手打ちうどんを釜揚げでいただく:うどんの変化をリアルタイムで楽しむ
突然岐阜の友人夫婦が所用で諏訪に来ることがあり、いつもの事ながら立ち寄ってくれました。お昼ごはんはたまには外食しようかという選択も候補に上がっていたのですが、朝から大雨でしたし動く時間の無駄を考えて、私の手打ちうどんを食べてもらうことにしたのです。割と早くにそう決めたので、うどんを打って寝かすこと三時間で何とか形になりました。岐阜から来ると諏訪は寒く感じるのだろうし、雨降りも手伝って底冷えのする寒さと言ってもおかしくない寒さだったので、体が温まる釜揚げうどんにしました。作った量が大量でしたので、お櫃と特大の木製サラダボールに茹で汁ごとうどんを移してテーブルでただくということにしました。
よくよく考えたら手打ちうどんを家で釜揚げにしたことは無かったのではないかな。なんだか後先を考えずに作り始めてから器を探したりして、少してんやわんやしましたが、うどんが生き物のように感じられました。手打ちのよさでもあるのですが、製麺機を使っていないので手切りです。しかも、蕎麦切り包丁で!この際、何用の何を何に使うかなど問題ではなく、大量のうどんを如何にうどんらしく作るかですから、なりふりかまわずです。息子は休みで、手伝うつもりでいたらしく「小さい頃ここにうどんを置いて僕達足で踏んだよねー!」と楽しみにしているのです。が、ごめんよ。もう捏ねちゃった。麺切りをしている私の姿を自分の携帯電話のカメラで撮ってくれたのですが、多分、料理中の画像はこれが最初で最後になるでしょう。
手打ちうどんが生き物みたいだと表現した理由は、茹でた直ぐは非常にコシが強くぴんぴんしていて、まるで海老の踊り食いのようです。ずるずるっと吸い込めなくて、そこを無理をすると、口の周囲にうどんでパンチが飛んできます。全員が、早く食べないとうどんのコシがなくなると思ってますので凄まじい速さで食べたのですが、5分後くらいにはうどんがつるつるとした滑らかさに変わりもちもちしてきました。それはそれで美味しいねということが分かったのです。次回からはゆっくり食べて、二通りの味わい方を満喫したいと思いました。
手打ちうどんのことを偉そうに言うのは憚りますが、私なりの経験から言わせていただくと、国産の強力粉だけだと弾力が強過ぎて喉越しが悪く、もぐもぐ噛んで食べるような感じのうどんに出来上がります。駄目だというわけでもなのですが、かなり弾力が強いです。ですから、国産の薄力粉と半々に混ぜて中和するとよいです。また、水の量は本当はできるだけ少なめにして、生地を硬く捏ねると後の扱いが楽ですが、捏ねるのに力を使います。帯に短し襷に長しのような言い方ですが、どちらを取るかというかと硬い生地です。理由は、茹でる時に持ち上げただけでうどんが伸びたり、打ち粉をして解す動作をするだけで伸びてしまい、太い部分と細い部分が極端に出来上がるためです。そうなると茹で加減にバラつきが出ますので、細い部分は茹で汁に溶け出す・・・のような問題があとに出ます。いずれも美味しくないうどんの評価に繋がります。硬い生地を選択して、ではどうやって生地を捏ねるかと言いますと、足踏みです。丈夫なビニールに包んでできればバスタオルなどでカバーしてから踏みます。10分くらい足踏みすれば完璧でしょう。足踏みの圧力で生地に均一に水分を行き渡らせ、全体をまとめます。水分は粉の50%から55%の間で調節するとよいです。
次にお出汁ですが、私はもっぱら鰹出汁に醤油と味醂を同量加え、味を締める為に塩を少々加えます。この醤油と味醂の分量は出汁を10とすると、1~1.5の割合です。これは醤油の味にもよるのでその都度まちまちになります。レシピには表現しにくいのですが、言える事は、つけ麺なのでやや濃い目に作っても茹で汁が混ざる分、直ぐに薄まりますから、割と安心です。また、削り鰹を沢山使って出汁の色が鼈甲色(飴色)のような金色くらいの濃さですとコクがああります。その場合、味付けは薄めでもかなり満足できる味になるはずです。秋田で覚えたつけ麺のお出汁は、鶏のもも肉を小さく切って沸騰した出汁に加えて一煮立ちさせ、灰汁と余分な油を掬ってから味付けして葱を加えます。これは、ちょうどきりたんぽ鍋のスープのように出来上がります。
