中国とロシアの矛盾について
イラン情勢が緊迫状態にあるというのは、昨日の極東ブログの指摘(参照)で充分理解した上で腑に落ちない点があります。私の誤解か認識が浅いためかもしれませんが、中国とロシアが制裁には賛成しながら、イランとの関係には影響ないという矛盾がわかりません。大雑把に報じている記事を拾ってみました。以下は、ロシアと中国に関してです。
➠イラン核問題:イラン大統領が制裁決議を批判--万博出席で訪中
【上海・鈴木玲子】中国・上海を訪れているイランのアフマディネジャド大統領は11日、上海万博会場で記者会見し、国連安全保障理事会でのイランの核開発を巡る追加制裁決議採択について「決議に効果はない」と改めて一蹴(いっしゅう)した。
大統領は万博の「イランデー」に合わせて訪中。制裁決議には中国も賛成し、決議採択直後という微妙な時期での訪中となったが、大統領は「問題はオバマ米政権だ」と中国側に配慮を見せた。(毎日JP)
➠イランとの軍事技術協力は継続 安保理決議影響せず ロシア
2010.6.11 08:19(MSN産経ニュース)
ロシア連邦軍事技術協力局のドミトリエフ局長は10日、国連安全保障理事会での対イラン追加制裁決議の採択に関係なく、高性能対空ミサイルシステム「S300」の供与を含むイランとの協力は継続されると述べた。タス通信が伝えた。
ロシア外務省のネステレンコ情報局長も同日の定例記者会見で、安保理決議はS300の供与計画に影響しないと明言。ロシアが今後もイランとの軍事技術協力を続ける公算が大きくなった。
インタファクス通信は同日、ロシア軍事技術協力部門高官が、追加制裁決議によりイランへのS300供与が「凍結されるのは当然だ」と述べたと報じていた。
ドミトリエフ局長は、イラン追加制裁により攻撃兵器の供与は制限されるが、S300供与には「変更はない」と強調した。(共同)
国連安保理がイランに対する制裁措置を決定し、中国・ロシアもこの議決に賛成側であるにもかかわらず、ロシアは軍事技術協力は継続するとしていることです。また、アフマディネジャド大統領は、原油の禁輸を除外した同決議が効果を持たないとして、イランの原油に依存する中国との経済関係には支障がないと述べたそうです(参照)。
日本もイランから11.9%(2008年)の原油輸入に頼っているので、今回の制裁措置から除外されて救われているようなものです。国連安保理で裁決の際に反対を示したトルコとブラジルの理由は、先に濃縮ウランとしての国外移送案でイランと合意しているため、制裁の必要性がないという理由だったのです。ですから、イランは制裁を屁とも思っていないというのには納得です。
中国とロシアがここでイランと繋がりを持つことを表明している以上、今回の制裁は事実上失策です。このような結果を招いたのも、結局、取り決めを遵守しないことから崩れてゆくわけですが、そのような矛盾に恥を知れといったところで始まらないのです。おかしな政治に黙っているしかないのは日本の政府も同じで、世界的におかしくなってきているというのはこういうことなのでしょう。ここで、日本はどういう態度に出るのか、また、アメリカは対話による交渉では効力がないとなると、次の駒をどう進めるのかが気になります。
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