2009-09-27

公魚(わかさぎ)の含め煮:お師匠様の料亭の突き出し

 唯一市内で私が外食らしい外食をするといったら、会席料理から割烹料理に至るまでを楽しませてくれるお店一軒だけですが、(ぁ、スープの美味しいラーメン屋さんも時々行きますが)ご主人の仕入れと私の買い物の時間が重なることが多く、特に魚屋さんで会うと私にとっては非常にラッキーな事です。今までも時々ここに登場してきた方で()、その日の魚を見てどれが新鮮でよいか、また、料理法などもいろいろと教えてくれます。手話を交えた、高度な料理教室です。

Wakasagi

 昨日は、秋田の八郎潟産の公魚(わかさぎ)を手にとって、絶品の煮物になると言うので早速教えてもらって作ってみました。結果から先にお話しますと、とても上品で、甘くなく塩辛くない当たりで、それこそ突き出しに持って来いの一品です。煮崩れもなくコシがあって柔らかい食感で、新しい公魚だと直ぐに分かるでしょう。
 材料は、酒と醤油と生姜だけです。今回の公魚はまだ季節の走りだからか非常に小さく、3cmから大きくても5cm程です。鮮度が落ちてしまうと、魚の煮物の場合は誤魔化しが効きません。腹が割れてしまって内蔵は生臭みを発しますから、買い物の段階で目利きである必要があります。因みに調理時間は、一時間半でした。
 調味料と作り方を店先で手話でやり取りするのは、周囲のお客さんの注目を浴びてしまうのですが、咽頭癌の術後、声を失った方なので、私が納得したような顔つきでもしない限りずっと説明し続けてくれます。実は、癌が多発する体質で、今も病を抱えながら入退院を繰り返しては厨房に立っている状態です。それでも別に悲壮感はありません。一番最初に癌を知った時に、一生分の悲しみと絶望感を味わって、それでもまだ生きていられるんだからもうしばらくは大丈夫だと言います。私も極普通に話して、健康状態も普通に聞いて、調子が悪いと知ればゆっくり休んでねと伝えるだけです。
 そのような背景もあるのか、私には分かるのです。今を大切に生きていらっしゃるんだと、そう理解していますから、私もいつもこれが最後かもしれないと、真剣に聞きます。「一楽」のお師匠様、どうかお元気で。

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 では、作り方のポイントです。レシピを起こしたのはわたしで、お師匠様が分量を教えてくれたわけではありません。悪しからず。味付けで言われることは、味見をしながら加減してね、だけです。師匠が手話で何度も繰り返したのは、手のひらで何かを下に押すようなしぐさです。それは、煮汁が下がる意味です。つまり、煮汁が蒸発して、自然に「煮詰める」という意味です。それと、箸で混ぜない。この二点です。洗って水切りした公魚と生姜を平鍋に移して、ひたひたになるくらいの分量の酒を加え、強火で沸騰直前まで加熱します。ここで醤油の2/3を加えて落し蓋をします。煮汁が半分以下に減ったら少し味見をして、残りの醤油を様子を見ながら加え、好みの分量味に調えていきます。最後、煮汁が鍋底にわずかに残る程度まで煮てそのまま冷まします。冷めたら崩れしないように優しく別の器に移して保存します。公魚が温かいと崩れてしまう感じがあります。くれぐれもそうならないように、十分冷まして移すとよいです。
 師匠に味見をしてもらいたいのは山々でしたが、きっと持って行っても「自分が美味しいと思えばいいんだよ」と言ってくれそうなので一度も行ってませんが、大変美味しく、満足に出来上がりました。

材料 

  • 公魚・・200g
  • 酒・・300g
  • 濃い口醤油・・30cc
  • 生姜スライス・・2枚

作り方

  1. 公魚は流水でさっと洗い、笊にとって水気を十分切る。
  2. 平鍋に1の公魚を移し、酒をひたひたに注ぎ入れ、生姜を加えて中火にかける。
  3. 沸騰させないように直前で醤油の2/3を注ぎ入れ、落し蓋をして煮汁が半分以下になるまで小さく沸騰させながら煮る。
  4. 煮汁が減ったところで残りの醤油を足しながら好みの味に調える。
  5. 煮汁がわずかに残る程度まで煮詰めたら火から下ろし、そのまま冷めるまで置く。
  6. すっかり冷めてから静かに器に移す♪

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