最後に薬味ですが、温かいつけ麺には葱が入っていれば十分ですが、今回は塩もみしたオクラをさっと下茹でして(Hint&Skill☛)薄く輪切りにしたものを出汁に加えました。ぬめりがうどんを啜りやすくしてくれ、また、しゃきしゃきした食感はなかなかうどんにあいます。
食べる時間はあっという間ですが、お腹はすっかり満足です。うどんを食べ終わってから他のおかずにやっと目が行くという始末ですが、今回はかぼちゃと牛蒡を牛肉で早煮にしたもの(レシピ☛)と茹でたブロッコリーと甘いトマトでした。
お櫃に注がれた釜揚げうどんに皆で箸を突っ込みながら頂くのは、屈託の無い付き合いを上手に演出してくれます。「同じ釜の飯」ではないですが、それに近い感覚で、皆で同じものをつついて食べるということがなんとも幸せです。この幸福感のためなら、手打ちうどんなんて御安い御用です。
材料(うどん)
- 国産強力粉・・350g
- 国産薄力粉・・350g
- 塩・・35g
- 水・・370cc(粉の53%)
つけ麺の出汁
- 鰹出汁・・800cc
- 醤油・・85cc
- 味醂・・85cc
- 塩・・小さじ1/2
- 鶏もも肉・・300g
- 長葱・・1本
- オクラ・・10個
作り方
- ボールで粉と塩を混ぜ、分量の水を加えながら混ぜ合わせて固まりにし、表面がつるっとした滑らかさになるまで捏ねたり足踏みしたりしてならす。
- 1を半分にして、乾燥から防げるようにラップなどで包み、夏場なら冷蔵庫で冬場なら暖房の聞いていない場所で最低1時間、できれば一昼夜寝かす。
- 鰹の出汁を取り、800ccを取って中火にかけ、沸騰したら小さく切った鶏肉を加える。
- 余分な油と灰汁を掬ったら醤油、味醂、塩で味付けし斜めに細く切った長葱を散らす。
- お鍋に(15リットル位)たっぷりのお湯を沸かす。
- 台に粉をたっぷり打って2の生地を十文字に麺棒で押さえて跡をつけ、放射状に伸ばす。
- 30cmくらいに伸ばしたら麺棒に端から巻き付け、転がして伸ばすのを何度か場所を変えながら60cmくらいに伸ばす。
- 3~4回前後に交互にたたんで端から3mm幅で切り離し、最後にたっぷりのうち粉をして粗く解す。
- お湯が沸騰したら麺を加えて透き通るまで茹で、器にうどんごと流し入れてテーブルに直行♪
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コメント
食感の変化を楽しむとはなるほど、奥深いです。
うどんも作りかたや好みは十人十色ですね。
私は醗酵と腰の強い讃岐系より、腰抜けな(関東風?)食感のうどんが好みです。
教えて頂いたウーウェンさんの本のレシピはまだ試していないのですが、これはそのままうどんでは?という感じで、これもまた作るのが楽しみです。
投稿: ふ゛り | 2009-09-14 22:08
ぶりさん、おはよう。
私は関東育ちですけど、以前群馬や埼玉の北の方では凄く太くてごつい感じのが手打ちの信条みたいなこと言っていましたけど、比較的どこも柔らかいうどんが多いですよね。
ウー先生の本にも手伸べでおいしそうな麺を見たりして、少しずつ挑戦したく思っています。今までの経過で言えることは、「書いてある通りにやればできる本」としては大変お薦めです。粉の扱いをレシピに書くというのは非常に苦労しますが、アノ本だけは私もお手本に書き方を真似たいくらいです。真似るだけと言うのが実はまた難しいですけどね。
手始めは何が良いでしょうね?楽しみです♪
投稿: ゴッドマー | 2009-09-15 06:23